魔法少女リリカルなのはStrikerS ~ Remember my heart ~   作:アルフォンス

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第11話 機動六課のある休日(前編)

「はぁ………はぁ……やっぱりきつい………」

 

「そうね……はぁ……はぁ……」

 

「はぁ……はぁ……何か今日は特にそうでしたね……。はぁ…はぁ……」

 

「はぁ……本当に……はぁ……」

 

「あぁ………」

 

「……あ……あんた……。どうしてそんなにタフなの?」

 

 

フィルは、あの翌日からメニューが更にきつい物になっている。

基礎訓練だけじゃなく、魔力強化に関するメニューも組まれていた。

 

これはなのはが、フィルのためにメニューを考えてくれたものだった。

そのおかげで、フィルも効率よく訓練が出来ている。

 

 

「はい、今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様。でね、なにげに今日の模擬戦が第2段階クリアの見極めテストだったんだけど………どうでした。フェイト隊長、ヴィータ副隊長?」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

「合格」

 

「「はや!!」」

 

「まっ……。こんだけみっちりやってて、問題あるようなら大変だってことだ」

 

「「はははっ……」」

 

 

エリオもキャロも、ヴィータの言葉に苦笑いしか出なかった。

でも、みんな頑張ったよ―――――。

 

 

「わたしもみんな良い線いってると思うし……じゃ、これにて2段階終了!!」

 

「「「「やったっっっ!!」」」」

 

「……ふぅ、ようやく2段階目が終わったか……」

 

 

フィル、今は焦らなくても良いよ。

スカリエッティとの決戦までには、全員もっと強くするからね―――――。

 

 

 

「デバイスリミッターも一段階解除するから、後でシャーリーの所に行って来てね」

 

「明日から、セカンドモードを基本形にして訓練すっからな」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「明日から……ですか?」

 

「ああ、訓練再開は明日からだ」

 

「今日私達も、隊舎に待機する予定だし……」

 

「みんな入隊日から、ずっと訓練漬けだったしね……」

 

 

フォワード陣はここまで、きつい訓練で疲労がたまっている。

そろそろティアナ達も、リフレッシュさせてあげなきゃね。

 

 

「まっ……そんな訳で……」

 

「今日はみんな一日お休みです。街にでも出て遊んでくると良いよ」

 

「「「「わ~い」」」」

 

 

みんな休暇をもらってすごく喜んでいる。

一日しかあげられないけど、ゆっくりしてきてね。

 

でも、次のなのはの言葉は―――――。

 

 

「………それで、申し訳ないんだけど、フィルは……」

 

「「「「えっ……?」」」」

 

「……ごめんなさい。わたしたちと一緒に、隊舎待機でお願い」

 

 

なのはは本当に申し訳なそうな表情をしてフィルに伝える。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってなのは!! フォワードの中で一番休ませなきゃいけないのはフィルだよ。それなのに!?」

 

 

フィルは朝から夜までの訓練だけでなく、シャーリー達とも一緒に仕事している。

誰が見ても、明らかにオーバーワークだ。

 

 

 

「フェイト隊長。わたしだってフィルを休ませてあげたいよ。でもね、これはフィルが言ってきたの。やることが多いから時間が欲しいって……」

 

「なのはさん、それは!?」

 

「どういうことなのかな……。フィル……」

 

 

まだ、他にも私に隠し事してるのかな―――――。

 

 

「ちょ……ちょっと、フェイト……さん」

 

「………言ったよね。一人で抱え込まないでって………」

 

「でも、これは俺の仕事だから……。フェイトさんやティア達のデバイスのサポートは」

 

 

でも、それでフィルが倒れたら意味がないよ―――――。

 

 

それとも………。

 

 

また、自分なんていなくても同じなんて、言うんじゃないんでしょうね!!

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

ヤバイ、フェイトさんの雰囲気がいつもと違う。

笑顔なんだけど、目が笑ってない……。

 

 

しかも、何だこのプレッシャーは……。

 

 

あの時のなのはさんに匹敵する物を感じるぞ。

 

 

 

「エ、エリオくん……。フェイトさんが物凄く怖い……」

 

「う、うん……。僕も、あんなフェイトさん見たことがない」

 

「テ、ティア!?」

 

「言わないで……。今のフェイトさんから感じるプレッシャーは、あの時のなのはさん以上だから……」

 

 

 

お前ら、他人事だと思って言いたいこと言ってくれるな。

フェイトさん……マジで怒ってるし……。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「………こうなったら、誰かが一緒に付き添って、強制的に休みを取らせた方が良いね」

 

「なのは?」

 

「フェイト隊長。八神部隊長にはわたしとヴィータ副隊長が言っておくから、フィルを連れてどっか息抜きに行ってきて」

 

「なのは、本当にいいの? そんなことをして……」

 

「心配ないよ。このまま、フィルに無茶させて倒れられた方が、今後に支障が出てきちゃうよ。そ・れ・に」

 

 

次の瞬間、なのはから、念話でとんでもないことを言われることになる。

 

 

(せっかく恋人同士になったんだから、一緒に出かけてフィルに甘えてきたら)

 

(な、なのは!? どうしてそれを!!)

