ポケットモンスター アナザーベストウイッシュ   作:ぐーたら提督

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 ある状態異常の設定を少し変えてます。ゲームのままだと、強すぎますし……。


シッポウジム再戦、シューティー編

「少し眠いな……」

 

 再チャレンジの朝、ポケモンセンターで目覚めたシューティーだが、夜遅くまで基本を学び、練習したために少し寝不足の様だ。

 

「……頭は大丈夫」

 

 昨日、戦略を決める為の戦術。即ち、どうすれば良いのかを考えていたが、寝る間際には頭がフラフラだった。

 何しろ、行動一つにしても攻撃、回避、待機、移動の選択肢がある。それらに次を加えると更に増していく。それが次から次へと浮かんで来るのだ。

 そのどれもが最良な為に迷い、それを改善しようとしたら更に迷うと言う、完全な泥沼状態だった。

 

(……全く、ポケモンバトルは奥が深すぎる)

 

 基本を学び直せば直すほど、ポケモンバトルの深さが見えてくる。これを新人の自分が己の物にしないと行けないのだから、大変なことこの上ない。

 

(まぁ、やるけどね)

 

 それでも自分はやって見せる。そして、これ等の基本を物にし、サトシやN、まだ見ぬシンジに勝ち、何時かは目標であるチャンピオンになるのだ。

 

(そのためにも)

 

 先ずは目の前の壁である、アロエ。彼女に勝たねばならない。多少眠くても、再挑戦に向けてのやる気は満ちていた。

 

「――出てきてくれ」

 

 モンスターボールのスイッチを押し、手持ちを出す。

 ジャノビー、ハトーボー、プルリル、ヒトモシ、バニプッチ、ドッコラーが出てきて、自分を見る。

 

「――行こう」

 

「ジャノ!」

 

「ボー!」

 

「プル!」

 

「モシ!」

 

「バニ!」

 

「ドッコ!」

 

 短い言葉だが、六匹は頷く。彼等はシューティーがこの三日間頑張ってきたのを知ってる。一方のシューティーも同様だ。

 特に最後の一日は新しい基本を物にするため、どの様な戦法を必要か、またしっかりと形にしていくため、かなりハードになっていた。

 しかし、それだけに多少かつ付け焼き刃だが、成果もあった。それを元にアロエに再度挑み、今度こそ勝つ。その意志が彼等の目に強く宿っていた。

 シューティーは六匹をモンスターボールに戻し、ポケットモンスターの部屋からジムに向かう。

 

「シューティー!」

 

「サトシ」

 

 そこでサトシに遭遇する。今日もタマゴの検査をしているのだろう。近くにはアイリスやデント、Nもいた。

 

「再チャレンジだな」

 

「あぁ。今度は勝つよ」

 

 今まで自分を超える為にも、この勝負は負けられない。

 

「ちなみに、観戦は――」

 

「今日はしない。自分自身を鍛え直したいし、あいつらも特訓したいからな」

 

「分かった。頑張ってくれ」

 

「そっちもな」

 

 あぁと頷くと、シューティーは一人でシッポウジムへと向かった。

 

 

 

 

 

「再挑戦しに来たね、シューティー」

 

「えぇ、今度こそはバッジをゲットします」

 

 シッポウジム。バトルフィールドでシューティーは挑戦者側でジムリーダー側にいるアロエを静かに見つめる。

 

「もう分かってると思うけど、あたしの二匹はこの子達だよ。ハーデリア、ミルホッグ」

 

「――ハー!」

 

「――ホッグ!」

 

「先手はまたハーデリア。さぁ、アンタは何を選ぶ?」

 

「もう決めてます」

 

「早いね」

 

 今日もハーデリアから来るようだ。しかし、こちらはミルホッグからでも構わない。さっき言ったように、事前に決めているからだ。

 

「さぁ行け、ドッコラー!」

 

「コラー!」

 

「今日はいきなりドッコラーからかい」

 

 となると、もう一匹が気になるが、今回はほえるを使わないと決めている。

 シューティーの様な几帳面な性格のトレーナーには、同じ技よりも違う技の方が良いと判断したからだ。

 

「では、これより、シッポウジム戦を始めます。――始め!」

 

「ドッコラー、こわいかお!」

 

「ドッコ!」

 

「ハー!?」

 

 先手必勝と言わんばかりに、シューティーはこの前と同じく、こわいかおで今度はハーデリアの速さを奪う。

 

「また速さを鈍らせに来たね」

 

「動きを封じる、鈍らせて有利するのはバトルの基本です! がんせきふうじ!」

 

「確かに。――めざめるパワー!」

 

「コラーーーッ!」

 

「デリアーーーッ!」

 

 ドッコラーからは岩石。ハーデリアからは光球が発射され、互いに打ち消し合っていく。

 

「ドッコラー、突っ込め!」

 

「ドッコォ!」

 

(――さぁ、何で来る……!?)

