緋弾のアリア TAKE YOUR HEART   作:Million01

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『武偵殺し』と『ジョーカー』

 

 

月曜日の朝。気が付くと理子から通知が来ていた。

 

『今日、アリアとキーくんと戦います!』

 

『こっちも今日、ターゲットを改心させる』

 

『お互い頑張ろう!』

 

暁はスマホの画面を消して、学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、暁とモルガナは渋谷の地下鉄駅の入り口に来ていた。

 

「始めるぞ」

 

モルガナの声と共に暁はスマホの画面にある赤と黒で配色された目玉のようなアプリを開いた。

 

そして暁は躊躇わずに画面に『流堂 剛太』と入力し、その後にキーワードとして『メメントス』と入れた。

 

『入力確認。ナビゲートを開始します』

 

スマホから発せられた音声とともに景色が歪む。

それも、数秒。歪みが戻るとそこには暁とモルガナしかいなかった。

先程まで、多くの人が近くを素通りしていたのに今は誰一人いない。

 

「成功だな」

 

モルガナがそう言いながら地下鉄駅に入り階段を下る。改札口の前に着くと、そこは異様な世界だった。

 

 

 

 

 

辺りに異様な空気が流れ、改札口の奥には長く暗い道が続いている。

更にはそんな中、長く暗い道の奥には薄っすらと奇妙な化物までが見えてしまう。

 

 

 

 

 

異世界・メメントス。大衆の無意識の欲望によって形成された空間。

 

 

メメントスは大衆の欲望でありその底では大衆は怠惰を望み、考えることを放棄し、支配者によって作られた道をただ歩くことを望んだ場所。その現れである。

 

暁の世界ではこのメメントスを悪神が支配していたが、この世界ではまだ分かっていない。

 

 

 

 

 

それに不思議な事が起こったのは地下鉄駅だけではない。暁とモルガナもだ。

 

 

ふと、気が付けば暁の服装はいつもの武偵高の制服から黒のロングコートに変わっており、顔には黒縁伊達メガネがかかっておらず、代わりに白と黒のドミノマスクをかけていた。

 

モルガナの方に至っては猫ではなく猫に似た二頭身の二足歩行で歩く謎の生物となっていた。

 

二人の姿こそが『反逆の意思』のが具現化したものの一つである。この姿が現れるのは反逆の意思がある場合のみ具現される。

 

この場合、二人はメメントスというもの自体に反逆の意思を見せている。

大衆がは怠惰を望み、考えることを放棄し、支配者によって作られた道をただ歩くことを望んでいく中、暁はそれを拒む。

自分の意思で道を作り、いいように振り回されたくない反逆の意思が具現化したもの。

 

 

「んじゃ、行くぞ」

 

暁達には見慣れた光景であり、なんとも思わなかった。

更には一般人には思いもよらぬ光景が目に写った。二人が改札口を出るとモルガナが急に車に変わってしまった。暁に至ってもその光景に見慣れたかのように車に乗り、運転をし始める。

 

少しだけ進んでいくと目の前に黒い化物がいた。

 

人間の具現化した感情した化物……シャドウだ。そのシャドウがあちこちと徘徊しており、暁はエンジンを噴かせ、背後から思い切り体当たりをする。

 

ーーーグシャ!

 

体当たりを食らった化物は突如、溶けていき。カボチャの頭と手にはランタン持った化物に変化した。

 

「相手は一体。楽勝だなジョーカー」

 

ジョーカーと呼ばれた暁は無言で頷き、赤い手袋をはめた右手で仮面にそっと触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーペルソナッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーカーがそう叫ぶと背後から突如、巨大なモノが現れた。

仮面のような顔と、大きな黒い翼が特徴な赤い2mはあるかと思われる人形の何か。

 

これはペルソナ。誰しも持っている、心に秘めた「もう一人の自分」、あるいは人が事物と関わるとき、面に現れる「心の仮面」。もう一つの「反逆の意志」の現れとされるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奪え、アルセーヌ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルセーヌと言われたペルソナは翼を大きく羽ばたかせるとカボチャ頭のシャドウ、ジャックランタンにサッカーボールぐらいの氷解を出現させ、思い切り放った。

 

アルセーヌの攻撃をもろに喰らった、ジャックランタンは地面に倒れる。

 

「流石だ。ジョーカー!」

 

ジョーカーは不敵な笑みを浮かべるとモルガナに近づく。

 

ーーーパン!

