唯我独尊自由人の友達   作:かわらまち

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仕事が終わり見てみると、お気に入り数が急増していて焦りました(笑)
よう実7巻の発売日も決まりましたし良いことだらけです。

お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます!
見るたびに嬉しく思います。

では、続きをどうぞ。
今回は、高円寺君はお休みです。



新たな友達

 

 

 

日本政府が関わっている学校ということもあり、厳かな雰囲気で、壮大な入学式だった。

なんて事は無く、至って普通の入学式を終え、再び教室にて敷地内の説明を受けた後、昼頃に解散となった。終了の合図と同時に数名の生徒が教室から出ていく。隣人も、その中の一人の様で帰り支度を済ませ、席を立った。

 

「バイバイ、佐倉さん。また明日ね」

 

「う、うん。また、明日……」

 

隣人、佐倉さんに手を振ると、控えめにだが、戸惑いながらも小さく振り返してくれた。そのまま気恥ずかしそうに、小走りで教室から出て行った。

 

さて、高円寺もいつのまにやら居なくなっているし、僕も帰るとするかな。残念ながら、まだ一緒に帰る友達は出来ていない。別に急ぐ必要もないだろう。昔みたいに、無理に友達を作る事もしなくていいんだし。

昔の自分の必死さを思い出し、心の中で苦笑していると、声がかかった。

 

「倉持君!ちょっといいかな?」

 

「ん?平田君か。何か用かな?」

 

教室から出て行こうとしていた僕に声をかけてきたのは、コミュ力お化けの平田君だった。先程は早くもできたグループの中で、この後どうするかを話し合っていたみたいだった。

 

「名前覚えてくれてたんだ。嬉しいな」

 

「当たり前だよ。クラスメートなんだし」

 

人の顔と名前を覚えるのは得意だ。人は、一回会っただけなのに名前を覚えてもらえていると嬉しく感じるものだ。特に目立つ存在では無い人なら、余計そう感じる人が多いだろう。それを利用して好感を得るのは常套手段である。尤も、平田君のような存在を覚えれないわけがないが。

 

「自己紹介のときに提案をしてくれてありがとう」

 

「いやいや、お礼を言われるようなことじゃないよ。たいそうな事を言った訳でもないし、平田君を否定するような言い方をしてしまった」

 

「ううん。あのまま自己紹介を始めていたら、僕の言い方だと、全員に参加を強制するように聞こえた人がいたかもしれない。そうじゃなくても、始まってしまったら断ることが難しい、半強制的な雰囲気になっていた。そういうのが苦手な人には余計にね。そこで断ったらその人が悪者みたいになっていただろうしね。だけど、倉持君の言葉で参加しない選択肢を選びやすい状況になった。それに、自己紹介を人に言われてやるのと自らやりにいくのなら、後者のほうが良いに決まってる」

 

僕はただ、佐倉さんが参加しなくてもいいような状況を作りたかった結果、あのような形になっただけなのだが、平田君には僕がクラス皆の為を想って言ったのだと、感じたみたいだ。

しかし、周りが良く見えている視野の広さ、僕の考えを瞬時に理解して切り替えられる順応性の高さ、自らの非を素直に認める事ができる強さ、そしてイケメン。完璧だな。高円寺とは違ったタイプの完璧人間だ。

ここで再度否定をしても無意味なので、落としどころをつくる。

 

「じゃあさ、お礼と言っては何だけど、僕と友達になってくれない?」

 

「もちろんだよ!僕も友達になりたいと思っていたし!下の名前で呼んでもいいかな?」

 

「うん!僕も洋介って呼ばしてもらうよ」

 

下の名前で呼び合うことになり、平田君改め洋介と握手を交わす。高校初めての、本心から友達になりたいと思った二人目の友人ができた。

洋介と握手をしていると一人の女子生徒が近づいて来た。

 

「も~。平田君遅いよ!内緒話?」

 

「ごめんね。勇人君と少し話し込んじゃって」

 

「勇人君?あー倉持君ね」

 

僕の顔を見て、誰の事か理解したみたいだった。正直、名前を憶えられているとは思わなかった。ギャルのような見た目からイケメンにしか興味ないと勝手に思っていた。改めて自己紹介しておくか。

