そんなある日、雄也と冬夜とエルゼとリンゼが馬車に乗って何処かへ向かってた。
冬夜『でも大丈夫。僕には神様がくれた能力とこのスマホがあるから。』
スマホでエルゼの寝顔を撮った。
雄也『俺も大丈夫。このギアレットハンターと、相棒ガウストのライザークが居れば十分だ。』
彼の腰には、ギアレットハンターが入ったハンティングホルダーがある。隣にライザークが浮遊している。
途中で馬車を停めて降りる。
冬夜「今日はこの街で宿を取ろう。」
エルゼ「王都まではまだまだ長いからね。」
雄也「あ〜座るの疲れた〜・・・」
冬夜「2人共、王都まで手紙を届けるって依頼で本当に良かったの?それよりも隣にあったメガスライム討伐の方が・・・」
ライザーク「俺も討伐が良かったぞ。メガスライムがどんな奴か見たかったのによ。」
エルゼ・リンゼ「ダメッ!」
冬夜「え?何で?」
エルゼ「スライムみたいなブヨブヨネバネバした物体が嫌なの!生理的に!」
リンゼ「うんうん!」
エルゼ「それにアイツらって服とか溶かしてくるのよ。絶対に嫌!」
スライムで服を溶かされたエルゼとリンゼを想像する冬夜。
冬夜(それは・・・惜しいかも。)
雄也「う〜ん・・・確かに危なっかしそうな奴だな。2度と受けないでおこう。」
エルゼ「宿の前に食事しましょう。銀月みたいなお店があると良いんだけど・・・」
冬夜「あ!だったら一度ゲートで銀月に戻って、また明日ここからスタートすれば楽じゃない?」
雄也「それは効率が良いかもな。」
エルゼ・リンゼ「却下よ!(却下です!)」
ライザーク「どうしてだ?」
エルゼ「知らない街で知らない店を訪ね、知らない場所で泊まるのが良いんじゃない。分かってないわね。」
リンゼ「うんうん!」
ライザーク「確かに、それは面白そうだな。」
エルゼ「でしょでしょ!」
冬夜「ははは・・・」
???「おい待てゴルァ!」
雄也・冬夜「ん?」
向こうから男の怒鳴り声が聞こえた。聞こえた方向を見ると、群衆が集まっていた。
冬夜「何だ?」
雄也「ストリートライブか?」
群衆が見てる先には、1人の少女の侍が立っていた。少女の周りには、男達が囲んでいた。
リンゼ「あの子、変わった格好をしてますね。」
冬夜「侍だ・・・」
雄也「侍だな。」
リンゼ「侍?」
男A「姉ちゃん、俺の仲間を可愛がってくれたそうじゃないか。」
少女「あぁ、警備兵に突き出した奴らの仲間でござるか。あれはお主たちが悪い。乱暴狼藉を働くからでござる。」
男「喧しい!やっちまえ!!」
激昂した男が棒を振り上げて襲う。しかし少女が近接格闘で数人片付けた。
エルゼ「あんな技、見た事ないわ!」
冬夜「あれは・・・柔術!?」
雄也「この世界にも柔術が存在してたとはな。」
その後も複数の男達を蹴散らした。すると少女の腹が鳴り始めた。
少女「うぅ・・・お腹が減って力が・・・」
エルゼ「あの子急に動きが!」
リンゼ「危ない!後ろ!」
少女の後ろから、男が刀を振り上げて襲い始めた。
冬夜「砂よ来たれ!盲目の砂塵ブラインドサンド!」
しかし冬夜の砂の魔法で男の目を眩ませた。
男B「目があああああああ!!!」
冬夜「今だ!」
怯んでる隙にキックした。
リンゼ「冬夜さん!?」
エルゼ「あーもう!厄介事に首を突っ込んで!」
そこにエルゼも加わって男達を蹴散らす。
男C「こんのガキ共が!!」
残った男が剣を振り上げた。しかしその時。
男C「いでででででで!!!」
ギアレットハンターの釣り針が男の口に引っ掛かって、雄也がリールを巻いて引っ張る。
雄也「動くなよ!動いたら鼻の穴をでかくするぞ!ライザーク!」
ライザーク「おう!くたばりやがぇぇぇ!!」
強烈な尾鰭で殴って男を倒した。
雄也「これで片付いたか。」
男D「警備兵だ!!」
雄也「何!?」
リンゼ「冬夜さん、ここは離れましょう!」
冬夜「分かった!君も早く!」
少女を連れて、人気のない路地裏へ逃げ込んだ。
冬夜「ここまで来れば大丈夫だね・・・」
雄也「あんた、大丈夫だったか?」
少女「ご助成辱く。拙者、九重八重と申す。あ!八重が名前で、九重が家名でござる。」
