唯我独尊自由人の友達   作:かわらまち

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それでは続きをどうぞ。


波乱の始まり

 

 

 放課後になり、帰り支度を始める。いつも通り軽井沢さんと洋介と帰ろうと席を立つと、茶柱先生が須藤君を呼び止める声が聞こえた。職員室に来い、との呼び出しのようだが、もしかすると昨日の事、或いはポイントが振り込まれていないことに関係しているのだろうか。

 

「変わったようで変わってないよな、須藤の奴。退学しといた方がよかったんじゃ?」

 

 茶柱先生と須藤君のやり取りを見ていたクラスの誰かが呟いた。今後の事を考えると、問題児である須藤君はいなくなっていた方が良かったとも言えるし、須藤君が活躍する場面がやってくる可能性もあるといえる。今の段階では何とも言えない。

 だが、退学のペナルティがあるかもしれない以上、下手に退学させるのは得策ではないだろうな。

 

「ていっ!」

 

「痛っ!」

 

 須藤君について考え事をしていると、背中に衝撃を受ける。背中を押さえながら後ろを振り向くと、頬を膨らました軽井沢さんが立っていた。

 

「何するんだよ」

 

「何回呼んでも返事しないからじゃん!」

 

「叩かなくてもいいだろ!ビックリしたじゃないか」

 

「無視する方が悪いっ」

 

 どうやら考え事をしている間に何度か呼ばれていたらしい。考え込むと周りの音を遮断してしまうのは悪い癖だな。直さなくては。しかし、何も背中を叩くことないだろ。しかも思いっきり。

 

「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。勇人君は何か考え事?」

 

「ちょっと須藤君が呼び出されたのが気になってね」

 

「何か問題が起きたって考えてるの?」

 

「その可能性があるかもしれない」

 

 洋介が仲介に入り、話が変わる。僕たちは話しながら、教室を後にした。いつもは部活があるのだが、今日は休みなので、直接寮へと帰るつもりだ。

 

「問題って、須藤君は何をやらかしたわけ?」

 

「それは分からない。だけど、須藤君が呼び出されたタイミングが気になって」

 

「今朝に先生が言っていた事だね」

 

 靴を履き替えた僕たちは、校舎を出て、寮への帰路につく。周りには多くの生徒が下校しており、前方には綾小路君と堀北さんの姿も見えた。一緒に下校しているあたり、やっぱり仲が良いんじゃないだろうか。

 そんなどうでもいい事を考えながら、話を続ける。

 

「先生の言っていた事って、ポイントが振り込まれなかったやつ?」

 

「そうだね。なにかトラブルがあったらしいけど、勇人君はそれが須藤君とそれが関係してると考えているんだね」

 

「問題が起きたと話してからすぐの呼び出しだからね。何らかの関係はあるんじゃないかな」

 

「うーん、考えすぎなんじゃない?」

 

「僕も考えすぎだと思うよ。Dクラスだけがポイント支給されなかったわけじゃなくて1年の全クラスがされていないわけだから、学校側の問題の可能性が高いよ」

 

「そうだといいんだけどね」

 

「この話は終わりっ!今日のお昼の話なんだけど……」

 

 その後、他愛のない話をしながら、寮へと帰った。尤も、僕には考えすぎとは思えなかった。あの日、特別棟で何かがあったのは間違いないのだし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。今日もおいしかったよ」

 

「当たり前じゃんっ」

 

 今日は軽井沢さんが夕食を作りに来てくれていた。それを食べた僕はいつも通り、一緒に洗い物を済ませ、ゆっくりとしていた。

 

「はぁー、早くポイント振り込まれないかなー」

 

「そんなに携帯ばっか見ても意味ないよ」

 

「仕方ないじゃん。ポイントがもう無いんだし」

 

 何度も携帯のディスプレイを睨みながら溜息をつく軽井沢さん。夜になったが、未だポイントが振り込まれる様子は無い。先月0ポイントであったこともあり、8700ポイントでも振り込まれれば、かなりありがたいのだが。

 そんな話をしていると、部屋に来客を告げるチャイムが鳴る。

 

「こんな時間に誰だろ?」

 

「高円寺君とか?」

 

