唯我独尊自由人の友達   作:かわらまち

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設定を見直した結果、軽井沢さんをヒロインにする目途が立ちました。
しかしながら、ヒロインは一人でいい、と言う意見もありますしアンケートとかとったほうが良いのでしょうか。果たして投票してくれる方がいるかどうか(-_-;)

長くなりましたが、続きをどうぞ。


日常

 

 

 

 入学して早3週間が経った。授業中の生徒の態度など、目に余るものはあるが、特に大きな問題も起こることなく日常が過ぎて行った。3週間が経つと、おのずとグループがほぼ出来上がり、自らの立場が確立されてくる。洋介はすっかりクラスのまとめ役となり、櫛田さんと軽井沢さんは女子のリーダー的役割に定着していた。軽井沢さんが一部の女子と、櫛田さんはより多くの人と関わっているようで、互いに違った形でカリスマ性を発揮している。

 

 僕はと言うと、基本的には洋介のグループに属しているが、高円寺や綾小路君、佐倉さんなど、多くの人と関わり、様々なグループを転々としていた。堀北さんも話しかければ、ぶっきらぼうではあるが、返してくれる。綾小路君が最近、三馬鹿と仲が良い為、僕も三馬鹿とも話す機会が多くなっていた。そのこともあり、一応クラスの生徒全員と話すことは出来るようになっていた。

 

 しかし、気になることが一つある。それは先ほども言ったように、授業態度が目に余る事。授業中の私語は当たり前で、居眠りをしていたり、携帯を触ったり、ゲームをしている生徒もいる。余りにも自由すぎる。この先本当に大丈夫なのだろうか。

 ただ、それよりも気になるのが、すべての教師がそれを黙認している事。その態度のせいもあり、今現在の有り様なのだ。放任主義と言っても、度が過ぎるのではなかろうか。これで、果たして未来を支える若者を育てていると言えるのだろうか。

 

 今日の3時間目、茶柱先生の社会の授業で唐突に小テストが行われる旨が伝えられる。それを聞いた生徒からは大ブーイングが起きる。しかし、このテストが成績表には反映されることは無いと知らされると、反対の声も無くなる。

 本当に茶柱先生は含みのある言い方をするな。成績表()()反映されることはない。

 まるで、成績表()()()()反映されるようではないか。成績表に関係なくてもテストはテストだし、頑張って解こう。

 

 先生より小テストが配られ、開始の合図とともに問題用紙を裏返し問題を解き始める。

 一科目4問、全20問で、各5点配当の100点満点。毎日勉強しているのである程度は解けるだろうと踏んでいたが、問題が異様に簡単すぎる。受験の時の問題が比にならないくらいだ。そう思いながら順調に8割ほど解き進めていくと、最後2割の問題に差し掛かったところで僕の手が止まる。ラスト3問程が急激に難しくなったからだ。授業ではまだ習っていないであろう問題だった。高円寺の方を一度だけ見ると、迷うことなく答えを埋め続けていた。僕も負けていられないな。そう思い、頭をフル回転させて、問題に挑んだ。

 

 授業終了を知らせるチャイムが鳴り、問題用紙が回収される。それにしても、学校の意図が読めなさすぎる。今の実力を測るものだとしても、ラスト3問程の難易度の高い問題は異質すぎる。プリントミスと言われた方が説得力があるくらいだ。そんな事を考えていると、洋介と軽井沢さんがこちらにやってきた。

 

「テストどうだった?最後の方難しかったね」

 

「一応全部埋めたけど自信はないかな。急に難問になったね」

 

「そうなの?最後までやってないから分かんないや」

 

 キョトンとした顔で首を傾げる軽井沢さん。クラスのほとんどの生徒は軽井沢さんみたいに真面目にテストを受けていなかったみたいだ。テスト中聞こえた、字を書く音が少なすぎた。

 

「そんな事はどうでもいいっしょ、倉持君この後暇?」

 

「そんな事って。予定は無いけど、どうかしたの?」

 

「さっき軽井沢さんと、勇人君を誘ってどこかに行こうかって話していたんだ。松下さんと森さんも来るよ」

 

 洋介が説明をする。松下さん、森さんは軽井沢さんとよくつるんでいる女子生徒だ。特に予定もないし断る事もない。

 

