異世界はガウストとともに。   作:naogran

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神様の手違いで死んでしまった伊狩雄也と望月冬夜は、違う世界で新しい人生を送る事となった。そこは魔法や魔物が存在するとてもファンタジーな世界だった。




そんなある日、雄也と冬夜とエルゼとリンゼが馬車に乗って何処かへ向かってた。

冬夜『でも大丈夫。僕には神様がくれた能力とこのスマホがあるから。』

スマホでエルゼの寝顔を撮った。

雄也『俺も大丈夫。このギアレットハンターと、相棒ガウストのライザークが居れば十分だ。』

彼の腰には、ギアレットハンターが入ったハンティングホルダーがある。隣にライザークが浮遊している。




途中で馬車を停めて降りる。

冬夜「今日はこの街で宿を取ろう。」

エルゼ「王都まではまだまだ長いからね。」

雄也「あ〜座るの疲れた〜・・・」

冬夜「2人共、王都まで手紙を届けるって依頼で本当に良かったの?それよりも隣にあったメガスライム討伐の方が・・・」

ライザーク「俺も討伐が良かったぞ。メガスライムがどんな奴か見たかったのによ。」

エルゼ・リンゼ「ダメッ!」

冬夜「え?何で?」

エルゼ「スライムみたいなブヨブヨネバネバした物体が嫌なの!生理的に!」

リンゼ「うんうん!」

エルゼ「それにアイツらって服とか溶かしてくるのよ。絶対に嫌!」

スライムで服を溶かされたエルゼとリンゼを想像する冬夜。

冬夜(それは・・・惜しいかも。)

雄也「う〜ん・・・確かに危なっかしそうな奴だな。2度と受けないでおこう。」

エルゼ「宿の前に食事しましょう。銀月みたいなお店があると良いんだけど・・・」

冬夜「あ!だったら一度ゲートで銀月に戻って、また明日ここからスタートすれば楽じゃない?」

雄也「それは効率が良いかもな。」

エルゼ・リンゼ「却下よ!(却下です!)」

ライザーク「どうしてだ?」

エルゼ「知らない街で知らない店を訪ね、知らない場所で泊まるのが良いんじゃない。分かってないわね。」

リンゼ「うんうん!」

ライザーク「確かに、それは面白そうだな。」

エルゼ「でしょでしょ!」

冬夜「ははは・・・」

???「おい待てゴルァ!」

雄也・冬夜「ん?」

向こうから男の怒鳴り声が聞こえた。聞こえた方向を見ると、群衆が集まっていた。

冬夜「何だ?」

雄也「ストリートライブか?」


2話「初旅、そしてサムライ。」

群衆が見てる先には、1人の少女の侍が立っていた。少女の周りには、男達が囲んでいた。

 

リンゼ「あの子、変わった格好をしてますね。」

 

冬夜「侍だ・・・」

 

雄也「侍だな。」

 

リンゼ「侍?」

 

 

 

 

男A「姉ちゃん、俺の仲間を可愛がってくれたそうじゃないか。」

 

少女「あぁ、警備兵に突き出した奴らの仲間でござるか。あれはお主たちが悪い。乱暴狼藉を働くからでござる。」

 

男「喧しい!やっちまえ!!」

 

激昂した男が棒を振り上げて襲う。しかし少女が近接格闘で数人片付けた。

 

 

 

 

エルゼ「あんな技、見た事ないわ!」

 

冬夜「あれは・・・柔術!?」

 

雄也「この世界にも柔術が存在してたとはな。」

 

 

 

 

その後も複数の男達を蹴散らした。すると少女の腹が鳴り始めた。

 

少女「うぅ・・・お腹が減って力が・・・」

 

エルゼ「あの子急に動きが!」

 

リンゼ「危ない!後ろ!」

 

少女の後ろから、男が刀を振り上げて襲い始めた。

 

 

 

 

冬夜「砂よ来たれ!盲目の砂塵ブラインドサンド!」

 

 

 

 

しかし冬夜の砂の魔法で男の目を眩ませた。

 

男B「目があああああああ!!!」

 

冬夜「今だ!」

 

怯んでる隙にキックした。

 

