そして、オリ主の過去がまた一つ明らかになります。
もしかしたら、分かりにくいかもしれないので、後で書き直すかもしれません。
それでは続きをどうぞ。
放課後。朝の話通り洋介は教壇に立ち、黒板を使って対策会議の準備をしていた。
洋介の提案とあり、クラスのほとんどが参加していた。しかし、予想通り堀北さんや須藤君は不参加だった。
会議が始まるまで、皆雑談に興じる中、山内君が綾小路君にゲーム機を買い取ってくれと懇願していた。だが、綾小路君は無理だと感じたのか、目が合った僕の方に来た。
「倉持ぃ~!これ25000ポイントで買ってくれよ~!ポイント無くて困ってるんだ!」
「いや、いらないよ。てか、くっつくな」
気持ち悪い声で寄りかかってくる山内を振り払う。というか、さっき綾小路君には20000ポイントって言ってなかったか?何故値上げしていけると思ったんだ。なめてんのか。
「くっそー。綾小路か倉持ならいけると思ったのになー」
その根拠はどこにあるんだ。まったく、自業自得だろうに。
山内君は僕も無理と判断し、新たな標的を探す。そして運悪くロックオンされたのが、僕の隣にいた人物だった。
「佐倉!お前ゲーム好きだろ?俺には分かる。特別に23000ポイントで売ってやるよ」
「え!?あ、あの……わたしは……」
「皆まで言うな。俺には分かる。さ、買ってくれ」
押し売りに近い形で佐倉さんに迫る山内君。佐倉さんの何を知っていると言うのだこいつは。おそらく、大人しい佐倉さんなら強引に行けばいけると思ったんだろう。だが、さすがにやりすぎだ。
「ストップ山内君。それ以上強要するのなら、冗談じゃ済まされないよ」
「お、おう。悪かった。あ、博士!最大の友として頼みがある!」
僕の注意で冷静になったのか、逃げるように博士こと外村君の所へ駆けて行った。そんな事より佐倉さんは大丈夫だろうか。
「大丈夫佐倉さん?助けるの遅れてごめんね」
「え、あ、うん。だ、大丈夫、だよ。ちょっと怖かった、だけ」
「そうか。山内君も悪い奴じゃないんだ。今は気が動転してるんだよ」
「そう、だね。私も、ちゃんと断らないとダメ、だね」
人付き合いが苦手な彼女にとって、押しの強い男に断りを入れるのは大変な事なのだろう。本来はこんな集まりに参加する性格じゃないしな。
それでは何故佐倉さんがここにいるかと言えば、僕が誘ったからだ。高円寺を誘えなかった僕は洋介に申し訳なく思い、代わりに佐倉さんを連れて行こうと考えた。最初は断られたが、「黙って僕の隣にいるだけでいい。何かあれば僕が助けるから」と言うと、それならと承諾してくれた。
しかし、今思い出したが、山内君は佐倉さんに告白されたんだよな?本当かどうかは分かんないけど。もしそうだったら、さっきのは僕が邪魔してしまったことになる。もしかしてやっちまったか。少し探りを入れてみるか。
「佐倉さんは好きな人とかいるの?」
「ふぇ!?な、な、なんで?」
「いや、何て言うか、気になったんだ」
「き、気になった!?わわ私がす、好きな人が!?」
「ん?佐倉さんしかいないでしょ」
「あわわわわわ」
何を動揺しているんだ?私がって佐倉さんしかいないだろ。もしかして本当に山内君が好きなのか?もう少し踏み込んでみるか。
「綾小路君とか山内君とかどう思う?」
「え?えっと、話したことない、から……分からない、かな」
「あれ?山内君と話したこと無いの?」
「ない、よ。さっき初めて話しかけられたし……く、倉持君以外の人とは話せてない……」
あれれ?どうなってんだ?話したことなければ告白なんてできないだろうに。佐倉さんが嘘を言っている様には見えないし。やはり、山内君の嘘だったのだろうか。そうだとしても、さっきの動揺は何だったんだ?