冬夜「ひょっとして君、イーシェンの出身?」
八重「いかにも。イーシェンのオエドから来たでござる。」
冬夜「オエド?(そんな所まで似ているのか・・・)僕は望月冬夜。冬夜が名前で、望月が家名ね。」
雄也「俺は伊狩雄也だ。雄也が名前で、伊狩が家名だ。」
八重「お!冬夜殿と雄也殿もイーシェンの生まれでござるか?」
冬夜「あ!似ているけど違う国から来た!」
エルゼ・リンゼ「え!?」
それを聞いたエルゼとリンゼが驚いた。
冬夜(あ、イーシェン出身って事にしてるんだっけ。)
雄也「俺もイーシェン出身の観光客だ。なあ八重、さっきフラフラしてたけど大丈夫なのか?」
八重「その・・・拙者ここに来るまでに恥ずかしながら路銀を落としてしまい・・・それで・・・」
するとまたお腹が鳴り、八重が赤面する。
冬夜・エルゼ・リンゼ「えぇぇ・・・」
雄也「金落としたんかい・・・それは災難な事・・・」
近くの店でご馳走する事にした。
八重「いただきまーす!」
料理を美味しそうに食べる。
リンゼ「へぇ〜。八重さんは武者修行の旅をしているんですね。」
八重「いかにも!我が家は代々武家の家柄でござる。拙者は腕を磨くため旅に出たのでござるよ!」
エルゼ「成る程ねぇ。」
八重「何れは父や兄と肩を並べられる剣士になるでござるよ!」
冬夜(凄い食欲・・・)
雄也(余程腹減ってたんだな。)
ライザーク(いやぁ〜、高級エサは美味えな!)
雄也(おいライザーク、高級エサ少ねえんだぞ。程々にしとけよ。)
リンゼ「それで、八重さんはこれからどうするのですか?」
八重「取り敢えず・・・はむ!王都に・・・もぐもぐ、腕試しに行ってみようと思っているでござるよ。」
エルゼ「奇遇ね!私たちも王都に仕事で行くのよ。ねぇ、良かったら一緒に行かない?」
八重「誠でござるか?ごちそうになった上、もぐもぐ、かくなる上は精一杯、もぐもぐ・・・」
雄也「おい食いながらトークすんなよ。」
リンゼ「構わないですよね?冬夜さん。」
冬夜「ああ、それは別に良いんだけど・・・」
リンゼ「雄也さんも構わないですよね?」
雄也「異議無しだ。」
エルゼ「うん。決まりね!」
冬夜(食費、大丈夫かな・・・)
雄也(金貨が減ってゆく・・・)
店から出て、王都へ再び向かう。
雄也「あ〜、風が心地良いな〜。」
ライザーク「確かに。」
冬夜「八重も馬が扱えるとはね。」
八重「馬術も一通り修行したでござるよ。」
エルゼ「3人で交代で出来るわね。正直リンゼと2人じゃキツかったし・・・」
冬夜「か、肩身が狭い・・・」
雄也「まあまあ元気出せよ。」
リンゼ「そんな事ありません!冬夜さんは優れた魔術の才能をお持ちじゃないですか!」
魔法書を冬夜に見せる。
エルゼ「属性魔法だけじゃなく、私のブーストも使えるだろうし。」
雄也「凄えよな冬夜は。」
リンゼ「どうやら冬夜さんなら、無属性魔法なら魔法名と詳しい効果さえ分かれば、ほぼ発動出来るようですね。」
エルゼ「全く、ここまで万能だと驚くより呆れるわ。」
冬夜「あはは・・・でも、無属性魔法って色々な種類があるんだろ?」
リンゼ「ええ。ほぼ個人の魔法で使用者の数だけ種類があると言われています。」
冬夜「途方もない数って訳か・・・」
雄也「益々興味深くなってきたな。」
リンゼ「しかし属性魔法と違って個人しか使えないので、どんな無属性魔法かはよく分かっていないんです。今出回っている魔法書は趣味レベルの物ばかりですね。」
雄也「個人しか使えないかぁ・・・」
冬夜「まぁ、自分に使えない魔法をわざわざ勉強しようなんて人は居ないわな。」
雄也「どんな無属性魔法があるんだ?俺にも見せてくれ。」
冬夜「髪の毛がクリクリロールになる魔法・・・」
雄也「やたらと犬に懐かれる魔法・・・」
冬夜「茶柱を立てる魔法・・・確かに・・・数ある割にろくなのない・・・」
雄也「ってか犬と茶柱の魔法って何だよ・・・俺犬より猫だな。」
エルゼ「まぁどこで役に立つか分からないし、片っ端から覚えていけば良いんじゃない?」
冬夜(確かに神様に記憶力は強化されてるけど・・・ここに載っているのを全部覚えるのはキツイぞ。ん?)
