魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第19話 その日、機動六課(後編)

「はあああ!!」

 

「やああああ!!」

 

 

 

現在、ヴィータと旦那が交戦中なんだけど、ユニゾンしているヴィータ達と互角に戦っている。

だけど、こうしている間も旦那の身体はどんどん蝕まれている。

このまま戦って、もしフルドライブなんて使ったら……。

 

 

 

「旦那、もうやめてくれよ!!」

 

 

 

あたしはいても立ってもいられず、戦っている二人を止めた。

 

 

 

「アギト」

 

「下がってろって言ったろうが!!」

 

『そうです、今は私たちに任せてください!!』

 

「二人とも悪い……。これはあたしがしなきゃいけないんだ。フィルとレジアスのおっさんのメッセージを伝えるのは……」

 

「どういう事だ?」

 

 

 

あたしの言葉に旦那も気になり、デバイスの構えを解いた。

ヴィータ達も戦闘目的じゃないので、グラーフアイゼンを下ろしている。

 

 

 

「これを……見てくれないか」

 

「これは?」

 

「あたしが世話になっているやつからの手紙さ」

 

 

 

旦那が手紙を受け取り、その内容を見ると旦那の顔が一変し、驚きを隠せないでいた。

 

 

 

「アギト、この内容に嘘はないんだな……」

 

「……ああ、フィルがレジアスのおっさんから、預かってきたものだって言ってたからな」

 

「そうか……」

 

「旦那……それには何が?」

 

「ああ……俺の求める答えが書いてあったよ。そして、レジアスの後悔もな……」

 

 

 

『儂とお前があのときに交わした正義は今でも持っている。それは失ってはおらん。儂は表面上は最高評議会に従うフリをしながら、水面下で、戦闘機人計画が潰れるような工作と、それに変わる計画を、地道に、そして慎重に進行させていた。だが信用できるのは自分しかいない状況で、お前まで巻き込みたくなかった。結果、お前も部下を失わせることになってしまった。本当にすまない……。直接話したいが、おそらく儂は、今後自由はきかなくなるだろう。その前にせめてこの手紙を託す。  レジアス・ゲイズ』

 

 

 

 

「アギト」

 

「なんだい、旦那?」

 

「投降しよう……。レジアスの真意が分かった以上、もう意味がない。それに……」

 

「もう……身体が持ちそうもないからな……」

 

「旦那……」

 

 

 

こうして旦那は機動六課に投降することになった。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

 

「ちぃぃ……こいつ、ちょこまかと!!」

 

「ウェンディ、こんなやつさっさと仕留めよう!! てやぁ!!」

 

 

 

真後ろからの蹴り、あの野郎は気づいてない。

これで決まりだ……。

 

 

 

「ふっ……」

 

 

 

決まったと思った瞬間、蜃気楼のように姿が消えてしまった。

 

 

 

「なにぃ!!」

 

「幻影? ええっ!! 嘘っ!!」

 

 

 

現れたのは数十人ものフィル・グリードの姿。

しかも幾つかは質量もあり、余計に判別がつきにくい。

 

 

 

*     *     *

 

 

 

《マスター、相手は完全にこっちの思惑にはまりましたね》

 

「ああ、ああいうタイプは焦らせば、絶対あっちから仕掛けてくる。そのときがチャンスだ」

 

《ですね……。それじゃ一丁やりますか》

 

 

 

仕掛けは済んだ。後は獲物が罠にかかるのを待つだけ――――。

さぁ、今度はこっちの番だ!!

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「あたしらを騙すって、こいつ戦闘機人システムのこと把握している!?」

 

「幻術だろうが何だろうが、要は全部潰せば良いんだろうが!!」

 

 

 

あたしはこの幻影どもをぶっつぶすため突撃した。

全部潰せば関係ねえ!!

 

 

 

「見つけたぞ!!」

 

 

 

幻影は全部消した。もう逃げ場はねえ!!

 

 

 

「……掛かったのはお前の方だ!!」

 

「何!! なんだこれは!!」

 

 

 

あたしが突撃した瞬間、地面から無数の鎖が現れ、あたしの身体に巻き付く。

しかも能力封じの処理が掛かっていて、脱出できねえ!!

 

 

 

「ノーヴェ!! って、あいつがいない!!」

 

「どこだ、どこにいるんっすか!!」

 

「ここだよ!!」

 

 

 

次の瞬間、すでにデバイスに高密度の魔力を集束したフィル・グリードが真正面に現れる。

そんな、直前まで何の反応もなかったのに!!

 

 

 

「くっ!! 防御、間に合うっすか!!」

 

「遅い!! ブラストブレイザー!!」

 

 

気が付いた時には、白銀の砲撃があたしに叩き込まれていた。

 

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

至近距離から、ブラストブレイザーを喰らったウェンディは動けなくなり、戦闘不能になる。

すぐにストラグルバインドで動きを封じ、向こうも観念したのか抵抗はなかった。

 

 

 

『ノーヴェ、ウェンディ』

 

「「チンク姉!!」」

 

『お前達、やられたのか!!』

 

「残念だったな。こっちは押さえさせてもらった」

 

『くっ!!』

 

 

 

よし、これでこいつらがあっちの応援に行くことはなくなった。

前の時は3人がかりで、ギンガさんがやられてしまったからな。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

合流地点 ロータリーホール

 

 

 

「ここで合ってるはずなんだけど……」

 

「ええ……なのはさんに言われたのってここでしたよね」

 

「間違ってないはずだよ」

 

「もしかして……あちらでも何かあったんでしょうか?」

 

「その可能性は十分ある……」

 

 

 

