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それでは続きをどうぞ。
テスト当日の教室内は張り詰めた空気が漂っていた。今日の結果次第では退学者が出る。その事実がこの空気を作りだしていた。テストは二日間に分けて行われる。今日は社会、国語、英語の三科目が、明日に化学、数学の二科目が行われる。やれる事はやった。皆、頑張った。それに綾小路君のおかげで過去問を手に入れた。それさえやっていれば、満点も夢じゃない。そう、やっていれば……。
「欠席者は無し、ちゃんと全員揃っているみたいだな」
緊張感が漂う中現れたのは、不敵な笑みを浮かべた茶柱先生だった。先生が現れたことにより、教室はさらに張り詰めた空気になる。そんな僕らを見回し、先生が続ける。
「お前ら落ちこぼれにとって、最初の関門がやって来たわけだが、何か質問は?」
「僕たちはこの数週間、真剣に勉強に取り組んできました。このクラスで赤点を取る生徒は居ないと思いますよ?」
洋介が自信満々に答える。周りの生徒の顔にも自信が表れていた。その中で、茶柱先生が僕を見る。
「倉持、手を上げようとしていたみたいだが、何か質問か?」
「……いえ、この試験を乗り越えられたら何かご褒美でも貰えないかな、って思いまして」
本当は赤点の基準について聞きたかったのだが、それでもし予想が当たっていたら、今の空気が悪くなってしまいかねないので適当な事を言う。ご褒美を貰えるなんて微塵も思っていない。
「褒美か……。そうだな、今回のテストと7月の期末テスト、この両方で赤点者がいなければ、お前ら全員を夏休みにバカンスに連れて行ってやる。青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」
僕の考えとは裏腹に茶柱先生がご褒美をくれると言う。バカンスか……。嫌な予感しかしないな。先生も悪い顔しているし。
しかし、このクラスの生徒はそんな事微塵たりとも思っていないらしい。
「皆……やってやろうぜ!」
「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」
池君の言葉にクラスメイト(主に男子)が咆哮する。茶柱先生もこれには驚いたようで、呆気に取られていた。張り詰めていた空気が少し和らいだ。結果的に良い雰囲気でテストに臨めそうだ。
話が終わり、全員にテスト用紙が回って来る。そして、先生の合図と共に一斉に表へと返した。僕はまず、全ての問題に目を通し、過去問と一緒かを確認した。
うん、大丈夫。ざっと見た限り、過去問と同じ問題が並んでいた。これで過去問をやっていれば、かなりの点数アップが期待できる。しかし同時に、やっていない人の退学の可能性が高まったかもしれない。こればっかりは祈るしかないな。
社会、国語のテストが終了し、休憩となった。僕は須藤君たちの様子が気になったのでみんなが集まっている堀北さんの席へ向かった。
「みんな、どうだった?」
「おう、おかげさまで楽勝だぜ!」
「俺なんて120点取っちゃうかも」
二人は笑顔で答える。この分だと手ごたえはかなりあったみたいだな。それでも気は抜いていないのか、手には過去問が握られていた。
「須藤くんはどうだった?」
一人机に座って過去問を凝視する須藤君に声をかける櫛田さん。だが、須藤君は問題を食い入るように見ていて気付いていないみたいだ。その表情は暗い。焦っているようだ。
「須藤君、もしかして過去問をやれてない?」
「英語以外はやった。寝落ちしたんだよ」
僕の質問に少しイライラしながら答える。これはまずいな。テストまで10分程しかない。その間に覚える事ができるかどうかだな。かなり焦っている須藤君に堀北さんが席を立ち近寄る。そして、点数の高い問題と答えが極力短いものを覚えるようにアドバイスをする。今の状況でできる最善の策だろう。