リンゼ「冬夜さん!?」

 

エルゼ「あーもう!厄介事に首を突っ込んで!」

 

そこにエルゼも加わって男達を蹴散らす。

 

男C「こんのガキ共が!!」

 

残った男が剣を振り上げた。しかしその時。

 

男C「いでででででで!!!」

 

ギアレットハンターの釣り針が男の口に引っ掛かって、雄也がリールを巻いて引っ張る。

 

雄也「動くなよ!動いたら鼻の穴をでかくするぞ!ライザーク!」

 

ライザーク「おう!くたばりやがぇぇぇ!!」

 

強烈な尾鰭で殴って男を倒した。

 

雄也「これで片付いたか。」

 

男D「警備兵だ!!」

 

雄也「何!?」

 

リンゼ「冬夜さん、ここは離れましょう!」

 

冬夜「分かった!君も早く!」

 

 

 

 

 

 

少女を連れて、人気のない路地裏へ逃げ込んだ。

 

冬夜「ここまで来れば大丈夫だね・・・」

 

雄也「あんた、大丈夫だったか?」

 

少女「ご助成辱く。拙者、九重八重と申す。あ!八重が名前で、九重が家名でござる。」

 

冬夜「ひょっとして君、イーシェンの出身?」

 

八重「いかにも。イーシェンのオエドから来たでござる。」

 

冬夜「オエド?(そんな所まで似ているのか・・・)僕は望月冬夜。冬夜が名前で、望月が家名ね。」

 

雄也「俺は伊狩雄也だ。雄也が名前で、伊狩が家名だ。」

 

八重「お!冬夜殿と雄也殿もイーシェンの生まれでござるか?」

 

冬夜「あ!似ているけど違う国から来た!」

 

エルゼ・リンゼ「え!?」

 

それを聞いたエルゼとリンゼが驚いた。

 

冬夜(あ、イーシェン出身って事にしてるんだっけ。)

 

雄也「俺もイーシェン出身の観光客だ。なあ八重、さっきフラフラしてたけど大丈夫なのか?」

 

八重「その・・・拙者ここに来るまでに恥ずかしながら路銀を落としてしまい・・・それで・・・」

 

するとまたお腹が鳴り、八重が赤面する。

 

冬夜・エルゼ・リンゼ「えぇぇ・・・」

 

雄也「金落としたんかい・・・それは災難な事・・・」

 

 

 

 

 

 

近くの店でご馳走する事にした。

 

八重「いただきまーす!」

 

料理を美味しそうに食べる。

 

リンゼ「へぇ〜。八重さんは武者修行の旅をしているんですね。」

 

八重「いかにも!我が家は代々武家の家柄でござる。拙者は腕を磨くため旅に出たのでござるよ!」

 

エルゼ「成る程ねぇ。」

 

八重「何れは父や兄と肩を並べられる剣士になるでござるよ!」

 

冬夜(凄い食欲・・・)

 

雄也(余程腹減ってたんだな。)

 

ライザーク(いやぁ〜、高級エサは美味えな!)

 

雄也(おいライザーク、高級エサ少ねえんだぞ。程々にしとけよ。)

 

リンゼ「それで、八重さんはこれからどうするのですか?」

 

八重「取り敢えず・・・はむ!王都に・・・もぐもぐ、腕試しに行ってみようと思っているでござるよ。」

 

エルゼ「奇遇ね!私たちも王都に仕事で行くのよ。ねぇ、良かったら一緒に行かない?」

 

八重「誠でござるか?ごちそうになった上、もぐもぐ、かくなる上は精一杯、もぐもぐ・・・」

 

雄也「おい食いながらトークすんなよ。」

 

リンゼ「構わないですよね?冬夜さん。」

 

冬夜「ああ、それは別に良いんだけど・・・」

 

リンゼ「雄也さんも構わないですよね?」

 

雄也「異議無しだ。」

 

エルゼ「うん。決まりね!」

 

 

 

 

 

 

冬夜(食費、大丈夫かな・・・)

 

雄也(金貨が減ってゆく・・・)

 

 

 

 

 

 

店から出て、王都へ再び向かう。

 

