ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 先週は更新出来ずに申し訳ありません。あの話に入ります。
 但し、先に言って置きます。大体予想は着いていると思いますが、これから出るのはあの話を元にした、オリジナル展開や独自解釈を詰め込んだかなり改変された話になっております。
 それでも良ければどうぞ。


リゾートデザートの攻防

「そろそろ、サトシくん達はリゾートデザートに着いている頃でしょうか?」

 

「時間や距離を考えると、もう着いてもおかしくはないね」

 

 ヒウンシティ。セントラルエリアでNやアーティが安全確認のため、集めたフシデ達の様子を見ていた。

 

「さっさと問題を解決してくれると助かるんですが」

 

 そこにはシューティーもいる。但し、二人と違って、いざというときに備えてだが。

 

「ゾロ、ゾロゾロ」

 

「カブカブブ」

 

「ブブブ~イ♪」

 

 シューティーが声のした方向を見る。そちらでは、ころがるで丸まっているポカブの上をゾロアがサーカスでやる時みたいに走り、イーブイが笑っていた。身体を張って楽しませている様だ。

 

「微笑ましいね」

 

「ありがとうございます」

 

 そんな様子にアーティは微笑み、Nは礼を言う。

 

「Nさん、このイーブイは前に持っていたタマゴから?」

 

 騒動中に聞く余裕はなく、今は問題なさそうなので暇潰しを兼ね、シューティーが尋ねた。

 

「そうだよ。ちなみに、同じ場所で託されたサトシくんのタマゴも既に孵ってる。産まれたのはズルッグ」

 

「おや、サトシ君のそのズルッグとそのイーブイは同じ場所にあったタマゴなのかい?」

 

「えぇ、両方育て屋の人が預かっていたタマゴなんです」

 

「あぁ、なるほど」

 

 イッシュのポケモンといないポケモンのタマゴが一緒にあることにアーティは疑問を抱いたが、育て屋が預かっていたと知り、納得した様だ。

 

「ちなみに、切欠はあるポケモンに関する一件で」

 

「折角だ。聞いても良いかな?」

 

「えぇ、構いません」

 

 別に隠し立てするような話でもない。Nはヤブクロンの件について語り出す。

 

「――と言う訳です」

 

「ヤブクロンを思う子供達と、子供を思う先生のぶつかり合い。ちょっとしたハプニングが入りつつも理解し、絆が強くなる……。良い! これぞ、純情ハート!」

 

 ハイテンションのアーティ。本当に純情ハートって何なんだろうと、Nとシューティーは思ってしまう。

 

「子供達とポケモンと先生。今度、そんな絵を書くのも良いかも知れないね。N君、その育て屋は何処にあるかな?」

 

 本人達の許可を取らずに、絵を書く訳にも行かない。会う必要があった。

 

「ここからシッポウシティの向こうにあります」

 

「シッポウシティの向こうか……」

 

 場所が少し遠い。行くのは余裕がある時にしようとアーティは決めた。

 

「アーティさん、今度はこちらが一つ聞いても良いですか?」

 

「構わないよ」

 

「アーティさんはサトシくん達と何処で知り合いに?」

 

「ヤグルマの森さ」

 

「ヤグルマの森? サトシくんはそこでクルミルをゲットしたと言ってましたが……」

 

「うん。その件に少し関わってる。話そうか?」

 

「お願いします」

 

 サトシとクルミルがどう出会い、仲間になったのか。Nは少し気になったので話を聞くことにした。

 

「――で、クルミルはサトシ君の仲間になったのさ」

 

「そうでしたか……」

 

「にしても、サトシは無茶し過ぎじゃないですか……?」

 

 クルミルを助ける為とはいえ、川に飛び込み、危うく滝に落ち掛けていたサトシにシューティーは冷や汗を流していた。

 

「まぁ、そこまで必死になれるサトシ君だからこそ、クルミルは仲間になることを選んだのさ」

 

「確かに」

 

 そんな真っ直ぐだから、クルミルは仲間になったのだ。

 

「ちなみにシューティー君、サトシ君とは何処で知り合ったんだい?」

 