すると、ある魔法を見付けた。
冬夜「遠くにある小物を引き寄せる魔法か・・・使えるかな?」
リンゼ「試してみたらどうですか?」
冬夜「アポーツ。」
小物を引き寄せる魔法を発動した。しかし何も起きなかった。
冬夜「あれ?」
雄也「どした?」
リンゼ「何も起きませんね・・・」
エルゼ「何を引き寄せようとしたのよ?」
冬夜「八重の刀。急に無くなったら驚くかと思って。」
エルゼ「刀だと重過ぎてダメだとか?」
雄也「お前ちょっと嫌らしいなおい。」
冬夜「ええ?」
雄也「まあ俺は、此奴で釣り上げる事かな。」
ギアレットハンターから釣り糸を射出して、遠くにあった石を引っ掛けてリールを巻いて釣り上げた。
冬夜「それ凄いね。」
雄也「まあこんな感じだ。それに、小物ってそれに書いてあるだろ?刀じゃちょっと荷が重くねえか?」
冬夜「成る程。確かに小物って書いてあるしな。今度は明確にイメージして。・・・アポーツ。」
再び魔法を発動した。すると次の瞬間。
八重「ひゃっ!」
雄也「どした八重!?」
エルゼ「何何?冬夜何を取ったのよ!」
冬夜「これ。八重の髪を結んでたリボン。」
引き寄せた小物は、八重の髪を結んだリボンだった。
雄也「何故これを選んだ?」
リンゼ「成功ですね!使い方によっては便利ですが、恐ろしくもありますね・・・」
冬夜「恐ろしい?」
エルゼ「だって知らぬ間に物が無くなるのよ!これってスリとか、そう言う事をし放題って事でしょ?」
ライザーク「それは怖えな・・・俺のエサが無くなったらどうすんだ・・・?」
雄也「流石にそれは無えだろ。」
冬夜「成る程。そう考えると怖いな・・・お金とか宝石、そう言った類の物も奪えるのか・・・」
エルゼ「やるんじゃないわよ?」
リンゼ「やらないで下さいね?」
雄也「やるんじゃねぇぞ?」
ライザーク「やるなよ?」
冬夜「やらないよそんな事!でもこれって下着とかも引き寄せる事が出来るのかな・・・」
雄也「ブフォ!!」
エルゼ・リンゼ「キャーー!」
怯えたエルゼとリンゼが端っこへ避難した。
冬夜「冗談だって!」
雄也「お前、本当嫌らしいな。」
ライザーク「世の女性達から非難されるぞ?」
冬夜「だから冗談だって!」
八重「あのー、髪が風でバサバサするのでござる・・・」
雄也「ああ、悪い悪い。おい、リボン返してやれ。」
八重の髪をリボンで結んだ。
冬夜「短い時間だけ摩擦係数を激減させる魔法スリップ・・・無属性魔法って何に使ったら良いか全然分からないのばっかだな・・・あ、これは・・・ロングセンス!」
エルゼ「何の魔法?」
冬夜「感覚拡張魔法だって。遠くの物を見たり聞いたり出来るみたい。」
エルゼ「覗きに使わないでよ・・・」
冬夜「使いませんよ。」
雄也「出来たとしても封印しとけそれ。」
冬夜「分かってますって。・・・ん?」
すると冬夜が何かを嗅いだ。
エルゼ「匂いが分かるの?」
冬夜「この匂い・・・鉄?・・・いや!血の匂いだ!」
雄也「血!?」
エルゼ「!」
リンゼ「!?」
冬夜「この先だ!」
八重「っ!」
馬車の速度を上げる。
雄也「ライザーク!先に行ってくれ!」
ライザーク「任せろ!」
一足先にライザークが匂いがする方へ飛んで行った。
森の中には、3人の兵士が魔物達に囲まれていた。その魔物達の後ろには、謎の男が立っていた。
謎の男「ふっふっふ。」
ライザーク「そこまでだ!!!」
謎の男「な!?」
ライザーク「ライトニングシャワー!!!」
真横からライザークが現れ、ライトニングシャワーを放った。更に雄也達が遅れてやって来た。