 

 ほえるで強制交代か、迎撃か。もしくは、他の何かしらの妨害技で崩しを仕掛けてくるか。

 

「……」

 

「――ハ~……」

 

「――えっ?」

 

「ドコ?」

 

 しかし、アロエは何も指示を出さず、ハーデリアは眠たそうに大きな欠伸をかいた。

 シューティーもだが、ドッコラーも思わず意表を突かれ、動きを止めてしまう。

 

「――かみくだく!」

 

「っ! ドッコラー、木材でガードしろ!」

 

「デリッ!」

 

「ドッコ!」

 

 動きを止めた一瞬を狙われるも、ドッコラーは木材で防御。攻撃を防ぐ。ハーデリアは直ぐに口を離すと、距離を取った。

 

「危なかった……」

 

 かみくだくはあくタイプの技。かくとうタイプのドッコラーが受けても効果は今一つだが、防御を下げる追加効果がある。

 防御が下がった状態でとっておきや、威力が高まったかたきうちなど食らえば、大ダメージか最悪は戦闘不能だ。それを避けれたのは大きい。

 

(とはいえ、ふるいたてるでパワーを上げられたら差は無いけど……)

 

 より大きなダメージを食らうよりはマシである。さて、かみくだくは防いだ。ここから反撃だ。

 

「がんせきふうじ! 今度はハーデリアの周りに!」

 

「ドッコ!」

 

「周りにかい。面倒だねえ。――めざめるパワー!」

 

「木材で弾け!」

 

 岩を破壊すれば、その間にこわいかおで動きが鈍っているハーデリアは攻撃を受ける。ならば、迎撃してからだ。

 ハーデリアは無数の光球を放つが、それは全てドッコラーの木材で弾かれてしまう。

 

「連射! 上下左右に分けて放ちな!」

 

 ストレートでダメなら、変化球で。ハーデリアはめざめるパワーをそれぞれ異なるタイミングと軌道で放つ。

 

「ハー!」

 

「また弾け! そして――木材で高く跳躍しろ!」

 

「ドコドコ……ドッコラーーーッ!」

 

「木材で跳んだ!?」

 

 ドッコラーはめざめるパワーを二つ程弾くと、木材でまるで棒高跳びをするかのように高く跳躍。残りのめざめるパワーをかわしながら攻撃に移る。

 

「ばくれつパンチ!」

 

「ドッコォ!」

 

「ハーデリア、かわしな!」

 

「ハー!」

 

 余裕を持って回避するハーデリアだが、その瞬間、シューティーが微かに笑う。避けられるのは最初から想定の内。真の狙いは――地面だ。

 強烈な拳がフィールドに触れた瞬間、地面がその威力によって亀裂が走り、幾つのも土塊となって浮かび上がる。

 

「なにっ!?」

 

「デリアッ!?」

 

「ローキック!」

 

「ドッコラ!」

 

「デリッ……!」

 

 ばくれつパンチは強力だが、その分外しやすくて隙もある。先ずは着実にダメージを与えに行く。

 岩で逃場を制限され、そこに土塊で更に動きを封じられたハーデリアの体毛が無い足にドッコラーのローキックが炸裂。

 速さを下げられ、しかも効果抜群の技により、小さくはないダメージを受ける。

 

「――そろそろかね。とっておき!」

 

「来る! ドッコラー、木材で防御!」

 

 あの技、とっておきが来る。動きが鈍くなっているとはいえ、この近距離ではかわせない。

 しかし、想定と訓練はしている。木材でのガードで耐え抜き、反撃で倒そうとする。

 

「ハーーーーーッ!!」

 

「ドッコ!?」

 

「なっ!?」

 

 しかし、ドッコラーは防御を全くせず、無防備にとっておきを食らってしまう。

 

「どうした、ドッコラー!?」

 

「ドッ……コ……ラ……」

 

「これは……ねむり!?」

 

 予想外の出来事に、シューティーは直ぐに確認。ドッコラーは、ねむり状態に陥っていた。

 ねむりは、時間がある程度経つまで攻撃を受けても目覚めない危険な状態異常。シューティーは急いでドッコラーをモンスターボールに戻す。

 

「くっ、いつの間に……!?」

 

「いつだと思う?」

 

 本で技についてはある程度知っている。ねむりにする主な技はさいみんじゅつやねむりごな、キノコのほうし等だが、ハーデリアはそれらの技を使っていない。と言うか、使えないはず。

 

(それら以外で、ねむりに出来る技……? ――まさか!?)