 

(にゃははは。やっぱりね。もしかしてって思ったんだけど、フェイトちゃん、最近良い表情するようになったもん。わたしの感を見くびってもらっては困るよ♪)

 

 

 

―――――降参です。

私ってそんなに分かりやすかったのかな……。

 

 

 

「おい、なのは、フェイト。何さっきからコソコソ話してるんだよ?」

 

「ごめんねヴィータちゃん。実は……」

 

「わぁぁぁぁ!! ちょっと待ってなのは!!」

 

 

お願いだからこれ以上、誰かにフィルとのことを広めないで!!

 

 

「……どうせフィルのことだろ。六課はあたし達に任せて、フィルとどっかに行ってこい。帰りにアイスでも買ってきてくれればいいからよ」

 

「……も、もしかして、私とフィルの事って、みんな……」

 

「今の所、はやてちゃんの所まで入ってないみたいだよ。でも知ったら、六課中お祭り騒ぎになっちゃうよ」

 

「はやては大丈夫だけど、シャーリーやアルトに知れたら、面白可笑しくしそうだしな」

 

 

ヴィータの言うとおり、はやてだったら大丈夫。

でも、シャーリーとアルトまでが知ったら……。

 

フィルもあの二人には知られたくないって言ってたし……。

 

 

「……否定できない……かも」

 

「その話はひとまず置いといて、フィル」

 

「は、はい!!」

 

「機動六課スターズ隊長として命令します。フィル・グリード二等陸士、現時刻をもって強制休暇を命じます。以降こちらからの指示があるまで仕事復帰は許しません」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!! まだやり残したことがたくさんあるんですよ。そんな時間は……」

 

 

すると、なのはが私とフィルを手招きして、その後、フィルの近くに来て耳元で話し始めた。

 

 

(あのね、ちょっとは休まないと身体持たないよ。そんなんじゃフェイトちゃんだって、気が気でしょうがないよ)

 

(な、何でフェイトさんの名前が出るんですか……!?)

 

(隠さなくても良いよ。付き合っているんでしょう、フィルとフェイトちゃん)

 

(………な、何のことでしょう!?)

 

 

フィルが必死でポーカーフェイスで隠そうとしていたが―――――。

 

 

(往生際が悪いよフィル。答えるまでにそれだけの間があったんじゃ、自分で白状しているのと同じだよ)

 

(……俺、ポーカーフェイス、そんなに下手ですか?)

 

 

いや、普段のポーカーフェイスはかなり上手いよ。

ずっと未来でのことを隠してきたんだから―――――。

 

 

(まぁまぁ、せっかくだからフェイトちゃんと一緒に、気分転換でもしてきてね。もし隠れて仕事していたら、シャーリー達にフェイトちゃんとのことを言うからね)

 

(それだけは勘弁してください!! わかりました。それじゃ遠慮無く休ませてもらいます)

 

(うん、フェイトちゃんのことよろしくね。最近スカリエッティのことを調べていて全く休んでいないから)

 

(フェイトさんもクロノ提督と一緒で、ワーカーホリックな所ありますからね)

 

(そういうこと)

 

 

 

フィルにだけはワーカーホリックって言われたくないよ。

この六課で、一番オーバーワークなのに―――――。

 

 

 

「おい、なのは。そろそろ終わりにしようぜ。新人達に休みをやれなくなっちまうだろ」

 

「そうだね。今日はみんな一日お休みです。街にでも出て遊んでくると良いよ」

 

「「「「わ~い」」」」

 

「じゃ、今日はこれで終了。解散です」

 

「「「「「はい、お疲れ様でした」」」」」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

「それにしても、まさかあんな形で休暇を取らされるとは……」

 

《マスターは少し休んだ方が良いですよ。ずっと走りっぱなしじゃ、いつか息切れしてしまいますよ》

 

「それは、そうなんだが……」

 

《デバイスのことはシャーリーさんに任せておけばいいですよ。フェイトさんが怒りのオーラをまとってシャーリーさんに言いに行ってましたから。正直あれは怖いです……》

 

「あ、あはは……。シャーリーさん。ご愁傷様です」

 

 

さっきのあれは、本当にシャレにならなかったぞ。

あれはなのはさんのプレッシャーよりきつかったぞ。

 

普段穏やかな人なだけあって怒るとすっごく怖い。

今頃シャーリーさん。フェイトさんに怒られているんだろうな。

 

 

教訓:フェイトさんを本気で怒らせてはいけない……。

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

「シャーリー……」

 

「どうし……たん……ですか? フェイトさん」

 

「デバイスのこと……。フィルに任せきりになっていたって本当なの?」

 

「え……えっと……。それは……」

 

 

やっばい。フェイトさん滅茶苦茶怒っている。

考えてみたらティアナ達のデバイスのことも、なのはさん達のフルドライブに関しても、フィルに任せきりにしちゃっていた。

 