リンゼ「炎よ来たれ!渦巻く螺旋!ファイアーストーム!」
ファイヤーストームで魔物達を燃やす。
エルゼ「ていや!!」
パンチ魔物を倒す。
八重「はぁっ!!」
刀で魔物を斬り裂く。
八重「うわあああああ!!」
しかし石に躓いて転んでしまった。
八重「いたたた・・・っ!?」
そこに、1匹の魔物が剣を振り下ろそうとした。
冬夜「摩擦よなくなれ!スリップ!」
魔法で魔物を転ばせた。その隙に、八重が刀で串刺しにした。
冬夜(無属性魔法も使い方次第って訳か・・・)
雄也「大人しくしろ!!」
釣り針で魔物の口に引っ掛けていた。魔物があまりの痛さに暴れてる。すると魔物が剣を雄也に向かって投げた。
雄也「ロッドカウンタ!」
しかし、ギアレットハンターを素早く横に振ってに動かして剣を跳ね返した。剣が魔物の体に刺さった。
ライザーク「どりゃああああ!!」
ライトニングシャワーで魔物達を倒した。
ライザーク「そこでお寝んねしてるんだな!」
そして魔物達を全部倒した。
八重「辱い。」
冬夜「無事で良かった。」
しかし、魔物達がまた増え始めた。
エルゼ「まだこんなに!?」
八重「はああああ!!!」
刀で魔物達を斬り裂く。
冬夜「おお!見事な剣術!」
雄也「冬夜!後ろ!」
冬夜「ええ!?」
後ろから魔物が襲って来た。しかし、氷の矢が魔物を刺した。
冬夜「リンゼ!」
雄也「連続ロッドカウンタ!」
飛んで来た多くの剣を跳ね返して魔物達を倒した。
ライザーク「この野郎!!」
尾鰭で魔物達を飛ばす。しかし何体倒しても魔物達が増殖するばかり。
ライザーク「くっ!まだこんなに居んのかよ・・・!」
エルゼ「キリが無いわ!」
八重「一体、何体居るでござる!?」
謎の男「闇よ来たれ。我が望むはトカゲの戦士、リザードマン!」
近くに居た謎の男が魔物リザードマンを召喚した。
冬夜「あれは!」
リンゼ「召喚魔法です!あの男がリザードマンを呼び出しています!」
冬夜「分かった!スリップ!」
摩擦魔法で謎の男を滑らせた。
雄也「確保ーーー!!」
釣り針を射出し、謎の男を釣り糸で絡めた。
八重「そこまででござる。」
謎の男は呆気なく確保された。
襲われた兵士達は無傷だった。
兵士「君達のお陰で助かった。」
冬夜「いえ。それより被害は?」
兵士「護衛7人が殺られ・・・くそっ!もう少し早く気付いていれば・・・」
???「誰か!誰かおらぬか!」
全員「っ!?」
馬車の中から、少女の悲鳴が聞こえた。急いで駆け付ける。
雄也「どうした!」
少女「誰か爺を!胸に矢が刺さって・・・」
馬車の中には、泣いてる少女と、胸部から流血して倒れてる老人が居た。
雄也「大丈夫ですか!?」
冬夜「リンゼ、回復魔法を!」
リンゼ「刺さった矢が体に入り込んでしまっています・・・この状態で回復魔法を掛けても異物が体内に残ってしまいます・・・」
雄也「そんな!」
少女「爺・・・!」
爺「お嬢様・・・お別れでございます・・・お嬢様と過ごした日々は・・・ゴホッ!」
少女「爺!爺!」
冬夜「リンゼ、矢を抜けば回復出来るんだよな?」
リンゼ「はい・・・でも・・・」
雄也「おい!どうやって矢を抜くんだよ!・・・矢を抜く・・・っ!そうか!」
冬夜「よし!アポーツ!」
折れた矢に魔法を掛けた。すると爺の体内に入ってる矢が手元に渡った。
リンゼ「体の中から矢を・・・!」
冬夜「光よ来たれ、安らかな癒しキュアヒール!」
癒しの魔法を爺に掛けた。すると流血が収まり、傷が無くなった。
爺「おぉ、痛みが引いて・・・」
回復した爺が起き上がった。
少女「爺!」
冬夜「ふぅ〜・・・」
