説明不足の部分もありますが、後々補足します。
「やっぱり、サボる気だったな」
入学式が行われる体育館へ高円寺と向かう途中、高円寺をジト目で見ながら話す。
「フッ。さっきも言ったであろう。意味が無ければ行かない。それだけなのだよ」
「意味はあるだろ?これから学校生活を送るうえで、大事なものなんだし」
「私の中では大事な事には含まれない。故に行かなくてもいい。そう言うことか」
「違うよ。どれだけ行きたくないんだよ」
しかし、これだけ行きたがらないくせに意外とあっさり付いて来たのはどう言う事だ?
疑問に思っていると高円寺から声がかかる。
「して、勇人よ。どう見る?」
「へ?急になんだよ」
どう見るってなんだ?教室から体育館への地味な遠さの話か?そりゃ、もっと近いほうが良いが。
見当違いな事を考えていると再び高円寺が問いかける。
「この学校の事だ。君の考えが聞きたいから態々足を運んだのだ」
「学校の事か。僕の考えなんか聞いても参考にならないぞ?」
「参考になるかどうかは私が決めることなのだよ。少なくとも私は君の意見が参考にならなかったことは無い。と思っているがね」
僕の意見が参考になるのなら、何故注意を聞き入れない?そのような事を言っても仕方がないので、素直に僕が感じた事を話す。
「そうだな。まず初めに引っかかったのは、ポイントで買えないものが無いと先生が言っていたことかな。何でも買えるとは本当に何でもなのかな。例えばテストの点数なんかも買えたりするんだろうか」
「さぁ。どうだろうね。尤も私には必要ないがね。君もそう言った類は
「まぁね。テストの為にやった努力を踏みにじる様な行為はあまり好ましくは思わないね」
テストでよい点数を取るために必死に勉強した努力を無下にするものはよくないだろう。しかし、仮に買うことができたとしても、かなり高額になるのではないだろうか。買うつもりは毛頭ないのでどうでもいいが。話を続けよう。
「次に気になったのは、支給される額。と言うより
「と言うと?」
「今の段階での価値と期待。入学したばかりの僕らの価値なんて学校側はまだ測れてないと思う。だから、ほとんどが
「支給されるポイントに影響がでると考えるのかね?」
「うん。僕の考えすぎって事もあるかもだけど、何らかの影響はあると思う。先生は
僕の推測を聞いて、何やら嬉しそうな顔をする高円寺。視線で続けろと催促してくる。
「最後に気になったのが……」
「ん?どうしたのかね?」
僕が言おうか躊躇していると高円寺がこちらに視線を向ける。あまりこれは言いたくないんだけど。
「何て言うか、これは悪口とかじゃ無いんだけど。この学校って将来の日本を支える若者を育成するのが目的でしょ?それなのに僕を含めて何と言うかこう……」
「ふむ。無能な者が多すぎると言いたいのか。なるほど。確かに君を除けば烏合の衆だな」
「違うよ!無能とかじゃなくて、もっと厳しい雰囲気かと思ってたら意外と緩い感じだったなって事!」
人が言葉を選んでいたらクラスを敵に回すようなことを言ってくる。無能とまでは思っていないが進学校にしては生徒の雰囲気が少し違うような感じがする。それとも、進学校でもこのような感じなのだろうか。
「なるほど。勇人、君の目にはあのレディーはどう見えたのかね?」
「あのレディー?ああ、茶柱先生の事か。んー。そうだな、こちらを探っている感じと、何か隠しているような感じに見えたかな」
淡々と説明している中、偶にこちら側を探るような視線があった気がする。それに学校の制度についてすべてを話したとも思えないし。
「そうか。君が言うならそうなのだろう」
「いや、ちょっとは疑おうよ。あくまで気がしただけだからね」
「フッ。私は君の
どんな理由だよ。結局は自分が好きって事か。まぁそれでも信頼してくれるのは嬉しい事だが。
高円寺が言う僕の目と言うのは、僕の観察眼の話だ。僕は小さい頃から人に嫌われたくないがため、人の顔色ばかり窺って生きてきた。それ故に相手の表情や言動、一挙手一投足を
恐らく、高円寺が僕の事を友と認めてくれた要因なのだろう。僕としてはこの目があまり好きではない。人の顔色ばかり窺って生きるのはもう嫌なのだ。僕は高円寺の人の顔色など窺わず、本音で生きているその唯我独尊的な生き方に憧れを抱いた。
そして、高円寺と友達になってからは、出来るだけ相手を観察しないようにしているのだが、癖とは面倒くさいもので、どうしても相手を観察してしまう。心の底でやはり人に嫌われたくないと逃げているのだろう。人はそう簡単には変われないのだろうか。
嫌な思考を払拭すべく、話題を変える。
「そういや、さっきの自己紹介。あれはダメだろ。物騒すぎる」
「そうかい?私は私の思っていることを素直に言っただけだ。それをどう捉えるかは興味が無いね」
確かに彼のこの考えに憧れたがさすがに唯我独尊すぎる。もう少し自重してほしい。
「自己紹介と言えば、バスに居たプリティーガールだが。あれは面白いな。完全に
「あー。やっぱり、高円寺も思った?」
そう、彼が言う通り櫛田は昔の僕に、高円寺と友達になる前の僕にそっくりなのだ。僕は誰にも嫌われたくないがためにいつも笑顔で、良い奴を演じていた。クラスの委員長になり皆を観察して好感を得て、クラスの中心にいた。最初の自己紹介の時に「みんなと友達になるのが目標です」って言ったっけ。クラスの皆が僕の事を頼りにする状況を作り上げた。一人を除いては。その一人、高円寺だけは僕の本性を見破っていた。
そして、僕は彼に言われたんだ。
「
その後、紆余曲折があり、今はこうして友達として仲良くなっているが、今思い返してみるとよく友達になれたなと感心する。そんな過去の話はいいとして、兎にも角にも櫛田さんは昔の僕に似ているのだ。動機はどうかは分からないけど。高円寺が言うんだから間違いないのだろう。
「だから、バスでも席を譲らなかったんだね?」
「無論だ。私を利用して好感度を上げようとしているのが見え見えだったのでな。私を利用しようなどありえないのだよ」
見え見えって。普通は分かんないよ。僕より目が良いんじゃなかろうか。
取り敢えず、これから櫛田さんには気を付けておいたほうが良いだろう。もしかしたら、僕が彼女の本性に気付いていると、ばれているかもしれないし。そうなれば僕が邪魔になり何か仕掛けてくるかもしれない。昔の僕なら、そうしているだろう。僕の心配を察してか高円寺が僕に告げる。
「安心したまえ。私のフレンドに手を出す輩は私が叩き潰すのだよ」
「怖いこと言うなよ。もっと穏便に行こうぜ」
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高円寺の言葉を聞いて、呆れながらも、友達として嬉しく思うのであった。
それから僕たちは入学式を終え、寮への帰路についた。
高円寺がオリ主を友と認めた理由は、あくまでオリ主が思っている事です。
実際の理由は少し違います。
二番煎じですみません。