そして、時間は瞬く間に過ぎ、英語のテストが始まる。テスト中、須藤君の様子を見てみると、かなり苦戦しているようだった。しかし、もう誰も彼を助けることは出来ない。須藤君は自分の力で乗り切るしか道は無いのだ。
テストが終わり、僕たちは須藤君の周りに集まった。皆が不安そうに声をかけるが、須藤君は苛立ちを隠せないでいた。何故寝てしまったのか、と自分を責めていた。
そんな中、堀北さんが須藤君に話しかける。過去問をやらなかったのは須藤君の落ち度だが、精一杯やった、とそんな事を言った。慰めではなく、本心で須藤君を褒めていた。
それだけでも驚きなのに、堀北さんはさらに僕たちを驚かせる。それは、堀北さんが須藤君に謝ったからだ。態度こそいつものままだが、不器用に以前須藤君を、バスケットを馬鹿にした事を謝罪をした。そして、ゆっくりと頭を下げ、教室を後にした。
「な、なあ見たか今の。あの堀北が謝ったぞ!? それもすげぇ丁寧に!」
「うん、驚いたね……」
周りにいた全員が驚きを隠せないでいる。それは綾小路君も同じの様で少し驚いた表情をしていた。そして、僕たちは須藤君の言葉に三度驚くことになる。
「や、やべえ……俺……堀北に惚れちまったかも……」
そうして、テスト初日は驚きの連続で幕を閉じた。
テスト二日目の朝、この日の二教科ですべてのテストが終了する。僕は登校する為、ロビーで軽井沢さんを待っていた。しかし、約束の時間になっても彼女は現れなかった。心配になり、電話をかけようと携帯に手をかけたとき、エレベーターから軽井沢さんが現れた。
「ご、ごめん。遅くなっちゃった」
「時間はまだあるから大丈夫だけど、どうしたの?」
「ちょっと寝坊しちゃってさ」
軽井沢さんの髪を見てみると、いつも整えられている髪が少し雑に結ばれていた。急いできたからだろうか。軽井沢さんにしては珍しい。
そして僕らは教室に向かうのだが、軽井沢さんの様子がおかしかった。足取りが悪く、何度もつまずいたり、話をしている最中も心ここにあらず、と言った感じだった。
「軽井沢さん、大丈夫?」
「え!?何が?あたしは大丈夫だよ」
校舎に着き、靴を上履きに履き替えているときに聞いてみるが、慌てたように否定する。彼女の顔を見て、一つの可能性が浮かび上がる。
「軽井沢さん、じっとしていて」
「ふぇ!?く、く、倉持君?」
僕は軽井沢さんの両肩を掴みこちらを向かせる。そして、彼女の目をまっすぐ見つめる。
「ちょ、こ、こんなとこで」
なおも慌てて、目をつぶってしまった軽井沢さんに僕は手のひらを彼女の額に当てる。
「やっぱり。すごい熱だ。君が隠していたのはこれか」
「あう~。だ、大丈夫だよこのくらい」
そう言っている今も息は荒く、顔は火照っていた。触っただけでもかなりの高熱だと分かる。
「熱は測った?」
「ううん、部屋に体温計ないし」
「そっか、じゃあ急ごう」
そう言って軽井沢さんの手を掴み、歩き出す。向かうは保健室だ。
「おはよう二人とも。どうしたの?」
「ちょうどいい、洋介も来てくれ」
「え?わ、わかった」
途中、洋介と会い、一緒に来てもらう。そうして僕たちは保健室に着き、保健室の先生に体温計を借り、渋る軽井沢さんに熱を測らせた。
「40.2度か。かなりの高熱だな」
「これじゃあ今日のテストは厳しいね……」
「大丈夫!二時間くらいならもつし!早く教室に行こっ」
そう言って、腰かけていたベッドから勢いよく立ち上がる。だが、足腰に力が入らないのか、よろけて倒れそうになる。僕はそれをギリギリで受け止める。
「ほら見ろ、歩くことすらままならないじゃないか。こんな状態でテストを受けれるわけがない」
「……いやだ」
「え?」
「いやだよ!だってテスト受けなかったらあたし退学になっちゃう。そうなったら、また私は1人じゃん!せっかく、友達ができたのに!」
泣きながら、なおも立ち上がろうとする。しかし、今ので体力を消耗したのか、立ち上がる事が出来ず、床にへたり込んでしまう。
