お気に入りの数が日に日に増えて行き嬉しく思います。
それでは続きをどうぞ。
追記
少し気に入らないところを修正しました。
今日もいつも通りに学校が始まり、終わる。放課後になり、勉強会が始まる。
「じー」
そんな中、横に座る彼女、軽井沢さんがジト目でこちらを見てくる。さっきからずっとだ。てか口でじー、っていう人初めて見た。
「えっと、軽井沢さん?どうしたのかな?」
「べっつにー。何か、櫛田さんと仲良さげだったよねー」
「そうかな?いつも通りだと思うよ」
「ふ~ん」
全く納得していないな。ここまで不機嫌なのは軽井沢さんが櫛田さんの事があまり好きじゃないからだろうな。僕が今日一日櫛田さんと一緒にいることが多かったのを良く思ってないのだろう。僕から櫛田さんのところに行ったわけじゃないのに。
話は今日の朝にさかのぼる。
「おはよう」
挨拶をしながら教室に入ると、数人の生徒が返してくれる。
僕はそのまま、洋介たちの元へ向かう。
「二人ともおはよう」
「おはよう、勇人君」
「おはよ~」
洋介の元に来たのは昨日の堀北さんの勉強会についての報告のためだ。
「堀北さんの勉強会だけど、うまくいかなかったみたい。僕が向かった時には解散になっていたよ」
実際は、向かう前に色々あったのだが、それを話すわけにもいかない。
「そっか。他の方法を考えたほうが良いのかな」
「それについては僕に任せてほしい。堀北さんがもう一度やり直してくれるように頼んでみる」
「うん。わかった。そっちは勇人君に任せるよ」
「そんなのほっとけばいいじゃん。そこまで面倒見る必要あるわけ?」
軽井沢さんの言うように正直僕もほっといてもいいと思うが、洋介はそうは思わないだろう。彼はクラスメイトを見捨てるようなことはしない。一カ月彼を見てきてそれはよくわかっている。それで自分が嫌われようとも彼は見捨てない。それじゃあ洋介の負担が重すぎる。一人でクラスの全員のケアをするのは大変だ。だから僕が彼の負担を少しでも減らせるように、堀北さん組をフォローする。そうすることで、洋介も勉強会に集中できるだろう。
「そういえば、きの「倉持君、おはよっ!」」
この話は終わりだとばかりに軽井沢さんが話題を変えようと話し出したとき、一人の生徒が割って入る。
「お、おはよう」
元気よく挨拶してきたのは、櫛田さんだった。
「平田君も軽井沢さんもおはよう!」
「おはよう、櫛田さん」
「……おはよ」
二人にも挨拶するが自分の話を遮られたからか、軽井沢さんの機嫌が悪くなっている。普段態々やってきて挨拶なんてしないのにどういった風の吹き回しだろうか。
そんな事を考えていると、櫛田さんがおもむろに僕の手を両手で包み込む。
「昨日はごめんね、恥ずかしいとこ見せちゃったね。でも嬉しかったよ」
「いや、別に構わない」
「優しいね。ありがとっ」
そう言って、自分の席へ帰って行った。僕が言い触らしていないか確認しに来たのか。それとも裏切れない状況に持っていくためか。よく分からんが、面倒くさい事をしてくれた。
クラスの人気者である洋介、軽井沢さん、櫛田さんが集まっていれば自然と視線が集まるもの。そこで櫛田さんがあのような行動をすれば、面倒なことになるに決まっている。こちらを見て、ひそひそと話すやつもいれば、キャーキャー言っている女子もいる。その中でも一番面倒くさそうなのが池君と山内君だろう。こちらを親の仇かの如く睨んでいた。
それよりも、背中にひしひしと感じる視線が痛い。恐る恐る振り返ると、軽井沢さんが僕を睨んでいた。横の洋介は苦笑いだった。
「なに?あれ。意味わかんないんですけど」
「いや、何て言うか、昨日色々ありまして」
「へぇ~色々ね」
怖いよ。いくら櫛田さんが嫌いでもそこまで怒らなくても。友達が自分の嫌いな人と仲良くしていたら心良くは思わないだろうけど。
「ははは。櫛田さんと勉強会の話でもしていたのかな?」
「そんなとこだよ。どうしたらいいか分からないって相談されてね」
洋介が出してくれた助け舟に乗る。本当はそんな相談受けてないけど、ここはこれで乗り切ろう。
「まぁ、倉持君がどこで何しようとカンケーないけど」
言葉に棘があるが、何とかなったらしい。朝から胃に悪いな。