「カノコタウンです。僕が新人トレーナーとして旅立つ日に会いました。何でも、旅行しに来たらしいです」

 

「そこから旅にと……」

 

 サトシの性格を考えると、このイッシュ地方のポケモンとの出会いを求めて旅をすることにしたのだろう。Nはそう推測していた。

 

「そう言えば、サトシくんはその時にゼクロムに遭遇したと言ってたね」

 

「はい。僕もその時にいて、ゼクロムを見ました。……まぁ、見れただけですが」

 

「いやいや、それでも運が良いよ。伝説のポケモンを一体も見れずに一生を終える人も珍しくはないからね」

 

 強力かつ、珍しい。その二つの要素もあり、伝説のポケモンに遭遇することは勿論、見ることも難しいのだ。

 

(……そう考えると、サトシくんって凄いね)

 

 ゼクロムだけでなく、ビリジオンとも遭遇している。まぁ、それは自分もだが。

 但し、サトシはもっと多くの伝説のポケモン達と遭遇していたりする。

 

「……?」

 

「どうしたんだい?」

 

「あっいえ、気のせいでした」

 

 そう言うNだが、それは違う。

 

(……見られてる)

 

 Nは視線を感じていた。間違いなく、自分に向けられている。ゾロアも感じているらしく、鋭い眼差しになっていた。

 

(――消えた)

 

 自分達を見る視線が、不意に消えた。見ていた者が立ち去ったらしい。

 

(報告しに行った様だね)

 

 この町にいるかは不明だが、この分では見付かるのは時間の問題だろう。

 

(そろそろ、終わりかな)

 

 一人の人間として、様々な出会いや体験を得てきたこの旅。その終わりが近付いていたのを、Nは感じていた。

 

 

 

 

 

 建物の一室。マントを纏った男性が、その報告を聞いていた。

 

「間違いないのですね?」

 

『はい。確実に王本人でした』

 

「ご苦労様です。後は私達の方でするので、貴方達は戻ってその時まで待機してください」

 

『はっ』

 

 通信が切れる。その後、男性は笑みを浮かべた。

 

「どうでした?」

 

「間違いなく本人でした」

 

「それはそれは。良いことですねえ」

 

「えぇ、本当に」

 

 二人の男性が不敵に笑う。ここまでタイミングが良いとは思わなかった。

 

「後は向こうが動くのを待つだけ……」

 

「楽しみですねえ」

 

 もうすぐ迫るその時に、二人は再度不敵に笑う。色々と行なって来た仕込みが、漸く実を結ぶのだから。

 しかし、この二人も現時点では予想もしていないだろう。まさか、その結末が――自分達の想定を超えるものになるのだと。

 

 

 

 

 

「エネルギー増大」

 

「メテオナイトの発掘まで後少しよ……!」

 

「いよいよ確保にゃ……!」

 

 リゾートデザート。ロケット団の飛行艇でロケット団達がメテオナイト確保に勤しんでいた。一日掛けて発掘し続け、もうすぐ入手出来る所だった。

 

「待て。リゾートデザートに何かが接近している。これは……ヘリか?」

 

「例の連中かの?」

 

「にしては、数が少ない様な……?」

 

 例の組織がメテオナイトを強奪しに来たのなら、もっと大勢で来るはず。しかし、今来ているのは一つだけ。明らかに少ない。

 採掘を続けながら、そちらを見ていると――そのヘリが到着。扉が開き、人の姿が出てくる。それを見て、ロケット団は驚く。

 

「あれは……ジャリボーイ!?」

 

「ジャリボーイ?」

 

「俺達の獲物で、同時に何時も邪魔する奴さ!」

 

「なんでここに来たのにゃ……!?」

 

 サトシの接近に、ロケット団は驚きながらも説明する。

 

「ふむ、お主達の話から推測すると、あれは例の組織ではないの。異変を確かめに来た調査団と言った所じゃな」

 

「どうしますか?」

 

「もうすぐで手に入れれる。邪魔されてはならん。足止めせい」

 

「了解。行くぞ」

 

「おう!」

 