リンゼ「凄いです!冬夜さん!」
雄也「アポーツが役に立って良かったな。」
少女「感謝するぞ冬夜とやら!お主は爺の、いや爺だけでない!妾の命の恩人じゃ!」
爺「ご挨拶が遅れました。私オルトリンデ公爵家家令を務めておりますレイムと申します。そしてこちらのお方が、公爵家令嬢、スゥシィ・エルネア・オルトリンデ様でございます。」
スゥシィ「スゥシィ・エルネア・オルトリンデだ。宜しく頼む!」
冬夜「はぁ。」
雄也「長い名前だな。」
すると、雄也と冬夜を除いた3人がその場で頭を下げた。
冬夜「どうしたの?」
エルゼ「どうしたって・・・何であんた達はそんなに平然としてるのよ!公爵家よ!公爵!」
冬夜「公爵!?」
雄也「そうだった!」
慌ててその場で頭を下げる雄也。
リンゼ「公爵は爵位の一番上、その爵位を与えられるのは王族のみです。」
冬夜「王族・・・・え!?」
スゥシィ「いかにも!妾の父上、アルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵は国王陛下の弟である!」
雄也「国王の弟!?って事はあなたは、陛下の姪御様?」
冬夜「って事は国王の姪って事か・・・スゥシィ様って呼んだ方が良いのな?」
雄也「おい何呑気に話してんだよ!」
スゥシィ「スゥで良い!公式の場ではないのじゃ!敬語もいらん!さっきも言った通り、冬夜達は妾の命の恩人じゃ!」
雄也「良えんですかい!」
冬夜「でも何でこんな所に王族が・・・」
スゥ「お婆様の所から王都へ戻る途中じゃった。」
雄也「成る程、そこを奴らに襲われたって事か。」
冬夜「単なる盗賊じゃないよな・・・やっぱり。」
リンゼ「はい。」
エルゼ「話を聞いたけど金で雇われただけみたい。依頼主の名前などは知らなかったわ。」
スゥ「そうか。残念じゃ・・・」
エルゼ「全部白状しなさい!」
雄也「さっさと全部吐け!!」
謎の男(魔法使いの男)「ひぃ!もう無いです・・・」
冬夜「話って?」
レイム「今の我らだけではお嬢様をお守り出来ません。冬夜さんを見込んで頼みます。護衛をしてはいただけませんか?御礼は王都へ着き次第払わせていただきます。」
冬夜「護衛ですか。」
エルゼ「良いんじゃない?どうせ王都へ行くんだし。」
リンゼ「私も構いません。」
雄也「護衛か。面白そうだな。」
ライザーク「同感だな。雄也。」
八重「冬夜殿に任せるのでござるよ。」
冬夜「分かりました、王都まで宜しくお願いします。」
スゥ「こちらこそ宜しく頼む!」
出発してから数分後。王都の街が見えた。
冬夜「あれが王都・・・」
雄也「凄え街だな〜。」
リンゼ「ベルファスト王国の首都『アレフィス』。滝から流れ込むパレット湖の畔に位置している事から、湖の都とも呼ばれているんですよ。」
ライザーク「湖の都かぁ。俺の憩いの場としても利用出来そうだな。」
雄也「凄えな〜。」
そして公爵邸に到着した。お屋敷内には、大勢のメイド達が迎えていた。雄也達が唖然としている。
雄也「凄え・・・メイドがこんなに・・・」
???「スゥ!」
すると、階段の踊り場から1人の男性が駆け寄って来た。
スゥ「父上!」
この男性はスゥの父親の「アルフレッド・エルネス・オルトリンデ公爵」。スゥがアルフレッドに抱き付いた。
アルフレッド「無事で良かった!報告を聞いた時は生きた心地がしなかったよ!ん?おお!」
すると冬夜達を見て、冬夜の両手を掴んだ。
アルフレッド「君達が娘を助けてくれた冒険者達か!」
すると今度は、冬夜達に向かって頭を下げた。
5人「ええ!?」