「いいね。行くよ」

 

「よーし!そうと決まったら早くいこっ」

 

「そうだね。森さんと松下さんを呼んでくるよ」

 

 その後、女子二人と合流し教室を出る。

 

「それで、何処に行くの?」

 

「どうしよっか?カラオケはこの前いったし」

 

「ボウリングも行ったね。軽井沢さんがビリだったやつ」

 

「うっさい!倉持君もそんな点数変わんなかったじゃん!」

 

「うっ。でも僕は軽井沢さんと違って、ストライク取ってるからね!」

 

「あたしは、倉持君みたいにガターばっかじゃなかったもん!」

 

 口を膨らまして反撃してくる。どんぐりの背比べ。目くそ鼻くそ。そんな言葉がぴったりな言い合いだった。そんな僕たちの言い合いを洋介が笑いながら止めに入る。

 

「ははは。まぁまぁ落ち着いて。二人ともうまかったと思うよ」

 

「「嫌味か!」」

 

「えぇ!?」

 

 軽井沢さんとハモる。洋介よ、その言葉は僕たちにダブルスコアを付けた君が言っちゃダメだ。そう言えば同じ様なやり取りが前にもあったな。僕たち3人は一緒にいることが多かったので、こうやって仲良く話せるようになっていた。

 

「と、取り敢えず、色々な施設を回ってみて決めようか」

 

「さんせー」

 

「それでいいと思うよ」

 

「二人もいいかな?」

 

「「うん」」

 

 洋介の提案に全員賛成する。完全に蚊帳の外だった二人にもしっかりと確認を入れるあたり洋介って感じだな。靴を履き替えるために下足ロッカーに向かっていると、櫛田さんとエンカウントする。

 

「あれ?みんな揃ってどこか行くの?」

 

「うん。今から施設を回ってみようと思ってるんだ」

 

 洋介が櫛田さんの質問に答える。軽井沢さんは少しだけ不機嫌そうな顔をする。軽井沢さんは櫛田さんの事があまり好きではないようだ。かく言う僕もあまり関わりたくないと思っている。だが、妙に避けてしまうと、面倒なことになりかねないので、表面上は仲良くしている。

 

「そうなんだ!私もこれから池君達と施設を周りに行くんだけど一緒にどうかな?」

 

「それはいいね。多い方が楽しいだろうし、どう?」

 

 櫛田さんの提案に洋介が合意してから、僕らに意見を求める。僕としては全く問題ないのだが、軽井沢さんはどうなんだろうか。気になって彼女の方を見ると目が合った。目で、断れと言われている気がする。仕方がないここは僕が断りを入れますか。

 

「せっかくなんだけど……良いんじゃないかな。やっぱりみんなで行った方が楽しいよ」

 

 断ろうと櫛田を見ると、涙目+上目遣いの最強コンボをくらわされた。正直、櫛田さんの本性をなんとなく分かっているから、ときめいたりはしないんだけど、分かっているからこそ断ると後が怖い。

 

「軽井沢さんもいいかな?」

 

「いいよ、別に。()()()()そう言うんなら」

 

 櫛田さんの問いかけに軽井沢さんが了承する。僕の名前の部分が妙に強調された。仕方ないだろ。櫛田さんに目を付けられたくないし。軽井沢さんの視線が痛い。

 

 一緒に行くことに決まり、池君達と合流する。合流した時に軽井沢さんが不機嫌だった事もあり、ひと悶着があったが無事にそろって歩き出す。

 

 洋介と並んで歩いていると、僕らの脇を池君と山内君が取り囲む。どうしたんだ?綾小路君が完全にボッチ状態になってるぞ。

 

「ぶっちゃけ聞くけどさ、平田、倉持。お前らどっちが軽井沢と付き合ってんだ?」

 

「え?」

「はい?」

 

 いきなりの池君のぶっこみに、呆けてしまう。なんの話だ?僕は軽井沢さんと付き合っていないし、洋介と彼女もそういった男女の関係の雰囲気はなかった。僕と洋介が黙っていると山内君が補足を入れる。

 

「いやさ、平田か倉持が軽井沢と付き合ってるって噂で聞いたんだ」

 

「そう言う事か。残念ながら僕は付き合っていないよ。可能性があるとしたら洋介じゃないかな」

 