「いや、あいつはチャイムなんて鳴らさずに我が家の様に入ってくる」

 

 急かすように何度もチャイムが鳴らされる。僕は急いでドアを開けると、そこには須藤君が焦った様子で立っていた。

 

「倉持!ちょっと来てくれ!」

 

「急にどうしたの?来てくれってどこに?」

 

「綾小路の部屋だよ!話があんだ」

 

 そう言って隣の部屋のドアを指さす。この焦りよう、やはり何か問題が起きたのだろうか。これは行ったほうが良さそうだ、と思い靴を履こうとすると、部屋の奥から軽井沢さんが顔を出した。

 

「騒がしいけど、どうしたの?」

 

「あぁ?何で軽井沢がここに……そういえばお前ら付き合ってるんだったか」

 

「ま、まぁね」

 

「乳繰り合ってたとこわりぃが、倉持借りてくぞ」

 

「なっ!?ち、ち、ちちく……そんなことしてないっ!」

 

 顔を真っ赤にして否定する軽井沢さんなど眼中にないようで僕の腕を引っ張って、部屋を出る。取り敢えず、軽井沢さんには先に帰っといて、と言ったが聞こえていたかは分からない。

 そんなこんなで、綾小路君の部屋の前に着く。須藤君がインターホンを押すのかと思いきや、ポケットからカードキーを取り出した。

 

「まさかそれって」

 

「あ?倉持も持ってんだろ?いいから行くぞ」

 

 そう言って、当たり前のように鍵を開け部屋へ入っていった。僕も申し訳なく思いつつ、その後を追った。

 

「助けてくれ綾小路!」

 

「……いきなり何だよ。というか、どうやって入ってきたんだよ」

 

 中に入ると、ベッドの上で携帯をいじっている綾小路君が居た。いきなり来たのにそんなに驚いていないように感じる。チラッとドアの方を確認していたので、須藤君がドアを蹴破って入ってきたのではないかと考えたのだろう。

 

「ここは俺たちのグループが集まる部屋だろ? だから池たちと相談して部屋の合鍵作ったんだ。知らなかったのか? 俺だけじゃなく当然他の連中も持ってる」

 

「物凄く重大かつ恐ろしい事実をオレは今知ったぞ……お前もか倉持?」

 

「いや、僕は断ったよ」

 

 須藤君が言った通り、勉強会の打ち上げの後に池君が勝手に合鍵を作っていたのだ。三馬鹿に加えて櫛田さんも持っている。僕と堀北さんも勧められたがさすがに断った。だって綾小路君がこの事を学校に訴えたら、退学になるかもしれない。尤も、綾小路君がそれをするとは思えないが。

 

「つかそんなことはどうでもいい。マジやべえんだって! 助けてくれよ」

 

「全然どうでもよくない。鍵返してくれ」

 

「は? なんでだよ。俺がポイント払って買ったんだ。俺のだろ」

 

 変な理屈で反論する須藤君。これには綾小路君も呆れた様子だった。それからフローリングに腰を下ろした須藤君がカーペットを買えと催促をするなど、どこかの金髪を彷彿とさせる行動をとっていた。

 僕も、腰を下ろさせてもらうと、綾小路君の部屋のチャイムが鳴った。入口から顔をのぞかせたのは櫛田さんだった。須藤君が呼んだのだろう。

 

「櫛田も来たことだし、本題に移ってもいいか?」

 

「こうなったら仕方ないよな……。それで相談ってのは?」

 

 諦めた様子で須藤君の話を聞く綾小路君。なんだか、可哀そうに見えてくる。

 

「俺が今日担任に呼び出されたのは知ってるよな? それで、その……実はよ……俺、もしかしたら停学になるかも知れない。それも長い間」

 

「停学?何かあったのか?」

 

「実は俺、昨日Cクラスの連中を殴っちまってよ。それでさっき停学にするかもって言われてよ……。今、その処分待ちだ」

 

 須藤君の言葉に綾小路君と櫛田さんは驚いていたが、僕は内心予想通りだったと思っていた。

 

「殴ったって……それ、え、どうしてなの?」

 