だって、こっちが考えたことよりフィルのプランの方が、色んなところで良い点が多かったんだもん。

 

 

「シャーリー、フィルにデバイスのことで聞くのは良いけど、任せきりにしているのは駄目だよ。あくまでもフィルはフォワードなんだからね」

 

「それは分かってます……」

 

 

今のフェイトさんは、下手なごまかしは言えない。

明らかに目が据わってるし―――――。

もし、ごまかしなんか言ったら、ティアナみたいに頭を冷やされてしまう。

 

比喩じゃなくて、今のフェイトさんなら本当にやる。

 

 

「それに六課のデバイスマイスターはシャーリーなんだからね。基礎設計は完成しているんだから、ここからはシャーリー達が中心になってやっていくことだよ」

 

「はい、すみませんでした……」

 

「私からはこれ以上言わないけど、フィルの負担を出来るだけ減らしてあげてね」

 

 

そういってフェイトさんは部屋から出て行ったが、あんなフェイトさんは見たことがなかった。

怒鳴りはしなかったけど、ものすごく怒っているのは雰囲気だけで分かった。

 

でも、最近フェイトさんも変わったかも―――――。

 

ちょっと前までは、あんなに自分を出す人じゃなかったのに。

 

 

「……確かに最近、フィルに頼ってばかりだったかも……」

 

「お邪魔するですよ~」

 

「リイン曹長」

 

「どうしたんですかシャーリー。何かあったんですか」

 

「さっきフェイトさんに怒られてしまいまして。最近フィルに頼りすぎだって」

 

 

 

実際、フィルにはかなり甘えていた。

訓練が終わった後に、深夜までプランを一緒に考えてもらったりしてたし―――――。

 

 

 

「……確かに、フィルはなのはさんとの訓練とデバイスプランを、同時進行でやってましたから」

 

「リイン曹長。私ちょっとフィルに甘えすぎていました。だからこれ以降のことは、私たちロングアーチの総力をあげて完成させて見せます!!」

 

「そうですね。明日から四機の調整で慌ただしくなりますし、今の内になのはさんとレイジングハートの限定解除モード【エクシードモード】の最終調整もしておきたい所です」

 

「バルディッシュさんのザンバーもですけどね」

 

「あっ、リイン曹長もそろそろ完全チェックをしておきましょうか」

 

「そうですね。お願いするです」

 

 

そう、ちゃんとメンテナンスをしておかないと、いざというときに動けないなんて言うこともありえます。

そんなことは、絶対にさけなくてはならない。

 

 

「最近は、どなたともユニゾンされてないですね」

 

「ですね。はやてちゃんはもちろん、シグナムもヴィータちゃんも、私を使う程の状況にならないですし……」

 

「それ自体は、良いことなんですけどね」

 

「でもいざというときに働けなくては、祝福の風リインフォースの名が泣きますから、それに……」

 

「これ以上フィルの負担にはなりたくないですから、私と蒼天の書のメンテナンス、よろしくですよシャーリー」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

俺が自分の部屋でのんびりしていると、フェイトさんが入ってきた。

実は、あの日以来、フェイトさんは俺の部屋に来ることが多い。

 

これだけ頻繁に俺の部屋に来たりしていたら、バレても不思議じゃないよな―――――。

 

 

 

「ねぇ、フィル。ロードサンダーのテストってこれからなんだよね?」

 

「うん、慣らし運転もまだしてないんだ」

 

「そ、それでなんだけど……。あ、あのね……」

 

「どうしたの? フェイトさん」

 

「よ、よかったら私を一緒に、乗せてくれないかな……。だ、だめかな……」

 

 

言い終わったフェイトさんは、真っ赤になってうつむいてしまった。

こんなことで遠慮なんか欲しくないんだけどな……。

 

 

「良いよ。せっかくだから、俺のとっておきの場所にでも行ってみる?」

 

「でも、本当にいいの? 私を乗せたりして……」

 

「………好きな人が出来たら、一緒にツーリングしてみたいって……ずっと思っていた」

 

 

 

未来では、そんなことは絶対に出来ないって思っていたささやかな幸せ―――――。

 

 

 

「……フィル」

 

「……ははっ、駄目だな。最近……どうも感傷に浸りやすくなっちゃってるな」

 

 

 

ちょっと前までは、こんなことなかったんだけどな。

やっぱり、弱くなったのかな……。

 

そう思っていたら、後ろからそっと抱きしめられ……。

 

 

 

「フィル……そんな風に気を張ってばかりじゃ、私も……つらいよ……」

 

「フェイトさん……」

 

 

 

俺たちはどちらからともなく、顔を寄せてキスをする。

やがて深いキスとなり、互いに受け入れ、何度も求め合う―――――。

 

 

 

「やっぱり……ちょっと恥ずかしいね……」

 

「でも、すごくフェイトさんを感じられる……。そんな感じがする……」

 

 

 

こうして抱き合っていると、心までつながっている気がする。

人の温もりって、こんなにも暖かい物だったんだな。

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

「さてと、ガレージからサンダーを持ってくるか」

 

「フィルのロードサンダーって、確か、AIが付いているんだよね?」

 

「今回のプランでどうしても必要になってね。でもマリーさん達、かなりハイテンションになっていたからな……」

 

 

サンダーを弄ってるときのマリーさん達、明らかに悪のりしてたし―――――。

ほ、本当に大丈夫なんだろうな!?