 

 シューティーはある場面を思い出し、ハーデリアが何の技を使ったのかを理解した。

 

「あくび……!」

 

「大正解」

 

 最初のハーデリアの欠伸。あれはポケモンの技、あくび。

 この技も相手をねむりにする技だが、他と違って時間差で眠らせるという厄介な点がある。

 シューティーは直後に攻撃を仕掛けられたために、気付くのが遅れてしまったのだ。

 

「残念だったね。折角のチャンスを逃して。だけど、ばくれつパンチを先に叩き込めば、ハーデリアは倒せるか、そうでなくてもこんらんで有利になっただろうに」

 

「……確実を優先しただけです」

 

 一瞬、そうすべきだった迷うシューティーだが、上手く行く保証は無かった。何よりも、もう過ぎた事だ。

 

「そうかい。で、ドッコラーはねむり状態。もう一体を出すしかないねえ」

 

「……行け、ジャノビー!」

 

「――ジャノ!」

 

 シューティーのもう一匹は、ジャノビーだった。

 

「おや、プルリルじゃないのかい。これは少し意外だね。どんな思惑があるのかね?」

 

「秘密ですよ」

 

 と言っても、大したものではない。一番実力と自信のあるジャノビーを選んだだけだ。

 

「そうかい。――ハーデリア、戻りな。そして、行きな、ミルホッグ!」

 

「ホッグ!」

 

 アロエはこちらも交代だと言わんばかりにハーデリアを戻すと、ミルホッグを繰り出す。

 

「ミルホッグ、かえんほうしゃ!」

 

「ホッグゥ!」

 

「ジャノビー、かわせ!」

 

 ミルホッグは口から炎を吐き出す。ジャノビーは横に動いて避けるも。

 

「薙ぎ払いな!」

 

「ジャンプだ!」

 

 アロエがただ見過ごす訳もなく、ミルホッグに炎を横薙ぎに放たせる。シューティーもジャノビーに跳躍で炎を飛び越えさせ、回避。

 

「今度はほのおタイプの技か……!」

 

 前やサトシの時と違う技。しかも、ジャノビーには効果抜群。本当に多彩な技を使って来る。しかし、対処出来ない訳ではない。

 

「接近しないのかい?」

 

「……」

 

「なら、またこちらから行こうかね。かえんほうしゃ!」

 

「ホッグーーーッ!」

 

 黙りのシューティーに、アロエは攻撃を指示。ミルホッグは再度かえんほうしゃを放つ。

 

「また薙ぎ払いな!」

 

「ホッグーーーッ!」

 

「向こう側に飛び越えろ! そして、エナジーボール! 前と右に二つ!」

 

「ジャノォ!」

 

 ジャンプで反対側に移動すると、ジャノビーは草のエネルギー弾を前と右に二つ展開する。

 

「たたきつけるで飛ばせ!」

 

「ジャノ……ビィ!」

 

 ジャノビーはその尾で二つのエナジーボールを打ち出す。一つは薙ぎ払いに来るかえんほうしゃを止め、もう一つはミルホッグへと向かう。

 

「ホッグ!? ――ミルーーーッ!」

 

「尾で加速させた!?」

 

 かえんほうしゃを止められ、動きが鈍った間に打ち出されたエナジーボールがミルホッグに命中。ミルホッグは吹き飛び、放っていたかえんほうしゃも消える。

 

「接近しろ! いあいぎり!」

 

「れいとうパンチ!」

 

「ジャノォ!」

 

「ホッグ!」

 

 力の手刀と冷気の拳が放たれる。二匹は両手を振り回し、回避もしていく。

 

「……ミルホッグ、下がりな!」

 

「ホッグ!」

 

「ジャノビー、追え!」

 

「ジャノ!」

 

「――今だよ、地面にれいとうパンチ!」

 

「ミルホッグゥ!」

 

「――ジャノォ!?」

 

 引いたと見せかけ、地面に冷気の拳を撃ち込み、冷気で氷を作る。ジャノビーはその氷に足を取られ、体勢を崩す。

 

「さいみんじゅつ!」

 

「ホッグ!」

 

「ジャ、ノ……!」

 

「ジャノビー!」

 

 隙を狙い、ミルホッグの目が怪しく光る。両眼から催眠の光が放たれ、ジャノビーをねむり状態にしてしまう。

 

「とっておき!」

 

「ホッグーーーーーッ!!」

 

「ジャノォーーーッ!?」

 

 隙だらけのジャノビーにミルホッグの拳、とっておきが炸裂。大ダメージを与える。

 

「ミルホッグもとっておきを……!?」

 

「使えないなんて言った覚えは無いよ?」

 

 今までは試合毎に変える戦術に合わなかったから、使わなかっただけである。

 

「戻れ、ジャノビー!」

 

 不味いと判断し、シューティーはジャノビーを戻す。

 

「これでジャノビーもねむり。ドッコラーは治ってるかね?」

 

 時間はそれなりには経ったが、治ってなければドッコラーは良い的になってしまう。

 

(本当に強い……!)