スーパーサンダーのおかげで、あたし達はすぐにここに来ることが出来た。

でも、まだなのはさん達が来ていない。

 

 

 

「ティアナ、スバル!!」

 

「エリオ、キャロ、ルーテシア!!」

 

「なのはさん、フェイトさん!! 無事だったんですね!!」

 

「わたしたちは何とか……フィルはどうしたの?」

 

「まさか!!」

 

「フィルは……あたし達をここに行かせるために、たった一人で戦闘機人二人の相手を……」

 

「「!!」」

 

 

たった一人で、戦闘機人二人を相手にするなんて無茶なのはわかっている――――。

でも、フィルはそれでもあの場に残ってくれた。

 

あたし達を信じて――――。

 

 

 

 

「なのはさん、これを!!」

 

「済みませんが、あたし達は急いでフィルの所に戻ります!!」

 

 

デバイスをなのはさん達に渡した以上、急いでフィルの元に戻らなきゃ!!

 

 

「ギン姉……ギン姉!!」

 

「どうしたの?スバル!!」

 

「ギン姉と通信が繋がらないんです!!」

 

「……おそらく……あたし達が交戦したあいつら以外にもいるのよ」

 

 

敵だってかなりの戦力をつぎ込んできている。

別働隊がいたって不思議じゃない。

 

 

「ギン姉……。まさかあいつらと!!」

 

「それはないわ!! 少なくてもあの二人は、フィルが命懸けで押さえてくれてるんだから!!」

 

「もしかして……フィル。やられちゃったんじゃ!!」

 

 

 

何ですって……。

 

 

 

「やっぱりフィル一人じゃ無理だったんだよ!! それであいつらがギン姉の方に!!」

 

 

 

――――ふざけないで。

あいつが今、どんな思いで戦ってると思ってるのよ!!

 

 

 

「スバル!!」

 

 

あたしはスバルの頬を思いっきりひっぱたいた――――。

 

 

「あっ……」

 

「今の台詞……もう一度言ってみなさい……」

 

 

 

今の言葉だけは絶対許さない!!

あいつは……フィルは、あたし達のために今も必死で戦っているのに!!

 

自分が傷つき、ボロボロになりながらも戦っているのに……。

 

 

あたしはスバルの胸ぐらをつかみ、さらに怒りをぶつけた――――。

 

 

 

「フィルはね……あたし達を行かせるために今も必死で戦ってるのよ!! 今の言葉はあいつの気持ちを踏みにじるものよ!!」

 

 

さらに、普段はこういったことは言わないキャロも……。

 

 

「スバルさん、お姉さんのことを心配する気持ちは分かります。でも、フィルさんのことも考えてください!! わたし達のために、あそこに残ってくれたフィルさんのことも……」

 

「キャロ……」

 

「……ごめん……でも、ギン姉が!!」

 

 

ギンガさんのことが心配なのはわかるわよ。

だけど、仲間を信じられないのは、それはフィルに対してもあたし達に対しても冒涜だ。

 

 

 

「ロングアーチ、こちらライトニング1」

 

『ライトニング1、こちらロングアーチ』

 

「グリフィス、どうしたの? 通信が」

 

『こちらは今、ガジェットとアンノウンの襲撃を受けています、持ちこたえていますが、もう……』

 

 

 

外の状況を確認したくて六課に通信したが、ノイズが酷くさらにあっちも大変なことになっていた。

 

 

 

「ここでじっとしていてもしょうがない。スターズはフィルとギンガの安否を、ライトニングはフェイトちゃんと一緒に六課に戻る。ルーテシアは、八神部隊長にデバイスを届けしだいライトニングに合流!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「スバル、ギンガのことが気になるかもしれないけど、今は目の前のことに集中して!!」

 

「……はい」

 

「ティアナ、スバルのことはわたしが見るから、ティアナはそのバイクで一刻も早くフィルと合流して!!」

 

「はい!!」

 

 

 

スターズはなのはさんとスバルがギンガさんの方へ、あたしがフィルの方へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……さすがに戦闘機人二人はきつかったな……」

 

《戦略を立てるクアットロがいなかったですからね。これで綿密に動かれていたらアウトでしたよ》

 

「あと、戦闘経験がなかったのが幸いだった」

 

 

 

ウェンディとノーヴェのBCCを取り除いた俺は、少し休憩をしていた。

固有武装は破壊してるので心配はない。

 

さすがに戦闘機人二人を相手にするのはきつかった。

これで戦闘経験が豊富でもっと緻密な戦い方をされてたら……。

 

 

 

「おい……」

 

「ん、何だ?」

 

「何で、あたし達を殺さないんだ」

 

「そうっすよ。あんた達にとってあたし達は敵以外の何者もないんっすよ!!」

 

 

 

彼女たちが言うことは分かる。

あっちの世界にいたときは、こいつらは敵以外の何者の無かった。

だけど……。

 

 

 

「……お前らが言いたいのは、なぜ殺さないかって事だよな」

 

「「そうだ (っすよ)」」

 

「そうだな……。理由はクアットロ以外のお前らは、わかり合える気がする。そんな気がしたからかな……」

 

「どういうことっすか?」

 

 

これは、ドゥーエを元に戻したときからずっと思っていたことだ。

全員ではないが、彼女たちは優しい心を持っていたのではないかと――――。

 

 

 

「まぁ、 BCCを取ったから分かると思うけど、お前らは今、人を傷つけたりしたいと思うか?」

 

「いや、思わないっす。元々あたしは楽しければいいやと思ってやっていただけっすから」

 

「あたしも同じだ。強いやつと戦いたいと思うが、弱いやつ相手に暴力をふるう気はねえよ」

 