しかし、それから事あるごとに櫛田さんが絡んできた。休み時間には話しに来るし、授業でペアを作るときは誘ってくるし、その都度、軽井沢さんと池君から睨まれるしでかなり疲れた。そして昼休憩に入っても櫛田さんが僕のところにやってくる。
「倉持君!お昼一緒に食べない?」
「別にいいけど、なんでそんなに僕に絡んでくるの?」
疑問に思う事を聞いてみると、櫛田さんの顔が曇る。
「迷惑だったかな?私、昨日ので倉持君と仲良くなれたと思ってた」
「いやいや、迷惑なんかじゃないよ。ただ急に来たからビックリしただけで」
だから頼むからその悲しそうな顔をやめてくれ。演技と分かっていても良心が痛む。
「良かった。でもさすがに話しかけすぎたね。反省だねっ」
そう言って、自分の頭をこつん、と軽くたたく。くそ、あざといが可愛いな。
そんなやり取りをしていると、珍しい人から声がかかる。
「櫛田さん。話したいことがあるの。良かったらお昼付き合って貰えないかしら」
堀北さんだ。しかし僕の聞き間違いか?今、櫛田さんをお昼に誘ったように聞こえたが。
「お昼? 堀北さんからのお誘いなんて珍しいね。私はいいけど……」
僕の聞き間違いなんかではなく、本当に誘ったらしい。櫛田さんがこちらを見る。
「僕の事は気にしないでいいよ。高円寺らへんと食べるし」
「いいえ。倉持君。貴方もよ。付き合って貰える?」
「え?僕も?構わないけど」
何と僕も誘われた。珍しいな。槍でも降るんじゃなかろうか。
綾小路君も一緒に4人で学校でも随一の人気を誇るカフェパレットへ向かった。
堀北さんが奢ってくれるということでドリンクを買ってもらった。4人席に僕と櫛田さんが横に、綾小路君と堀北さんが正面へ座った。
それから話が始まる。話を要約すると、堀北さんがもう一度、勉強会を行うために櫛田さんに協力を頼みそれを櫛田さんが了承したのだ。あれ?これ僕必要か?
その後話は堀北さんがAクラスを目指している話に変わる。櫛田さんの本気で目指しているのか、の質問に対し、堀北さんは力強く肯定した。そこで櫛田さんがAクラスを目指す活動の仲間に入ることを志願し、今回の勉強会の結果次第で協力を要請することとなった。
話がひと段落して、ようやく僕の番になる。
「倉持君。貴方への話の前にお礼を言わせてほしいの」
「お礼?僕に?」
「ええ。貴方の助言、考え直す良いきっかけになったわ。ありがとう」
「うん。それは良かったよ」
考え方を変えるきっかけになればと僕も思っていたので素直に嬉しい。おそらくあの後誰かに背中を押されたのだろう。十中八九隣の人物だろうけど。
「それで、綾小路君とも話したのだけれど、貴方にもAクラスに上がるために協力してほしいの」
「僕に?それまた何で?」
「貴方自身の能力もだけど、その立ち位置がいいのよ」
「僕の立ち位置?」
「ええ。貴方はクラスの中心人物と密接であり、須藤君達とも話せる。それでいて、高円寺君や、佐倉さんみたいな孤立してる人とも繋がりがある。貴方の存在は稀有なのよ」
「それは言いすぎなんじゃない?それなら洋介でもいいだろ」
「平田君はダメね。クラスの中心にいすぎているし、一部の男子が嫌っている。でも貴方には
確かにクラスの中心にいすぎると何かと不便なとこがあるだろう。須藤君など、一部の生徒が洋介の事を良く思っていないのは事実だ。僕に敵がいないかは無意識に敵を作らないようにしているんだろうな。
ここまでの考えに堀北さん一人で至ったのだろうか。僕は正面に座る人物、綾小路君を見る。おそらくは彼の入れ知恵。僕が使える人物だと考えたのだろうか。
ここは提案に乗っておくのが無難か。
「わかった。断る理由は無いよ。僕も力にならせてもらう。ただ僕はあくまで協力者って事でいいかな?もし、堀北さんと洋介が対立した場合、今の僕は洋介の味方をするだろうから」
「ええ。それで構わないわ」
「それじゃあ、改めてよろしくね!堀北さん!綾小路君!倉持君!」
戸惑いながらも4人で手を合わせる。こうして、Aクラスへ上がるための奇妙な同盟ができたのだった。
そして、現在、僕はこうして洋介の勉強会に参加している。何とか機嫌を取り戻した軽井沢さんは熱心に問題と格闘していた。僕も勉強に集中するとしよう。昨日と同じでグループに別れて勉強していた。何回か分からないところを聞かれて、できるだけ分かりやすくかみ砕いて説明する。そんな感じで1時間が経過し、昨日みたく一時解散となる。