「言っとくけど俺が悪いわけじゃないんだぜ? 悪いのは喧嘩を吹っかけてきたCクラスの連中だ。俺はそれを返り討ちにしただけだっての。そしたらあいつら俺が喧嘩を売ったことにしやがったんだ。虚偽申告って奴だ」

 

 須藤君も頭の整理がついていないようで、全く情報が伝わらない。何故殴ったのかを聞かなくてはならない。

 

「須藤君、落ち着いて。それじゃあ何も分からない」

 

「悪い、ちょっと端折りすぎた……。昨日、部活の時に、顧問の先生から、夏の大会でレギュラーとして迎え入れるっつー話をされたんだよ」

 

「レギュラーって凄いね須藤くん! おめでとう!」

 

「まだ決まったわけじゃないんだけどな。その可能性があるっつーだけで」

 

 決まったわけではないにしろ、凄いことには変わりないだろう。入学してまだ2ヶ月なのに、レギュラーに選ばれるとは、運動神経が良いとは聞いていたが、かなりのもののようだ。

 

「その帰りに同じバスケ部の小宮と近藤が俺を特別棟に呼び出しやがった。無視してもよかったんだが、バスケ部の二人とは部活中にも度々言いあってたからいい加減ケリつけてやろうと思って。もちろん話し合いでだぜ? そしたら石崎ってヤツがそこで待ってやがったんだ。小宮と近藤はそいつらのダチでよ、Dクラスの俺がレギュラーに選ばれそうなのが我慢ならなかったんだと。痛い目みたくなけりゃバスケ部を辞めろと脅してきやがった。そんでそれを断ったら殴り掛かってきたから、やられる前にやったってことだ」

 

「それで須藤くんが悪者にされちゃった、と」

 

 なるほどね、だからあの日特別棟に居たのか。Cクラスの生徒が脅迫に失敗し、暴力を振ろうとしたところを返り討ちにあい、嘘をついて学校側に訴えたのか。

 だが、僕はそれがCクラスの生徒が仕掛けてきた罠だと考える。おそらく、電話で話していた『龍園』という人物が考えたものなのだろう。

 

 櫛田さんが、明日、自分たちで茶柱先生に事実を報告しよう、と言うが、そんな単純な話ではない。須藤君も今話したことは学校側にも話しているはず。それでも、停学になるかもしれないというのは、受け入れられなかったのだろう。証拠も無ければ、日ごろの行いも悪いしな。

 

「学校側は今の須藤の話を聞いてなんて言ったんだ?」

 

「来週の火曜まで時間をやるから、向こうが仕掛けてきたことを証明しろとさ。無理なら俺が悪いってことで夏休みまで停学。その上クラス全体のポイントもマイナスだってよ」

 

 このまま停学になれば、せっかく掴んだレギュラーが白紙になってしまうのを危惧しているのだろう。しかし、それだけじゃない。停学になんてなってしまえば、クラスの雰囲気は最悪なものになり、Aクラスなど夢のまた夢になってしまうだろう。

 

「須藤くんが嘘をついてないって先生に訴えていくしかないんじゃないかな? だっておかしいよ、何も悪くない須藤くんの話が信じて貰えないなんて。そうだよね?」

 

「どうかな……そう話は単純じゃないと思うぞ」

 

「どうかなって何だよ。まさかおまえ俺を疑ってんのか?」

 

「落ち着いて。綾小路君が言いたいのは、同じクラスの人間が須藤君を庇ってもポイントを減らされたくないだけの嘘と思われる可能性が高いって事。それが人気者の櫛田さんであっても同じだよ」

 

 綾小路君に詰め寄ろうとする須藤君に説明をして落ち着かせる。しかし、櫛田さんは須藤君は何も悪くない、と言うが本当にそうだろうか。どちらが仕掛けたにしても、須藤君が殴った事実は変わらない。どう転んでも罰則は免れないのではなかろうか。須藤君は正当防衛だ、と言うがそれは今回のケースでは無理がある。相手は傷を負い、須藤君は無傷なのだから。

 今ある証拠は須藤君が殴った際に負った傷のみ。他の証拠が無ければ須藤君に重い罰が下されるのは当然といえる。完全にイニシアティブを相手側に取られている状態だ。

 

