唯我独尊自由人の友達   作:かわらまち

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綾小路君の一人称は「俺」ではなく「オレ」でしたね。
修正しておきます。ごめんなさい綾小路君。

しばらくは原作準拠になります。

それでは続きをどうぞ。


昼食

 

 

 

目覚まし時計の音で目を覚ます。布団が変わって寝られなかった、なんて事は無く、ぐっすりと眠ることができた。昨日は荷解きをした後、授業の予習を少しだけやってから、すぐに就寝した。入学初日とあって疲れていたのだろう。

さて、学校へ行く準備をするか。今日から授業が始まる。

 

準備が終わり、部屋を出て鍵を閉める。下に降りるためエレベーターホールへ向かうと、そこには見知った人物がエレベーターの到着を待っていた。

 

「おはよう。洋介」

 

「あ、おはよう勇人君。」

 

昨日、友人となった洋介と挨拶を交わす。今日も朝から爽やかイケメン全開だ。

 

「洋介もこの階だったんだね。Dクラスは4階に集められているのかな」

 

「うん。410号室だよ。3階の人も居たしそれは違うみたいだね」

 

なるほど。それなら本当に偶然だったのか。綾小路君はまだしも、高円寺が隣ってのは何らかの意図があると感じたんだが。

到着したエレベーターに乗り込み、寮を出て、話しながら一緒に登校する。

 

「昨日は行けなくてごめんね。楽しかった?」

 

「別に構わないさ。すごく楽しかったよ。仲良くなれたし」

 

「そっか。カラオケって昨日説明があった娯楽施設が集まってる場所にあるんだよね?どんな感じだった?」

 

昨日の説明で大体の施設の場所は聞いていたが、実際にどのような感じなのか、経験者に聞いておく。

 

「そうだね、大きいショッピングモールって感じだったよ。お店もいっぱいあって、僕が思いつく限りのお店は全部あったかな」

 

「ポイントさえあれば不自由はないか」

 

「そうだね。これだけ色々揃っていると、直ぐにポイントが無くなりそうだよ」

 

「現金じゃないから、使っている実感があまりわかないしね」

 

欲しいものが売っていて、それを買うお金もある。更にはそのお金が1カ月単位で支給されるとあれば、後先考えずに消費してしまう人も少なくないだろう。ましてや、ほとんどの人は今でこのような大金を持ったことが無いのだから。

 

「極力無駄遣いは避けた方がよさそうだね。浪費癖が付いたら卒業してからが大変そうだ」

 

「うん。僕もあまり使わないようにするつもり」

 

「でも、洋介は付き合い良さそうだから、それだけで結構消費してしまいそうだね」

 

「一応誘われれば、できるだけ行きたいと思っているけど、その辺もうまくやらないとね」

 

その後も、世間話などをしながら、途中で合流したクラスメート(自己紹介のときに見覚えがある)と一緒に教室へ向かった。

 

教室に着くと、洋介と別れ自分の席へ向かう。朝のホームルームが始まるまで、生徒達は思い思いの動きをしているが、隣人は席に座ってじっとしていた。急に話しかけたら吃驚させてしまいそうだし、ここは一回近くの違う人に声をかけて、僕の存在に気付いてもらおう。

 

「おはよう須藤君。今日もカッコいい髪形だね」

 

「あ?なんか文句あんのか!」

 

話しかける相手を間違えた。だって近くに須藤君しか居なかったんだもん。恐らく皆、須藤に近寄らないようにしていたのだろう。好き好んでヤンキーに声をかけに行く奴などいない。僕がいたか。だが、これだけは言っておくがコンビニでの件は根に持ってるからな僕。

 

会話は不発に終わったが、本来の目的である僕の存在を気付かせることには成功したみたいで、佐倉さんがこちらを見ていた。目が合うと慌てて逸らされた。ちょっと傷ついた。須藤君の横を通り過ぎ、自分の席に着く。

 

「おはよ、佐倉さん」

 

「お、おはよう。く、倉持君……」

 

俯きながらも挨拶を返してくれる。しかも初めて名前を呼んでくれた。名前を呼ばれただけで、さっきの傷心が癒えるあたり、僕は単純なのかもしれない。

 

少ししてから始業のチャイムがなり、先生が入ってくる。ちなみに高円寺は先生が入ってくる数秒前に教室に入って来た。ギリギリすぎるだろ。まぁ、遅刻しなかっただけマシか。

 

今日から授業が始まると言っても初日とあって、授業の大半は先生の自己紹介と勉強方針等の説明だけだった。先生たちは進学校とは思えないほどフレンドリーで、多くの生徒が拍子抜けした様子だった。高円寺はいつもの如く、高円寺ミラーで自分の顔を見ていた。僕と同じ列に座る須藤君に至っては、ほとんどの授業で睡眠を貪っていた。先生達はそれに気づいていた様子だったけど、注意する気配は全くなかった。逆にそれを()()()()()見ているように僕の目には見えた。