 

「改めて、勇人こと倉持勇人だよ。よろしくね軽井沢さん」

 

「うん。よろしく~」

 

彼女は軽井沢 恵(かるいざわ けい)さん。自己紹介を聞いていた限りでは、強気な性格で人を選ぶが、カリスマ性がある印象。既にもう、一部の女子のリーダー的存在になりつつあるようだ。その彼女が洋介の元に来た理由は、何でも、今からクラスの数人でカラオケに向かう予定らしい。その中で洋介が僕に話しかけに行ったっきり帰って来ないから催促しに来たのだ。

 

「そうだ。倉持君もカラオケ来たら?」

 

「そうだね。よかったら一緒にどうかな?」

 

「んー。悪いけど、今日はやめておくよ。買いたい物があるし、部屋の片付けもやりたいし」

 

せっかくの誘いだが断る。早いうちに荷解きをして、片づけておきたい。それにしても、軽井沢さんに誘ってもらえるとは驚いた。意外と好意的に思ってもらえているのかな。

 

「そっか。急だし、仕方ないね」

 

「せっかく誘ってもらったのに、ごめんね。今度埋め合わせするよ」

 

二人に謝罪をしてから、また明日と別れを告げ、教室を出る。今日の食料や、日用品を調達するため、寮近くのコンビニへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「っせえな、ちょっと待てよ! 今探してんだよ!」

 

コンビニに入ると、大きな怒鳴り声に迎えられる。レジで揉めているらしい。どうやら、見覚えのある同じクラスの赤髪の生徒が、学生証を忘れてしまい、店員と揉めていたみたいだ。そこにまたしても見覚えのある生徒が仲裁に入る。綾小路君だ。奥には綾小路君の隣の席の女の子の姿も見て取れた。案外仲が良いのかもしれないな。

結局、綾小路君が料金を立て替える事になったみたいだ。赤髪の生徒は綾小路君にカップ麺を手渡すと、僕の脇を通り過ぎ、外に出ていった。人に金を出させて作らせるのかよ。赤髪の生徒は見た目通りの性格をしているみたいだな。綾小路君、ご愁傷様。

 

さて、僕も自分の買い物をするとしよう。綾小路君に心の中で手を合わせ、商品棚へ向かう。取り敢えず、今日の食事を買わなければ。今後、自炊するかは兎も角、今日は何かしら手軽に食べれるものにしよう。お、これなんていいんじゃないだろうか。僕は手に取った、Gカップラーメンと書かれたカップ麺を買い物かごに入れた。余談だが、以前、高円寺が僕が食べていたカップ麵を興味深そうに見ていたので、食べさせてあげたら、「君は、この様な物を幸せそうに食べていたのかい?正気の沙汰では無いのだよ」って憐れんだ目で言われた。さすがに怒った。

 

最低限必要な物を買い物かごに入れていると、コンビニの隅に置かれたワゴンが目に入った。一部の食料品や生活用品が置いてあり、一見他のものと同じに見える。だが、明らかに異なる点があった。

 

「無料、か……」

 

歯ブラシや絆創膏といった日用品や、賞味期限が近い食料品などが、無料と書かれたワゴンに詰められている。『1か月3点まで』と但し書きも添えられており、周りから浮いた異質さを放っていた。

まず考えられるのが、処分品。だが、いくら何でも無料にはしないだろう。よくて半額などの値引きだ。それ以外だと、ポイントを使い過ぎた人への救済措置といったところか。10万ポイントも支給しといて救済処置もある、いくら何でもサービスが良すぎる。

学校側の意図が全く読めない。もしくは、()()()()()()()()()()()()が何かあるのだろうか。今考えても答えは出ないので、思考を止める。

 

購入する物が決まり、レジへ向かい、学生証を使い、会計を済ませる。本当に使えた。まぁ、使えなかったら困るのだが。

いざ寮に帰ろうと、コンビニから出ると、ビチャッ、と嫌な音と共に足に何かが当たった。どこからか飛んできたカップ麺が足に当たったのだ。飛んできた方を見てみると、赤髪の生徒が憤っていた。