「納得いかねえっつの。俺は被害者だ、停学なんて冗談じゃねえぞ。もしそんなことになったらバスケのレギュラーどころか今度の大会も出られねえ!」

 

「気持ちは分かるが、確実な証拠が無ければ厳しいだろうな」

 

「Cクラスの3人に正直に話してくれるよう頼んでみようよ。悪いと思ってるならきっと罪悪感でいっぱいなんじゃないかな?」

 

「あいつらはそんなタマじゃねえよ。正直に話すわけがねえ。クソが……絶対許さねえ、雑魚どもが……!」

 

 そう言って、テーブルに置いてあったボールペンを真っ二つに折った須藤君だが、そのボールペンは綾小路君のではないだろうか。しかも、インクが床に落ちてしまっているし。

 綾小路君と僕がティッシュを取って床を拭いていると、櫛田さんが話を続ける。

 

「確実な証拠かー。須藤君、なにか無いのかな?」

 

「そうだ!倉持!お前もあの時特別棟に居たよな?何か見てないか?」

 

「そうなの!?」

 

 須藤君と櫛田さんが僕に詰め寄ってくる。須藤君とは特別棟で会っているので何かを見ている可能性があると思ったのだろう。

 

「……いや、()()()()()()()。僕が階段を上がったときには()()()()()()()()

 

「くっそ、マジかよ」

 

「残念だね。他に何かあればいいんだけど……」

 

 櫛田さんの言葉に須藤君は何かを考え込むような仕草を見せた。そして、あまり自信なさげに口を開く。

 

「あるかも知れないぜ。もしかしたら俺の勘違いかも知れないんだけどよ……。あいつらと喧嘩してた時妙に気配を感じたっつーか、傍に誰かいた気がするんだよな。あれが倉持じゃなければ、目撃者がいたかもしんねぇ」

 

 これで合点がいった。須藤君が言っている目撃者は佐倉さんだ。だから彼女は慌てて階段を下りてきたのだ。もし、佐倉さんが全てを見ていたなら証拠になるかもしれない。だが、彼女もDクラスだ。本当だと受け入れられる可能性は低いのではないだろうか。

 頭を抱え込んでうな垂れる須藤君を見て、重い沈黙を嫌った櫛田さんが口を開いた。

 

「須藤くんの無実を証明するためには、方法は大きくわけて二つ。一つはCクラスの男の子たちが自分の嘘を認めること」

 

「それは無理だろうね。訴えを起こした彼らが嘘を認めるとは思えない」

 

「だね。そしてもう一つが、今須藤くんが言った目撃者を捜すこと。もし須藤くんたちとの喧嘩を誰かが見てたなら、きっと真相究明の力になってくれるはずだよ」

 

 現状で出来る事はそれくらいだろうな。しかしそれも不発に終わるだろうけどな。

 

「目撃者を探すつってもよう、具体的にどうやって探すつもりだよ」

 

「一人一人地道に? もしくはクラス単位で聞いて回るとか」

 

「それで素直に名乗り出てきてくれればいいんだけどね」

 

 綾小路君が席を立ち、コーヒーを入れて戻ってくる。僕は礼を言いつつ、それを受け取り、息を吹きかけ冷ましながら、口に入れた。須藤君も同じようにお茶を飲み、テーブルに置くと、申し訳なさそうに口を開いた。

 

「図々しいようだけどよ、今回の件……誰にも言わないで貰えねーか?」

 

「誰にも?」

 

「須藤、それはいくらなんでも……」

 

「分かってくれよ。噂が広まるとバスケ部の耳にも入るだろ。俺からバスケ取り上げたら何も残らないんだよ」

 

 綾小路君の両肩を掴みながら須藤君が熱く説く。まぁ、むやみに噂を広める事は無い。目撃者を探すにしても暴力をふるったことが知られていれば難しくなるだろうしな。

 

「取り敢えず、須藤君はこの件にはかかわらないほうがいいね」

 

「そうだな。当事者が動くと良くないだろうな」

 

「けどよ、おまえらに全部押し付けるなんて……」

 

「押し付けなんて思ってないよ。私たちは須藤くんの力になりたいだけなんだから。どこまで出来るかはわからないけど精一杯やってみるから。ね?」

 

