魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第13話 ナンバーズ(前編)

「うぅぅ……。はっ!!」

 

「くっ!!」

 

「ううっ……」

 

 

俺達はアギトと名乗る、融合騎の攻撃の前に防戦一方の状態になっていた。

キャロはさっきの攻撃で、意識を奪われてしまってまだ回復していない。

 

おまけに召喚師の少女が召喚したあの召喚獣は、こっちの戦力じゃ現状ギンガさんしか対抗出来ない。

融合騎の攻撃もかなりの連続攻撃で、隙がないし、接近戦能力は無いが、中距離戦には秀でている感じだ。

 

 

「ティア、フィルどうする?」

 

「任務はあくまでケースの確保だ。撤退しながら引きつけるしかない」

 

「こっちに向かってきている、ヴィータ副隊長やリイン曹長にうまく合流出来れば、あの子達も止められるかも……だよね」

 

「スバル……救援を期待するな。あっちもガジェットに対応していて、なかなかこれない状態みたいだ」

 

 

予想以上にガジェットの数が多くて、全部片付けるにはもう少し時間が掛かるみたいだ。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「ちいぃ、どうなってやがるんだ!! いくら片付けてもきりがない!!」

 

「幻影と実機の複合パターンなのは分かっているんですけど、こう多いと……」

 

 

くそっ!! フォワード達が危ないってのに、これじゃ助けにいけない。

フィル、すぐに片付けるから、なんとかもち堪えてろよ!!

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「じゃ、どうするの!?」

 

「……一か八か、俺のワープでヴィータ副隊長達に合流する」

 

「ちょっと待って、あんたのワープって一人を運ぶのが限度のはずでしょう!!」

 

「だから、キャロの力を借りるんだ。俺にブーストをかけてもらい、魔力を一時的にあげる」

 

 

リミットを解除してもいいが、時間制限がある以上、デメリットの方が大きい。

 

 

「う……ううん……」

 

「キャロ、気がついたのね」

 

「はい、すみません……。今まで……。って、どうしたんですか?」

 

 

俺はさっきの案をキャロに説明する。

すると、キャロは少し考えていたみたいだが―――――。

 

 

「確かにわたしのブーストを使えば、可能かもしれません。でも、それじゃフィルさんに相当の負荷が……」

 

「大丈夫、俺を信じてくれ。キャロ」

 

「フィルさん……」

 

 

俺にかかる負荷だったら、どうとでもなる。

とにかく今はここを脱出しないと―――――。

 

 

「……皆さん、全員を転移させるとなると、かなりブーストをかけなくちゃなりません。すみませんがその間、わたしとフィルさんに敵を近づけさせないようにしてください」

 

「キャロ……。あんた……」

 

「分かったよキャロ。あいつらの攻撃は、あたし達が何とか食い止めるよ!!」

 

「キャロ、フィルさん、お願いします」

 

「フィル、あなたに賭けるわ。私はスバル達を援護するね」

 

「みんな……頼むぞ……。だけど、俺とキャロの周りから離れないでくれ」

 

 

転移の効果範囲はそう広くない。

なんとかして、相手に気づかれずにやらないと―――――。

 

 

「……だったら、あたし達全員でプロテクションを張るから、その間に済ませて」

 

「ティア、すまない」

 

「フィル、今はあんたの策に賭けるしかないでしょう。あんたは余計なことを考えないで集中して!!」

 

「わかった……。その前にヴィータ副隊長聞こえますか。こちらスターズ5、フィル・グリード応答願います」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「なんだよフィル、どうしたんだ。こっちはガジェットの相手で手一杯なんだ」

 

 

フィルからの緊急通信が入るが、正直こっちはこいつらを撃退するので精一杯だ。

 

 

(時間がないんで簡潔に言います。現在レリックを狙う召喚師と召喚獣と地下で交戦中です。ただ、ここで戦うのはかなり不利なので、転移で場所を移動します)

 

 

なるほど、そういうことか―――――。

地上の方があたし達にとっても戦いやすいし、フォローにも回れる。

 

 

(わかった。だったら、あたしかリインのどっちかが降りた方がいいか?)