 

「あークソが、女といい2年といい、うぜぇ連中ばっかりだぜ」

 

そう言うと、こちらの状況に一瞥もくれず、ポケットに手を突つっ込み帰っていった。おい。これどうすんだよ。ズボンが汚れたじゃないか。途方に暮れていると後ろから声がかかった。

 

「おい。大丈夫か?」

 

「綾小路君か。何があったの?」

 

声をかけてきた綾小路君に説明を求める。どうやら、赤髪の生徒、須藤 健(すどう けん)が、店員の次は上級生とトラブルを起こしたらしい。そのとばっちりを運悪く僕が受けてしまった。許すまじ須藤。

 

「仕方がない、片付けるか」

 

「だね。放置する訳にもいかなさそうだし」

 

僕の言葉と同時に二人でコンビニの外壁を見上げる。そこには2台の監視カメラが設置されていた。問題になっても困るしな。そう考え、二人で片づけを始めた。

 

「ありがとう、綾小路君。助かったよ」

 

「別にいい。それより、ズボン、大丈夫か?」

 

相変わらずの無表情で僕のズボンの心配をしてくれる。こうして面と向かって話して見ても表情が読みづらい。

 

「当たり方が良かったのか、そこまで汚れなかったよ」

 

「そうか。それで、倉持、でよかったか?」

 

「そうだよ。倉持勇人。よろしくね」

 

本日何回目か分からない自己紹介をする。

 

「ああ。よろしく頼む」

 

綾小路君も今から寮に、帰るらしい。せっかくなので一緒に帰る事を提案すると。変わらないと思っていた表情が、少しだけ動いた。喜んでいるように見えたがどうなんだろうか。

 

コンビニから寮までの距離は近く、ものの数分で寮に到着する。

1階フロントの管理人に学生証を提示してカードキーと寮でのルールが書かれたマニュアルを受け取る。カードキーには402と書かれていた。同じく管理人から受け取った綾小路君に話しかける。

 

「部屋何号室だった?僕は402号室だよ」

 

「驚いたな。俺は401号室だ」

 

「隣じゃん!すごい偶然だね」

 

まさかの隣の部屋だった。こんな偶然ってあるもんだな。これで逆側の隣が高円寺とか洋介だったら笑えるな。

 

部屋がある4階に向かうためエレベーターに乗り込む。

渡されたマニュアルに目を通すと、ゴミ出しの日や、水の使い過ぎや無駄な電気の使用を控えることなど、生活の基本の事柄が記載されていた。しかし、予想外な点が一つあった。それは綾小路君も一緒だった様で、それを口に出す。

 

「電気代やガス代も、基本的に制限はないのか……」

 

「みたいだね。てっきり、ポイントから毎月引き落とされると思ってたんだけど」

 

「オレもそう考えてた。それに、男女共用の寮になっていることにも少し驚いた」

 

綾小路君が言ったように、この学校の寮は男女共用である。高校生にそぐわない恋愛をしてはいけないと書かれてあるが、そんなの当たり前だろう。

 

「しかし、こうも待遇が良すぎると、ちょっと不安になるよね」

 

「ああ。そうだが、今は気にしても仕方がない。喜んで今の状況を利用させてもらった方がいい」

 

「それもそうだね」

 

そう結論付けた所で、お互いの部屋の前に到着する。

 

「さて、これから3年間、クラスメイトそれから、お隣さんとして、よろしくね」

 

「こちらこそよろしく」

 

「「また明日」」

 

綾小路君と別れ、部屋の中に入っていく。僅か八畳ほどの1ルーム。だが、初めての一人暮らしにしては十分だろう。今日は友達ができたし、綾小路君ともうまくやっていけそうだ。新生活の滑り出しとしては上出来だろう。

 

明日からの高校生活に胸を躍らせながら荷解きを開始した。

 

 

 

 

ちなみに、逆側の隣403号室は高円寺でした。

 

 

 

 




オリ主の自己紹介がくどくなりましたが、交友関係の構築回と言うことで多めに見てください。

作者は軽井沢さん推しなのでヒロインにしたいんですけど、綾小路とのセットが好きなんですよね。

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