 

 

「確か、ティアナ達のデバイスもマリーさんの所に行った時に、基礎設計をしていたんだよね」

 

「クロスミラージュは俺のプリムを参考にして設計したから、さほど時間がかからなかったけど、他のデバイス、特にスバルのマッハキャリバーは途中で頓挫していたからな」

 

 

スバルの魔法は、感覚で作ってるから、俺だけの力じゃ作ることができなかったんだ。

 

 

「さらに未完成だった私たちのフルドライブまで……。本当にごめんね……」

 

「謝らないで……。そう思うなら、無茶しないようにしてくれればいいから……」

 

 

みんなの負担を少なくするために俺はやってるんだから―――――。

 

それに……。

 

これくらいしか俺には出来ないから―――――。

 

 

「うん……」

 

「仕事の話はこれまでにしようか。ちょっと取ってくるから……」

 

「それじゃ、私もエリオ達の準備を手伝ってくるね」

 

 

俺はガレージにあるロードサンダーを取りに行った。

フェイトさんも、エリオとキャロの支度を手伝ってから合流することになった。

 

 

 

*    *    *

 

 

 

「よっフィル、どっか出掛けるのか?」

 

「ヴァイス陸曹、脅かさないで下さいよ」

 

「わりぃ、わりぃ」

 

「で、何のようですか。ただ世間話をしに来た訳じゃないでしょう」

 

「……お見通しかよ。最近お前らの訓練を見たりするんだけどよ。ティアナの奴、いい動きをするようになったじゃないか。以前はシングルでも何でも動きが同じだったけど、最近は臨機応変に動けてきている気がするぜ……。お前が色々やったおかげかもな」

 

 

あの日以降、俺のことは機動六課の全員が知ることになった。

なのはさん達に言ったのだから、別に隠すつもりはないが、あっという間に広まるとは思わなかった。

 

 

「切欠にはなってるかもしませんが、ティア自身が吹っ切れたんじゃないですか? 今はチームリーダーとして色々みんなのことも見れるようになりましたし……」

 

「ったく、本当はお前の方が強いくせによ……。あの時のなのはさんに、正面から思いをぶつけたんだからな……」

 

「それは、もう言わないでくださいよ……」

 

 

今思えば、我ながら馬鹿をやったよ。

もっと、考えて行動すればよかった――――。

 

 

「とにかくお前は今じゃ六課の中心的人物なんだからな。しっかり休んでリフレッシュしてこい。ここんとこロクに休んでないだろ」

 

「な、何のことでしょうか?」

 

 

俺が視線をそらすと、ヴァイス陸曹はさっきとは違い真剣な表情で―――――。

 

 

「誤魔化すな。大方シャーリーが無理言ってきたんだろうが、あんまり自分に抱え込むなよ。フェイトさんすごく心配してたんだからな……」

 

「………本当に、フェイトさんには心配かけっぱなしなんですよね」

 

「そう思うなら、フェイトさんには悩みとかを隠すなよ。女性に言えないことなら、俺やグリフィスだって良いんだからな」

 

 

ヴァイス陸曹、ありがとうございます。

その時は、遠慮無く相談させてもらいます―――――。

 

 

「そういえば、さっきティアナの奴が、俺の所にバイクを借りに来ていたぞ。あいつもスバルと出かけるらしいな」

 

「そうですか。ティアもスバルも、何も言ってなかったのにな……。俺って、のけ者になってるのかな?」

 

 

ヴァイス陸曹が、少しあきれた表情で……。

 

 

「そうじゃねえよ。もう少し、お前は女心を学んだ方が良いかもな……」

 

「えっ、どういうことですか?」

 

「それは自分で考えろよ。お前も出かけるんだろ。引き留めて悪かったな」

 

「いえ、それじゃ失礼します」

 

 

 

ヴァイス陸曹と別れ、急いで俺は隊舎玄関前に向かった。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

俺が隊舎前でフェイトさんを待っていると、なのはさんが見送りに来てくれた。

 

 

「なんか、すみません。俺のために、なのはさんやフェイトさんにまで迷惑をかける形になって……」

 

「その事は気にしなくて良いよ。さっきも言ったけど、ここでリフレッシュしてくれないと、六課全体の志気に関わってくるの。特にフェイトちゃんは、フィルに万一のことがあったらどうしようもなくなってしまうから………」

 

「そこまではどうかと……」

 

 

別に俺がいなくてもそこまで変化はしないだろう。

ティア達は立派なチームに成長してきてるし―――――。

 

 

