では、どうぞ。
その次の日。
大妖精に連れられて蕎麦屋で朝食を取っていたアランの前に慧音が現れ、こう言い放った。
「アラン、一度"博麗神社"に行ってみたらどうだ?」
「博麗神社?」
「ああ、ここからそう遠くない位置にある。もしお前が偶然ここに来てしまったのならもしかしたら元の世界に帰れるかもしれんからな」
「神社、ねぇ‥‥‥そういや聞いてなかった事があるんだが」
「何だ?」
「いや、"ここ"は一体何処なんだ?」
「そうだな‥‥‥まずこの世界は"幻想郷"という。ある大妖怪が"忘れ去られたものが行き着ける場所"として作り上げた世界だそうだ」
「大妖怪‥‥‥か。なんか凄そうだな」
「‥‥‥今のうちにそう思っておけ」
彼女はアランの一言でその大妖怪に何か心当たりがあるのか、呆れたような目で虚空を見つめていた。
まるで、何かに苦労させられているかのようだった。
「で、博麗神社に行けば可能性はあるって事か?」
「あぁ。あると言っても過言ではない」
「そりゃ良かった。じゃあ昼頃出発だな」
むぐむぐとそばを食らいながらそう言った。
その目をぎらつかせながら。
「‥‥‥ふぅ、美味かった。また食いにくるよおやっさん」
「おう、いつでも待ってるぜ」
「‥‥‥あ、やべ。カネ持ってねぇや‥‥‥なぁおやっさん」
「どーした?」
「悪いんだけどさ、今持ち合わせが無いからこれで許してくれないか?」
そう言って赤い宝石を五つ、テーブルの上に置いた。
「坊主、そいつは?」
「一応売ったらそば代になるくらいの石だよ。"オーブ"っていうんだよ」
「はー、ちと不気味だが高値で売れそうじゃねぇか。じゃ、勘定の代わりに受け取っていいんだな?」
「ああ、そうしてくれ。ちゃんとカネを稼げるようになったらまた食いにくるよ」
「んや、いつでも来い。カネ稼げなくてもお前さんの幸せそうな顔見れりゃ十分だ」
「‥‥‥そうか。でもせめてお代は出すよ」
「律儀だな、坊主。その両腕も伊達じゃないって事だな」
そうしてアランは蕎麦屋から立ち去った。
軽く準備を済ませ、人里の入り口へと向かうと門の入り口の前で大妖精とチルノが待っていた。
「‥‥‥!お前ら、どうしたんだ?」
「いえ、きっとアランさんの事ですから道に迷っちゃうんじゃないかって思ったんです。だから、私たちが案内しますよ」
「いいのか?」
「はい!だから一緒に行きましょう!」
「huh、可愛い案内役が着いてきてくれるなんて俺は幸運だぜ」
「か、可愛い!?」
アランの何気無い一言で大妖精の顔色はみるみる赤くなり、チルノはどうしたのかと心配する。
「えーと大ちゃん、大丈夫?」
「私が、可愛い‥‥‥?ふふ、うふふ‥‥‥」
「大ちゃん、カムバーック!」
「‥‥‥はっ、ごめんチルノちゃん!」
「大ちゃんホントに大丈夫?どっか調子悪いの?」
「だ、大丈夫!大丈夫だよチルノちゃん!」
「ならいいんだけど。んじゃアラン、行こうよ」
「そうだな。道案内よろしく頼むぜ?」
「そこはアタイたちに任せとけー!」
そこから二人に案内され、約2時間ほどかけて博麗神社の入り口前の階段へと到着した。
そこからずっと上らなければならない訳で、飛べないアランにとっては地獄のようなものである。
「‥‥‥この階段上らなきゃならねぇのか」
「が、頑張れアラン!」
「きっとアランさんなら大丈夫ですよ!」
「‥‥‥huh」
ため息をつきながら登り始めるアラン。
それから20分が経過しただろうか。
ようやく階段を登りきった。
「あー‥‥‥二度と行かねえこんな所」