雄也「あ〜、風が心地良いな〜。」

 

ライザーク「確かに。」

 

冬夜「八重も馬が扱えるとはね。」

 

八重「馬術も一通り修行したでござるよ。」

 

エルゼ「3人で交代で出来るわね。正直リンゼと2人じゃキツかったし・・・」

 

冬夜「か、肩身が狭い・・・」

 

雄也「まあまあ元気出せよ。」

 

リンゼ「そんな事ありません!冬夜さんは優れた魔術の才能をお持ちじゃないですか!」

 

魔法書を冬夜に見せる。

 

エルゼ「属性魔法だけじゃなく、私のブーストも使えるだろうし。」

 

雄也「凄えよな冬夜は。」

 

リンゼ「どうやら冬夜さんなら、無属性魔法なら魔法名と詳しい効果さえ分かれば、ほぼ発動出来るようですね。」

 

エルゼ「全く、ここまで万能だと驚くより呆れるわ。」

 

冬夜「あはは・・・でも、無属性魔法って色々な種類があるんだろ?」

 

リンゼ「ええ。ほぼ個人の魔法で使用者の数だけ種類があると言われています。」

 

冬夜「途方もない数って訳か・・・」

 

雄也「益々興味深くなってきたな。」

 

リンゼ「しかし属性魔法と違って個人しか使えないので、どんな無属性魔法かはよく分かっていないんです。今出回っている魔法書は趣味レベルの物ばかりですね。」

 

雄也「個人しか使えないかぁ・・・」

 

冬夜「まぁ、自分に使えない魔法をわざわざ勉強しようなんて人は居ないわな。」

 

雄也「どんな無属性魔法があるんだ?俺にも見せてくれ。」

 

冬夜「髪の毛がクリクリロールになる魔法・・・」

 

雄也「やたらと犬に懐かれる魔法・・・」

 

冬夜「茶柱を立てる魔法・・・確かに・・・数ある割にろくなのない・・・」

 

雄也「ってか犬と茶柱の魔法って何だよ・・・俺犬より猫だな。」

 

エルゼ「まぁどこで役に立つか分からないし、片っ端から覚えていけば良いんじゃない?」

 

冬夜(確かに神様に記憶力は強化されてるけど・・・ここに載っているのを全部覚えるのはキツイぞ。ん?)

 

すると、ある魔法を見付けた。

 

冬夜「遠くにある小物を引き寄せる魔法か・・・使えるかな?」

 

リンゼ「試してみたらどうですか?」

 

冬夜「アポーツ。」

 

小物を引き寄せる魔法を発動した。しかし何も起きなかった。

 

冬夜「あれ?」

 

雄也「どした?」

 

リンゼ「何も起きませんね・・・」

 

エルゼ「何を引き寄せようとしたのよ?」

 

冬夜「八重の刀。急に無くなったら驚くかと思って。」

 

エルゼ「刀だと重過ぎてダメだとか?」

 

雄也「お前ちょっと嫌らしいなおい。」

 

冬夜「ええ?」

 

雄也「まあ俺は、此奴で釣り上げる事かな。」

 

ギアレットハンターから釣り糸を射出して、遠くにあった石を引っ掛けてリールを巻いて釣り上げた。

 

冬夜「それ凄いね。」

 

雄也「まあこんな感じだ。それに、小物ってそれに書いてあるだろ?刀じゃちょっと荷が重くねえか?」

 

冬夜「成る程。確かに小物って書いてあるしな。今度は明確にイメージして。・・・アポーツ。」

 

再び魔法を発動した。すると次の瞬間。

 

 

 

 

八重「ひゃっ!」

 

 

 

 

雄也「どした八重!?」

 

エルゼ「何何?冬夜何を取ったのよ!」

 

冬夜「これ。八重の髪を結んでたリボン。」

 

引き寄せた小物は、八重の髪を結んだリボンだった。

 

雄也「何故これを選んだ?」

 

リンゼ「成功ですね!使い方によっては便利ですが、恐ろしくもありますね・・・」

 

冬夜「恐ろしい?」

 

エルゼ「だって知らぬ間に物が無くなるのよ!これってスリとか、そう言う事をし放題って事でしょ?」

 