今日は残ろうと思っていると、軽井沢さんから声がかかる。
「ねぇねぇ倉持君っ。今日こそクレープ食べにいこっ」
僕の服の裾を引っ張りながらそう言う。残念ながら今日は残るつもりなんだ。昨日は残れなかったからね。僕の意思は固い。
「櫛田さんの誘いは受けるのにあたしの誘いは断るんだ?」
「さてと、勉強したら甘いものが食べたくなったな。軽井沢さん、クレープ食べに行かない?」
せっかく機嫌が直ったのに、ここで断ればさらに面倒くさいことになりそうなので行くことにする。洋介に詫びを入れ、僕らはクレープを食べに施設へと向かった。
「おいし~!やっぱ頭使った後は甘いものっしょ」
「おいしいね。久しぶりに食べたよ」
「そなの?」
「うん。クレープは好きなんだけど、男だけじゃ買い辛くて」
女の子が沢山並んでいるところに男一人で並ぶのは恥ずかしいのだ。
ふと、軽井沢さんのほっぺたにクリームが付いているのに気が付く。
「もう、クリームついてるよ」
「え?どこどこ?」
「そっちじゃなくて。あ~もう」
見当違いなところを触っていたので僕が指で取ってあげる。そのままその指を口に運ぶ。あ、こっちのクリームもおいしいな。
「へっ?」
「ん?」
軽井沢さんがこちらを見て固まっている。どうしたんだ。
ちょっと待て。今僕は何をした?
彼女の頬に付いたクリームを指で取ってそれを口に運んだ。
何をやってんだ僕は!そんなベタな事するのは洋介みたいなイケメン限定なんだよ!何とか弁解しないと変態扱いされる!
「ご、ごめん!僕のクレープとクリームが違うからおいしそうでつい……」
今の僕は顔が赤くなっているであろう。物凄く恥ずかしい。
「そ、そうだったんだ!じゃ、じゃあ一口食べたら?はいっ!」
そう言って軽井沢さんが僕にクレープを差し出してくる。
「ありがと。あむっ。う、うん。やっぱりおいしいね!僕のも一口どうぞ!」
「う、うん!はむっ。ホントだねっ。こっちも美味しいじゃん!」
そうして僕たちは重大な事に気付く。これって間接キスと呼ばれるものではないか。
体温がさらに熱くなる。それは軽井沢さんも一緒のようで、顔が真っ赤であった。
しかし、これは食べていいのだろうか。軽井沢さんが口にした部分を見て考える。そんなこと意識している方がきもいだろ。たかが間接キスくらいで狼狽えてどうする。男らしく食べようではないか。でもあれだな。少し様子を見よう。軽井沢さんが食べたら僕も食べることにしよう。何事もレディーファーストだ。
そう思い、横眼で軽井沢さんを見ると、目が合った。お互い様子を窺っていたのだろう。
「「ぷっ!」」
「ハハハハハ!何やってんだろうね僕たち」
「バカみたいじゃん。あたしたち」
何だか可笑しくなって同時に噴き出す。こういうのが青春と言うのだろうか。
それからクレープを食べ終わった僕たちは、ゲームセンターで遊んでから帰ることになった。
「楽しかったー。また行こうねっ」
「そうだね。今度は洋介も一緒に。でもその前に勉強を頑張らないとね」
「うげ。せっかく忘れてたのに何でゆうかなー」
「退学になったらまた行けないでしょ?」
「そうじゃん!ヤバいなー」
まだテストまで時間はあるから大丈夫だろう。見た限りだと、そこまで勉強ができない訳じゃないみたいだし。
寮の前につき、中に入ろうとすると、軽井沢さんが僕の手を掴み立ち止まる。
「どうかしたの?忘れ物?」
僕の質問に答えない軽井沢さんを心配に思っていると、意を決したように口を開いた。
「倉持君。こっちきて」
「え?う、うん」
手を引っ張られそのまま連れて行かれる。たどり着いたのは寮の裏手。生徒はまず近寄らない場所だ。こんなところでどうしたんだろう。
「倉持君。あのね……」
彼女が夕日に照らされながらこちらに振り返る。
「あたしね、倉持君の事が……す、好きなの!だから、付き合ってくれない?」
そんな彼女から放たれた言葉で僕の思考が停止するには十分だった。だって、彼女の口からそんな
青春とは甘酸っぱいものと聞くそして、
もう一度言おう。これが青春と言うものなのか。
まさかの告白に、勇人君は何を思うのでしょうか。
今回も読んでいただきありがとうございました!