すると、なのはさんは本気であきれた表情で―――――。

 

 

 

「はぁ……。フィル、本当に分かってない。今までなら大丈夫だったよ……。だけど、今は違う。人は大切な人がいる時はとても強くなれるんだけど、それを失ってしまうと、とたんに脆くなってしまう。それはフィルも経験していることでしょう」

 

「あっ……」

 

 

―――――そうだった。

 

 

この事は誰よりも理解している事じゃないか。

なのはさんが言うまで、何で気づかなったんだ。

 

 

 

「だから、フェイトちゃんの事を本当に好きなら、ちゃんと自分のことも気遣うこと。そうしないと共倒れだからね」

 

「なのはさん……」

 

「というわけで、なのはさんからのお話はこれでおしまい。もうすぐフェイトちゃんも来るしね……」

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

フィルと話してると、息を切らせながらフェイトちゃんがこっちにやってきた。

エリオとキャロを見送った後、急いで支度してきたんだね。

 

 

 

「フィル、ごめんね。待たせちゃって……。あれ、なのはどうしたの?」

 

「どうしたの?は無いんじゃない。わたしは二人の見送りに来たんだよ。ったくフェイトちゃん、最近わたしに冷たいよ~。やっぱ好きな人が出来ると、女同士の友情なんてこんな物なのかな~」

 

「な、なのは!?」

 

「ふふ、冗談だよ。せっかくなんだから楽しんできてね」

 

 

良い機会だから、フェイトちゃんも、しっかりとリフレッシュしてきてね。

これから、こうしてフィルといられる時間は中々出来ないと思うし―――――。

 

 

「うん、ありがとう。なのは」

 

《相棒、そろそろ私のことを紹介してくださいよ》

 

「えっ、バイクがしゃべった?」

 

 

ミッドのバイクとかには簡易AIは組み込んであるけど、ここまではっきりと意思があるなんて!?

 

 

「そういえば、まだなのはさんには言ってなかったですね。紹介します、もう一つの相棒【ロードサンダー】です」

 

《はじめまして、私がロードサンダーです。よろしくお願いします、高町一等空尉》

 

「そんなかしこまらなくても良いよ、よろしくねロードサンダー」

 

《そうですか。それでしたら遠慮無くさせてもらいますよ、なのはさん。いやぁ、どうも堅苦しくていけませんね。ちなみに私のことはサンダーと呼んでください!!》

 

「お前な……」

 

「あ、あはは……」

 

 

なんか砕けた性格なんだね、ロードサンダーって……。

でも、フィルの相棒には、これ位の方が良いのかも……。

 

 

 

《いいじゃないですか。私は相棒が認めている人達には、本音で話したいんですよ。最も、フェイトさんは相棒の大事な恋人でもありますけどね~》

 

「なっ!?」

 

《サンダー、その辺にしておいてくださいよ。この二人とってもウブですからね。うふふ……》

 

 

あの……。プリムにサンダー。

 

そのくらいにしておいた方が良いと思うよ。

フェイトちゃんもフィルも、顔が真っ赤になっちゃってるし―――――。

 

 

「そ、それじゃ行ってきます!! なんかあったらすぐに戻ってきますから」

 

「だから仕事のことは一旦忘れなさい。フェイトちゃん、フィルのことしっかり頼んだよ」

 

「まかせて、しっかりリフレッシュさせるからね」

 

《任せてください。相棒のことは私たちがしっかりと休ませますから》

 

 

フィルとフェイトちゃんはサンダーに乗り、エンジンをかけてタイヤをスピンさせながら出発した。

あーあ……。プリムもサンダーもからかいすぎだよ。

 

フィル、運転大丈夫かな?

 

 

 

 

 

*    *    * 

 

 

 

 

「フィル達行ったよ。ティアナ」

 

「……すみません、なのはさん」

 

 

フィル達がくる前にあたしは、スバルを待つためにここにいたんだけど、なのはさんが……。

 

 

『フィルとフェイトちゃんも、ここで待ち合わせをするみたいだから……』

 

 

そう言われて、あたしはなのはさんに頼んでここに隠れさせてもらっていた。

正直言って、今フィルにあうのは辛いから……。

 

 

「……なんかティアナには、辛い物を見せちゃったね」

 

「いえ、あたしがちゃんとフィルに告白しなかったのがいけないんです。それに……フィル、すごく良い表情してました。フィルのあんな表情見たことがなかった……」

 

「うん、それはフェイトちゃんも同じだよ。わたし達と一緒にいた時でもあんな顔は見たことがなかった」

 

「今のあたしじゃ、フィルの事を支えられないですから……」

 

 

今のフィルのことを支えてあげられるのは、フェイトさんしかいないと思う。

フィルがただ一人、自分の弱さを見せた女性だから―――――。

 

 

「ティアナ……」

 

「……あっ、そろそろスバルも来るみたいです」

 

「ごめ~んティア」

 

「ったく遅いわよ。あんたっていつもそうなんだから」

 