 

やっぱりな――――。

こいつらは操られていたに過ぎない。戦っていてそれがよくわかった。

 

 

「だろ、そう言うことだ……」

 

「あきれたっすね……。もし違ったらどうするんすか」

 

「多分大丈夫だろうと思ったよ。ドゥーエもそうだったしな」

 

「「ええっ!!」」

 

「嘘だろ!! ドゥーエ姉といったらあたし達の中でも冷酷無比なのに……」

 

「今度会ってみろ。今じゃユーノさんの片腕だぞ。もっとも普段はユーノさんが尻に敷かれてるがな……」

 

 

驚くのも無理内よな。

というか、俺が一番驚いたんだからな……。

 

 

 

「尻って……ぷぷっ……ドゥーエ姉らしいな!!」

 

「あははははっ、それまじっすか!!」

 

「大マジだ。っていうか、あれがドゥーエの本当の性格だと思うぞ。好きなやつには尽くしているし……気づいてないのはユーノさんだけだぞ……」

 

「何度聞いても信じられねえ……。あの冷酷無比な姉が……」

 

「俺だって最初は信じられなかったさ。あのドゥーエだぞ」

 

「「確かに!!」」

 

 

この二人に納得されるってことは、やっぱ今のドゥーエとギャップがあるんだろうな。

 

 

「でも、あんた本当におもしろいっすね。あたしはウェンディ。あんたの名前は」

 

「俺はフィル・グリードだ」

 

「あたしはノーヴェ。確かにおもしろいよ。お前は……」

 

「なんだよ、それ……」

 

「「「あははっ!!」」」

 

 

 

本当、あっちじゃこんな光景考えられなかったよな。

俺たちがこいつらとこんな馬鹿話をするなんてな……。

 

ウェンディ達と話していると、ティアが全速力でやってきた。

 

 

 

「フィル!!」

 

「ティア……心配してくれたのか?」

 

「当たり前でしょう!! 二人を相手にしたんから……でも、無事でよかった」

 

「心配かけたな……でも、もう大丈夫だ」

 

 

 

ティア、本当にありがとうな……。

お前がみんなを引っ張ってくれているから、俺も安心して単独で行動できるんだ。

 

 

 

「ティア、スバル達は?」

 

「ライトニングはフェイトさんと一緒に六課へ戻ったわ。ルーテシアも部隊長にデバイスを届けたら、ライトニングに合流するわ。スバルは……」

 

「ギンガさんが気になって、単独先行したという訳か……」

 

「なのはさんが一緒についてくれているけど、多分あの子暴走するわ……」

 

 

予想通りの行動って訳か。

たった一人の姉だから心配するのはわかるけど――――。

 

 

「ったく……。ティア、俺たちもスバルを追うぞ」

 

「ええ、でも、こいつらはどうするの?」

 

「ここにほっておくわけにはいかないから、一緒に来てもらう」

 

 

 

戦闘機人二人をここにおいていくのは危険すぎる。

もしかして仲間が回収すると言うこともある。

 

 

 

「いいっすよ。元々私達はもう、つかまってるんっすから」

 

「ああ、それにチンク姉のことも気になるしな」

 

「ノーヴェはチンク姉にべったりですもんね」

 

「うるっせえよ!! ウェンディ!!」

 

「あんた達、喧嘩なら後でにしてよね。今は急ぐから……」

 

「ごめんっす……」

 

「わりい……」

 

「とにかく急ぐぞ。サンダー、ギンガさんの位置は」

 

《ここからすぐ近くにいます。最短ルートで向かいますよ!!》

 

 

 

俺たちはサンダーのエンジンを全開にし、ギンガさんの元に向かう。

スバル、俺たちが着くまでなのはさんの指示を守ってろよ。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

機動六課 隊舎

 

 

「……たった二人でよく守った。だけど、もう終わり。僕のIS、レイストームの前では、抵抗は……無意味だ」

 

 

 

天に向かって右手を掲げると、その手のひらの上に、足元のテンプレートと同じ緑色に輝く、球状テンプレートが発生した。それは眩いばかりの光を放射し、無慈悲に六課の隊舎へと降り注いだ。

 

 

 

「クラールヴィント、防いで!!」

 

 

 

防御結界のおかげで、隊舎への攻撃は防げてる。

フィルが事前に、私とザフィーラのリミッターを消去してくれたおかげね。

 

 

 

「シャマル、このままじゃやられる。一か八か……」

 

「待って、このまま攻撃させて」

 

「何を言ってるんだ。このままじゃお前が持たないぞ!!」

 

「いいのよ……。あっちはこれだけの攻撃をするのに、かなりの力を使っているわ」

 

 

 

これだけのエネルギーを使った攻撃。してる最中、もしくはその直後は完全に無防備になる。

昔、なのはちゃんがスターライトブレイカーを打った直後、私にリンカーコアを抜き取られて時みたいに……。

 

 

「シャマル、お前、まさか!?」

 

「二度と使いたくなかったんだけどね……。でも、やるわ。みんなを守るために、そして……」

 

 

かわいい弟分を……。

 

 

フィルの大事なものを守るために………。

 

 

 

「シャマル……分かった。俺はもう一人のやつを押さえる」

 

 

 

この状況圧倒的に不利に見えるけど、この二人さえ抑えればどうって事無い。

それにこっちはリミッターは無い。100%で戦える!!