 ロケット団は飛行艇から降り、サトシ達を待ち構える。

 

「ここがリゾートデザートか……」

 

「砂ばっかりね……」

 

「うん、前にも思った事があるけど、リゾートの名前が付いている場所には見えないね」

 

 見渡す限り砂ばかりのこの地に、サトシ達は各々の感想を呟く。

 

「アララギ博士、この近くに原因があるのですね?」

 

「その筈よ」

 

 ヘリが進む。すると、前に一つの飛行艇が見えた。

 

「飛行艇? 他の調査団?」

 

「いや、待ってください。あのマークは……!」

 

「ロケット団!」

 

 飛行艇に刻まれたRのマークに、サトシ達は目を見開く。それはロケット団の物だ。

 

「飛行艇から光……? それにアーム? 何かを発掘してる!?」

 

「エネルギー発生源も、あの場所の下からだわ!」

 

「じゃあ、フシデ達が暴れた原因はロケット団!?」

 

 この現状を見る限り、そうとしか考えられなかった。そして、アララギはいち早くロケット団が何をしているのかを悟る。

 

「皆、今すぐにロケット団の行動を止めさせて! 何としても!」

 

「わ、分かりました!」

 

 焦った様子で声を荒らげるアララギに、違和感を感じながらもサトシ達は飛行艇に近付いていく。すると、光の近くから攻撃が放たれた。操縦士は操縦桿を上げて寸前でかわす。

 

「これ以上の接近は無理です!」

 

「行くわよ、皆!」

 

「はい!」

 

 サトシ達はヘリから降りて着地。前を見ると、ロケット団の三人組とフリントがいた。

 彼等は既に手持ちのポケモン、コロモリ、デスマス、ミネズミを出している。

 

「ロケット団!」

 

「まさか、ここで会うとは思わなかったわ。ジャリボーイ」

 

「やはり、俺達の最大の敵だな。だが、ここで邪魔される訳には行かない」

 

「全てはロケット団の栄光の為にゃ!」

 

「では、任務を始めよう」

 

 それだけを言うと、三人組とフリントは戦闘を開始する。

 

「コロモリ、エアスラッシュ!」

 

「デスマス、シャドーボール!」

 

「ミネズミ、ハイパーボイス」

 

「モリーーーッ!」

 

「マーーースッ!」

 

「ミネーーーッ!」

 

 三匹のポケモンから、三つの技が放たれた。サトシ達は咄嗟に動いて避ける。

 

「待ちなさい! 貴方達は『それ』が何なのか分かって手に入れようとしてるの!?」

 

 

「勿論よ! 膨大なエネルギーを宿すメテオナイト」

 

「それをイッシュ制圧の為の力にするのさ!」

 

「今すぐに止めなさい! それは――」

 

「止めるわけないにゃ!」

 

「コロモリ、もう一度エアスラッシュよ!」

 

「デスマス、おにび!」

 

「ミネズミ、再度ハイパーボイス」

 

「きゃああっ!」

 

 アララギの必死の言葉を無視し、ロケット団の三匹は再度攻撃を放つ。その余波で前に出たこともあってアララギは転がり、軽く気絶する。

 

「アララギ博士! よくも! ピカチュウ!」

 

「ピカ!」

 

「マイビンテージ、ヤナップ!」

 

「ナップ!」

 

「ハーデリア、行くわよ!」

 

「ハー!」

 

 サトシはピカチュウ。デントは手持ちのヤナップを繰り出し、ジュンサーはハーデリアを前に出す。

 アイリスも参加しようと考えるも、キバゴはまだまだ子供。かといってドリュウズはしたが、まだ仲は修復仕切ってないため、暫し迷っていた。その間にサトシ達が動く。

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「ヤナップ、ソーラービーム!」

 

「ハーデリア、めざめるパワー!」

 

「ピーカ、チューーーッ!」

 

「ヤナ~……プーーーッ!」

 

「ハー……デリーーーッ!」

 

「かわせ!」

 

「避けろ」

 

 サトシ達は応戦。先程のロケット団の様に三匹で攻撃を仕掛けるも、距離が離れている事もあってかわされた。

 