 

(そうしてもらえると助かります。副隊長達が空にいますと転移した時、投げ出される形になっちゃうのでリイン曹長かヴィータ副隊長のどちらか、ビルか地上に降りてもらえませんか)

 

「わかりました、私が近くのビルに行きますので、私の魔力を目印にしてください」

 

(すみませんリイン曹長)

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「これで転移が出来るぞ……。やるぞ、キャロ!!」

 

「はい!!」

 

 

俺はプリムと一緒にワープの術式を発動させ、キャロもブーストの準備に取りかかった。

そしてティア達も全員で、俺たちの周囲にサークルプロテクションを張り、攻撃に備える。

 

 

「ケリュケイオン!!」

 

《Boost Up Magic Power》

 

「我が乞うは、強き魔力……」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「ルールー……。あれってもしかして!?」

 

「……増幅魔法。ブースト……」

 

「へっ!! 何するか知らねえが、バリアごとぶち抜いてやる。くらえ!!」

 

 

炎の球は俺たちに一直線に向かってくる。

 

 

「「「「うわぁぁぁぁ!!」」」」

 

 

何とか持ちこたえたが、何度も喰らうとプロテクションが持たない。

 

 

「フィル、キャロ。まだなの!!」

 

「……気高き戦士に……さらなる力を……」

 

 

キャロの詠唱が終わると、魔法陣が強く輝き、キャロの両手に力が集められた。

 

 

「ブーストアップ、パワーインジェクト!!」

 

 

キャロの魔力増幅を受けとると、全身に魔力がみなぎり、広範囲のワープが出来るようになる。

 

 

「みんなつかまれ!!」

 

「うん!!」

 

「はい!!」

 

「ええ!!」

 

「分かりました!!」

 

「OKよフィル!!」

 

 

全員が効果範囲に入ったのを確認し―――――。

 

 

「全員つかまったな。いくぞ!!」

 

 

次の瞬間、俺たちの姿はこの場から完全に姿を消した。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「リイン、そっちはどうだ。フォワード達の反応はあったか!?」

 

「まだです。こっちには来てません!!」

 

 

フィルに言われてビルに来ていますけど、お願いです。無事でいてください……。

 

 

「フィル……。これは!!」

 

「どうしたリイン!!」

 

「転送反応あり!! フォワードのみんなです!!」

 

「本当か!!」

 

 

次の瞬間、白色の魔力球に包まれたフィル達が現れた。

転移が成功したんですね。

 

 

「フィル、無事だったんですね!!」

 

「ティアナ達も無事みたいだな」

 

『はい!!』

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「……逃がさない」

 

 

合流できたのも束の間―――――。

紫色の転送用魔法陣が現れ、ルーテシアとアギト、そしてガリューが出現した。

 

 

「……どうやら、戦うしかないな。だがな、さっきみたいに行くと思うなよ。みんないいな!!」

 

『おう!!』

 

「フォワード陣とギンガはフィルの指示に従って動け。あたし達はあの召喚獣を何とかする。お前達は召喚師をなんとか押さえろ!!」

 

『はい!!』

 

「散れ!!」

 

 

ヴィータ副隊長の合図で、副隊長達は召還獣に、俺たちはルーテシアに攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「ふっとべぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

あたしの一撃は完全に捕らえたかと思われたが、召還獣がベルカ式の魔法陣を展開し防がれてしまった。

 

 

「くっ!! こいつ!!」

 

《この程度の攻撃で、やられる俺と思うな……》

 

「こいつしゃべれるのか!?」

 

 

召喚獣ってやつは、自分の意志を持っていたとしても言葉を発する事は少ない。

ってことは、こいつはかなりの力を持ってるのか!?