「だから、ごめんってば……」

 

 

あたし達はバイクに乗ってクラナガンに向かった。

いつかこの辛い気持ちも、良い思い出に変われる日が来るかな……。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

ー機動六課食堂ー

 

 

 

『以上、芸能ニュースでした。続いて政治経済です。昨日、ミッドチルダ管理局地上中央本部において、来年度の予算会議が行われました』

 

『当日は、首都防衛隊の代表、レジアス・ゲイズ中将による、管理局の防衛思想に関しての表明も行われました』

 

 

フィル達を見送った後、わたしははやてちゃんとフェイトちゃんをのぞいたメンバーでちょっと遅い朝食を取っていた。

 

何気なくテレビを見ていたんだけど、そんなとき画面は、体格の良い厳つい顔をした人の映像に切り替わっていた。

レジアス・ゲイズ中将である。

 

 

『魔法と技術の進歩と進化。素晴らしいものではある……が、しかし!! それが故に、我々を襲う危機や災害も、十年前とは比べ物にならない程に危険度を増している。進化する世界の平穏を守るため、我々も本局の魔導師たちに負けじと、錬練し続ける事で対処してはきたが……。ついに、兵器運用の強化が必要な状況になってしまった。しかしこんなところで立ち止まるわけにはいかん!! 現状では首都防衛の手すら、未だ足りておらん。地上戦力においても、我々の要請が通りさえすれば、地上の犯罪も発生率で20%の減少、検挙率においては35%以上の増加を、初年度から見込む事が出来る………』

 

 

「このおっさんは、まだこんなこと言ってんのかよ……」

 

「レジアス中将は古くからの武闘派だからな。だがなヴィータ、言っていることは、あながち間違ってはいないぞ」

 

「何でだよ?」

 

「良いか。レジアス中将がここまで力を入れなかったら、首都のクラナガンでさえ、ロクな状態ではなかったはずだ。まぁ、いささかちょっと行き過ぎな面もあるがな……」

 

「……そうだね。わたし達なら、自分の身は自分で、ということも出来るけど……」

 

「そういうことだ。一般人では犯罪者に襲われたらひとたまりもない。フィルが経験してきた未来でもそうであったようにな」

 

「うん……」

 

 

あの時、フィルから見せられた映像にはクラナガンの人々の悲惨な記録も残されていた。

 

ガジェットから逃げまどう人々の姿。

 

治安が崩れた町では、数々の犯罪を繰り返していた。

 

中でもひどかったのは、女子供への性的犯罪。

魔力を持たない非力な子供や女性は、犯罪者の格好の的になっていた。

 

地上本部が消えて、犯罪者を取り締まる組織がいなくなったことで滅茶苦茶になっていた。

 

フィル達だけで対応なんて、絶対無理だった。

 

 

「まぁ、我々も今までは、お前と同じような考えをしていたがな。だがな、今後スカリエッティに対抗するには、地上本部と本当の意味で連携を取らなくてはならないんだ」

 

「そうだね……」

 

「そのことに関しては、主はやてに任せるしかないだろう」

 

「そうだぜ、後のことは、はやてがやってくれるって、あたし達は前線を守るのが仕事だしな」

 

 

そうなんだけどね。大丈夫かな、はやてちゃん一人で抱え込まなきゃいいんだけど……。

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

「う~ん。気持ちいいね~」

 

「ああ、車とはまた違った物があるしな」

 

 

俺たちは今、ミッドチルダ外れの山道を走っていた。

高速を走るのも良いが、偶にはこうやってツーリングするのも良い。

 

たださっきから、俺の背中にあたってる……その……胸が……。

ある意味、最大の試練かも……。

 

 

 

「私は車がメインだからね。一応、二輪の免許は持ってるんだけどね……」

 

「俺は逆にバイクがメインだからな。でも、偶には車も良いかなって思うんだ。フェイトさんの車、格好いいしね」

 

「だったら今度私の車を運転してみて良いよ。結構いじってるからちょっと癖あるけどね」

 

「俺もサンダーを運転させてあげたいんだけど、こいつが自分で認めないとな……」

 

 

そう、ロードサンダーはAIがあり自分の意志でドライバーを選ぶ。

今の所、俺とティアしか運転が出来ない。

 

 

《相棒、私はフェイトさんなら構いませんよ》

 

「サンダー?」

 

《フェイトさん、貴女は相棒を本当の意味で救ってくれた。プリムから聞きましたが、アグスタの後、貴女はティアナさん達のことを、ちゃんと見ていてくれていた……。そして……》

 

《何より、相棒が好きになった人です。それだったら私にとっても、大切な人です。だから遠慮しないで乗ってください》

 

「………ありがとう、ロードサンダー。とっても嬉しいよ」

 

《ただし、私に乗る以上全開で回せる腕がないといけませんよ。相棒もティアナさんも、全開でエンジンを回しますからね……》

 

 

確かに、俺もティアもエンジン全開で飛ばすことが多いな。

 

 

「……ふふっ、だったらその挑戦を受けて立っちゃおうかな。ちょっと変わってもらって良いかな、フィル」

 

「良いよ。フェイトさん、思いっきり回して構わないから……」

 

「楽しみだな。バイクを運転するのって久しぶりなんだ……」

 

 

俺は近くの路肩に停車して、フェイトさんと運転を代わることにした。

フェイトさんは俺と入れ替わると、ハンドルを握り、エンジンを勢いよく回し始める。

 

 

あ、あの……本当に久しぶりなんですか?