 

そして、モルガナがその場でジャンプすると、二人はバトンタッチをしめす。

 

「ペルソナァ!」

 

モルガナがそう叫ぶと、今度はモルガナの背後からサーベルを持った黒いマッチョのペルソナが現れた。

 

「威を示せ、ゾロ!」

 

ゾロと呼ばれたペルソナはサーベルで『Z』を描くと、ジャックランタンの周囲に風が巻き起こり敵を切り刻む。

 

すると、ジャックランタンの姿が消滅し、辺りにお金や物が散らばる。

 

「この調子でどんどん行こうぜ」

 

散らばったお金を二人は集めると、車で移動をし始める。

 

 

「今日は雨だから居眠りしているシャドウも多いな」

 

モルガナはそういいながらシャドウの居眠りをしているシャドウの真横を通り過ぎる。

 

 

メメントスは大衆の無意識によって形成された世界。大衆の心理状況によって様々な事が起きるのだ。

 

 

行き止まりに壁に阻まれた道があるが車でぶち当たるなどとあり、更には宝箱を開けたりと色々なことがある。

 

二人は奥へ深くへ段々と潜っていき五回ぐらい降りたところにモルガナが異変を感じた。

 

「このエリアにターゲットの気配を感じるぞ!」

 

「くまなく探してみようぜ!」

 

ジョーカーがモルガナカーを動かしこのエリアをくまなく探していると奥にまるで空間が歪んだような場所かあった。

 

「むっ!?この気配…この先にターゲットがいるみたいだぞ!」

 

「どうする。入ってみるか?」

 

>行こう

 

ジョーカーがそう言うと歪んだ空間に車を突っ込ませる。

歪んだ空間を通り過ぎると若干、さっきより道の横幅が広い空間にでた。

 

その先には真っ黒い何かを纏った男がいた。

 

「あのシャドウがルドウだ。間違いない」

 

「三茶にいる拳銃を持った、チンピラだ。お年寄りなどをビビらせていい気になってるヤロウだ」

 

「準備はいいな?行くぞ」

 

ジョーカー達はシャドウ流堂に近づく。

 

「オラオラ!怖くて手も出せねぇか?」

 

「ハハッ!サツもザマァねぇな!」

 

「なんだお前は?ただのガキが俺様に何か用か?」

 

>お前が三茶のチンピラだな?

 

「俺はただのチンピラじゃねぇ!俺は『三茶の流堂 剛太』だ!!」

 

男がそう言うと体が溶けハンマーを持った一本足のシャドウとなる。

 

「ハハッ!喰らえ!」

 

シャドウ流堂がそう叫びながら手に持ったハンマーをジョーカーに向かって投げてくる。

 

「ーーーペルソナ!アラハバキ!!」

 

ジョーカーがペルソナを顕現させると背後に大きな影が出現する。それはアルセーヌより小さいが土偶のような姿をしたペルソナだった。

 

「何っ!?」

 

ジョーカーに迫られるハンマーは当たる直前に見えない何かに当たって、シャドウ流堂に反射し、シャドウ流堂が吹き飛ぶ。

 

「やるな。ジョーカー!」

 

「チェンジ!」

 

更には暁がそう叫ぶとアラハバキのペルソナが消え、アルセーヌが出現する。

 

「やれ、アルセーヌ!」

 

アルセーヌが翼を羽ばたかせるとシャドウの足元に禍々しい渦が出現する。

 

「グァッ!」

 

禍々しい渦が収束し、敵を包み込むように赤と黒の柱がはっせいする。

 

「クソッ!なんでこんな目に!」

 

>観念しろ

 

「観念しろか……ハハッ、今思えばなんでこんな事をやってんだろな……」

 

「最初はチャカが格好良くてただ、買ってみただけなのに。今じゃあチャカ持ってるからってバカみてぇに自慢してよ……」

 

>警察にでもなればよかった

 

「サツか……。悪くは無かったかもな……。俺、もう一度、人生をやり直そうかな」

 

男が少しだけ寂しそうに、満足そうに言いながら光の粒子となって消えていき、光の球体が現れる。

 

パシッ!とジョーカーがそれを掴むと漆黒のガバメントに形成される。

 

「これで事件解決だな!どうする?」

 

>入口まで戻ろう

 

ジョーカーは漆黒のガバメントとなったオタカラを懐にしまうとメメントスの入口まで戻る。

 

 

「もう終わるか?」

 

>ああ

 

 

暁が異世界から帰ってくると雷も激しくなり、外もすっかり遅くなっていた。

 

「そう言えば理子はどうなったんだ?」

 

暁もそれが気になり通知があるかどうかが気になった。

 