 

 

《俺は巫女を……ルーテシアを守るために存在する。そう簡単にやられるわけにはいかん》

 

「そうかよ……。だったらこれならどうだ!!」

 

《!!》

 

 

あたしは自分の周りに幾つもの鉄球を出現させた。

シュヴァルベフリーゲン―――――。

 

通常ならグラーフアイゼンで撃ち出さなくてはならない。

 

だけどな……。

 

 

《無駄だ……。お前は古代ベルカの騎士みたいだが、察するにその鉄球は単体では威力はないはず……。打ち出す時間など与えん!!》

 

「……はん!! 言ったろ。ベルカの騎士を甘く見るなって……。こいつは、こういう使いかたもあるんだ!!」

 

 

 

合図と同時に、鉄球は一斉に召還獣に放たれる。

アイゼンでぶっ叩いてないから、威力は100%じゃないけど……。

 

 

《くっ……だが、この程度ではやられん》

 

 

確かにこの鉄球は足止め程度にはなっているが、倒すほどの威力はない……。

 

 

「何度も言わせんじゃねえ!! あたしをなめんなよ。こいつが本命だ!!」

 

 

アイゼンをギガントフォームにスイッチし、フルパワーで思いっきりフルスイングでぶっ叩いた。

 

 

「ふっとびやがれ!!」

 

《しまっ……》

 

 

召喚獣も気づいたが、時すでに遅し。

ギガントフォームの一撃が、決まり近くのビルに叩きつけられていた。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

副隊長達が召喚獣と戦っている時、あたしたちもルーテシアとアギト、そしてルーテシアの召喚した新たな召喚虫と戦っていた。

 

 

「なんなの!! このデカブツは!!」

 

「気をつけろ!! こいつは重力で相手をつぶすだけでなく、放電能力もある。そいつを喰らったらバリアジャケットがあっても、しばらく動けないぞ!!」

 

「分かってるわよ!!」

 

 

フィルから事前に、こいつらのことは聞いているけど、実際に遭遇するとやっぱりやっかいよね。

副隊長達があっちを押さえてくれているから、こいつだけですんでいるけど……。

 

 

「ティア、呑まれるな。召喚虫が厄介と言っても、俺たちで何とかなる奴だ。それにルーテシアを押さえれば……」

 

「……そうね。あいつは自立行動は出来なそうだから、召喚師を押さえればどうにかなるわ。あとはあの融合騎ね……」

 

 

召喚師さえ押さえてしまえば、あのデカブツは力を発揮することが出来なくなる。

 

 

「フィル、あの融合騎はあたしが何とかするから、あんたとスバルで召喚虫のほうを押さえて!!」

 

「分かった。お前のサポートはギンガさんに任せる。頼むぞティア!!」

 

「あんたの方こそ、ドジ踏むんじゃないわよ!!」

 

「確かにな……。行くぞ、スバル!!」

 

「うん!!」

 

「ギンガさんは、あたしのサポートをお願いします。……散って!!」

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

ティアの合図を切欠に俺たちはそれぞれの相手に向かっていった。

俺とスバルは地雷王に、ティアとギンガさんはアギトに……。

 

 

 

「スバル、俺がシューターであいつを攪乱するから、お前はその隙を突いてディバインバスターを叩き込め!!」

 

「でも、あいつかなり身体が硬いよ。普通に撃ち込んでも……。それに、電撃で迂闊には打ち込めない!!」

 

「それについては俺に考えがある。俺を信じてくれ」

 

 

うまくいくかどうか分からないけど、やってみる価値はある。

 

 

「……分かった。今はフィルの作戦を信じるよ」

 

「任せなって………プリム、カートリッジロード」

 

《了解です》

 

 

カートリッジを2発ロードし、俺はスフィアを展開する。

 

 

「うそ!? そのスフィアの数!!」

 

 

スバルは驚いているが、たがが16個のスフィアにすぎない。

現になのはさんなんて、この倍以上のスフィアを自在に操ってるんだぞ。

 

 