アルフレッド「礼を言うぞ。」
冬夜「頭を上げて下さい!僕らは当然の事をしただけなんですから!」
雄也「公爵様!頭をお上げ下さい!!」
アルフレッド「謙虚なんだな君達は。改めて自己紹介させてもらおう。アルフレッド・エルネス・オルトリンデだ。はははははは!」
雄也「個性ある公爵様だ・・・」
その後バルコニーでお茶をいただく。ライザークは湖の方へ遊びに行ってる。
アルフレッド「君達は手紙を届ける依頼で王都へ来たのか。」
冬夜「はい。」
雄也「そうです。」
アルフレッド「その依頼を君達が受けなければ、スゥは誘拐されていたか殺されていたかもしれん。依頼した者に感謝だな。」
雄也「そうですね。」
冬夜「襲撃して来た者に心当たりは?」
アルフレッド「立場上、私の事を邪魔に思っている者も多い。娘を誘拐し、私を脅そうと考えた輩が居たのかもしれん。」
雄也「公爵を信頼していない奴らも居るんですね。」
アルフレッド「うむ・・・」
スゥ「父上!お待たせしたのじゃ!」
そこに、ドレス姿のスゥが来た。
アルフレッド「エレンとは話せたのかい?」
スゥ「心配させてはいけないので、襲われた件は黙っておいたのじゃ。」
冬夜「あの、エレンと言うのは・・・」
アルフレッド「ああ、私の妻だよ。」
雄也「公爵夫人様ですか。」
アルフレッド「うむ。すまないね娘の恩人なのに姿も現さず。」
雄也「何故です?」
アルフレッド「妻は目が見えないのだよ・・・」
雄也「目が見えない?盲目・・・」
冬夜「ご病気、ですか?」
アルフレッド「あぁ、5年前にね・・・一命は取り留めたが視力を失ってしまった。」
リンゼ「魔法での治療は?」
アルフレッド「勿論。だがダメだった。ケガなどによる肉体の修復はある程度出来ても、病気による後遺症には効果がないらしい。」
スゥ「お爺様が生きておられたら・・・」
アルフレッド「妻の父上、スゥの祖父は特別な魔法の使い手でね。体の異常を取り除く事が出来たんだ。今回スゥが旅に出たのもその魔法を何とか解明し、習得出来ないかと考えたからなのだよ。」
スゥ「お爺様の魔法なら・・・使える者が見付かれば・・・」
アルフレッド「スゥ、無属性魔法は個人魔法だ。同じ魔法を使える者などまず居ない。だが似たような効果を持つ使い手を探して見せる。」
雄也「あああああああああ!!!」
突然雄也が叫んだ。
冬夜「何!?どうしたの!?」
するとダッシュでエルゼ達の方へ。
雄也「おい!その魔法使いならここに居るじゃねえのか!?」
3人「え?・・・あ!あぁ〜〜!!!」
冬夜「え?」
一方ライザークは、湖で遊んでる途中にエルゼ達の叫びを聞いた。
ライザーク「ん?何か騒がしい声が聞こえたんだが・・・まあ良いか。」
エレンの部屋に入った。エレンは盲目の為両目を閉じてる。
冬夜「リカバリー!」
右手をエレンの両目に当てて、魔法を発動した。全員に緊張が走る。
雄也「お!?」
エレンの両目が開いた。
冬夜「どうですか?」
横に立ってるスゥとアルフレッドの方を向いた。
エレン「見える・・・見えます!見えますわ!」
2人の姿を見て涙を流した。盲目が完治されたのだ。
エレン「あなた!スゥシィ!」
アルフレッド「エレン!」
スゥ「母上!」
再会した3人が抱き合う。
冬夜「ふぅ・・・」
雄也「良かった・・・」
するとエルゼとリンゼが冬夜に抱き付いた。
エルゼ「やっぱりあんたなら出来ると思った!」
リンゼ「無属性魔法全て使えますもんね!本当に・・・流石です!」
八重「失敗を恐れず人助けをするその心意気・・・拙者、冬夜殿を心から尊敬するでござるよ!」