 

 

 

「いくわよ、クラールヴィント」

 

《ja》

 

 

 

私はクラールヴィントの石を分離させ、ペンダルフォルムに変形させた。

覚悟しなさいね……。

 

 

 

「旅の鏡!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

 

 

その胸から出てきたのは、戦闘機人のリンカーコアとも言うべきもの。

 

 

 

「オットー!!」

 

「貴様の相手は、俺だ!!」

 

「くっ!!」

 

「鋼の軛!!」

 

 

 

周りに現れた鋼の軛は、致命傷は負わせられなかったが、防御障壁は完全に砕くことは出来た。

ザフィーラのねらいは最初からこれだった。

 

 

 

「今だ!! やれ、シャマル!!」

 

「いくわよ!! コア摘出!!」

 

「ぐっ……がぁぁぁ!!」

 

 

 

さすがにきついわね。両手で二人のコアを一気に抜いているんですもの。

でも、これを抜いてしまえばもう終わりよ!!

 

 

 

「エネルギー結晶体摘出……そのまま眠りなさい!!」

 

 

 

私は両手に魔力を纏わせ、両手のひらの中のエネルギー結晶体を、力の限り容赦なく握り潰した。

 

 

 

「……何とかなったな」

 

「ええ……もう二度と使いたくなかったんだけど……」

 

 

 

これはあのとき封印したものだった。

はやてちゃんの騎士として、生きていくと決めたときに……。

 

 

 

「この二人……意識は失っているが、命に別状はないみたいだな」

 

「命までは奪う気はないですもの。この子達だって操られているだけですもの」

 

「そうだったな……シャマル、BCCを抜いた後、治療魔法をかけてやれ」

 

「そうね……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

炎上する隊舎内では、ロングアーチスタッフや、逃げ遅れたバックヤードスタッフが、救助を信じて待ち続けていた。ほんの数人、交代部隊の魔導師が残っていたが、取り巻く炎や煙からスタッフの身を守るのが手一杯で、とても反撃に移れるような状況ではない。

 

 

 

「オーケー、まだ撃てる!! 腕はまだ鈍っちゃいねぇ!!」

 

 

 

戦えるやつがほとんど残っていないが、なんとかやってみせる!!

あいつらだって、今、必死に戦ってるんだからな……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

六課に向かっている私はエリオ達と一緒に急行していた。

 

だが突如、正面の空域に閃光が浮かび……。

 

 

 

《Sonic Move》

 

 

 

異変を察知した私は、射線上に躍り出て半球型のバリアを展開した。

と同時に、桃色のエネルギー弾がバリアに当たって弾け飛んだ。

 

 

 

「……戦闘、機人」

 

 

 

視線の先には、二人の戦闘機人。

どうやら、攻撃してきたのは見慣れないあいつの方……。

 

 

 

「エリオ、キャロ。先に行って!!」

 

「でも、フェイトさん……」

 

「すぐ追いかける。行って!!」

 

 

エリオ達がここにいたら、間違いなくそっちをねらってくる。

そうなったらやられるのはこっち……。

 

 

「……フリード!!」

 

「あっ……エリオ君!!」

 

「空戦で、アウトレンジで撃てる相手がいるんだ。フィルさんならともかく、僕たちがここにいたら、フェイトさんが全力で戦えない」

 

「……うん」

 

「バルディッシュ、サードフォーム!!」

 

《Zamber Form》

 

 

 

バルディッシュがハーケンからより、近接戦闘に特化されたザンバーに姿を変えた。

紫電を帯びた金色に輝く刃を構え、私は対峙した。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「フィル、もっと急いで!!」

 

「落ち着け!! これだけ乗ってるんだ。これ以上は無理だ!!」

 

 

 

今サンダーに乗っているのは、スバルとティア、それにウェンディとノーヴェの計5人だ。

なのはさんは地上に戻り、ガジェットの掃討に向かった。

 

 

 

「じゃ、あたしが先に行くよ!! ギン姉が!!」

 

「少しは頭冷やせ!! 例えお前が先に行っても、ギンガさんが苦戦している相手なんだ。やられるのが関の山だ!!」

 

「でも!!」

 

「そんなカッカした状態じゃ悪いけど、フォワードのリーダーとして任務に参加させたくないわ……」

 

「ティア……」

 

 

 

スバルには悪いが、ティアの判断は正しい。

今のスバルは判断力が欠いてしまっている。

 

俺もサンダーを全速で飛ばし、長い廊下を駆け抜け、ホールに出ると、そこには……。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「う……嘘でしょ……ギン姉!!」

 

「「チンク姉!!」」

 

「「ギンガさん!!」」

 

 

 

俺たちの前にあった光景は、ギンガさんと戦闘機人のチンクが、互いにずたぼろの状態で

なっていたのだ。

正確に言うと、倒れているのはチンクの方だけで、ギンガさんはその場に立っていたのだ。

しかも……。

 

 

 

「ギン姉……。ちょっと雰囲気が怖い……」

 

「ああ……ごめんね。ちょっと……」

 

 

 

見ると、ギンガさんの目は金色になっていた。

 

 

 

「ギンガさん、その目は!!」

 

 

 

金色の瞳、その中には戦闘機人の証、魔法陣状のテンプレートが浮かび上がっている。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「え? ああ……体術なら、機人モードの方が強いから」

 

 

 

私はもう戦闘機人であることに対する忌諱など無い。

だけど、今でこそそうだが、昔はスバルも私もかなり辛い思いをした。

 

 

 

そのことを無くしてくれた切っ掛けは、スバルの訓練生時代、パートナーに秘密にしているのが耐えられなくなって、スバルは決死の覚悟で二人に打ち明けた。

 

だけど、二人はだからなんだと言わんばかりの態度だった。

クローン等、人造生命体に対する偏見は決して少ないわけではない。

 