「……言ったと思うが、未来ではこのくらいのことは当たり前にしてたんだ。それになのはさんなら、この位あっさりやるぞ……」

 

「そ、そりゃそうだけど……」

 

「とにかく、あいつの動きが止まったら全力でぶちかませ。いいか、チャンスは一回だぞ」

 

「分かったよ、フィル」

 

「……いくぜ、ブラストシューター!!」

 

 

一斉に放たれたスフィアは、地雷王の周りを攪乱するが、攻撃は一つも当たっていない。

だが、これがこっちの狙いなんだ―――――。

 

 

《ウォォォォォン……》

 

 

「よし……奴さん。俺に集中してきたな」

 

《ええ……地雷王はスフィアしか見ていませんね。シューターが、かなりイライラするみたいですね》

 

「ルーテシアも地雷王を信じて、何かをする様子は見られないな。だがな、ブラストシューターは、攻撃用に撃ったんじゃない。こいつはあくまで囮だ」

 

 

そう、スフィアはあくまで囮、こいつで攻撃したって、ダメージは与えられないのは充分分かってる。

 

 

《でも、それも限界ですね。これ以上は危険です》

 

「分かっている……。本命はこれからだ。やれ、キャロ!!」

 

「はい!! 錬鉄召喚、アルケミックチェーン!!」

 

 

地雷王の足下に魔法陣が展開され、周囲から拘束用の鎖が召喚され、全身を捕縛する。

地雷王が暴れて鎖を引きちぎろうとするが、鎖はびくともしない。

 

おまけにこいつは鋼鉄の鎖だ。

地雷王が電撃を出してもアースの役割で、全部地面に吸い込ませられる。

 

 

《ウォ……ウォォォォン!!》

 

「地雷王!! ……くっ!!」

 

「おっと……そうはさせないぜ。ルーテシア、お前の相手は俺がする」

 

「フィル……グリード……」

 

 

牽制用のバレットはギリギリでかわされてしまったが、動きを止めることは出来た。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

「スバル、キャロが動きを止めているうちにやれ!!」

 

「オッケー!! 行くよマッハキャリバー!!」

 

《了解です。ウイングロード展開》

 

「一撃……必倒……ディバイン……」

 

 

こいつを昏倒させるには、普通に撃っても効かない。

眉間に……それもゼロ距離で撃つしかない!!

 

 

「スバル!! 無茶だ!!」

 

「フィル、あたしを信じて!! 絶対に決めるから!!」

 

 

そう、この位出来なきゃ、これから先は戦っていけない。

絶対に決める!!

 

 

「バスター!!」

 

 

《グォォォォォォン!!》

 

 

ディバインバスターは、地雷王の眉間に正確にヒットし、意識を刈り取った。

 

 

「やった!! ってうわぁぁぁ!!」

 

「スバル!!」

 

 

ディバインバスターを命中させたはいいがバランスを崩してしまった。

 

 

《sonic move》

 

「きゃぁぁぁ!! ……ってフィル?」

 

 

バランスを崩して、地面に激突する寸前フィルが高速移動で助けてくれた。

 

 

「ったく、お前って奴は本当に後先考えないな。攻撃に全てを使っちまったら、ああなるに決まっているだろ」

 

「えへへ、ごめん。だけど今のあたしにはあれしか通じそうになかったから。それにフィルがいたからフォローはしてくれるっておもったんだ」

 

 

実際ソニックムーブで助けてくれたしね。

でもフィルがいなかったら、もっと安全策でいったよ。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「確かに全力でぶちかませって言ったのは俺だからな。ああなるとは予測してたけどな……」

 

「本当は助けてもらってばかりじゃいけないんだけどね。だけどフィルがいるって思うとあたし達は全力で戦えるんだよ」

 

「……だったら、もう少し配分を考えて戦え。そんなんじゃすぐ倒れちまうぞ」

 

 

ペース配分が出来なきゃ、長期戦なんて出来ないぞ。

スバルの良いところは真っ直ぐな所なんだけど、こういうときは弱点にもなりかねないからな。

 