 

 警戒はしていた。なのに、ドッコラーもジャノビーもねむりにされてしまった。

 アロエの力量に改めてシューティーは戦慄。緊張から冷や汗を流し、ゴクリと息を思わず飲む。しかし、勝負はまだ終わっていない。

 

「……頼む、ドッコラー!」

 

「――ドッコォ!」

 

「ほう。目が覚めてるね」

 

 出てきたドッコラーは時間が経ったお掛けでねむりから解放されていた。これで戦える。

 

(だけど、ジャノビーはしばらくねむり状態……)

 

 時間を掛けないと、倒された場合、ねむり状態のジャノビーが無防備にやられてしまう。ここはどうするべきか。

 

(いや、ここは攻めよう)

 

 アロエ相手に受身では、読まれてしまう。不利だからこそ、ここは攻めの姿勢を見せるべきだ。

 

「ドッコラー、こわいかお!」

 

「ドッココ……!」

 

「目を閉じな、ミルホッグ!」

 

「ホッグ!」

 

 こわいかおが放たれるも、ミルホッグは目を閉じて速さが低下するのを回避する。

 

「こわいかおを防いだ!?」

 

「こわいかおはその表情を見て怯むからこそ下がる。なら、見なければ良いのさ」

 

「でしたらこれです! がんせきふうじ!」

 

「避けな!」

 

 大量の岩が迫るも、ミルホッグは目を見開くと、必要最低限の見事な動作で回避する。

 

「今だ、ドッコラー! 打て!」

 

 しかし、その途中、落下した岩が不自然に前に移動する。ドッコラーが自分の前にも展開したがんせきふうじの岩を木材で打ち出し、岩と岩が激突。ミルホッグに命中して、速さが下がってしまう。

 

「やるね! がんせきふうじの岩を球の様に打ち出すなんて!」

 

「技を使いこなすのも、基本ですからね!」

 

「確かに! かえんほうしゃ!」

 

「ジャンプ!」

 

 回避の指示をしながら、シューティーは思考を続ける。

 

(……さて、ここからはどうする?)

 

 さっきの打ち出しはもう通用しないだろう。かといって、近距離はさいみんじゅつがある。あれを食らえば、問答無用でやられる。

 

(……いや、待てよ?)

 

 シューティーは思考していく。勝つための策を練っていった。

 

「――ドッコラー、接近!」

 

「ミルホッグ、れいとうパンチ!」

 

「屈んでローキック!」

 

 冷気の拳が放たれるも、ドッコラーはしゃがみ、更にその体勢でローキックを放つ。

 

「耐えな! さいみんじゅつ!」

 

 効果抜群だが、ミルホッグは耐えて踏ん張るとさいみんじゅつを放つ。

 

「目を閉じろ、ドッコラー!」

 

「ドッコ!」

 

 ドッコラーは目を閉じ、催眠の光を回避する。先ほどミルホッグがこわいかおを避けたのと同じやり方で避けたのだ。

 

「やっぱり、そう来たかい。――れいとうパンチ!」

 

(とっておきじゃない?)

 

 ここで最強の技のとっておきではなく、れいとうパンチ。違和感を覚えたシューティーだが、対処しなくてはならない。

 

「木材でガード! そして、弾け!」

 

「ドッコ! ラァ!」

 

 木材で冷気の拳をガード。次に弾き、その隙に最大の一撃を放つ。

 

「ばくれつパンチ!」

 

「ドッコ……ラァーーーーーッ!!」

 

「ホッグーーーッ!!」

 

 強烈な拳が叩き込まれ、ミルホッグは吹き飛ぶ。地面に落下すると、目を回していた。

 

「ホッグ~……」

 

「ミルホッグ、戦闘不能! ドッコラーの勝ち!」

 

「よし……!」

 

「ドッコ!」

 

 これで二対一。こちらが有利になった。シューティーは無意識にバトルの緊迫した空気でいつの間にか荒くなった呼吸を整え、掻いている汗を服で拭う。

 

「ごくろうさん、ミルホッグ。――ハーデリア!」

 

「ハー!」

 

 再び、ハーデリアが出てくる。仲間のミルホッグが倒されたが、焦るどころか逆に張り切っていた。

 

「ドッコラー、がんせきふうじ!」

 

「ドッコー――ラ?」

 

 攻撃しようとしたドッコラーだが、途中でその動作が鈍る。

 

「どうした!?」

 

 またあくびかと警戒するシューティーだが、見るとドッコラーの木材と、担いでいる方の手が凍っている。

 

「さっきのれいとうパンチ!」

 

「正解! ハーデリア、めざめるパワー!」

 

 さっきの激突の際、とっておきではなく、れいとうパンチを放ったのは冷気で動きを制限するのが目的だったのだ。

 どちらにしても防御されて倒される。ならば、動きを封じて次に繋ぐ。実に合理的な判断だ。

 

「避けろ、ドッコラー!」

 

「ドッコ……!」

 

 片側が動きづらいが、ドッコラーは辛うじて避けていく。しかし、その間にハーデリアが接近していた。

 

「あくび!」

 

「ドッコラー、防御――いや、避けろ!」

 

「ハ~……」

 

「コラ……!」

 

 木材での防御は、凍っているために無理だ。回避しかない。

 

「そこさ、かみくだく!」

 

 しかし、回避した先には読んでいたハーデリアがおり、強く噛み付かれてしまう。

 