冬夜「ありがとう・・・」
雄也(でももし失敗したら打ち首不可避だな・・・)
リビング。
アルフレッド「娘だけでなく妻まで。君達にはきちんと礼をしたいのだ。例の物を!」
そこにレイムが、袋と小箱を持って来た。
アルフレッド「まずはこれを。娘を助けてもらった事と道中の護衛に対する謝礼だ。受け取ってほしい。」
袋を受け取ると、一瞬で落としてしまった。
冬夜「いった・・・」
雄也「重これ・・・公爵様、これは?」
アルフレッド「中に白金貨で40枚入っている。」
エルゼ・リンゼ・八重「え!?」
それを聞いたエルゼとリンゼと八重が固まった。
雄也「白金貨って何だ?」
エルゼ「金貨の上の貨幣よ・・・」
そう説明しながら震えるエルゼ。
雄也「金貨の上!?」
エルゼ「1枚で金貨10枚分・・・」
冬夜「え!?つまり白金貨40枚って事は・・・・・・」
雄也「1枚100万の金貨・・・それを40枚全て換算すると・・・・・・」
冬夜・雄也「4000万円!?」
雄也「一気に金持ちに!?」
冬夜「これは貰い過ぎですよ!」
アルフレッド「これから冒険者として活動して行くなら、きっとそのお金は必要になる。その資金だと思えば良い。」
冬夜「はぁ・・・」
雄也「確かに、金が無かったら後々困る事になるな。ありがたく受け取ります。」
今度は小箱を開けた。中には4枚のメダルが入ってた。
雄也「これは?」
アルフレッド「我が公爵家のメダルだ。これがあれば検問所は素通り。貴族しか利用出来ない施設も使える。何かあったら公爵家が後ろ盾になると言う証だ。」
雄也(パスポート的なアイテムか・・・ってか俺達公爵様に気に入られたな。)
その後スゥ達と別れる。
スゥ「また遊びに来るのじゃぞ!絶対だからな!」
馬車に乗って公爵邸を後にした。
その後手紙を渡した。
エルゼ「手紙も渡せたし、これで依頼完了ね。」
リンゼ「大変な旅になっちゃいましたね。」
冬夜「うん。」
雄也「確かにそうだよな。リザードマンと戦ったり、スゥとエレン様を助けて、公爵様から報酬の白金貨40枚と公爵家のメダルを貰った事だな・・・でもこれだけあれば憂い無しだな。当分飯が食える。」
ライザーク「俺達、何か凄く恵まれてるようだな。」
冬夜「僕達はリフレットの町に帰るけど、八重はどうする?」
八重「拙者決めたでござる。冬夜殿にこの身を捧げるでござる!」
4人「ええ!?」
八重「あっ!いや!そう言う意味ではござらん!」
エルゼ「え?じゃあどう言う意味?」
八重「・・・短い道中ながらその人となりを見せていただいた。強大な力がありながら驕らず、常に人を救う道を選ぶ。その姿勢感服致した。だから拙者修行のため冬夜殿と行動を共にしたい!」
冬夜「ええ!?どうする?」
エルゼ「良いんじゃない?私達と一緒においでよ。それでギルドに入って一緒に依頼を受けるの。」
冬夜「うん!そうしよう!」
八重「お頼み申す!」
リンゼ「折角仲良くなりましたし、ここでお別れは寂しいです。」
エルゼ「改めて宜しくね八重!」
八重「宜しくでござる!」
冬夜(僕の力で人が笑顔になるって良いもんだな。)
雄也「さあ!新しい旅のスタートだ!」
こうして九重八重が仲間に加わったのであった。
「END」
キャスト
伊狩雄也:増田俊樹
望月冬夜:福原かつみ
エルゼ・シルエスカ:内田真礼
リンゼ・シルエスカ:福緒唯
九重八重;赤崎千夏
スゥシィ:山下七海
ライザーク:梅原裕一郎
アルフレッド:楠大典
エレン:矢野亜沙美
レイム:西村知道
兵士:浦野わたる
男:橋本祐樹
大塚剛央
多田啓太