 

「うん、そうだね。戦いはこれで終わる訳じゃないんだからね」

 

「ああ、地雷王は押さえたが、まだ……」

 

 

そう、召喚師であるルーテシアを押さえなくちゃ意味がない。

スバルはさっきのディバインバスターで殆ど余力が残ってないし、キャロもさっきのブーストとアルケミックチェーンで、相当の負担がかかってしまった。

 

 

 

「地雷王……戻って……」

 

 

 

どうやら地雷王は、送喚したみたいだな。

あとはルーテシアを止めるだけだな。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「地雷王!! ちっくしょう!! やりやがったな、あいつら!!」

 

「あんたもいい加減に観念しなさい。あたし達をなめすぎたのが、あんた達の敗因よ!!」

 

「うるせぇ、まだあたしは負けてねえ!! これでもくらいやがれ!!」

 

 

なに、あのでかい魔力球は……。

大きさから推測して、くらったら間違いなくノックダウンされる。

 

 

まずいわね、あっちは空、こっちは地上。

迎撃しようにも、空戦が出来ないあたしじゃ……。

 

 

「ティアナ、ここは私に任せて」

 

「ギンガさん?」

 

「あれが発射されるには、少しタイムラグがあるわ。あたしが囮になる」

 

「でも、ウイングロードじゃ気づかれてしまいますよ」

 

 

ウイングロードでは、空中に道を作る必要があるし、第一それを許してくれるとは思わない。

 

 

「だから、貴女の幻術が必要なのよ」

 

「そういうことですね……。分かりました、やってみます!!」

 

 

ギンガさんの考えてることが分かり、あたしはすぐに実行に移る。

 

 

「頼むわよティアナ。じゃ……」

 

「ええ……」

 

「「GO!!」」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「へっ!! 何小細工しようといてるか知らねえが、こいつでまとめてぶっ飛びやがれ!!」

 

「これでも喰らいなさい!!」

 

「そんなへなちょこ弾に当たるかよ!!」

 

 

そんな攻撃に当たってたまるかよ!!

こいつの攻撃はおとりだ。

 

 

こいつらの本命は……。

 

 

「反対側にいるてめえの方だ!! くらえ!! 轟炎!!」

 

 

こいつを倒しちまえば、あのオレンジ髪の奴なんて大したことない。

 

 

「……ふっ、甘いわね」

 

「う、嘘だろ!! 受け止めやがった!!」

 

 

あたしの最大攻撃魔法をうけとめやがった―――――。

こっちはフルパワーでやってるのに!!

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「ギンガさん、もう少しだけ頑張ってください……」

 

 

あの融合騎はあたしが作った、シルエットあたしに気をとらわれている。

もっともあたしのシルエットのシューターに気づかれたら、それまでなんだけどね。

未熟なシルエットは、ギンガさんのフォローで何とかカバーできる。

 

 

「ここからが本番ね、クロスミラージュ!!」

 

《yes》

 

「距離はギリギリだけど、やってみせる!!」

 

「これくらいやらなきゃ、フィルと一緒には戦っていけない……」

 

 

今のあたしに使える最高の砲撃……。

なのはさんが教えてくれた、クロスファイアの最終形態。

 

 

《ティアナ、集中してください。スフィアは多く展開しなくていいですから》

 

「それは分かっているんだけど……」

 

《集束系は集中力が大事なんです。少ない魔力でも一点に集めれば破壊力は増します。フィルのブラストブレイザーと同じ原理です》

 

 

とはいっても、やっぱりきついわね。

なのはさんもフィルも本当にすごいわ。これだけの魔法を実戦で使いこなしてるんだから―――――。

 

 

―――――でもね。

 

 

「ランスターの弾丸に、貫けない物はないのよ!!」

 

 

次の瞬間スフィアは一点に集まり、一つの魔力球となった。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

(集束反応……ティアナね……。だったらこれで私の役目は終わりね。この魔力球も、ここで押さえておく必要はないわね)

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「まじかよ!! あれを蹴り飛ばしやがった!!」

 

 

あたしの轟炎を……。

非常識にもほどがある……。

 

 

「おい、逃げる気か!!」

 

 

おかしい?