「叩き付けな! そして、とっておき!」

 

「ドッコラー、とにかく避け――」

 

「ハー……デリーーーッ!!」

 

「ドッコーーーッ!!」

 

 ドッコラーは何とか逃げようとした。しかし、動きが制限された上に地面に叩き付けられた直後ではかわせず、まともに受けてしまう。

 

「ドッ……コ……」

 

「ドッコラー!」

 

「ドッコラー、戦闘不能! ハーデリアの勝ち!」

 

「これでお互いに一体ずつ。数の優位性も直ぐに無くなったね。さぁ、決着を着けようか」

 

「……再び行け、ジャノビー!」

 

「――ジャノ!」

 

 再び出てきたジャノビー。さっきまでのバトルで時間が経ったおかげで、ねむりから解放された様だ。

 しかし、次食らえば確実にやられる。あくびだけは絶対に避けねばならない。

 これはとっておきもだ。ミルホッグから既に一撃受けてる。もう一度受けたら、敗けと判断した方が良いだろう。

 

「行くよ、ジャノビー!」

 

「ジャノォ!」

 

「良い気迫だよ。ハーデリア、めざめるパワー!」

 

「ジャノビー、グラスミキサー!」

 

「デリリッ!」

 

「ジャノノォ!」

 

 光球が放たれると同時に、ジャノビーは回転。自身を覆うほどの草の渦を展開し、光球を巻き込んで防御する。

 

「グラスミキサーで防御とは! 面白いね!」

 

「そこで終わりじゃありませんよ! ――行け!」

 

「ジャー……ノォ!」

 

「避けな、ハーデリア!」

 

 縦に伸びた渦が、上からハーデリアに迫る。それは軽々と避けたハーデリアだが、直後にその渦からジャノビーが現れる。

 

「渦の中から!? ――攻撃と同時に移動して!」

 

「正解です! いあいぎり!」

 

「ジャノジャノ!」

 

「デリッ!」

 

 完全に不意を突かれ、ハーデリアに力の手刀が叩き込まれる。

 

「めざめるパワー!」

 

「デリリリィ!」

 

「ジャノビー、いあいぎりで弾け!」

 

「ジャノノノ!」

 

 ジャノビーはめざめるパワー全てを、見事に弾き飛ばすとそのまま切りかかる。

 

「体毛で受け止めな! ――そこであくび!」

 

「ハー……」

 

「しまっ……!」

 

 体毛で防御された隙を狙われ、あくびを食らってしまう。

 

「決まったかね?」

 

「いえ! だったら、ねむりに陥る前に倒すだけです! いあいぎり!」

 

 交代はもう出来ない。ならば、ねむりになるまでの間にハーデリアを倒すしか勝機は無い。

 

「良い判断だよ。だが、焦りがある。――かみくだく!」

 

 ねむりへの焦りから、シューティーとジャノビーは動きが荒い。その一撃をかわし、その身体にかみくだくを叩き込む。

 

「ハーデリア、地面に叩き付けな!」

 

「させるな、ジャノビー! エナジーボール! ハーデリアに叩き付けろ!」

 

「ハーデリア、離しな!」

 

「エナジーボールを打て! たたきつける!」

 

 目まぐるしい判断が行われた。叩き付けからのとっておきをしようとしたアロエだが、シューティーはエナジーボールをダイレクトに叩き込もうとする。

 危険を感じ、アロエはかみくだくを中止して攻撃を回避しようとするも、シューティーは展開したエナジーボールを打ち出しを指示。加速したエナジーボールはハーデリアに直撃する。

 

「判断し続けれるようになってるね。大したものだよ」

 

 前のバトルでは、不利になると判断が甘くなっていたが、今回はまだ未熟さはあるものの、判断し続けている。

 

「勝つために考え続ける。トレーナーの基本ですよ」

 

 しかし、精神的にはキツいのか、掻いている汗は増しており、また服で拭っていた。

 

「ふふふ、正に男子三日会わざれば刮目して見よだね。だが――ここで終わりだよ」

 

 ハッとするシューティー。ジャノビーを見ると、ねむりになりかける寸前だった。

 

「時間切れ。あたしの勝ちだね」

 

「くっ……!」

 

 歯軋りするシューティー。もう打つ手が無い。このままジャノビーはねむりになり、ハーデリアがとっておきを放って決着となるだろう。

 今回もまた勝てなかった。シューティーがそう思った瞬間だった。

 

「――ジャノ! ジャノジャノォ!」

 

「ジャノビー!?」

 

 ジャノビーが自分の顔を地面にガンガンと、全力で何度も叩き付けたのだ。そして、戦意に満ちた眼差しをアロエとハーデリアに向ける。

 

「自分の顔を叩き付けて、痛みで眠気を無理矢理飛ばしたのかい!? ははっ……とんでもないね!」

 

「ジャノビー……」

 

「ジャノノ!」

 

 今までのダメージや、さっきの痛みがあるだろう。だが、ジャノビーは笑って自分を見た。まだ行けると言いたげに。

 