義務教育ではなくなったから、授業を聞くのも聞かないのも個人の自由。損するのはお前たちだ。とでも考えていたのだろうか。

 

そんなこんなで、昼休みになった。生徒たちが思い思いに散っていく。僕も席を立ち、高円寺の元へ向かう。途中洋介がクラスの皆に食堂に一緒に行かないかと言っていた。続々と女子が集まる中、僕の方にも視線を向けたが、僕の足が高円寺の方へ向いているのに気付き、断念したみたいだった。視線でごめんと謝っておく。

 

「授業くらい真面目に聞いたらどうだ?後々、後悔するぞ」

 

「後悔?ありえないね。私は生きてきて後悔をしたことなど一度も無い。それにあの教師達の授業は私にとっては、聞くに値しないものなのだよ」

 

「少しは後悔してくれよ。先生たちの授業は結構分かりやすかったと思うけどな」

 

聞くに値しないのは、高円寺が頭が良すぎるからだろう。一般的な頭の持ち主の僕には、授業は凄い分かりやすく、要点もつかみやすかった。さすが進学校の教師だな。と思ったくらいだ。

 

「今日の昼飯はどうするの?学食でも行く?」

 

「悪いが、レディー達と食事の約束があるんだ。また後日だね」

 

「そっか。じゃ、待たしたら悪いだろうし、行ってらっしゃい」

 

高円寺が教室を出て行くのを見送る。そうか、今日は予定があったか。

僕と高円寺は、仲が良いがいつも一緒に行動しているかと言えば、そうでもない。実は高円寺といる時間は意外にも少ないのだ。高円寺は見ての通り自由人だから、偶に僕と昼食をとるくらいだ。

 

それにしても、洋介のグループと昼食行けばよかったな。既に洋介のグループは食事をしに教室から出て行ったようだった。一瞬、佐倉さんを誘おうかと考えたが教室には姿が無い。これはボッチ飯確定かな。そう考えていると、一人の男子生徒が目に入った。綾小路君だ。彼を誘ってみようかな。

 

「綾小路君!」

「綾小路君……だよね?」

 

僕が綾小路君を呼ぶと同時に、違う方からも綾小路君を呼ぶ声が放たれた。横を見ると、美少女、櫛田さんと目が合う。タイミング悪かったかな。

 

「えっと、先にどうぞ、櫛田さん」

 

「ううん。倉持君が先でいいよ!」

 

「いやいや、僕のは後でもいいから、先に話して」

 

「私も少し聞きたいことがあっただけだから後でいいよ!」

 

「当のオレが蚊帳の外なんだが……」

 

「「ご、ごめんね」」

 

不毛な譲り合いが続く中、綾小路君の一言で終止符が打たれる。結局、櫛田が先に用件を言う事になった。

 

「ちょっとしたことなんだけど綾小路くんって、もしかして堀北さんと仲がいいの?」

 

「別に仲良くはないぞ。普通だ普通。あいつがどうかしたのか?」

 

知らない名前が出てきた。堀北さんか。あの時の自己紹介にはいなかったな。綾小路君に聞くってことは、あの黒髪の綺麗な人かな?

僕が疑問に思っていると、それが伝わったのか、櫛田さんが説明してくれる。

 

「堀北さんって言うのは、綾小路君の隣の席の女の子だよ。綺麗な黒髪の美人さん!」

 

フルネームを堀北 鈴音(ほりきた すずね)。なんでも、櫛田さんが連絡先を聞いたら断られたらしい。それで堀北さんがどのような人なのか、一番仲が良さそうな綾小路君に聞きに来たのだ。案外、櫛田さんの本性に気が付いたんじゃなかろうか。尤も、ばれるようなヘマを櫛田さんがするようには思えないが。

結局、綾小路君も昨日会ったばかりでよく知らないと聞き、「改めてよろしくね」と言いながら握手をして去って行った。因みに僕とも握手をした。

 

「それで、倉持は何の用だ?」

 

「そうそう、綾小路君を食事に誘いに来たんだった。一緒にどうかな?」

 

危うく目的を忘れるところだった。僕の言葉を聞いて、予想外だったのか、面をくらったような顔をする。

 

「オレを誘いに来たのか?」

 

「うん。嫌、かな?」

 

「そういうわけじゃない。是非よろしく頼む」

 

少し食い気味に了承される。意外と綾小路君って分かりやすいのではないのだろうか。これがすべて演技なら相当な実力者だろう。

 

一緒に学食に向かうも、少し遅かったので席がほとんど埋まっていた。仕方がないのでコンビニに立ち寄りパンを買って教室に戻った。数名程教室に残っていたクラスメイト達は机をくっつけて友達同士食べる者から、一人静かに昼食を取る生徒など多種多様であった。綾小路君の席で食べることになり、向かうと、先程話に出ていた、堀北さんが席に座っていた。僕らを見て綾小路君に話しかける。

 

「まさか、誰かとご飯が食べたいからってお金で雇うとは驚いたわ」

 