……。

 

通知が来ていない。暁は不思議に思い、チャット画面を開いた。

 

『理子?』

 

……。

 

反応がない。まだ、取り込み中なのだろうか?暁が首を傾げていると渋谷の大型ビジョンにとある単語が耳に入った。

 

『先程、東京湾上空で『武偵殺し』の仕業とされる、ハイジャックにあったANA600便が『空き地島』に不時着しました』

 

『未だに犯人は見つかっておりません。警察、武偵は引き続き捜査に当たっています』

 

!?と暁が思わず顔を上げ、大型ビジョンを見た。

 

「おい!理子……」

 

同じく大型に写っていたニュースを聞いていたモルガナが叫ぶ。

 

「どうすんだよ!?」

 

>理子を探す

 

「探すったって宛てはあるのか?」

 

>……。

 

「お、おい!」

 

モルガナが暁の反応に慌てまくる。

 

>三茶だ

 

暁はそう言うと全速力で電車に乗り、三軒茶屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

三軒茶屋のとある公園。

 

「……ひっく……ひんぅ……ひっ……」

 

雨が降る中、濡れたベンチに傘も刺さずに座っている理子がいた。

 

>理子

 

「あ……あ、アッキー……」

 

理子はふと、後ろから声をかけられ濡れた髪を振りながら振り返った。

 

その瞳には涙を浮かべ、理子泣いていた。暁はただ、無言で理子に近づき手に待っていた傘を理子に被せる。

 

「うわぁあ……あぁ……!」

 

理子は近づいてきた暁に抱きつき、胸に顔を埋める。

 

>……。

 

「……」

 

暁もモルガナも理子の状態に何も言わずただただ泣き止むのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリアとキーくんを倒せなかった……」

 

暁は泣き止んだ理子の話を黙って聞いた。

 

「あんなに頑張ってアリアとキーくんをくっつけたのに……」

 

「ごめんね……こんな話をしても仕方ないよね」

 

>俺がブラドを改心させる

 

「!……ありがとう。だけど、アッキーが無理しなくてもいいのに」

 

>理子を見過ごせない

 

「……。本当はね。助けてほしいんだ。けど、ブラドには勝てない。たとえ、アッキーが特殊な力を持っても……」

 

>関係ない

 

「……。関係なくないよ。私はアッキーに死んでほしくない。私が『武偵殺し』だと知っても優しく接してくれた。そんなアッキーに死んでほしくない」

 

理子が追い詰められた顔をし、俯いた。

このままじゃあ、理子はブラドに囚われたままだ。 何か気の利いた事は言えないだろうか……と暁は思い、口を開く。

 

>俺は怪盗だ

 

「……え?」

 

>怪盗らしくブラドから理子を頂いていく

 

暁が真っ直ぐな瞳で理子を見る。理子は一瞬、目を白黒させた後、顔を赤らめ視線を暁から逸らす。

 

「……アッキーの女たらし……」

 

理子がボソッとそう呟く。

 

>自覚はある

 

「サイテー。バーカ」

 

暁がそう返すと理子が更に悪口を言い放つ。

 

「……でも、ありがとう」

 

理子がそう言うと暁の顔に顔を近づけチュ、と口づけをした。

その行動に今度は暁が目を白黒させる。

 

バイバイ(Au revoir.)愛しき人(Ma cherie.)待ってるからね(J'attends.)

 

 

 

我は汝…汝は我…

汝、ここに新たな契りを得たり

 

契りは即ち、

囚われを破らんとする反逆の翼なり

 

我、恋愛のペルソナの生誕の祝福の風を得たり

自由へと至る、更なる力とならん…

 

 

 

理子は去り際に少しだけ悲しい顔をした。なんとなく理由は分かる。あの顔は自分でもしていた顔だ。

そう警察に出頭する顔だった。

 

「……いいのか。止めなくて?」

 

>理子が決めたことだ

 

警察に出頭して少しでもブラドの手から逃れるのならそれでいい。

 

「これで、ますます ブラドを見つけないといけなくなったな!」

 

暁が無言で頷くとその場を後にした。

 

 

 

 




ここで、少しお知らせします。次の投稿からタイトル名を『緋弾のアリア 心の仮面』から『緋弾のアリア TAKe YOuR heaRT』に変えたいと思いますご注意を。
理由としては『心の仮面』にしてしまうと他のペルソナシリーズと思ってしまう方がいるかもしれないのでそうしようかなと思います。
アンケートの方は殆ど期限がありません。
では、またお会いしましょう。

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