ライザーク「それは怖えな・・・俺のエサが無くなったらどうすんだ・・・?」

 

雄也「流石にそれは無えだろ。」

 

冬夜「成る程。そう考えると怖いな・・・お金とか宝石、そう言った類の物も奪えるのか・・・」

 

エルゼ「やるんじゃないわよ?」

 

リンゼ「やらないで下さいね?」

 

雄也「やるんじゃねぇぞ?」

 

ライザーク「やるなよ?」

 

冬夜「やらないよそんな事!でもこれって下着とかも引き寄せる事が出来るのかな・・・」

 

雄也「ブフォ!!」

 

エルゼ・リンゼ「キャーー!」

 

怯えたエルゼとリンゼが端っこへ避難した。

 

冬夜「冗談だって!」

 

雄也「お前、本当嫌らしいな。」

 

ライザーク「世の女性達から非難されるぞ?」

 

冬夜「だから冗談だって!」

 

八重「あのー、髪が風でバサバサするのでござる・・・」

 

雄也「ああ、悪い悪い。おい、リボン返してやれ。」

 

 

 

 

 

 

八重の髪をリボンで結んだ。

 

 

 

 

 

 

冬夜「短い時間だけ摩擦係数を激減させる魔法スリップ・・・無属性魔法って何に使ったら良いか全然分からないのばっかだな・・・あ、これは・・・ロングセンス!」

 

エルゼ「何の魔法?」

 

冬夜「感覚拡張魔法だって。遠くの物を見たり聞いたり出来るみたい。」

 

エルゼ「覗きに使わないでよ・・・」

 

冬夜「使いませんよ。」

 

雄也「出来たとしても封印しとけそれ。」

 

冬夜「分かってますって。・・・ん?」

 

すると冬夜が何かを嗅いだ。

 

エルゼ「匂いが分かるの?」

 

冬夜「この匂い・・・鉄?・・・いや!血の匂いだ!」

 

雄也「血!?」

 

エルゼ「!」

 

リンゼ「!?」

 

冬夜「この先だ!」

 

八重「っ!」

 

馬車の速度を上げる。

 

雄也「ライザーク!先に行ってくれ!」

 

ライザーク「任せろ!」

 

一足先にライザークが匂いがする方へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

森の中には、3人の兵士が魔物達に囲まれていた。その魔物達の後ろには、謎の男が立っていた。

 

謎の男「ふっふっふ。」

 

ライザーク「そこまでだ!!!」

 

謎の男「な!?」

 

ライザーク「ライトニングシャワー!!!」

 

真横からライザークが現れ、ライトニングシャワーを放った。更に雄也達が遅れてやって来た。

 

リンゼ「炎よ来たれ!渦巻く螺旋!ファイアーストーム!」

 

ファイヤーストームで魔物達を燃やす。

 

エルゼ「ていや!!」

 

パンチ魔物を倒す。

 

八重「はぁっ!!」

 

刀で魔物を斬り裂く。

 

八重「うわあああああ!!」

 

しかし石に躓いて転んでしまった。

 

八重「いたたた・・・っ!?」

 

そこに、1匹の魔物が剣を振り下ろそうとした。

 

冬夜「摩擦よなくなれ!スリップ!」

 

魔法で魔物を転ばせた。その隙に、八重が刀で串刺しにした。

 

冬夜(無属性魔法も使い方次第って訳か・・・)

 

雄也「大人しくしろ!!」

 

釣り針で魔物の口に引っ掛けていた。魔物があまりの痛さに暴れてる。すると魔物が剣を雄也に向かって投げた。

 

雄也「ロッドカウンタ!」

 

しかし、ギアレットハンターを素早く横に振ってに動かして剣を跳ね返した。剣が魔物の体に刺さった。

 

ライザーク「どりゃああああ!!」

 

ライトニングシャワーで魔物達を倒した。

 

ライザーク「そこでお寝んねしてるんだな!」

 

そして魔物達を全部倒した。

 

八重「辱い。」

 

冬夜「無事で良かった。」

 

 

 

 

しかし、魔物達がまた増え始めた。

 

エルゼ「まだこんなに!?」

 