 

あたしに攻撃をするわけでもなく……。

なんだこの反応は……魔力反応!?

 

 

まさか!! こいつらの狙いは!?

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「気づくのが、少し遅かったわね」

 

《集束完了、今です!!》

 

「いっけぇ!! クロスファイアシュート!!」

 

 

引き金を引かれたクロスファイアシュートは、一直線にターゲットに向かっていった。

 

 

「し、しまった!! かわせるか!!」

 

 

クロスファイアはギリギリでかわされてしまったが、リイン曹長が隙を突いてバインドをかけ、動きを封じることに成功した。

 

 

「「リイン曹長!!」」

 

「二人ともよく頑張りましたね。フィル、こっちも捕まえましたですよ」

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「アギトまで……」

 

「ルーテシア……」

 

 

俺が彼女の近くに行こうとすると……。

 

 

「来ないで!!」

 

 

召還された紫色のダガーが俺の右肩を貫く。

貫かれた痛みで、俺は意識が朦朧とし始める―――――。

 

 

アギト達が捕らえられて、我を忘れているな。

魔法が殺傷設定状態になっている。

 

 

「フィル!!」

 

《マスター!!》

 

「………く、来る、な。スバル」

 

「何言ってるのよ!! 相手はあんたを殺す気なのよ!!」

 

 

いつの間にかティアとギンガさんが合流していた。

どうやら、そっちはうまくいったみたいだな。

 

 

「ティア、ここは俺に任せてくれないか……。頼む……」

 

「フィル……」

 

 

未来では、この女の子を死なせてしまった。

この子は、俺がお世話になったあの人の子だったのに―――――。

 

 

今度は絶対に死なせない!!

 

 

―――――俺の命に代えてもだ!!

 

 

 

「分かった……。でも、死んだら許さない!!」

 

「すまん……」

 

「ティア!! どうして止めないの。このままじゃフィルは!!」

 

「スバル、いくら言っても無駄よ。ああなったフィルは止められないって、昔から知っているでしょう」

 

「……うん」

 

 

みんな、本当に済まない―――――。

俺のわがままを聞いてくれて……。

 

 

「今はフィルを信じましょう……」

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「ぐっ……ぐわぁ!!」

 

《マスター、これ以上は危険です!! 攻撃してください!!》

 

「駄目だ……」

 

《何でなんですか!! このままじゃマスターが死んでしまいます!! せめてプロテクションだけでも!!》

 

 

マスターの身体は、ダガーの攻撃で全身傷だらけです。

最も酷いのは、右肩と左足に刺さったダガーだ。

 

 

―――――もしかしたら、動脈も切っているかも知れない。

 

 

出血が全然収まりません!!

 

 

 

「駄目だ!! プリム、これは最初で最後のチャンスなんだ。ルーテシアに魔法の本当の怖さを教える……」

 

《どういうことですか……?》

 

「いいか、ルーテシアは母親を取り戻すためだけに、簡単に殺傷設定にしてしまっている。それではいつか本当に殺人鬼になってしまう」

 

《だからといって!!》

 

 

このままじゃ、マスターは本当に死んでしまいます!!