だけど、フィルもティアナも、相方がクローンだろうが何だろうが、本気でどうでも良かったのだ。

それをスバルから聞いて、凄く嬉しかった。

 

そして、それは私に対してもだった。

 

フィル曰く

『人造生命体だからとか、そんな些細な事で人の見方を変える奴の気が知れない。そんなこと言う方が腐ってるよ……』

 

ティアナに聞いても、ほとんど同じ答えが返ってきた。

 

私とスバルは、この二人に本当に救われたのだ……。

 

 

 

「派手にやりましたね……」

 

「まぁね……。相手が強かったんで、私も全開にならないと対処できなかったから……」

 

「通信にでられなかったのは、機人モードになっていたからなんですね」

 

「そういうこと、このモードの時って、通常の通信機器とか全部駄目になっちゃうから……」

 

「ブリッツキャリバーでなら可能ですけどね」

 

「ちょっと余裕もなかったし、でもBCCも解除済みだからもう大丈夫よ」

 

 

だいぶ苦労したけど、当面は大丈夫のはずよ。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「そのおかげでスバルが大変だったんですよ。ギン姉が、ギン姉がって」

 

「そうですよ。もうティアやなのはさんの命令も効かないし、大変だったんですよ」

 

「ちょっと、ティア、フィル!!」

 

「スバル……」

 

「は、はい!!」

 

 

 

あっ、ギンガさんが怒りモードになった。

しかも機人モードの状態で、スバルの頭に拳骨をした。

 

 

 

「いったぁぁぁ……」

 

「まったく、あれほど戦闘中は冷静になりなさいっていってるのに、さらにフィルやティアナの言うことまで無視して!!」

 

「ごめんなさぁぁい!!」

 

「謝る相手が違うでしょう!! ティアナとフィルにちゃんと謝りなさい!!」

 

「ティア、フィル、本当にごめんなさい……」

 

「……スバル、今回あんたは、してはいけないこともしてる。あんたは暴走しすぎて、フィルのことまで信用してなかった」

 

「うん……」

 

 

 

仲間を信用できないって事は、戦場では命取り。

戦いってのは前方で戦うだけじゃない。今回のフィルのように、後方で食い止めてくれる役目があるから安心して戦えるのよ。

 

 

 

「何の話だ?」

 

「……あんたが一人でこいつらを食い止めていたときの事よ。ギンガさんのことであんたのことを信じていなかった」

 

「まぁ、そう思ってもしょうがないだろう。実際かなり無茶だったしな」

 

「だけど、あたし達を信じて、あの場に残ってくれたあんたを信じなかったのは、正直許せなかった!! それはキャロも同じ気持ちよ!!」

 

 

 

あのとき、キャロだってもっと言いたかったのよ。

だけど、あたしが代表していっただけのこと――――。

 

 

「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」

 

 

 

あたしの言葉に、スバルはただ泣きじゃくっていた。

 

自分のパートナーを信じられなかったこと。

自分の行動で、仲間を危機にしそうになったこと。

 

そう言った感情で、スバルの頭は混乱状態になっているのはわかるから――――。

 

 

 

「ごめん……あたしも言い過ぎた。でも、これだけは分かって。パートナーを信じられなかったら、一緒に戦うのは無理だってことはね。フィルはあたし達を信じていたからこそあんな事をしたの。なのはさん達にデバイスを渡して、戻ってきてくれるって信じてね」

 

「……本当に、ごめんなさい」

 

「スバル、あまり自分を責めるな。ギンガさんが心配だったのはわかるから……な……」

 

「うん……」

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「チンク姉、チンク姉!!」

 

「ノーヴェ……ウェンディ……お前達無事だったのか。フィル・グリードと戦って……」

 

「その……フィルがあたし達を助けてくれたんっすよ」

 

「どういう事だ? そういえばノーヴェも」

 

「チンク姉、わりぃ。完膚無きまで叩きのめされた……」

 

「多分、フィルが回復魔法をかけたんでしょう……」

 

「「「タイプゼロ!!」」」

 

「その呼び方はやめて欲しいんだけど、一応ギンガ・ナカジマって名前があるのよ」

 

 

その呼び方は止めてほしいな。

私はゲンヤ・ナカジマの娘なんだからね。

 

 

「そうだったな。すまん……」

 

「やけにあっさりしてるわね……」

 

「……あれだけお前に叩きのめされれば、嫌でも従う……」

 

「あ、あははは……」

 

 

 

ちょ、ちょっとやり過ぎちゃったかな……。

 

周りの壁や柱を見ると、所々破損の後がある。

しかもここって地上本部よね。

 

修理費、経費で落ちるかしら……。

 

 

 

「……まったく、とんでもないパワーだな。てっきり機人の力を使うことに抵抗があると思っていたのに……」

 

「昔だったらそうでしょうね。でも、私とスバルは、フィルとティアナのおかげで、自分らしく生きられるようになったの」

 

 

そうでなかったら、きっとスバルも私も、仮面をかぶって生きていたから――――。

 

 

「フィル・グリード……か。うらやましいな。私達も、もう少し早く出会いたかったものだ」

 

「「チンク姉……」」

 

「別に今からでも遅くないわ。あなたたちが私達と手を取り合う気持ちがあるならね」

 

「えっ?」

 

「フィルもティアナも、人造魔導師だから何? 戦闘機人だから何? そんな感じよ。あの二人は」

 

「そっか……」

 

 

あの二人は本当につらい経験をしてきたから、人の心の痛みを理解することができる。

そして、フィルは沢山の死別を経験してきてるから――――。

 

 

 

「私も……お前達の仲間になれるだろうか……」

 

「ええ、チンク」

 

「ギンガ……」

 