八重「はああああ!!!」

 

刀で魔物達を斬り裂く。

 

冬夜「おお!見事な剣術!」

 

雄也「冬夜!後ろ!」

 

冬夜「ええ!?」

 

後ろから魔物が襲って来た。しかし、氷の矢が魔物を刺した。

 

冬夜「リンゼ!」

 

雄也「連続ロッドカウンタ!」

 

飛んで来た多くの剣を跳ね返して魔物達を倒した。

 

ライザーク「この野郎!!」

 

尾鰭で魔物達を飛ばす。しかし何体倒しても魔物達が増殖するばかり。

 

ライザーク「くっ!まだこんなに居んのかよ・・・!」

 

エルゼ「キリが無いわ!」

 

八重「一体、何体居るでござる!?」

 

謎の男「闇よ来たれ。我が望むはトカゲの戦士、リザードマン!」

 

近くに居た謎の男が魔物リザードマンを召喚した。

 

冬夜「あれは!」

 

リンゼ「召喚魔法です!あの男がリザードマンを呼び出しています!」

 

冬夜「分かった!スリップ!」

 

摩擦魔法で謎の男を滑らせた。

 

雄也「確保ーーー!!」

 

釣り針を射出し、謎の男を釣り糸で絡めた。

 

 

 

 

 

 

八重「そこまででござる。」

 

謎の男は呆気なく確保された。

 

 

 

 

 

 

襲われた兵士達は無傷だった。

 

兵士「君達のお陰で助かった。」

 

冬夜「いえ。それより被害は?」

 

兵士「護衛7人が殺られ・・・くそっ!もう少し早く気付いていれば・・・」

 

???「誰か!誰かおらぬか!」

 

全員「っ!?」

 

馬車の中から、少女の悲鳴が聞こえた。急いで駆け付ける。

 

雄也「どうした!」

 

少女「誰か爺を!胸に矢が刺さって・・・」

 

馬車の中には、泣いてる少女と、胸部から流血して倒れてる老人が居た。

 

雄也「大丈夫ですか!?」

 

冬夜「リンゼ、回復魔法を!」

 

リンゼ「刺さった矢が体に入り込んでしまっています・・・この状態で回復魔法を掛けても異物が体内に残ってしまいます・・・」

 

雄也「そんな!」

 

少女「爺・・・!」

 

爺「お嬢様・・・お別れでございます・・・お嬢様と過ごした日々は・・・ゴホッ!」

 

少女「爺!爺!」

 

冬夜「リンゼ、矢を抜けば回復出来るんだよな?」

 

リンゼ「はい・・・でも・・・」

 

雄也「おい!どうやって矢を抜くんだよ!・・・矢を抜く・・・っ!そうか!」

 

冬夜「よし!アポーツ!」

 

折れた矢に魔法を掛けた。すると爺の体内に入ってる矢が手元に渡った。

 

リンゼ「体の中から矢を・・・!」

 

冬夜「光よ来たれ、安らかな癒しキュアヒール!」

 

癒しの魔法を爺に掛けた。すると流血が収まり、傷が無くなった。

 

爺「おぉ、痛みが引いて・・・」

 

回復した爺が起き上がった。

 

少女「爺!」

 

冬夜「ふぅ〜・・・」

 

リンゼ「凄いです!冬夜さん!」

 

雄也「アポーツが役に立って良かったな。」

 

 

 

 

 

 

少女「感謝するぞ冬夜とやら!お主は爺の、いや爺だけでない!妾の命の恩人じゃ!」

 

爺「ご挨拶が遅れました。私オルトリンデ公爵家家令を務めておりますレイムと申します。そしてこちらのお方が、公爵家令嬢、スゥシィ・エルネア・オルトリンデ様でございます。」

 

スゥシィ「スゥシィ・エルネア・オルトリンデだ。宜しく頼む!」

 

冬夜「はぁ。」

 

雄也「長い名前だな。」

 

すると、雄也と冬夜を除いた3人がその場で頭を下げた。

 

冬夜「どうしたの?」

 

エルゼ「どうしたって・・・何であんた達はそんなに平然としてるのよ!公爵家よ!公爵!」

 