「それでもこの体調では無理だよ。どうにか後日に受けさせてもらえないか先生に聞いてみよう」
「そうだね。それしかない」
洋介の提案に僕もうなづく。軽井沢さんを抱き起し、ベッドへ寝かせる。
「安心して。必ず君が退学にならないようにするから」
「でも……」
「僕たちを信じて、今は寝ているんだ」
「……うん、分かった。信じる」
真っ直ぐ彼女の目を見て話す僕に軽井沢さんは信じると言って、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。張り詰めていたものが解けたのだろう。
保健室の先生に軽井沢さんをお願いして、僕たちは足早に職員室へ向かった。
「無理だな」
「どうしてですか!軽井沢さんは高熱を出していてとてもじゃないけど、テストを受けられる状態じゃありません!」
「だとしても無理だ。前例がない」
「そんな……」
茶柱先生に事情を話すも取り合ってもらえない。洋介の訴えも拒否される。だが、諦めるわけにはいかない。正攻法が無理なら残された道は一つだ。
「洋介、先に教室に戻っといてくれないかな?」
「え?」
「もうすぐホームルームが始まる。なのにクラスの三人と
「うん、分かった。頼んだよ」
洋介は僕に託し、教室へと向かった。そして僕は先生へ向き直る。
「随分と勝手な事を言っているな。用事など無いのだが」
「用事ならありますよ。僕との話し合いです」
「残念だが話す事は無い。軽井沢は今日受ける事ができないのであれば退学だ」
話は終わりだ、と僕の横を通り過ぎようとする。悪いがここで終わらすつもりはない。
「待ってください。僕の話を聞いたほうが良い」
「何?」
通り過ぎようとした茶柱先生が足を止め、再び僕の方へ向く。
「先生、あなたは教師としてあるまじき行為が多いと思いませんか?」
「……」
「あなたは教師でありながら、テスト範囲を伝え忘れるという重大なミスを犯した。しかもただのテストじゃない。僕たち生徒の退学が、運命がかかったテストです。ですがあなたはそれを悪びれる様子もなく淡々と受け流した。さらには他のクラスには知らされていたのにDクラスだけ知らされていませんでした。競争するうえで、不平等なのはおかしいのではないでしょうか。これは教師として相応しくないものです。これを教育委員会に報告したらあなたはどうなるんでしょう」
「それは脅しか?しかし仮に上に報告されたところで証拠が無い。私は伝え忘れたことを誠心誠意謝罪したと記憶しているが?」
僕の言葉を聞いても、茶柱先生はあくまで冷静に答える。証拠か。堀北さんたちも聞いていたが、生徒のしかもDクラスの生徒の話を信じるかはかなり怪しい所だ。ならば他の証拠を出せばいい。
『そんなことはない。まだ一週間ある、これから勉強すれば楽勝だろう?』
僕は携帯を操作し、音声データを再生した。職員室での会話である。
「これでも誠意があったのでしょうか」
「わざわざ録音していたのか」
「なにかあるかもしれないと思いまして」
あの時、職員室に向かった僕は茶柱先生がテストについて何か重要な事を言うかもしれないと思い、こっそり録音をしていた。こんな事に使うとは思いもしなかったが。
「脅そうなんて考えていません。ですが、先生が軽井沢さんの試験を後日に延期していただけなければ、間違って教育委員会に話してしまうかもしれません」
正直、脅しの材料としては弱い。だがこれで少しは考え直してくれるだろうそれから畳みかければいけるかもしれない。
そう考えていると、黙り込んでいた茶柱先生が急に笑い出す。
「ははははは!教師を脅迫するとは面白い。教師をやっていて初めての経験だ」
「……それはそうでしょうね」
「だがな、残念だがそれは
余裕の表情が崩れなかったのはこれがあったからか。茶柱先生が言っている事が本当かどうかはどうでもいい。重要な問題は脅すことができなくなった事だ。
どうするか考えていると、ホームルームを告げるチャイムが鳴った。