「……わかった。お前らには迷惑かけるけど任せることにする」

 

 櫛田さんの言葉を聞いて自分が関わることで厄介なことになると理解できたようだった。

 これで今日は解散となり、須藤君と綾小路君の部屋を出る。どうやら櫛田さんは少し残る様だった。何か話でもあるのだろう。

 

「倉持も悪かったな。いきなり巻き込んじまって」

 

「気にしなくていいよ」

 

「それじゃあ、頼むわ」

 

「……うん。できる限りのことはするよ」

 

 須藤君と別れ、自分の部屋に入る。軽井沢さんは既に帰ったようで部屋は真っ暗だった。一応、お詫びのメッセージを送り、ベッドへ仰向けに倒れこむ。

 

「どうするのが今後の為になるか……」

 

 今現在自分が持っている情報を基に、思考を巡らせる。しばらくそうしていると、携帯が震える。軽井沢さんからの返信だと思い、ディスプレイを見ると、そこには綾小路の文字が映し出されていた。

 メッセージには『聞きたいことがある』と書いてあった。あの場で聞かなかったって事は二人には聞かせたくない事なのだろう。

 

 部屋で待っている、と返信し明かりをつける。するとすぐにチャイムが鳴った。綾小路君を向かい入れ、椅子に座る。

 

「それで、聞きたい事って?」

 

「須藤の件だ。本当に倉持は何も見ていないのか?」

 

 本当に綾小路君は鋭いな。僕が嘘をついていたのを見破ったのか。

 

「ううん。殴っているところは見ていないけど、須藤君が去った後、Cクラスの生徒が話しているのは見たよ」

 

「素直に話すんだな。もっと白を切ると思っていたんだが」

 

「白を切る意味が無いからね。あの場で須藤君にこの事を知られたくなかっただけだし」

 

「倉持は須藤を助けるつもりは無いのか?」

 

「ない、とは言わないよ。でも、ある、とも言えないかな」

 

 綾小路君の質問に曖昧に答える。正直、須藤君をここで助けるべきか悩んでいる。Dクラスの為に彼をここで切るべきではないのか、と。

 

「尤も、僕が見たのはCクラスの生徒が話しているところだけだし、証拠能力としては弱い。僕もDクラスの人間だからね。それを須藤君に言ったら変に期待しちゃうだろ?」

 

「確かにな。取り敢えず聞いたことを教えてくれないか」

 

「うん。いいよ」

 

 Cクラスの生徒が話していた内容を綾小路君に教える。と言っても聞いたことは少ないのだが。

 

「なるほどな。間違いなく今回の事件は仕組まれたものだな」

 

「うん、狙いは須藤君の停学。もし仮にCクラスの生徒も停学になっても、須藤君の罰の方が重ければそれでいいって感じかな」

 

「難しくなったな。目撃者の方は誰か知っているのか?」

 

「それに関しては黙秘するよ。ごめんね」

 

 目撃者は100%佐倉さんだ。でも、それを言うつもりはない。僕は須藤君と佐倉さんなら、佐倉さんの味方をする。彼女が自分から言い出せば別だが。

 

「そうか、仕方がないな」

 

「あっさり引き下がるんだね」

 

「まぁそこまで重要な事でもないしな。それで、倉持はこれからどうするんだ?」

 

「どうもしないかな。取り敢えずは成り行きを見守るよ」

 

「そうだろうな、こっちは地道に目撃者を探すか」

 

 そう言って、綾小路君は自分の部屋へ帰っていった。彼の真意は全く読めない。彼は須藤君を助けるのだろうか、それとも……。

 

 何はともあれ、今回は見守らせてもらおう。そう思って寝る準備をして就寝した。

 

 

 

 

 

 次に日の朝、ホームルームの前に茶柱先生に呼び出された僕は、僕の考えを否定するかのように、こう告げられた。

 

「須藤の問題をどうにかしろ。停学は必ず避けろ」

 

 駒になるといったが、これは無茶なのではないだろうか。朝一番から憂鬱な思いで、教室に向かうのだった。

 




未だに7巻を読めていません。
凄く気になります…。


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