慣らしの仕方といい、ギアの入れ方といい、明らかに熟練者のものですけど……。

 

 

「さて、しっかりつかまっててよ!!」

 

「目的地はサンダーにインプットしているから、それに従っていけば迷わないから……」

 

「分かった。じゃ行こうか!!」

 

 

フェイトさんはサンダーのスロットルを全開にすると、ホイルスピンをさせながら発進した。

 

 

 

 

 

*    *    *

 

 

 

 

 

 

 

あたしとスバルはヴァイス陸曹にバイクを借りて、クラナガン中央部に来ていた。

ここに来るのもなんか久しぶりなのよね。

 

 

 

「なははっ、やっぱりここのアイスは見た目から素敵だ♪」

 

「本当にアイスが好きよね、あんたは」

 

「好き好き大好き~」

 

 

あたしはダブルで押さえたのだが、スバルのは七つも乗せている。

明らかに常識の範疇外でしょう、あれは……。

 

 

「さて、それじゃ……」

 

「「乾杯」」

 

 

アイスで乾杯ってのは何だが、まぁこれもあり……かな……。

 

 

「……はぁ……ひぃ……ふめたい……」

 

「スバル。そんなんじゃ、すぐになくなるわよ」

 

「平気平気。ねぇ、アイス食べ終わったら、ゲーセンでも行かない」

 

「いいわね。久しぶりね」

 

 

まぁ、今はこうやってスバルと一緒に楽しみますか。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「やれやれ、ひどい目にあったぜ。全くあんなに全開で走らなくても……」

 

「ごめんね。でも良いテストになったでしょう」

 

 

俺たちはクラナガンの外れにある海岸になってきていた。

シーズンオフということもあり、ここにいるのは俺たちくらいなものだった。

 

 

《相棒、私が愚かでした。女性だから大丈夫なんて思ってましたが、限界ギリまでブン回されるとは思っていませんでしたよ。考えてみればティアナさんもそうでしたね……》

 

 

まさかフェイトさんが、俺やティア以上に全開走行する人とは想わなかった。

あきらかに慣らしの運転じゃないぞ……。

 

 

「そういえば、フェイトさんの車ってスポーツカーだったよな。しかもミッドチルダで最高スペックの……おまけに値段も……」

 

《はっきり言って、あの車は町中で乗るには、明らかにハイスペックです。さらにエンジンからサスペンションに至るまでフルチューンしてますし、彼女はあれでサーキットでも走る気なんですか!!》

 

 

もしかしたらフェイトさんって、ハンドル握ると性格が変わるタイプなんじゃないか。

サンダーを運転してる時、普段の雰囲気とは全然違ったぞ。

 

 

「フィル、何してるの。早く行こう~」

 

「ああ、今行くから」

 

 

さて、せっかくの休みなんだ。ゆっくり羽を伸ばすとしますか。

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

「はい、どうぞ。時間がなかったから、こんな物しか作れなかったけど」

 

「そんなこと無いよ。本当にごめん、弁当まで作ってもらっちゃって……」

 

 

あの短時間でこれだけの弁当を作ってくるとは、やっぱりフェイトさん料理上手なんだな。

弁当の中身は、三種のサンドウィッチ(ツナ、玉子、ハムとチーズと高原野菜)

 

おかずは唐揚げと卵焼き。

 

生野菜はレタスとトマトとアスパラガスのサラダ。

デザートとしてりんご。それもうさぎ形にむいてあった。

 

 

 

「じゃ、いただきます」

 

「ちょ、ちょっと待って……。あ、あ~ん……して……」

 

 

そう言ってフェイトさんは、唐揚げを持ったまま顔を真っ赤にしていた。

これってあれだよな。恋人同士がやる……。

 

めっちゃ恥ずかしいけど、これで一人で食べられるからなんて言ったら、絶対泣くだろうな。

それにフェイトさんが勇気を出して、こんな事してくれてるんだ。

 

 

「あ……あ~ん」

 

「……う…」

 

「ど、どうしたの……美味しくなかった……」

 

「うまい!!」

 

「ん、もう……。 脅かさないでね」

 

「ごめん、でもマジで美味しい!!」

 

「よかった。頑張って作ったんだよ。フィルに喜んで欲しくて……」

 

 

やっべぇ、俺涙出そうなんだけど……。

手料理なんて、久しく食べてなかったからな。

 

いつも、自炊か食堂のご飯かレトルト食品だったし……。

 

 