「ん? 何か今の変じゃない?」

 

「何がだ?」

 

「いや、ジャリボーイのピカチュウの電撃が少し弱かった様な……?」

 

「確かにそうだにゃ」

 

 サトシとピカチュウとは、何度も何度も――既に三桁を超える数戦ったからか、ロケット団は雷撃の具合でピカチュウの体調が分かるまでになっていた。

 そこから、ロケット団はピカチュウの体調が微妙におかしいのに気付いた。

 

「放って置け。いや、寧ろこの場では有益な情報だな」

 

 フリントはサトシの実力が高い事を見抜いていた。その手持ちの体調が悪い。油断は出来ないが、これは朗報だ。

 

「ミネズミ、かげぶんしんだ。翻弄しろ」

 

「ミネミネ……!」

 

 ミネズミの姿がぶれ、サトシ達の周囲に分身を展開される。

 

「ムサシ、コジロウ。奴等を更に翻弄する」

 

「命令するんじゃないわよ! コロモリ、かぜおこし!」

 

「分かってるっての! デスマス、くろいきり!」

 

「コーーーロッ!」

 

「デーーースッ!」

 

 分身を見て動きが鈍った所に風で砂鉾を巻き上げ、更に黒霧で視界を完全に遮る。

 

「視界が……!」

 

 動きが止まったサトシ達の周囲に、空気の刃は漆黒の球、音波が突き刺さる。

 

「ジュンサーさん、どうしますか……!?」

 

「下手に動くとやられるわね……!」

 

「だけど、このままだと向こうの思うがままです……!」

 

 何とかしなくてはならないが、現状は身動きが取れないでいた。

 

「なら、僕が突破口を切り開きます」

 

「どうするの?」

 

 ジュンサーが質問を求めると、デントが作戦を説明する。

 

「なるほど、それなら上手く行きそうね」

 

「じゃあ、早速」

 

 サトシ達は頷くと、デントは直ぐに行動を起こした。

 

「このまま奴等の動きを封じ込めるぞ」

 

「だから、一々指示出すんじゃないわよ」

 

「まあまあ。このまま問題なく進むから落ち着けって」

 

「そうにゃ。もうすぐでメテオナイト回収完了だにゃ」

 

 コジロウやニャースにそう言われ、ムサシはイライラを収めた。

 

「……ん? 揺れ?」

 

 地面から微かな揺れを感じたフリントが下を見る。同時に砂が盛り上がり、一匹のポケモン――ヤナップが現れる。

 

「ナプーーーッ!」

 

「何!?」

 

「下から!?」

 

「あなをほるか!」

 

 ヤナップは黒い霧や砂鉾を逆に利用し、地中から奇襲を仕掛けたのだ。

 

「ヤナップ、タネマシンガン!」

 

「ナププププ!」

 

「モリッ!」

 

「マスッ!」

 

「ミネッ!」

 

 無数の種がロケット団の三匹に向かって発射され、ダメージを与える。

 

「今だ、ピカチュウ! コロモリの鳴き声に向けて、エレキボール!」

 

「ハーデリア、めざめるパワーでミネズミとデスマスを攻撃よ!」

 

「ピー……ッカ!」

 

「デデリーーーッ!」

 

「モリーッ!」

 

「マスーッ!」

 

「ズミッ!」

 

 三匹がダメージに怯んだ所に、ピカチュウがエレキボール、ハーデリアがめざめるパワーを放ち、命中させる。

 その影響で霧や砂が晴れ、サトシ達は視界を取り戻す。ヤナップも同時にデントの元に戻った。

 

「なるほど、手強いな」

 

 サトシ達の実力を、フリントは正直に認めた。倒すとなると、相当手こずりそうだと眉を潜める。

 

『――聴こえるかの?』

 

「ゼーゲル博士?」

 

『もうすぐで回収出来る。稼げい』

 

「了解」

 

 ゼーゲルからの報告を聴いたフリントだが、顔には全く出さない。サトシ達に強引に攻めるのを避けるためだ。

 

「ミネズミ、いかりのまえば」

 

「コロモリ、めざめるパワー!」

 