「あぁ、まだ終わってない。行こう、ジャノビー」

 

「ジャノ!」

 

 ポケモンがここまでしてくれた。何としても勝つ。勝って見せる。

 

「眠気を飛ばしたのは驚いたよ。だけど、終わりが迫って来たのには違いない。――覚悟は良いかい?」

 

「ハーデ?」

 

「えぇ、勝つための覚悟なら出来ましたよ。――そうだろ、ジャノビー」

 

「――ジャノーーーーーッ!!」

 

「しんりょく、か」

 

 緑色の淡い光がジャノビーの身体から溢れ出す。草タイプの技の力を高める特性、しんりょくの発動だ。

 

「めざめるパワー!」

 

「エナジーボール!」

 

 ジャノビーからは、今まで以上の大きさのエナジーボール。ハーデリアは今まで複数出していたのを、一つに集中した光球。

 二つの球が同時に発射され、二匹の中間で激突する。結果は、しんりょくで威力が高まったエナジーボールが威力を軽減されながらも、めざめるパワーを突破。ハーデリアに向かう。

 

「かわしな、ハーデリア!」

 

「ハー!」

 

「ジャノビー、グラスミキサー!」

 

「ジャノジャノ……!」

 

 ハーデリアがエナジーボールをかわした間に、ジャノビーはグラスミキサーを発動。これまたしんりょくで高まっており、渦は範囲と勢いが増している。

 

(どっちかね?)

 

 先程と同じ様に渦の中から出てくるか、今度は違う手を仕掛けてくるか。

 

「――発射!」

 

 再度グラスミキサーが放たれる。ハーデリアはダメージがかなり身体を動かし、大きく回避する。

 

「行け、ジャノビー!」

 

 直後、グラスミキサーからジャノビーが再度出てきた。

 

「前者! ハーデリア――とっておき!」

 

「ジャノビー――エナジーボール!」

 

「ハー……デリィーーーッ!!」

 

「ジャノ……ビーーーーッ!!」

 

「エナジーボールを盾にした!?」

 

 物凄い音が響く。ハーデリア渾身のとっておきと、ジャノビーの全力のエナジーボールが衝突したのだ。

 

「ジャノノノォ……!!」

 

「ハーアアァア……!!」

 

 技の激突による余波で、ジャノビーとハーデリアの身体に痛みが走る。しかし、そんなことは知ったことかと言わんばかりに耐え、進んでいく二匹。

 

「防ぎきれ、ジャノビー!」

 

「押し切りな、ハーデリア!」

 

 この激突に打ち勝った方が、間違いなくこのバトルに勝つ。

 だが、ここまで来ればトレーナーの自分達に出来るのは、言葉を届ける事のみ。故に、シューティーとアロエは叫ぶ。

 

「ジャ……ノ……ビィイイィイ!!」

 

「ハー、デリ……アアァアァァ!!」

 

 ジャノビーとハーデリア、二匹が残った全ての力を、叫びながら放つ。すると、技の激突による爆風と土煙が発生した。

 その直後、煙から二つの何か――激突と吹っ飛んだジャノビーとハーデリアが出てきて、地面にバウンドしながら互いのトレーナーに向かう。

 

「ジャノビー!」

 

「ハーデリア!」

 

「ジャ――ノッ!」

 

「ハー……――デリ~……」

 

 満身創痍ながらも立ち上がるジャノビー、ハーデリアは反対に地面に突っ伏していた。

 技に直接飛び込んだハーデリアと、技越しに耐えたジャノビー。その差がダメージに影響を与え、ジャノビーの勝因となったのだ。

 

「ハーデリア、戦闘不能! ジャノビーの勝ち! よって――この勝負、チャレンジャー、シューティーの勝利!」

 

「――よし!!」

 

「ジャノーーーッ!!」

 

 勝利宣告に、シューティーとジャノビーは思わず大声を上げる。

 シューティーは落ち着くため、コホンと態とらしく咳を吐くが、直後に精神的な疲労感がドッと溢れて身体がふらつく。

 

「うっ……」

 

「精神的に疲れてるね。そっちに関してはまだまだ。まぁ、何にしても見事だったよ。シューティー」

 

「アロエさん……」

 

「まだまだ荒さや未熟さはある。だけど、進歩してるのが分かるよ。これが、あたしに勝った証、ベーシックバッジさ」

 

 アロエはシッポウジムで預かるバッジ、ベーシックバッジをシューティーに手渡す。

 

「ベーシックバッジ……」

 

 基本、初歩の意味を持つ単語の名前のバッジ。新たな基本を学び始めたからこそ、手に入れる事が出来た。

 シューティーはふとそんな風に感じ、ベーシックバッジをバッジケースに仕舞う。

 

「ありがとうございました」

 

「次のジムも頑張りな」

 

「はい。ジャノビー、ゆっくり休め」

 

「ジャノ」

 