せめて治療魔法で傷を塞がないと―――――。

 

 

 

「未来で、キャロと同士討ちになったのは覚えているな。あのとき……キャロに殺傷設定の魔法を何発も使っていた。キャロは最後までルーテシアを信じ……攻撃を受けていた」

 

《!!》

 

「そして、キャロは最後の力で、何とか白天王を止めたけど……」

 

《そう……でしたね……》

 

 

 

キャロがしたのは、ヴォルテールで白天王と相打ちにすることでした。

二つの強大な召喚獣の力が激突して、二人とも助からなかったんです……。

 

 

 

「だから、ここでルーテシアに、人を傷つけることの怖さと命の重さを伝える……。殆ど賭だけどな……」

 

 

 

マスター……全くあなたって人は……。

 

 

 

《分かりました……でも、せめて右肩と左足の傷は私が治しますよ。そんな傷があったら伝える前にマスターが死んでしまいますから……》

 

「サンキュー……相棒……」

 

 

 

 

*      *      *

 

 

 

 

プリムに治療魔法を掛けてもらうと幾分か回復した。

右肩と左足の治療に集中したせいで、他の所は殆ど代わっていなかったが、大分ましになった。

 

 

「まだ……来るの……来ないでよ!! なんで、何で倒れないの!!」

 

「倒れるわけにはいかないんだよ……お前が……間違いに気づくまでな……」

 

「なんで……私……何、間違っているの。私はお母さんを助けたいだけなのに!!」

 

 

その思いは痛いほど分かる。

だからといって、人殺しの魔法を使って言い訳じゃない!!

 

 

 

「母親を助けたいからと言って、平気で人に殺傷設定の攻撃魔法を使うな!! それと召喚獣達にむやみな殺しをさせるんじゃない!!」

 

「違う!! ガリュー達にそんなことさせてない!!」

 

「ガリューはともかく、自立行動のとれない他の召喚獣達は、お前の行動一つで決定するんだぞ!!」

 

 

召喚獣は、召喚師の意志で行動が決定する。

 

 

「私、殺しなんてやってない!!」

 

「こっちを見てみろ、ルーテシア!!」

 

「……あ……あぁ……」

 

 

ルーテシアは、血だらけの俺を見て驚愕している。

出血多量で、意識を保つのも辛いけど、ここで倒れるわけにはいかない。

 

 

ルーテシアに人間としての感情を取り戻させるまでは―――――。

 

 

 

「ちゃんと見るんだ……。ルーテシア……・」

 

「私……何を……」

 

「いいか、お前の感情一つで簡単に人を殺せるんだぞ。お前の持っている力はそう言う物だ……」

 

「あ……あぁ……」

 

 

ルーテシアの奴、どうやら理性を取り戻してきたみたいだな。

混乱はしているが、今なら話も聞いてくれる……。

 

 

「あっ……」

 

 

俺は出来るだけ優しく彼女を抱きしめる。

これ以上責めるのは逆効果だから―――――。

 

 

「でもな……。お前がちゃんと気づいてくれれば、俺はそれでいい。お前はまだ、誰も殺していないんだからな」

 

「だけど……だけど、あなたが……」

 

「心配するな、死にはしないよ。この程度ならな」

 

 

こんな程度でくたばっていたら、未来では何十回って死んでいる。

 

 

「でも!!」

 

「だったら俺がちゃんと教えてやるよ。お前の力の正しい使い方を、そして……」

 

「何より、俺は……お前の友達になりたい」

 

「とも………だち……?」

 

「ああ、友達だ。今まで独りぼっちだったんだろ。母親がいなくなってから、ずっと……」

 

「……うん」

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

確かにアギトもガリューも、一緒にはいてくれたけど……。

 

 

「俺は……お前と友達になって、お前の笑顔を見たい。それじゃ駄目か……?」

 

「いいの……。私で……?」

 

 

本当に甘えていいの。私……。

この人は管理局の人なのに、だけどすごく暖かい物を感じる。

 

まるで……。

 

 

 

「ふぅ……お前の場合はこっちが待つよりも、多少強引にやった方がいいみたいだな。いいか、もうお前は俺の友達だ。お前が嫌わない限りな……」

 

「うん!!」

 

「良い笑顔だ。よろしくな、ルーテシア」

 

 

こうして抱きしめてもらっていると、なんか心が温かくなる。

何でだろ……不思議だな……。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

『フィル!!』

 

「フェ、フェイトさん!?」

 

 

いつの間にフェイトさんから通信が入ったんだ。

いったい、誰が?