「デスマス、おにび!」

 

「かわせ!」

 

 三匹の攻撃を、ピカチュウ達はかわすと攻勢に応じる。

 

「ピカチュウ、コロモリにエレキボール!」

 

「ヤナップ、ミネズミにかわらわり!」

 

「ハーデリア、デスマスにかみつく!」

 

「ミネズミ、ハイパーボイスでエレキボールを反らせ」

 

「デスマス、お前はかわらわりを防御しろ!」

 

「コロモリ、かぜおこしでハーデリアを妨害しなさい!」

 

 六人の指示により、六匹のポケモン達が動く。しかし、中々決定打を与えるのは難しい。複数戦故、周りがカバーするからだ。

 

「ミネズミ、いあいぎり」

 

「ピカチュウ、アイアンテール!」

 

 手刀を振るうミネズミと、鋼の尾を振り回すピカチュウ。

 

「見事だ。体調が悪いとは思えん動き。しかし、一つの尾と二つの手。威力はそちらが上だろうが――手数はこちらの方が上だ」

 

「ミー……ネッ!」

 

「ピカッ!」

 

「ピカチュウ!」

 

 アイアンテールを上手く弾かれ、隙が出来たところにミネズミは身体に手刀を叩き込む。

 

(強い!)

 

 フリントは冷静にかつ、的確に攻めてくる。ムサシやコジロウよりも一回りは確実に強い。

 勝てない相手ではないが、油断も出来ない。この敵を相手にこちらは不調だと長引きそうだ。

 

「でんこうせっか!」

 

「かげぶんしん」

 

 砂地にもかかわらず、高速で向かって来るピカチュウに、ミネズミは再度分身を展開。回避しつつ惑わせる。

 

「ピカチュウ、アイアンテールで地面を叩け!」

 

 ピカチュウが地面を叩く。ここは砂地の為、衝撃により大量の砂が巻き上げられ、分身が消滅する。

 

「なるほど、そう対処して来るか。ミネズミ、ハイパーボイス」

 

「ミネーーーッ!」

 

「そこだ! ジャンプしてエレキボール!」

 

「ピカァ!」

 

「ズミッ!」

 

 砂鉾の中にいるピカチュウをハイパーボイスで吹き飛ばそうとしたが、その瞬間にピカチュウが跳躍。音を目印に逆にエレキボールを食らう。

 

「ミネズミ、いあいぎり」

 

「――ミネ!」

 

 しかし、フリントとミネズミはただやられるつもりはない。素早く体勢を立て直し、ピカチュウに接近。アイアンテールを捌きながらいあいぎりを当てる。

 

「さて、戦況は……」

 

 フリントはサトシを警戒しながら、ムサシとコジロウの方を見る。

 

「ハーデリア、かいりき!」

 

「コロモリ、しねんのずつき!」

 

 全身の力を込めた体当たりと、思念の力を込めた頭突きが衝突。二匹は吹き飛ぶ。

 

「めざめるパワー!」

 

「モリーーーッ!」

 

「ハーーーッ!」

 

 ムサシとジョーイ。二人は同じ技を同じタイミングを指示。コロモリとハーデリアもまた、同じタイミングで技を放つ。

 同じ技は互いを次々と打ち消すも、ハーデリアのめざめるパワーが一つの残ってコロモリに向かう。

 

「コロモリ、かわしてエアスラッシュ!」

 

「ハーデリア、まもる! そこから、かみつく!」

 

「モリリッ!」

 

「ハッ! デリィ!」

 

「かぜおこしよ!」

 

「耐えなさい!」

 

 コロモリはめざめるパワーをかわし、エアスラッシュで反撃。ハーデリアはそのエアスラッシュをまもるでガード、かみつくを仕掛ける。

 だが、ムサシとコロモリは弱点攻撃をわざわざ食らうつもりもなく、かぜおこしの風で妨害する。

 ハーデリアはジュンサーの指示で足に力を込め、風に耐える。そこからかみつくに応じた。

 

「ハーーーッ!」

 

「モリィ!」

「ハーデリア、かみついた状態でかいりきよ!」

 