 

 

チンクが差し出した右手をつかもうとしたとき……。

 

 

 

『あ~ら、そんな簡単にハッピーエンドにはさせませんわ~』

 

 

 

声と同時に背後から、ガジェットが現れ、私は背中からザックリ切られてしまい――――。

 

 

 

「ギンガ!!」

 

「「ギンガさん!!」」

 

「ギン姉!!」

 

 

 

 

*     *      *

 

 

 

 

ギンガさんが謎の敵にやられたことに気づき、俺たちはギンガさんの元に駆け寄る。

 

 

 

「誰だ!!」

 

「あそこっす!! あれは……Ⅳ型っすよ!!」

 

「ギン姉!! ギン姉!!」

 

「……大丈夫よ……これ……くらい……」

 

「ギン姉!!」

 

「……これは!? くそ!! 刃に毒が仕込んであったんだ!!」

 

 

 

ギンガさんの傷は明らかに致命傷だ。

俺が治療魔法をかけているが、それでもギンガさんの容態は刻々を低下している。

 

 

 

『うふふのふ~。フィル・グリード、いかがかしら、ホッとした一時から一気に絶望を味わうのは~』

 

「クアットロ!! きさまぁぁぁああああ!!」

 

『その傷では助かりませんわね。ルーお嬢様か、あのピンク髪のおチビちゃんがいれば、ちょっとは違ったんでしょうけど~』

 

 

 

確かに、補助のスペシャリストは二人とも六課に向かっている。

この状況じゃどうしようもない……。

 

 

 

『あっ、それとあなたたちに捕まってしまった出来損ない達はどうでも良いですわ。もういらないですし~。まぁ、せいぜいそのポンコツが死ぬまで、己の無力を嘆くと良いですわ~ おっほほほほほほっ!!』

 

 

「「クア姉!!」」

 

「クアットロ……」

 

 

 

その言葉を残しガジェットは姿を消してしまった。

 

クアットロ、どこまで腐ってやがるんだ。

自分の姉妹を使えなくなったら、ゴミ同然に扱うなんて。

 

 

 

「フィル、このままじゃギンガさん本当に死んでしまうわ!!」

 

「ティア、治療魔法使えるか!?」

 

「使えると言っても、最低限のものよ……」

 

 

ティアも一緒に治療魔法を使うが、ギンガさんの生命力がどんどん低下している。

治療魔法が追いついてない……。

 

どうする、このままじゃ本当に死んでしまう――――。

 

 

残された手は……ただ一つ!!

 

 

 

「こうなったら……俺がギンガさんに魔力を与えて、ギンガさんの生命力を上げるしかない……」

 

「無茶よ!! あんただって、もう残り少ないのよ!!」

 

「心配するな。魔力を全解放すれば大丈夫だから……」

 

「フィル……あんた……」

 

 

 

俺の中にあるフェイトさんの魔力を全解放して、ギンガさんに注ぎ込む。

もうこれしか、ギンガさんを助ける手段はない!!

 

俺は両手に魔力を集め、同時にティアが治療魔法を再開し、そして、ギンガさんの身体に集めた魔力を注ぎ込んだ。

 

 

 

「うっ……あっ……」

 

 

 

魔力を注ぎ込むと、ギンガさんの顔色が少しずつだがよくなってきた。

 

 

 

「くっ……うっ……はぁ……はぁ……」

 

「フィル!!」

 

「もう少しだ……もう少しで……」

 

《マスター、これ以上は危険です。マスターの魔力も、もう限界です!!》

 

 

 

さっきノーヴェ達と戦って、基本魔力をほとんど使ってしまったからな。

でも、まだ足りない。

 

切り札としてフェイトさんの魔力は残しておきたかったけど、そんなことは言ってられない。

こうなったら、全部注ぎ込んでやる!!

 

 

 

「くっ……あっ……」

 

「「フィル!!」」

 

 

 

ギンガさんに魔力を渡して、殆ど使い果たしてしまった俺は、その場でよろけてしまった。

バリアジャケットを保つのもきついくらいだ。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「大丈夫……だ……それより……ギンガさんは……」

 

「ぐす……大丈夫、ギン姉は助かったよ………ぐす……」

 

「泣くなよスバル。ギンガさんは助かったんだから……」

 

「そう…だね……」

 

 

血色もよくなっている。

まだ、予断は許さないけど、これなら大丈夫よ。

 

 

 

『それはどうかしらね』

 

「なに!!」

 

 

 

声と同時にフィルの背後に現れたガジェットは、フィルを背中から刃で貫く。

魔力を殆ど使い果たしていたフィルはバリアジャケットの強度も弱くなっていた。

 

 

 

「「フィル!!」」

 

「がはっ……ぐっ……」

 

『おっほほほほほほっ~。引っかかりましたわね。フィル・グリード』

 

「クアッ……トロ……」

 

『元々、そこのポンコツはどうでもよかったんですの。最初からあなたを始末するためでしたのよ~』

 

 

なんてやつなの――――。

本当に心の底から腐ってるわね!!