 

 

『また、無茶やったの!! その傷だらけの身体はどういう事!?』

 

《聞いてくださいよ、フェイトさん。マスターったら、本当に無茶なことをして……》

 

「こらプリム、余計なことを言うんじゃない!!」

 

 

こんな事フェイトさんにばれたらどうなるか!!

案の定、画面のフェイトさんは笑顔なんだけど、目が笑ってない―――――。

 

 

 

『説明………してくれるんでしょうね』

 

「は、はい……」

 

 

俺はさっきまでのことをフェイトさんに報告する。

するとフェイトさんは……。

 

 

『……ば、か』

 

 

嗚咽をこらえながら……。

 

 

『どう、して……どうして、いつもいつも無茶ばかりする、の。本当に、心配したんだよ……』

 

 

通信はそこで切れてしまった。

 

 

俺は何も言えなかった。

なのはさんにも言われていたのに、好きな人を泣かして……。

 

 

 

「フィル、あんた、帰ったらフェイトさんにちゃんと謝りなさいよ。さっきだって、ブーストかけてのワープなんてやってるんだから……」

 

「……ああ」

 

 

 

ティアの言うとおりだ。

ちゃんと、フェイトさんに謝ろう。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

 

「おーい、お前ら無事か?」

 

「ヴィータ副隊長!! 無事だったんですね」

 

「あたしを誰だと思ってるんだ。ほれ、連れてきてやったぞ」

 

「ガリュー!!」

 

 

ヴィータ副隊長が連れてきたのはガリューだった。

傷だらけの戦士に、バインドを掛ける真似はしなかった。

 

 

『ルーテシア、無事か』

 

「うん、ガリュー……ごめんね。私が無理を言ったから」

 

『気にするな。それと良かったな……』

 

「えっ?」

 

『リンクでお前の気持ちが伝わってきた。良き仲間が出来たみたいだな……』

 

「うん……」

 

『仲間を……友を大切にな……』

 

「ありがとうガリュー……ガリューも傷だらけだよ。戻って傷を癒して……」

 

『そうさせてもらう……。また、必要な時は呼んでくれ』

 

「うん……」

 

 

ガリューはルーテシアが送喚用の魔法陣を作るとそこに入っていった。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「さてと、こっちは何とかなったけど……」

 

「なのはさんとフェイトさんは、さっきの通信でもう片が付いて、こっちに向かっているって聞いたけど……」

 

「それでもかなりの距離だからな。しばらくは掛かるだろうな」

 

 

ここから、フェイトさん達がいるところまでは結構距離がある。

戻ってくるまで時間がかかる。

 

 

「はやての方も、ガジェットが幻術と実機で多数出現したけど、そろそろカタが付きそうだしな」

 

「でも、フィル。あんた本当に大丈夫なの? その傷……」

 

 

今、俺はキャロとルーテシアに治療魔法をかけてもらっている。

ルーテシアが自分のせいでこうなってしまったんだからといって、治療魔法をかけてくれていたんだけど、

途中からキャロも一緒にかけてくれた。

 

キャロ曰く、この傷は二人でかけても、この場では完全には回復しないとのことだ。

 

 

 

「大丈夫だ。キャロとルーテシアにやってもらったからな。かなり楽になったよ」

 

「本当にごめんなさい……。私のせいで……」

 

「ルーテシア、もう気にするな。ほら、そんな泣き顔じゃなくて笑顔の方が良いぞ。俺は大丈夫だから……」

 

 

そんな泣きそうな顔だと、こっちも辛い。

女の子は笑顔の方が良いんだからな―――――。

 

 

「うん……」

 

 

まぁ、気にするなと言っても、なかなか厳しいかな。

でも、無理した甲斐はあった。

 

エリオにキャロ……そしてルーテシア……。

これで3人を、あんな形で戦わせなくてすむんだから……。

 

 

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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