「ハー……デリアッ!」

 

「モリリーーーッ!」

 

 噛み付いた状態から全身の力を発揮し、コロモリを吹き飛ばす。

 

「コロモリ、しねんのずつき!」

 

 攻撃を受けたコロモリだが、素早く姿勢を立て直すとしねんのずつき。攻撃を放った直後の硬直を突き、ハーデリアにダメージを与える。

 

「更にかぜおこし! そこからエアスラッシュ!」

 

「ハデッ! リィ!」

 

 風でハーデリアを崩し、更に風を利用した加速させた追撃のエアスラッシュを命中させた。

 

「強いわね……!」

 

「ふん、アタシ達はロケット団よ? 弱い訳無いでしょ」

 

 サトシ達に何度も撃退されてこそはいるが、彼等は決して弱くない。簡単に勝てる相手ではないのだ。

 

「タネマシンガン!」

 

「ナププププッ!」

 

「おにび!」

 

「デスマース!」

 

 デントとコジロウ。ヤナップの無数の種と、デスマスの怨念の炎がぶつかり合う。

 

「ヤナップ、あなをほる!」

 

「デスマス、くろいきりだ!」

 

「ナプッ!」

 

「マスーーーッ!」

 

 ヤナップは穴を掘って地中から攻撃を狙おうとするも、デスマスは黒い霧を放って姿を隠す。

 

「ヤナップ、タネマシンガンを広く放て!」

 

「デスマス、避けてからおにび!」

 

「もう一度、あなをほる!」

 

 種を避け、鬼火を放つデスマスだが、再度のあなをほるでかわされる。

 

「――ナプ!」

 

「そこか! デスマス、シャドーボール!」

 

「デーーースッ!」

 

「ヤナップ、かわらわり!」

 

「ヤナー……!」

 

 出てきたヤナップにデスマスはシャドーボール。一方、デントはかわらわりを指示。

 

「おいおい、ゴーストタイプのデスマスに格闘タイプのかわらわりは効果は無いぜ?」

 

「確かに。だけど――こんな風には使える! ヤナップ、シャドーボールを弾き返せ!」

 

「プーーーッ!」

 

 漆黒の球を、ヤナップは力が込もった手で弾き返す。返された球はデスマスに見事直撃した。

 

「マスーーーッ!?」

 

「な、何っ!?」

 

「近付いてタネマシンガン!」

 

「ナプププ!」

 

 ダメージで怯んだ隙にヤナップは接近。タネマシンガンで一発は小さくも確かな追撃を与える。

 

「デスマス、おどろかすだ!」

 

「――マス! デー……スマッ!?」

 

「ナプッ!?」

 

 デスマスは軽くぶつかり、顔を俯かせる。そして、一瞬の間を置いてから、わっと大声と凄い顔をする。ヤナップは声と顔に怯む。

 

「シャドーボール!」

 

「マースッ!」

 

「ヤナッ!」

 

 デスマスは驚いた隙を突き、近距離でシャドーボールをヤナップに命中させる。

 

「ヤナップ、大丈夫かい?」

 

「ナプナプ」

 

 デントの声に、ヤナップは笑顔で頷く。

 

「やるね。中々の実力者だよ」

 

「そっちもな。それにさっきのかわらわりでシャドーボールを返したあれ……ジャリボーイを見た気分だぜ」

 

 さっきのは、サトシがワルビルのストーンエッジを跳ね返したのを参考したのだ。但し、今のデントには気になる事がある。

 

「ジャリボーイ……サトシの事かな? 君達、サトシと何度も会ってるのかい?」

 

「あぁ、何度も何度も会っては邪魔されてるぜ」

 

 時には協力する事もあるが、それはこの場で言う必要性が無かった。

 一方のデントは予想通りかと呟く。しかし、犯罪組織と何度も会うサトシに苦笑いしてしまう。

 

「さて、雑談はここまでだ! さっさとやられてもらうぜ!」

 

「お断りさ! 寧ろ、そっちが倒れてもらおう!」

 

 そのやり取りの後、デントとコジロウは戦いを再開する。

 