「いや、僕も違う。一緒にいることが多いから、誰かが勘違いしたのかな」

 

 僕と洋介がともに否定をする。しかし、洋介ならともかく、僕とはないだろう。確かに洋介と一緒で仲良くしてるが。どこからそのような噂が流れたのだろうか。

 

「マジでどっちも付き合ってないのか!?じゃあ二人とも敵って事か?」

 

 敵?何を焦っているんだ?僕らのどちらかが、付き合ってないと困ることがあるのだろうか。周りを見渡して考えてみる。ああ、そう言う事ね。おそらく池君達は洋介と僕が櫛田さんを狙う敵ではないかと疑っているのだ。それにしても必死だな。洋介みたいなイケメン相手だと当然か。次に池君が櫛田さんに恋愛感情があるか聞いて来たので否定しておく。洋介も続いて否定した。僕らの言質を取って安心したのか、二人とも櫛田さんに話しかけに行った。

 

 それから僕たちはそれぞれグループに分かれて話しながら歩いて行く。その中でも櫛田さんは全員に話を振ってこの急増のグループを繋げていた。ホント、頑張るね。

そして、敷地内にあるブティックに到着し中に入る。店内は生徒で賑わっていた。僕らは思い思いに服を物色をする。僕も新しい私服を買おうかな、と考えていると軽井沢さんが声をかけてくる。

 

「ねぇ、これとこれ、どっちがいいと思う?」

 

 両手に違った服を持って僕に聞く。僕の好みを聞いても仕方がないと思うが。軽井沢さん可愛いし、どちらでも似合うと思うけど。

 

「えっ?」

 

「あ……」

 

 最後の方が声に出ていたみたいだ。急に可愛いとかキモすぎだろ。僕はどこの軟派野郎だよ。滅茶苦茶恥ずかしい。慌てて弁明する。

 

「ち、違うよ?いや!違うってのは軽井沢さんが可愛くないって事じゃなくて、十分可愛いんだけど、その……ふ、服だよね?僕は右手に持ってる方が似合うと思うな!イメージにピッタリだよ!」

 

 僕は何を言っているのだろう。穴があったら入りたいとはこの事。固まっていた軽井沢さんが動き出す。

 

「う、うん!じゃ、じゃあこっちにしよっかな。ありがとっ!」

 

 慌てた様子で僕が言った方の服をレジに持って行った。可愛いなんて言われ慣れてるだろうにそんな焦らなくても。こんなことしてるから付き合ってるとか言われるんだよな。誰かに聞かれてないだろうなと思っていると、後ろから視線を感じた。振り返ってみると綾小路君がこちらを見ていた。心なしかその表情はニヤニヤしている様に見えた。

 

 皆の買い物が終わり、近場のカフェへと足を運んだ。少し軽井沢さんと気まずい雰囲気が流れたが、すぐにいつも通りに戻った。カフェでは学校の話になる。それぞれが学校について、ポイントについて感じていることを話す。僕は前に高円寺に話したことは伏せ、周りに合わせておいた。ここであの話をしてもいい雰囲気になるとは思えないし。

 

 あたりも暗くなり、解散となる。と言っても住む所は皆同じなので一緒に帰路につく。その中、櫛田さんが話し出した。

 

「今日は楽しかったね。また行こうね!」

 

「そうだね櫛田ちゃん!でも今日でポイントほとんど使っちまったな」

 

 櫛田の言葉に食い気味に返答した池君。もうポイントを使い切ったのか?

 

「別に問題ねぇだろ。どうせあと数日で10万入るんだし」

 

「だなー。来月は何買うかなー」

 

「あたしとしては、10万なんて言わずにもっとポイントが欲しいって感じ?化粧品とか洋服とか買ってたら、足りないし」

 

 皆一様に、次のポイント支給に夢を膨らます。

 

 その夢も希望も打ち砕かれることになるとは、この時の僕らは思わなかった。

 

 そして、僕たちは5月を迎える。

 




この小説の軽井沢さんはまだ誰とも付き合っておりません。
平田君とオリ主、二人と一番仲が良い女子として、クラスの女子から一目置かれているって感じです。

今回も読んでいただきありがとうございます!
いただいた感想を見ているとやる気がみなぎります(笑)

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