 

 

 

「クア姉!! そこまで腐ってるのかよ!!」

 

「そうっす!! クア姉、最低っすよ!! 人の心をもてあそんで!!」

 

「クアットロ、そこまで外道に落ちたか!!」

 

「フィル、しっかりして!! お願い、気をしっかり持って!!」

 

 

 

―――――駄目だ。

 

 

あたしの付け焼き刃程度の治療魔法じゃどうしようもない。

せめてルーテシアかキャロがいてくれれば……。

 

 

 

「フィ、ル……ギン、姉……」

 

「スバル?」

 

 

 

スバルの方を見るとエメラルドグリーンの瞳が、金色に書き換わっていた。

 

 

 

「……よくも……」

 

「よくも、ギン姉とフィルを!!」

 

「待ちなさい、スバル!!」

 

 

 

怒りに狂ったスバルはガジェットに殴りかかっていた。

ガジェットがシールドを張るが、スバルはひたすら殴り続ける。

 

拳が血まみれになりながらもやめようとしなかった。

 

 

 

『無駄ですわ。ゼロ・セカンド。あなたのIS、振動破砕でも、そう簡単にはこのシールドは貫けませんわ~』

 

「黙れ、黙れ、黙れぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

怒りの攻撃は次第にシールドを破壊し、スバルの拳はガジェットをとらえた。

次の瞬間、ガジェットは自爆しようとした。

 

 

 

《Protection》

 

 

 

間一髪、マッハキャリバーがプロテクションを張ったおかげで死なずに済んだが、マッハキャリバーはシステムダウンしてしまい、スバルもバリアジャケットはボロボロになり、左腕からは機械部品が見えているほど重傷を負っていた。

 

 

 

「うっ……うわあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「スバル……」

 

 

 

――――最悪よ。

 

 

みんな……みんなやられてしまった。

 

 

なにがフォワードのリーダーよ……。

 

誰一人、守れなかったじゃない……。

 

 

 

「ティアナといったな。落ち込んでいる場合じゃないぞ。彼らを一刻も早く運ばないと……」

 

「……そうね……敵だったあんた達に言われるとはね……ありがとう……」

 

 

 

まだ戦いは終わった訳じゃない。

 

 

クアットロ――――。

 

 

あんただけは絶対許さない!!

 

 

この借りは必ず倍にしてお返ししてやるわ!!

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

機動六課、作戦司令室

 

 

「……システム、完全にダウン。防御システムも、もう……」

 

「くッ」

 

 

 

アルトとシャリオを脱出させ、最後まで粘っていたが、残っていたルキノから報告を受けた。

ごめんフィル、せっかく隊舎の防御を強化してくれたのに……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 

くそったれ……いったい何体がガジェットがいやがるんだ。

正直もう限界だぞ……。

 

 

 

「!!」

 

 

 

廊下の角から、小柄な人影が現れた。

 

 

 

「ラ……ラグナ……」

 

 

 

六年前――――。

 

武装隊狙撃手としての最後の事件。

ビルに立てこもった強盗を狙撃するという任務。

要求を通すため、人質を盾に、窓際に姿を現した強盗を狙うと言う、任務自体はオーソドックスなもの。

 

普段の俺の腕なら何の問題もない任務だった。

だが、その強盗に取られていた人質と言うのが妹のラグナだった。

 

 

結果は……失敗。

 

 

魔法弾は狙いをそれ、ラグナの左目に命中。

これが原因でラグナは左目を失明してしまい、以降、俺は銃を手にする事が出来なくなった。

 

 

震える手を無理矢理抑えつけながら、銃口を彼女に向ける……が……。

 

 

 

「くっ……くそ……」

 

「邪魔ですわ……」

 

 

 

少女の指先から放たれた魔力弾が腹に命中し、壁際まで吹っ飛ばした。

 

 

 

「これで……邪魔者は片づきましたわね。それにしても情報通りでしたわね~」

 

 

 

少女は姿を変え、元の姿に戻ると……。

 

 

 

「まぁ、これでマテリアルを探すだけですわ~」

 

 

 

ナンバーズ4、クアットロの姿が現れた。

 

 

 

 

 

*     *     * 

 

 

 

 

「くっ……馬鹿な……」

 

「私達がこうも簡単に……」

 

「私を舐めすぎたのが敗因だよ。AMFが無い空ならリミットを解除していれば、あなたたちなんかに負けない」

 

 

 

私は、トーレとセッテと名乗る戦闘機人と交戦することになったが、フィルから聞いていたことと、リミットを自分の意志で解除できることで、この二人相手でも何とか勝つことが出来たのだ。

 

 

 

「……お嬢様を舐めていた、私達の負けです……」

 

「でも、どうして……。六課のメンバーは自分の意志じゃリミッターは解除できないはずなのに……」

 

「……フィル・グリードですね。我々のことを知っていて、フェイトお嬢様のリミッターは無くしていた」

 

「そういうこと……。そのおかげで、あなたたちに勝つことが出来たんだけどね」

 

 

 

悪いけど、私はフィルほど甘くはない――――。

私は戦闘機人二人を逮捕すると、近くの部隊にこの二人を預け再び六課に急行した。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

機動六課隊舎

 

 

フリードに乗ったわたし達がようやく到着した時には、既に隊舎は炎に包まれ、辺りをガジェットが闊歩しているような状況だった。

 

 

 

「あっ……」

 

「酷い……」

 

「……あれは!!」

 

「あの子……ヴィヴィオ!!」

 

 

 

二人が見つけたのは、クアットロに連れ去られようとしていたヴィヴィオの姿だった。

 

 

 

「ストラーダ!! フォルムツヴァイ!!」

 

《Dusenform》

 

 

 

エリオ君が、ストラーダを起動させ、噴射口が槍の側面部にも4機表出し、後方噴射口も形状が変更する。

まさか、ここから飛ぶつもりなの!?