「ふむ、戦況は五分五分と言った所か」

 

 ムサシとコジロウの方を見たフリントはそう呟く。二人はデントとジュンサーを食い止めていた。この調子なら問題なさそうだ。

 

「それはどうかな?」

 

「何? ……!」

 

「ミ、ネ……!」

 

 サトシの言葉に、フリントがミネズミを見る。すると、身体からバチバチと静電気が溢れ、苦しそうに呟く。

 

「麻痺……特性、せいでんきか。迂闊だったな」

 

「これでこっちが有利だ! 一気に決める!」

 

 一瞬で把握したフリントは、これは不味いと表情を険しくする。サトシが勝負を一気に終わらせようとした。

 

『――完了したぞい』

 

 その時――ロケット団の飛行艇の光が溢れ、採掘をしている場所から違う色の光が放たれる。

 更に衝撃波が発生し、その場にいる全員が悲鳴と共に吹き飛び、飛行艇とヘリも揺れる。

 

「何だ、今の……!?」

 

 サトシ達が姿勢を立て直すと、そこには飛行艇のアームに抱えられた大きな石があった。

 

「あれは……!?」

 

「メテオナイト。膨大なエネルギーを宿す隕石だ」

 

「隕石……?」

 

 フリントの言葉を聞き、デントは何か引っ掛かる。そして、気付いた。

 

「まさか、シッポウ博物館の盗難騒ぎは……!」

 

「ほう、中々に鋭いな。その通り。このメテオナイトの回収のためのだ。まぁ、この三人組が馬鹿な事をやったせいでいらん騒ぎになったが……」

 

「うっさいわね! 強奪自体は成功したんだから良いでしょ!」

 

「そうだ! 終わった事を何時までも言うな!」

 

「女々しいのにゃ!」

 

(……あれ?)

 

 ロケット団とフリントのやり取りに何とも言えない空気になるが、そんな中、サトシは違和感を覚えた。デントやアイリス、ジュンサーもだ。

 

「なぁ、デント。確か、シッポウ博物館の盗難騒ぎじゃ――」

 

「では、確保も終わった。さらばだ」

 

 デントに確認を求めようとしたサトシだが、その前にロケット団とフリントが動く。

 彼等が飛行艇からぶら下げられたはしごに掴まる。同時に、メテオナイトがアームと共に飛行艇に仕舞われた。そして、飛行艇は動き出す。

 

「じゃあな、ジャリボーイ!」

 

「今回はアタシ達の勝ちよ!」

 

「そして、この後もにゃ!」

 

「……喧しい」

 

 目的を果たし、ロケット団と飛行艇はリゾートデザートから去って行った。

 

「追い掛けますか?」

 

「その前に私達を入れて。迂闊に近付いたら墜落させられるわ」

 

「はっ」

 

 パイロットはヘリを着陸。サトシ達がアララギを運びながら乗ると、再び離陸する。

 

「うっ……」

 

「アララギ博士!」

 

 意識を失ったアララギが目を覚まし、身体を起こした。サトシ達が近寄る。

 

「ここは……?」

 

「ヘリの中です」

 

「ヘリ……? ――メテオナイトは!?」

 

「……すみません、ロケット団に奪われました」

 

「そんな……!」

 

 メテオナイトがロケット団の手に渡ったと知り、アララギは苦悶の表情を浮かべる。

 

「俺達の力が足りなかったばかりに……」

 

 サトシ達は顔を俯かせる。特にアイリスは、戦えなかった事から一番顔が暗い。

 

「……いいえ、貴方達は頑張ってくれたわ。それよりも、メテオナイトを早くロケット団の手から回収しないと……」

 

「アララギ博士、そもそもメテオナイトとは一体?」

 

 ジュンサーの問いに、アララギは仕方ないと言いたげに話し始める。

 

「遥か昔、この星に落ちてきた特殊な隕石の事をそう呼ぶの。メテオナイトには膨大なエネルギーが宿っているんだけど……」

 

「じゃあ、ロケット団はそのエネルギーを悪用するために!?」

 

「……けど、メテオナイトはそんな代物じゃなかったの」

 