冬夜「公爵!?」

 

雄也「そうだった!」

 

慌ててその場で頭を下げる雄也。

 

リンゼ「公爵は爵位の一番上、その爵位を与えられるのは王族のみです。」

 

冬夜「王族・・・・え!?」

 

スゥシィ「いかにも!妾の父上、アルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵は国王陛下の弟である!」

 

雄也「国王の弟!?って事はあなたは、陛下の姪御様?」

 

冬夜「って事は国王の姪って事か・・・スゥシィ様って呼んだ方が良いのな?」

 

雄也「おい何呑気に話してんだよ!」

 

スゥシィ「スゥで良い!公式の場ではないのじゃ!敬語もいらん!さっきも言った通り、冬夜達は妾の命の恩人じゃ!」

 

雄也「良えんですかい!」

 

冬夜「でも何でこんな所に王族が・・・」

 

スゥ「お婆様の所から王都へ戻る途中じゃった。」

 

雄也「成る程、そこを奴らに襲われたって事か。」

 

冬夜「単なる盗賊じゃないよな・・・やっぱり。」

 

リンゼ「はい。」

 

エルゼ「話を聞いたけど金で雇われただけみたい。依頼主の名前などは知らなかったわ。」

 

スゥ「そうか。残念じゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

エルゼ「全部白状しなさい!」

 

雄也「さっさと全部吐け!!」

 

謎の男(魔法使いの男)「ひぃ!もう無いです・・・」

 

 

 

 

 

 

冬夜「話って?」

 

レイム「今の我らだけではお嬢様をお守り出来ません。冬夜さんを見込んで頼みます。護衛をしてはいただけませんか?御礼は王都へ着き次第払わせていただきます。」

 

冬夜「護衛ですか。」

 

エルゼ「良いんじゃない?どうせ王都へ行くんだし。」

 

リンゼ「私も構いません。」

 

雄也「護衛か。面白そうだな。」

 

ライザーク「同感だな。雄也。」

 

八重「冬夜殿に任せるのでござるよ。」

 

冬夜「分かりました、王都まで宜しくお願いします。」

 

スゥ「こちらこそ宜しく頼む!」

 

 

 

 

 

 

出発してから数分後。王都の街が見えた。

 

冬夜「あれが王都・・・」

 

雄也「凄え街だな〜。」

 

リンゼ「ベルファスト王国の首都『アレフィス』。滝から流れ込むパレット湖の畔に位置している事から、湖の都とも呼ばれているんですよ。」

 

ライザーク「湖の都かぁ。俺の憩いの場としても利用出来そうだな。」

 

雄也「凄えな〜。」

 

 

 

 

 

 

そして公爵邸に到着した。お屋敷内には、大勢のメイド達が迎えていた。雄也達が唖然としている。

 

雄也「凄え・・・メイドがこんなに・・・」

 

???「スゥ!」

 

すると、階段の踊り場から1人の男性が駆け寄って来た。

 

スゥ「父上!」

 

この男性はスゥの父親の「アルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵」。スゥがアルフレッドに抱き付いた。

 

アルフレッド「無事で良かった!報告を聞いた時は生きた心地がしなかったよ!ん?おお!」

 

すると冬夜達を見て、冬夜の両手を掴んだ。

 

アルフレッド「君達が娘を助けてくれた冒険者達か!」

 

すると今度は、冬夜達に向かって頭を下げた。

 

5人「ええ!?」

 

アルフレッド「礼を言うぞ。」

 

冬夜「頭を上げて下さい!僕らは当然の事をしただけなんですから!」

 

雄也「公爵様!頭をお上げ下さい!!」

 

アルフレッド「謙虚なんだな君達は。改めて自己紹介させてもらおう。アルフレッド・エルネス・オルトリンデだ。はははははは!」

 

雄也「個性ある公爵様だ・・・」

 

 

 

 

 

 

その後バルコニーでお茶をいただく。ライザークは湖の方へ遊びに行ってる。

 

アルフレッド「君達は手紙を届ける依頼で王都へ来たのか。」

 

冬夜「はい。」

 

雄也「そうです。」

 