 頑張ってくれたジャノビーをモンスターボールに戻し、同じく頑張ったドッコラーも回復させるべく、シューティーはポケモンセンターに向かう。

 

 

 

 

 

 二匹を回復して貰い、疲労感も消えたあと、シューティーはバトルクラブの特訓ルームに向かう。

 

「サトシ」

 

 ランニングルームには今、サトシだけがいた。Nやデント、アイリスはいないが、彼に話せれば充分だ。

 

「おっ、シューティー! ジム戦どうだった?」

 

「この通り」

 

 ベーシックバッジを見せ、アロエにリベンジを果たした事を証明した。

 

「勝ったんだな!」

 

「何とかね」

 

 苦戦しながらも、何とか勝利した。だが、この勝利には大きな価値がある。新たな一歩を確かに実感出来たのだから。

 

「後は俺かー。負けてられないな」

 

 Nもシューティーも、バッジをゲットした。後は自分だけ。

 

「シューティーはこの後は?」

 

「次の町に向かうよ。ジムにも勝ったしね」

 

 サトシの再戦に興味が無いわけではないが、シューティーは思っている。彼なら勝つだろうと。

 それに、自分はもっと多くの基本を学ばなくてはならない。止まっている場合ではないのだ。

 

「そうか。また会おうぜ」

 

「あぁ」

 

 サトシに別れを告げた後、バトルクラブを出たシューティーは、日を見上げる。

 

「さて、行こう」

 

 夢に向けて、新たな一歩を歩み始めた少年は、次の一歩を進むべく、旅を再開した。

 

 

 

 

 

「はぁー、疲れたな。ピカチュウ」

 

「ピカピ」

 

 夜。再挑戦に向けての最後の特訓も終わり、もうすぐ就寝を迎える少し前の時間。

 サトシとピカチュウは、少しだけ外に出て夜風を味わっていた。ほんのりとした涼しさが心地よい。

 

「次こそは勝たないとな」

 

「ピカピカ、ピカピ!」

 

 今度こそは勝てるよと、ピカチュウはサトシ、そして戦うだろうとミジュマルやポカブを応援する。

 

「ありがと、ピカチュウ。さて、そろそろ――」

 

「――おや?」

 

 ポケットモンスターに戻って、部屋で寝ようとしたその時、彼等に一人の人物が近寄る。カールした髪が特徴の壮年の男性だ。

 

「君のそのポケモン……ピカチュウですな。珍しい」

 

 どうやら、ピカチュウが珍しくてサトシ達に近付いたらしい。

 

「あっ、はい。俺達、カントーから来たんです」

 

「ほう! 遠く離れた場所からここまで! よほど、信頼のある関係なのですな~。ご立派!」

 

「ありがとうございます」

 

 うんうんと感心した様子の男性はサトシを誉め、サトシはお礼を言う。

 

「君達の様な、深い信頼関係を築ける者ばかりなら、もっと良くなるのでしょうが……」

 

 はぁと、男性は悲しそうにため息を吐く。

 

「えと……」

 

「おっと、これは失礼。単なる愚痴ですよ。気になさらず」

 

「あっ、わかりました」

 

「ピカ」

 

 男性にそう言われ、サトシとピカチュウは深く気にしない事にした。

 

「――何を余計な油を買っている」

 

「お主か」

 

 そこにもう一人男性がやって来た。呆れた声色を出したその人物は、顎鬚にこけた頬の特徴をしている。

 

「いやいや、この少年はイッシュにはおらぬピカチュウと一緒におったのでな。それに、遠く離れた地方から共に来るほどの良好な関係で、ついつい感心してのう」

 

「少年、本当か?」

 

「あっ、はい」

 

 それを聞き、こけた頬の男性は内心で安堵する。

 

「話は分かった。しかし、だからと言って、長時間止めるのはその少年やピカチュウに迷惑だろう。第一、私達には仕事がある」

 

「分かっておるわい。硬いやつじゃ、全く……。済まんの、少年」

 

「いえ、気にしてませんよ」

 

「ピカピカ」

 

「おおっ、この少年やピカチュウは直ぐに許してくれたと言うのに、隣の者は……」

 

 態とらしい、涙を拭う態度を見せるカールした髪型の男性。

 

「まだ言うか。さっさと行くぞ」

 

「分かっておるわい。では、お元気で」

 

「そちらこそ」

 

「ピカ」

 

「おおっ、何と優しい。……隣とはえらい違いじゃな」

 

「……」

 

 最早付き合ってられないと判断したのか、こけた顔の男性は早足で去って行く。

 

「こ、こらっ、冗談に決まっておろうが~! またんか~!」

 

 早足で去る同僚に、カールした髪型の男性もまた早足で追い掛けていった。

 

「……変わった人だったな」

 

「ピカ」

 

 しかし、カールした髪型の雰囲気が少しある人物と似ていた気がする。どことなくNと。

 

「まっ、良いか。寝ようぜ、ピカチュウ」

 

「ピカピ」

 