「……どういう事ですか?」

 

「これは一部しか知ることが出来ない機密事項だけど……貴方達には話すわ。実はメテオナイトには――」

 

 アララギがメテオナイトについて話す。メテオナイトの真の特性について。

 

「――という事なの」

 

 それを聞き、サトシ達の顔色が悪くなる。

 

「ま、待ってください! そんなものがロケット団の手に渡ったら……!」

 

「とんでもない事に……!」

 

「……それだけで済めばまだ良い方だわ。一番不味いのは、知らないで使うことなの」

 

 知ってて使われるのも勿論不味い。しかし、それ以上にメテオナイトの本質に気付かないままで使う方がもっと不味いのだ。

 

「けど、ロケット団は向こうに行っちゃったし……」

 

「場所は?」

 

「……残念ながら、思った以上の速さで撒かれました」

 

「直ぐに他に伝えます」

 

 ジュンサーが他の仲間に伝える中、デントが気になる点について話す。

 

「アララギ博士、一つ気になる事が……」

 

「何、デント君?」

 

「ロケット団はシッポウ博物館で隕石を盗んだと言っていたんですが……アロエさんから聞いたNさんは、シッポウ博物館で盗まれた物は無いと言っていたんです」

 

「……えっ? それは本当なの?」

 

「はい」

 

 直接聞いた訳ではないが、Nに嘘を付く理由も無いため、それが事実のはず。

 

「……どういうこと?」

 

 ロケット団は博物館で隕石を盗んだ。一方で、博物館で盗まれた物は無い。明らかに矛盾している。

 

「ロケット団が嘘を付いてるとか?」

 

「けど、あいつらのあの態度を見てるとそんな気がしないんだよなあ……」

 

「となると、博物館側が盗まれた事実を隠した?」

 

「確認は……後回しね。今はロケット団の方が優先だわ」

 

 気になる点だが、今はロケット団からメテオナイトを取り返す方が先だ。

 

「しかし、どうやって見付けますか?」

 

「……そこなのよね」

 

 言うのは易しだが、それが出来るかは全く別だ。

 

「だけど、一刻も早く回収しないと……」

 

 ロケット団が事を起こす前に、メテオナイトを回収しなければならない。

 

「とりあえず、ヒウンシティに戻りませんか? 適当に探しても見付かる訳ではありませんし……」

 

 燃料はあるが無限ではない。追跡に関して何も出来ない以上、他にする事をするしかなかった。

 

「そうね……。市長やアーティさんに話す必要もあるわ。ヒウンシティに戻りましょう」

 

 ロケット団の思惑を止めきれず、最悪の事態に気分を暗くしながらサトシ達はヒウンシティへの帰還を始めた。

 

「――よし、行ったな」

 

「我々もここを出ますよ」

 

「はい」

 

 ロケット団の飛行艇とサトシ達を乗せたヘリ。その二つが去ったのを見て、古代の城からライトストーン確保に来ていたアスラやロット達が外に出る。

 

「しかし、ロケット団はメテオナイトを確保した様だが……大丈夫かの?」

 

「あの方は何かを考えている様ですが……」

 

 メテオナイトを知っている二人からすると、ロケット団に渡すのは良いとは思えなかった。

 

「とにかく、ここから去るとしよう」

 

「ですな。ただ、その前に報告を……」

 

 アスラが通信機を使い、連絡を取る。しばらく話し合うと彼は目を細め、同時に通信が切れた。

 

「どうしろと?」

 

「一刻も早く、ヒウンシティに来いと。――王を見付けたそうです」

 

 その報告に団員達が目を喜びで輝かせる中、ロットだけはアスラと同じく目を細めていた。

 

「今後の方針を、全員で改めて決めたい。とのこと」

 

「ヴィオやジャロは?」

 

「彼等はもう少し様子見をしてからだそうです」

 

「分かった。では、周りを確かめつつヒウンシティに向こう」

 

 二人は指示に従い、部下と共にリゾートデザートを後にする。

 しかし、そのしばらく後――一つの存在がリゾートデザートに赴いていた事は彼等も知らない。

 


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