「何でそうなる。倉持から誘って来たんだ」

 

「にわかに信じられないわね。寝ぼけているんじゃないかしら」

 

「もう昼だぞ。寝ぼけているわけがないだろ」

 

「二人は仲が良いんだね」

 

完全に蚊帳の外になっていたので口をはさむ。先程の綾小路君の気持ちがよくわかる。

僕の言葉が気に食わなかったのか、凄い不機嫌な顔で否定される。

 

「どこをどう見て仲が良いと思うのかしら。あなたの目は節穴なの?」

 

「僕には仲が良いように見えるよ。少なくとも、嫌ってはいないでしょ?」

 

「何故そう思うのかしら?」

 

堀北さんがさらに不機嫌になった顔で聞いてくる。怖いよ。綾小路君は我関せず、といった感じでパンを食べていた。

 

「だって、嫌いだったら態々憎まれ口叩かないでしょ?興味なければ綾小路君に友達が居ようと居なかろうと、どうでもいいだろうし」

 

「詭弁ね。嫌いだから皮肉を言ってやっただけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

「そういうことにしておくよ。そういえば挨拶がまだだったね。僕は倉持勇人。よろしくね」

 

「悪いけどよろしくするつもりはないわ。私に友達は必要ない」

 

そう言って、話は終わりだとサンドウィッチを食べだした。僕も食事を再開しよう。櫛田さん、彼女はかなり手強そうだぞ。しかし、友達は必要ない、か。彼女がこの先大きな壁に当たらなければいいが。

 

昼食をとっていると、教室のスピーカーから放送が流れた。

 

《本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動及び、委員会の説明会を開催いたします。部活動、委員会に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください》

 

部活動か。中学の時はコミュニティの形成のために何個か掛け持ちしていたな。そんな事を思い出していると綾小路君が話しかけてきた。

 

「二人は部活に入るのか?」

 

「僕は迷ってるかな。中学でも一応やってたし。堀北さんは?」

 

「興味ないわね」

 

 言い方は冷たいが、質問に答えてくれるあたり、悪い人じゃないんだろうな。

 

「綾小路君は何か入るの?」

 

「まだ考えてないが、多分入らないな。ただ、見には行きたいな」

 

「入部するつもりもないのに、説明会には行きたいなんて。変わってるわね。それとも部活動を口実に、友達を作ろうと画策しようとしている、とか?」

 

「いくら何でもそれはないでしょ」

 

「オレにとって部活は友達を作るチャンスだと思うんだ」

 

 本当に画策していた。堀北さん鋭すぎでしょ。会って2日でそこまで理解してるならもう友達でもいいんじゃないかな。

 

「馬鹿ね。けど、私には綾小路くんが、本気で言っているようには思えないわ。本当に欲しいのならもっと自分から主張するべきじゃないかしら」

 

「それが出来れば苦労はしない」

 

「確かにそうだね。堀北さんは、なにか部活やってたの?」

 

「いいえ。部活動は未経験よ」

 

「部活以外は何が経験済みなんだ? やっぱりあんなことやこんなことか?」

 

 意外にも綾小路君が下ネタで堀北さんをからかいに行く。そのまま堀北さんに脇腹をチョップされていた。お前らホントは仲良いだろ。

 

「綾小路君の最低発言は置いといて、どうせなら放課後3人で説明会に行かない?」

 

「軽く貶されたが、オレは賛成だ」

 

「堀北さんはどうかな?もしかしたら、やりたくなるような部活が見つかるかもよ?部活だけでなく、委員会の説明もあるみたいだし。例えば生徒会とか堀北さんに似合いそうだよね」

 

 綾小路君が合意し二人の視線が堀北さんに向く。まぁ、どうせ断られるだろう。しかし、否定の言葉はすぐに飛んでこず、何やらブツブツ言いながら考え込むような仕草を見せる。生徒会と言う言葉に反応を示したように見えた。興味があるのだろうか。

 

「ねえ、少しだけでも構わない?」

 

「もちろんだよ。長居するつもりはないしね」

 

「だな。オレはキッカケを探すだけだし。それよりいいのか?」

 

「少しだけならね。それじゃあ、放課後に」

 

 そう言い終え、再度食事に戻る。さっきまで行く雰囲気は全くなかったのにどうしたのだろう。やっぱり、悪い奴じゃないんだろうな。

 

「友達を作れず、右往左往するあなたを見るのも、少し面白そうだしね」

 

 悪い奴ではないが良い奴って事も無いみたいだ。

 

 その後、昼休みが終わり、午後からの授業を受けた僕たちは、放課後に3人で体育館へと足を運んだ。

 

 

 




話が進まない...。
少し端折ったほうが良さそうですかね。

ヒロインの件はかなり悩んでいます。
平田君の役をオリ主にさせるのは考えていましたが、無人島編後の展開をどうするかが難しい所なんですよね(^-^;

今回も読んでいただき、ありがとうございました!

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