アルフレッド「その依頼を君達が受けなければ、スゥは誘拐されていたか殺されていたかもしれん。依頼した者に感謝だな。」

 

雄也「そうですね。」

 

冬夜「襲撃して来た者に心当たりは?」

 

アルフレッド「立場上、私の事を邪魔に思っている者も多い。娘を誘拐し、私を脅そうと考えた輩が居たのかもしれん。」

 

雄也「公爵を信頼していない奴らも居るんですね。」

 

アルフレッド「うむ・・・」

 

スゥ「父上!お待たせしたのじゃ!」

 

そこに、ドレス姿のスゥが来た。

 

アルフレッド「エレンとは話せたのかい?」

 

スゥ「心配させてはいけないので、襲われた件は黙っておいたのじゃ。」

 

冬夜「あの、エレンと言うのは・・・」

 

アルフレッド「ああ、私の妻だよ。」

 

雄也「公爵夫人様ですか。」

 

アルフレッド「うむ。すまないね娘の恩人なのに姿も現さず。」

 

雄也「何故です?」

 

 

 

 

アルフレッド「妻は目が見えないのだよ・・・」

 

 

 

 

雄也「目が見えない?盲目・・・」

 

冬夜「ご病気、ですか?」

 

アルフレッド「あぁ、5年前にね・・・一命は取り留めたが視力を失ってしまった。」

 

リンゼ「魔法での治療は?」

 

アルフレッド「勿論。だがダメだった。ケガなどによる肉体の修復はある程度出来ても、病気による後遺症には効果がないらしい。」

 

スゥ「お爺様が生きておられたら・・・」

 

アルフレッド「妻の父上、スゥの祖父は特別な魔法の使い手でね。体の異常を取り除く事が出来たんだ。今回スゥが旅に出たのもその魔法を何とか解明し、習得出来ないかと考えたからなのだよ。」

 

スゥ「お爺様の魔法なら・・・使える者が見付かれば・・・」

 

アルフレッド「スゥ、無属性魔法は個人魔法だ。同じ魔法を使える者などまず居ない。だが似たような効果を持つ使い手を探して見せる。」

 

雄也「あああああああああ!!!」

 

突然雄也が叫んだ。

 

冬夜「何!?どうしたの!?」

 

するとダッシュでエルゼ達の方へ。

 

雄也「おい!その魔法使いならここに居るじゃねえのか!?」

 

3人「え?・・・あ!あぁ〜〜!!!」

 

冬夜「え?」

 

 

 

 

一方ライザークは、湖で遊んでる途中にエルゼ達の叫びを聞いた。

 

ライザーク「ん?何か騒がしい声が聞こえたんだが・・・まあ良いか。」

 

 

 

 

 

 

エレンの部屋に入った。エレンは盲目の為両目を閉じてる。

 

冬夜「リカバリー!」

 

右手をエレンの両目に当てて、魔法を発動した。全員に緊張が走る。

 

雄也「お!?」

 

 

 

 

 

 

エレンの両目が開いた。

 

 

 

 

 

 

冬夜「どうですか?」

 

横に立ってるスゥとアルフレッドの方を向いた。

 

エレン「見える・・・見えます!見えますわ!」

 

2人の姿を見て涙を流した。盲目が完治されたのだ。

 

エレン「あなた!スゥシィ!」

 

アルフレッド「エレン!」

 

スゥ「母上!」

 

再会した3人が抱き合う。

 

冬夜「ふぅ・・・」

 

雄也「良かった・・・」

 

するとエルゼとリンゼが冬夜に抱き付いた。

 

エルゼ「やっぱりあんたなら出来ると思った!」

 

リンゼ「無属性魔法全て使えますもんね!本当に・・・流石です!」

 

八重「失敗を恐れず人助けをするその心意気・・・拙者、冬夜殿を心から尊敬するでござるよ!」

 

冬夜「ありがとう・・・」

 

雄也(でももし失敗したら打ち首不可避だな・・・)

 

 

 

 

 

 

リビング。

 

アルフレッド「娘だけでなく妻まで。君達にはきちんと礼をしたいのだ。例の物を!」

 

そこにレイムが、袋と小箱を持って来た。

 