しかも、最近シャーリーさんと夜遅くまでやっていたから、栄養補助食品に頼っていたし。

フェイトさんにばれたら、間違いなく怒られるレベルだ。

 

 

 

「ふぅ……ごちそうさま。本当に美味しかった」

 

「はい、おそまつさま。よかった、喜んでもらえて」

 

「今度は俺がなんか作るよ。フェイトさんにも、俺の手料理を食べて欲しいし……」

 

 

といっても料理じゃ、フェイトさんには敵わないしな……。

 

 

「楽しみだな。ティアナ達が言ってたけど、フィルって料理だけじゃなくて、洋菓子も作れるんでしょ?」

 

「まぁ、それなりにだけどね。女の人だとケーキとかの方が良いかもね。フェイトさんって何が好きなの?」

 

「ケーキは何でも好きだけど、チョコ系が特に好きかな」

 

「分かった。とっておきの作るから、楽しみにしていてね」

 

「ありがとう。私、楽しみにしているね!!」

 

 

 

 

 

*     *     *

 

 

 

 

 

フェイトさんの手料理を食べ終わった後、俺たちは砂浜に座って、海を眺めていた。

こうしてると、気持ちが落ち着くな―――――。

 

 

 

「波の音が、気持ちいいね……」

 

「ああ、昔はよくここに来たものさ。任務で失敗した時とか、嫌なことがあった時ここに来てた……」

 

 

なんか懐かしいな。誰にも言えないことがあったりすると、よくここに来ていたもんだ。

 

 

「じゃ、フィルの大切な思い出の場所って訳だね。ティアナ達とかは知らないの?」

 

「フェイトさんが初めてだよ。元々俺は一人になることが多かったしね……」

 

 

基本的に俺は一人で行動してたからな。

訓練校で、ティア達と一緒に行動するようになってからはトリオでやっていたけど―――――。

 

 

「嬉しいな。でも私で良かったの?」

 

「当たり前でしょう。フェイトさんは、俺の………大切な彼女なんだから………」

 

「彼女……か。初めてだね。フィルがちゃんと、私のことを彼女って言ってくれたのは……」

 

「そう……かもしれない………。やっぱ心のどこかで、フェイトさんのことを高嶺の花って思っていたから。彼女って言うのに勇気が無かったんだ」

 

 

 

未来でも、こっちでもフェイトさんはずっと憧れの人だったから―――――。

こうして俺の恋人になってくれたなんて、今でも夢なんじゃないかっておもうし……。

 

 

 

「フィル。女の子はちゃんと言って欲しい時があるんだよ。例え、心が通じ合っていても、言葉で欲しい時があるんだから。いつまで経っても、私のことを彼女って言ってくれないから、不安になっちゃったんだ……」

 

「今まで不安にさせてごめん。これからはちゃんと言うよ。俺はフェイトさんの彼氏なんだしね」

 

「うん!!」

 

 

フェイトさんの本当の笑顔って初めて見たかもしれない。

なのはさんが言ったように、まだ俺はフェイトさんのことを分かってないんだな。

 

 

「……フィルがちゃんと彼女って言ってくれたから、私もちゃんと言うね。これからもよろしくね、私の大切な彼氏さん」

 

 

 

女の人の上目遣いでの仕草って、本当にグッと来るものがあるな……。

ましてフェイトさんだと、さらに破壊力があるな……。

 

俺、こんな事考える奴だったか?

 

 

少しずつ……変わってきてるのかもな……。

 

 

「もう少し、そばに来てくれる……」

 

「うん」

 

 

俺はフェイトさんをそっと抱き寄せる。

 

こんな事をするは自分でも大胆だと思うけど、でも今はこうしてフェイトさんのぬくもりを感じたい。

 

 

やがて―――――。

 

 

どちらかとも無く、顔を寄せキスをしようとした時……。

 

 

 

『こちらスターズ1、高町なのは。フェイト隊長、フィル応答して……』

 

 

それぞれのデバイスに、なのはさんからの通信が入ってきた。

 

 

「こちらライトニング1、どうしたの!?」

 

『休暇中にごめんなさい。さっきキャロから緊急通信が入ったの。サードアベニューF-23の路地裏にてレリックとおぼしきケースを発見。ケースを持っていた小さな女の子が一人一緒にいるの』

 

「フィル、もしかして……」

 

「ああ、間違いない……」

 

 

 

小さな女の子……。

 

 

間違いなくヴィヴィオだ。

いよいよ事態が動き始めたか―――――。

 

 

『救急の手配はこちらでしているから、二人は急いでエリオ達と合流して!!』

 

「「了解!!」」

 

 

 

さて、お休みはこれまでか。頭を切り換えて現場に向かいますか……。

 

 

皆様、現在自サイトのみで公開しています『とある休日シリーズ』になりますが、こちらでも見てみたいという方がいらっしゃいましたら、アンケートにお答えいただけたらと思います。

  • 見てみたいので公開してほしい
  • まあまあ興味がある
  • どちらでもいい
  • 興味がないので公開はしなくて良い

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