 

 

 

「キャロ、フォローお願い!!」

 

「エリオ君!!」

 

「でやぁぁぁぁぁ!!」

 

「あら、まだいたんですの~」

 

 

 

ストラーダの槍先は虹色の防御壁の阻まれてしまい、そこから進まなくなってしまった。

 

 

 

「くそっ!!」

 

「無駄だということがまだわかりませんの~」

 

 

 

クアットロの指先からエネルギー弾が放たれ、それはエリオ君をとらえ爆発を起こした。

エリオ君は気絶してしまい、海に落下してしまう。

 

 

 

「エリオ君!! あっ!!」

 

 

 

そしてわたしも、バインドに掛かってしまい、海に落下してしまった。

 

 

 

「さっきのはFの遺産ね。死んでいてもいなくてもどっちでも良いんですけど~。マテリアルも手に入りましたし、後はゆりかごを起動させるだけですわ」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

フリードとエリオ君は何とか助けられたけど、六課は……。

 

 

 

『これより五分後に、上空の大型ガジェットと航空戦力による、施設への殲滅作戦を行います。我々の目的は施設破壊です。人間の逃走は妨害しません、抵抗せず、速やかに避難して下さい』

 

「まずいわね。六課にはまだ傷ついた仲間が残っているのに……」

 

「ああ、だが我らも、もう動けん……」

 

 

 

戦闘機人を倒し、六課の周りのガジェットを掃討していたが、やはりクアットロの罠にはまって、シャマル先生とザフィーラは致命傷こそ避けられたが行動不能に陥っていた。

 

 

 

「なんで……こんな……」

 

 

 

なんで……。

 

 

 

どうして壊すの……。

 

 

 

わたし達の大切な場所を……。

 

 

 

「竜騎……召還……」

 

 

 

足下には量感用の魔法陣が展開され、両手にはめられたケリュケイオンの水晶が、強い光を放つ。

膨れ上がる魔力は、以前のフリ-ドの時とは比べ物にならないほど強大なもの――――。

 

 

 

「ヴォルテールっっっ!!」

 

 

 

海上に巨大な召喚魔法陣が描かれ、巨大な魔法陣から燃え盛る爆炎と共に、黒い巨体が雄大にせりあがった。

 

 

 

「………壊さ、ないで」

 

 

 

わたしのつぶやきにヴォルテールの口と両肩、三ヶ所に発生した巨大な魔力球が集中し始め……。

 

 

 

「わたし達の場所を……壊さないで!!」

 

 

 

強烈な輝きを放ち、膨大なエネルギーを内包した熱線が照射された。

熱戦はガジェットを全て破壊したが……。

 

 

 

 

 

*     *      *

 

 

 

 

 

「遅かった!!」

 

 

 

八神部隊長にデバイスを届けた私は、急いで六課へ戻ろうとしたのだが、地上本部のガジェットがあまりにも多く、しかたなく地上部隊と一緒に掃討していた。

なんとかなのはさんがきてくれて、戻れるようになったのだが……。

 

 

 

「あれは、ヴォルテール!! しかもあれは暴走状態!?」

 

 

 

いまのヴォルテールは召還師のキャロの感情が暴走していて、ちゃんと制御できていない。

このままじゃキャロの手で六課を壊してしまう。

 

 

 

「キャロ、落ち着いてキャロ!!」

 

「離して!! お願い!!」

 

 

絶対に離さない!!

ここでキャロを止めなかったら、正気になったとき、キャロの心は壊れてしまう。

 

そんなことは絶対にさせない!!

 

 

 

「落ち着いて!! もうガジェットは全部消えたから!!」

 

「うっ……ううっ……」

 

 

 

何とか落ち着きを取り戻したキャロは、ヴォルテールを制御することが出来た。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「ごめんなさいヴォルテール。ただ闇雲に暴れさせちゃって……」

 

『気にするな。これから注意してくれればいい……』

 

「……ありがとう、ヴォルテール」

 

『それにしても良い友に会えたようだな……。我に臆せず、そなたを止めにきた』

 

「うん……」

 

 

 

本当にルーちゃんには感謝しきれない。

もし、あのまま感情のまま暴れていたら、もしかしたら私の手でこの場所を壊していたかもしれないんだから……。

 

 

 

『必要なときがあったら、またそのときに会おう……』

 

 

 

ヴォルテールは魔法陣の中に消えてしまい、自分の世界に戻っていった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

公開意見陳述会の行われていた大会議室の大画面に、ジェイル・スカリエッティが映し出されていた。

 

 

 

『ミッドチルダ地上の管理局員の諸君。気に入ってくれたかぁい。ささやかながら、これが私からのプレゼントだ。治安維持だの、ロストロギア規制だのと言った名目の下に圧迫される、正しい技術の進化を促進したにもかかわらず、罪に問われた稀代の技術者達……今日のプレゼントはその恨みの一撃とでも思ってくれたまえ』

 

 

 

今回の戦い、クアットロ、ディエチ、セイン以外の戦闘機人は管理局に捕まったが、そんなことは関係ないと言わんばかりの態度だった。

 

実際クアットロもスカリエッティも、自分さえいればどうとでもなると思っているからだ。

 

 

 

『しかし私もまた、人間を、命を愛するものだ、無駄な血を流さぬよう努力はしたよ。可能な限り無血に人道的に、忌むべき敵を一方的に制圧出来る技術、それは十分に証明出来たと思う。今日はここまでにしておくとしよう……この素晴らしき力と技術が必要ならば、いつでも私宛に依頼をくれたまえ。格別の条件でお譲りしよう……ふふふふふ………ははははは!!』

 

 

 

スカリエッティの勝利宣言とも言うべき発言は、ミッド中に広まっていた。

 

 

 

「予言は覆らなかった。それどころか……」

 

「最悪やな……」

 

 

 

私とカリムは悔しさしかなかった。

 

だけど、まだ終わったわけやない。

 

 

機動六課は……私達は……まだ終わってないんや……。

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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