アルフレッド「まずはこれを。娘を助けてもらった事と道中の護衛に対する謝礼だ。受け取ってほしい。」

 

袋を受け取ると、一瞬で落としてしまった。

 

冬夜「いった・・・」

 

雄也「重これ・・・公爵様、これは?」

 

アルフレッド「中に白金貨で40枚入っている。」

 

エルゼ・リンゼ・八重「え!?」

 

それを聞いたエルゼとリンゼと八重が固まった。

 

雄也「白金貨って何だ?」

 

エルゼ「金貨の上の貨幣よ・・・」

 

そう説明しながら震えるエルゼ。

 

雄也「金貨の上!?」

 

エルゼ「1枚で金貨10枚分・・・」

 

冬夜「え!?つまり白金貨40枚って事は・・・・・・」

 

雄也「1枚100万の金貨・・・それを40枚全て換算すると・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

冬夜・雄也「4000万円!?」

 

 

 

 

 

 

雄也「一気に金持ちに!?」

 

冬夜「これは貰い過ぎですよ!」

 

アルフレッド「これから冒険者として活動して行くなら、きっとそのお金は必要になる。その資金だと思えば良い。」

 

冬夜「はぁ・・・」

 

雄也「確かに、金が無かったら後々困る事になるな。ありがたく受け取ります。」

 

今度は小箱を開けた。中には4枚のメダルが入ってた。

 

雄也「これは?」

 

アルフレッド「我が公爵家のメダルだ。これがあれば検問所は素通り。貴族しか利用出来ない施設も使える。何かあったら公爵家が後ろ盾になると言う証だ。」

 

雄也(パスポート的なアイテムか・・・ってか俺達公爵様に気に入られたな。)

 

 

 

 

 

 

その後スゥ達と別れる。

 

スゥ「また遊びに来るのじゃぞ!絶対だからな!」

 

馬車に乗って公爵邸を後にした。

 

 

 

 

 

 

その後手紙を渡した。

 

エルゼ「手紙も渡せたし、これで依頼完了ね。」

 

リンゼ「大変な旅になっちゃいましたね。」

 

冬夜「うん。」

 

雄也「確かにそうだよな。リザードマンと戦ったり、スゥとエレン様を助けて、公爵様から報酬の白金貨40枚と公爵家のメダルを貰った事だな・・・でもこれだけあれば憂い無しだな。当分飯が食える。」

 

ライザーク「俺達、何か凄く恵まれてるようだな。」

 

冬夜「僕達はリフレットの町に帰るけど、八重はどうする?」

 

八重「拙者決めたでござる。冬夜殿にこの身を捧げるでござる!」

 

4人「ええ!?」

 

八重「あっ!いや!そう言う意味ではござらん!」

 

エルゼ「え?じゃあどう言う意味?」

 

八重「・・・短い道中ながらその人となりを見せていただいた。強大な力がありながら驕らず、常に人を救う道を選ぶ。その姿勢感服致した。だから拙者修行のため冬夜殿と行動を共にしたい!」

 

冬夜「ええ!?どうする?」

 

エルゼ「良いんじゃない?私達と一緒においでよ。それでギルドに入って一緒に依頼を受けるの。」

 

冬夜「うん!そうしよう!」

 

八重「お頼み申す!」

 

リンゼ「折角仲良くなりましたし、ここでお別れは寂しいです。」

 

エルゼ「改めて宜しくね八重!」

 

八重「宜しくでござる!」

 

冬夜(僕の力で人が笑顔になるって良いもんだな。)

 

雄也「さあ!新しい旅のスタートだ!」

 

こうして九重八重が仲間に加わったのであった。

 

「END」




         キャスト

      伊狩雄也:増田俊樹

      望月冬夜:福原かつみ
 エルゼ・シルエスカ:内田真礼
 リンゼ・シルエスカ:福緒唯
      九重八重;赤崎千夏
      スゥシィ:山下七海

     ライザーク:梅原裕一郎

    アルフレッド:楠大典
       エレン:矢野亜沙美
       レイム:西村知道

        兵士:浦野わたる
         男:橋本祐樹
           大塚剛央
           多田啓太

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