「はぁ、結果的にホームルームには遅れてしまったようだ。倉持、早く教室に行くぞ。楽しませてくれた礼だ、遅刻はつけないでやる」
そう言って、歩き出す茶柱先生だったが、僕の言葉にまたもや足を止めることになった。
「どうせ遅れたんだし、もう少しお話しをしていきませんか?」
「くどいぞ。もう私には脅しは「僕と取引をしませんか?」……何?」
「僕と取引をしましょう、と言ったんです」
茶柱先生が呆れたように話すのを遮って僕が提案をする。ここからが
「取引だと?何度も言わせるな、教育委員会に言われても私には何の問題も無い」
「違いますよ。その話は
「別の事だと?まだ何かあるのか」
溜息をつき呆れたように言う茶柱先生だったが、その表情はどこかワクワクしているようなものだった。食いついてくれたみたいだ。
「茶柱先生の狙いは何ですか?」
「藪から棒だな。狙いなど無い」
「違うでしょ?あなたは
「!?」
話し始めて初めて驚きの表情をみせる。そんなに分かりやすい表情をしていたら肯定しているようなものだ。
「だからあなたは試していた。僕たちが下克上を起こすのに相応しいかどうか。いや、下克上を
そのためにわざと含みのある言い方をしたり、テスト範囲の変更を意図的に伝えなかった。それらを誰がどう解決するかを見るために。
「あなたは自分の駒を探している。おそらくそれは今回テストの問題を解決した綾小路君と堀北さんが候補なんじゃないですか?」
「だったら何だ。それが取引と何の関係がある?綾小路たちにこの事を話すとでも言うのか?」
僕の話を黙って聞いていた茶柱先生が口を開く。あと一押し。あとは釣り上げるタイミングだ。
「それでは脅しじゃないですか。僕が言ったのは取引ですよ。綾小路君や堀北さんでは足りない部分があると思いませんか?」
「足りない部分だと」
「はい。それは人間関係、或いは人脈。クラスメイトとの関係が薄すぎる。果たして彼らだけでクラスをまとめられるのでしょうか?」
「何が言いたい?」
僕の遠回しな言い方に少しイラついた様子の茶柱先生。そろそろ頃合いか。
「だから、僕があなたの駒になります。
「何だと……」
予想外の僕の発言に目を見開き先程よりも大きく驚く。それもそうだろう。自分から駒になるなんて言う奴普通はいない。
「僕だったらクラスメイト全員と話せますし、影響力がある人物全員と仲が良い。高円寺を制御できる可能性があるのも僕です。自分で言うのもなんですけど、これほど使いやすい駒は無いと思いますが」
堀北さんだってそれを理由に僕を仲間に入れた。尤も、それを入れ知恵したのは綾小路君だろうが。
「……確かにお前ほどクラスをまとめるのに使える奴はいない。だが、その見返りはなんだ?取引と言うんだ、何かあるのだろう」
「そうですね。これから何かあれば
「そう来たか」
それから茶柱先生は目を伏せ考え込む。もしこれが断られたら、僕にはもう打つ手がない。しかし、断られるとは微塵も思ってない。茶柱先生にとって必要なものだから。
3分程沈黙が続いただろうか、ようやく茶柱先生が口を開く。
「分かった。その取引に応じようではないか」
「そうですか。ありがとうございます。では早速なのですが、融通を利かせていただけませんか?」
「軽井沢の件か。しかし私にも出来る事と出来ない事がある」
「ええ。ですがこれは出来る事、ですよね?だって先生、前例がない、って言っただけで出来ないとは言ってなかったですもんね」
先生は目ざといな、とボソッと言った。前例がないだけで出来ない訳じゃない。出来ないのなら態々あんな言い方はしない。あれも僕らを試していたのだろう。
「いいだろう。今日は金曜日だから、明日の休みに軽井沢には学校に来て試験を受けてもらう。ただし、今日のテスト終了後から明日のテストまで軽井沢との接触を禁止する。テストの問題を教えられたら困るからな」
「もちろんです。ありがとうございます」