 そろそろ、良い時間帯になっただろう。明日に備え、サトシとピカチュウはポケモンセンターに戻った。

 

 

 

 

 

「待たんか、全く……。良い加減、機嫌を直してくれんかのう。――ヴィオ」

 

「そう思うのなら、もう少し真面目にやれ。――ジャロ」

 

 かつて、部下と共にロケット団の追跡をしていたこけた顔の人物、ヴィオ。

 そして、ジャロと言われたカールした髪型の彼もまた、同じ場所に所属する人物の一人。それも、ヴィオと同じ地位の人物だ。

 

「我等の任務、分かっているだろう?」

 

「勿論じゃ。ロケット団に本物のメテオナイトを奪われぬように監視する。忘れてはおらぬ」

 

 彼等がシッポウシティに来たのは、ロケット団の監視が目的。その為に、二人とその部隊がこの町に訪れたのだ。二十四時間中、監視するべく。

 

「奴らにメテオナイトを渡す訳には行かんからの」

 

「あぁ。とはいえ、夜は私の担当な訳だが」

 

「お主は『裏』じゃからのう」

 

 ヴィオとジャロは地位こそは同格だが、役割が大きく異なる。

 故に、彼等が一緒に来て、朝昼はジャロとその部下が。夜はヴィオが努めるのだ。

 但し、ヴィオにはジャロや自分に指示を出した人物にも秘密にしている目的がある。

 自分が深く信頼している少数の部下を使い、ある人物に自分達の情報を伝えていたのだ。『彼』が見つからないように。

 

(こいつが『此方側』なら、協力して隠せたのだが)

 

 ジャロは穏健派だが、それだけで此方側に引き込むのはリスクが高い。あの二人は違う場所で各々の仕事をしている以上、今は自分だけでやるべきだ。

 

「では、夜は頼むぞ」

 

「昼は任せる」

 

 二人の男性は、もう片方に告げると、各々の仕事に戻る。自分達の目的のために。

 

 

 

 

 

 砂が占めるその場所に、一つの物体が砂を周囲に撒き散らしながら着陸する。ロケット団の飛行艇だ。

 飛行艇の扉が開き、三人と一匹が砂地に着地する。ロケット団とフリントだ。

 

「ここがリゾートデザートだ」

 

「リゾートって名前の割には、リゾートの要素無いわね~」

 

 何処がリゾートなのか、聞きたいぐらいである。

 

「砂ばかりだな」

 

「砂風呂に使えるなら、リゾートに出来るのににゃ」

 

「そういや、以前砂風呂やってる場所があったわね」

 

「あぁ、有ったな。あれは体験して見たかったな~」

 

 メグロコの騒動時に行った、砂風呂を出し物にしていたリゾートを思い出す三人。しかし、間欠泉のせいで温泉になっていて、今はもう無いのだが。

 

「下らん事を言ってないで、さっさと調査するぞ」

 

「へいへい」

 

 早速、ロケット団とフリントはリゾートデザートの地形を把握していく。こちらは事前に地形のデータがあるため、大した時間は掛からなかった。

 

「よし、では本題の古代の城に入るぞ」

 

「それは良いけど、どこにそんな場所があんのよ?」

 

「見当たらないのにゃ」

 

 夜で見辛いが、周りには城らしき物は無い。

 

「こっちだ。来ると良い」

 

 フリントの案内に従い、ロケット団はある場所に移動する。そこには、岩場と地下に向かう階段があった。

 

「地下にあるのか?」

 

「あぁ、砂で埋まったのか、元々こういう構造なのかは知らないがな」

 

 階段を降り、古代の城の内部へと入っていく。

 

「へぇ、城らしくなったじゃない」

 

 階段を降りきると、内部は砂ばかりではあるものの、立派な岩壁や城を支える岩の柱が見え、城らしい光景になった。

 

「確かに何か有りそうな雰囲気だな」

 

「案外、とんでもないお宝もあるかもしれないにゃ」

 

 当初の目的である、イッシュの伝説、幻のポケモンに関する情報や、昔の国があった時代の宝もあるかも知れない。

 

「ここからは二手に別れる。私はあちらに向かう」

 

「一緒に行かないのか?」

 

「巻き込まれるのは御免だ」

 

 この連中と一緒にいては、何が起きるか分かったものではない。なので、ここからは別行動とフリントは三人から離れた。

 

「ほんと、いつまで根に持ってんのよ。あいつ」

 

「まぁ、良いじゃないか。あいつにはあいつなりのやり方があるんだろ」

 

「それにこれはチャンスにゃ。フリントのいないところでにゃー達がお宝や情報をゲットすれば……」

 

「この前の失態を巻き返す――いや、それ以上の成果を得れるな」

 

「だったら、さっさと行くわよ! フリントのやつをギャフンと言わせてやるんだから!」

 

「おー!」

 

 任務にもかかわらず、まるで宝物探しの感覚でロケット団は古代の城の捜索を開始した。

 


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