「まぁまぁそんな事言わないでくださいよアランさん‥‥‥」
「ちょっと待ってて、霊夢呼んでくる」
そう言ってチルノは鳥居をくぐって目の前の神社に入っていった。
それから数秒後チルノと一緒に赤いリボンを頭につけた美少女が神社から出てくる。
「hum‥‥‥」
「ちょっとアランさん、何を考えているんです?」
「‥‥‥いや、なんでもない」
その美少女の服装にまずアランは目を奪われた。
巫女服のはずなのだが、脇と腹、それから脚が露出していたのだ。
それも透き通るほど綺麗な白い肌。
これにはアランも考えない訳がない。
「‥‥‥日本の巫女ってこんなんだったか?」
「れ、霊夢さんが特殊なんですよ」
「そこ、聞こえてるわよ」
「わぁっ!?」
「ああ悪い、気を悪くしたなら謝る。悪かったな」
「別に、そこまで短気じゃないわよ私。それでチルノ、彼が外来人?」
「そうだぞ。なんでもよくわからないうちにこっちに来ちゃったみたいなんだ」
「ふぅん‥‥‥貴方、名前は?」
「俺か?俺はアラン。駆け出しデビルハンターさ」
「デビル、ハンター‥‥‥ねぇ。職業を聞いた感じだとちょっと物騒ね」
「まああくまで悪魔を狩る仕事だからな。人殺しはしねぇよ」
一言補足を付け足し、霊夢と呼ばれた少女に上がらせてもらう。
「おぉ、和風だな‥‥‥」
「自己紹介、してなかったわね。私は博麗霊夢。ここの巫女をしているわ」
「Ms.ハクレイか。よろしく頼む」
「霊夢でいいわ。そう呼ばれる事には慣れてないから」
「わかった、霊夢。よろしくな」
「ええ、よろしく。それで?ここに来た理由は?」
「いやもしかしたら元の世界に帰れるんじゃないかって可能性を感じてな」
「へぇ‥‥‥一応やるだけやるけどあまり期待しないでよ?」
「って事は帰れる保証は五分五分って所か?」
「いいえ、帰れない確率が高いわ。もしかしたらあのスキマ妖怪が妨害してくるかもしれないし」
"スキマ"という単語に何か心当たりがあるのか、アランは微妙な表情を取る。
もしや自分が飛び込んだのはそのスキマ妖怪の造り出したスキマなのでは、と。
「‥‥‥さて、と。準備は出来たからあとは鳥居をくぐるだけよ」
「わかった。じゃあ早速試してみるか‥‥‥」
鳥居の前に立ち、意を決して鳥居をくぐろうとした。
だが、くぐっても何の変化が見られなかった。
「‥‥‥なんてこった」
「やっぱり、か‥‥‥」
「ん、大ちゃんどういう事なの?」
「えっとね、アランさんが元の世界に帰れない事がわかりきっていたって事だよ」
「えー!!アラン帰れないのか!?」
「はー、どうしたもんかねぇ」
「仕方ないわね‥‥‥アラン、貴方ここに住みなさい。住ませる代わりに私の仕事も手伝ってもらうからね」
「‥‥‥わかった。やむを得ないな」
「後でスキマ妖怪にみっちりと理由を聞いとくわ」
「悪いな、何から何まで」
「気にしないで。とりあえず今日からよろしく、アラン」
「おう、よろしく霊夢」
こうして、アランの幻想郷生活が始まった。
いったいどうなる事やら。
「あ、アンタたちはいつでも遊びに来ていいから。一応お茶くらいだしてあげるわ」
「やったー!ありがと霊夢!」
「チルノちゃん、はしゃぎすぎだよ」
「大妖精、アンタも頑張んなさいな」
「ふえぇ!?」
いやホントにどうなる事やら。
いかがだったでしょうか。
楽しんでいただけたなら幸いです。
では次回の更新でお会いしましょう。
次回をお楽しみに。
感想、質問等いつでもお待ちしてます。
ではでは(´・ω・`)ノシ