僕は茶柱先生にお礼を言い頭を下げる。ホームルームはあと5分ほどで終了するので急いで教室に戻ろうとしたが、茶柱先生がホームルームはいい、と言うので足を止めた。
「しかし、何故こんな取引を持ち出してまで軽井沢を助けた?」
「クラスメイトですから。と言うより、彼女ですから当然です」
「そうか、私には他の理由に思えるがな」
「他の理由?僕は軽井沢さんに居なくなってほしくないだけですよ」
茶柱先生は不敵な笑みを浮かべ話を続けた。
「そうだろうな。軽井沢がいなくなったらまた櫛田が寄ってくるしな」
「どういう意味でしょうか?」
「いや、私は一応お前にも興味があってな、様子を窺っていたのだが、櫛田がお前に執拗に絡むようになってすぐに軽井沢と付き合いだしただろう?あれは櫛田を近づけない為に利用したんじゃないかと思ってな。軽井沢は女子のリーダー的存在だから櫛田としても倉持に絡みすぎて軽井沢に嫌われて敵にするのは嫌だろうしな」
「……邪推しすぎですよ」
「そうか?櫛田は
先生の言葉に、今度は僕が驚かされる。櫛田さんの本質を見抜いていた事もそうだが、僕の過去を知っているような物言いに驚く。何故知っているのか、しかしそれはすぐに一つの可能性が思いつく。
「高円寺ですか?」
「さぁな」
あのお喋りナルシストめ。今度文句言ってやる。軽井沢さんとの誤解も解かないといけないし。
「今回も軽井沢の為に私と取引したかのように見えるが、実際はこの状況に持ち込むのがお前の狙いではないのか?」
「茶柱先生は僕の過去を聞いたんですよね?じゃあ、あまり僕の詮索をしないほうが良い。敵に回したくはないでしょう?」
そう言って僕は茶柱先生の元を後にし、保健室へと向かった。テストが始まればその後は明日まで会えないので今のうちに大丈夫だと言っておこうと思った。
そして、保健室に着いた僕は丁度目が覚めた軽井沢さんに明日の事を伝え、今日は良く休むように告げ、教室に戻った。それから洋介にも説明し、最後のテストを受けたのだった。
そして迎えたテストの結果発表。結論から言えば、退学者はゼロ。全員が32点を超えていた。しかし、予想通り今回の赤点の点数は変わっていて、40点となり、39点の須藤君は赤点となった。堀北さんや洋介が食い下がるも取り付く島もなく、先生は教室を去った。その後を綾小路君が追い、それまた後を堀北さんが追っていった。彼らに任せておけば何とかなるだろう。
僕の予想通り、須藤君の退学は取り消しになった。後で綾小路君に聞いた話によると、テストの点をポイントで買ったらしい。1点を10万ポイントで。中々大胆な事をするな、と感心した。
その後、綾小路君の部屋で堀北さんの勉強会組が集まりささやかな祝勝会が開かれた。須藤君の退学を取り消した方法の話から、Aクラスへあがることを目指している話になる。その中で須藤君たちが協力する話になると堀北さんがこう言った。
「この学校は実力至上主義よ。きっとこれから、激しい競争が待ってるはず。もし協力すると言うなら、軽はずみな気持ちでやるのだけはよして。足手まといだから」
実力至上主義、ね。この学校にピッタリの言葉だと思った。同時に少しだけ過去を思い出す。倉持家に居た頃を。しかしそれはどうでもいい事だ。今の僕には関係ない。
Aクラスへと至る道のりは平たんなものでは無い。でも、綾小路君や堀北さん、洋介に軽井沢さんに櫛田さん、そして高円寺、これだけの戦力がうまく噛み合えば大きな力になる。Aクラスにだって届くのではないだろうか。そう思った。
なんにせよ、やれる事をやって頑張るしかない。せめて良い学校生活を送れるように。
原作1巻分の内容が終わりました!
気付けばお気に入りが1000件を超ました、書き始めた当初ではこんな多くの方に見ていただけるとは思ってもいませんでした。
ここまで書けたのも、応援してくれる読者方々のおかげです。
これからも不定期ではありますが続けて行きたいと思います!