僕が考え込んでいると、落ち着きを取り戻した佐倉さんが、不思議そうにこちらを見てくる。これはもう直接聞いてみるか。そう思った矢先、洋介の対策会議を始める声に遮られ結局、疑問が払しょくされる事は無かった。
因みに、対策会議では特に策は思いつかず、解散となった。
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高度育成高等学校学生データベース 5/1時点
氏 名 倉持勇人 くらもちはやと
クラス 1年D組
学籍番号 S01T004667
部活動 サッカー部
誕生日 9月25日
評価
学 力 B
知 性 C+
判断力 B
身体能力 C+
協調性 B
面接官からのコメント
全ての能力で平均を上回る数字だが、特に秀でたものが無い生徒である。本来であればBクラスへの配属となるが、高円寺六助の唯一の友人であり、彼を制御できる存在であるため高円寺六助と同じDクラスへ配属とする。また、情報によると中学1年2年とクラス委員長をしており生徒、教師から絶大な信頼を得ていたが、ある日を境にまるで人が変わったかのようにクラスの中心人物では無くなったらしい。その不明瞭な点も含めDクラスとし、経過を見る事とする。
担任メモ
Dクラスの生徒全員と分け隔てなく接しています。同クラスの中心人物である平田でも仲良くできない人物とも仲良く接しているところを見るとコミュニケーション能力は平田よりも優れているのかもしれませんが、その他には特に秀でた所は無いように見えます。引き続き経過を見ます。
高度育成高等学校学生データベース 5/1時点
氏 名 高円寺六助 こうえんじろくすけ
クラス 1年D組
学籍番号 S01T004668
部活動 無所属
誕生日 4月3日
評価
学 力 A
知 性 C
判断力 C
身体能力 A
協調性 E
面接官からのコメント
これまで当校では、成績、運動神経を兼ね備えた生徒を多く輩出してきたが、卒業生と比較しても数年に一人の逸材と言える高いポテンシャルを持っている。しかしながら、集めた情報だけでは計りきれない知性、判断力に関しては評価保留とする。非常に稀である身勝手な性格である点は大問題であり、唯一の友人である倉持勇人とともにDクラスへと配属し改善されるよう強く期待する。
担任メモ
クラス内での友達は相も変わらず倉持一人だけであり、倉持以外とは全く接していなく協調性も皆無です。ただ、倉持がいるおかげか、当初想定していたものより問題行動が少ないと感じます。現在改善策を模索中です。
パタン、と開いていた書類を閉じる。
ここ、生徒指導室で私、茶柱佐枝は一人の生徒が来るのを待っていた。綾小路と堀北と話した後に呼んだ生徒だ。現在、指定した時間を過ぎており少しイライラする。元より来ないことは想定していたがいざ現実にそうなるとムカつくものだ。
職員室に戻るか、と考えていると生徒指導室の扉が開かれた。
「ティーチャーよ。私に話とはなんだい?もしや愛の告白かね」
そこに立っていたのは私が呼び出した生徒、高円寺六助だった。
「教師をからかうな。取り敢えず座れ」
「手短に話してくれたまえ。レディー達を待たしているんだ」
椅子に座るなり足を組んで偉そうに言う。こんなので怒っていても仕方がないので話を続ける。
「そうだな。お前と長話をするつもりもない。単刀直入に聞こう、あいつは何者だ?」
「あいつ?はて誰の事やら。私にはわからんね」
「とぼけるな。倉持勇人の事だ」
「フッ。私が話すことは何も無いのだよ。失礼するよ」
帰ろうとする高円寺を止めるべく私は切り札を使う。出し惜しみしても仕方がない。
「待て。私の許可なくこの部屋を出れば退学にするぞ」
「退学?私に退学にさせられる理由など無いと思うのだがね」
「そんなもの私ならどうとでもできる」
「フッ。面白い。しかし、私が退学など恐れると思っているのかい」
そこだ。正直これは賭けだ。高円寺が退学になった所で彼には何の支障も無いだろう。逆に高いポテンシャルを持ち期待されている生徒を退学させたとあったら、私の方が危ない。少し不安になっていると高円寺が話を続ける。
「本来なら、退学など、どうでもいいのだが、今の私にはこの学校に
そう言って再び椅子に腰かける。よく分からんが何とかなったらしい。こいつの気が変わらないうちに話を進めよう。
「ホームルームの話だが、学校のシステムを倉持が見破っていたのは本当か?」
「無論だ。彼奴はすべてを見抜いていたさ。ティーチャー、君が隠していたこともね」
「にわかに信じられんな。そこまでの能力がある様には見えんが」
「フッ。それは君の目が節穴だと言うだけの話だ」
高円寺がそこまで倉持を評価する理由が分からん。私のクラスが
「倉持について知っていることを話せ」
「知っている事か。そうだな、ティーチャーよ彼奴の実家は知っているかね?」
「ああ。倉持家だろ」
倉持家、江戸時代から続く武士の名家で現在は企業を立ち上げ、高円寺コンツェルン程ではないが、日本有数の大企業であり、それが倉持勇人の実家である。政界のトップや名立たる政治家と繋がりがあると噂されている。
「倉持家は代々男が家を継ぐのだが、中々男子が生まれなかったらしい。しかし漸く一人の男が生まれた。それはそれは大きな期待を皆持っていた。やっと生まれた跡取りだ無理もあるまい。だが、残念なことにその男児は才能がまるでなく何をやらせても人並み以下だったそうだ。当然周囲の人間はこぞって男児を罵倒した。不良品だとね。そして男児は心が壊れた。無理もあるまい、物心ついた時から罵倒される日々だったのだから。それから男児は一つの処世術を身に着けた。人の表情、挙動を観察し、相手の思考を読み取るものだ。その術を使い誰にも嫌われないように尽くした。男児は人に嫌われるのを恐れた。だから、必死に努力をした。人が1回やって覚えることを彼は100回やって覚えた。まさに死に物狂いの努力さ。全ては嫌われないため。そうすると周りの人間は手のひらを反すように彼を褒め称えた。そして彼は常に偽りの仮面をかぶり、人の顔色を窺い嫌われないように陰で必死に努力するそんな生き方しかできなくなったのだ。それが私の知る倉持勇人の過去なのだよ」
今の倉持を見ているとそのような過去があったとは到底思えない。
「倉持と友達になった理由はなんだ?お前が認めるとは思えない生き方だが」
「残念ながら、そこまで話す気は無いのだよ」
高円寺が私の質問を拒絶する。これ以上は踏み込むなと言う事か。まぁいい。こいつらが友達になった理由などどうでもいい。
「そうか。なら倉持は観察眼に長けている。それだけだな。櫛田や平田の下位互換と言ったところか」
あまりの期待外れにがっかりする。コミュニケーション能力が高い人間などいっぱいいる。駒としてはそこまで必要ではないな。そう考えていると高円寺が高らかに笑い出す。
「ははははは!まったく、ティーチャーよ君の目は本当に節穴のようだね」
「どういう意味だ」
「勇人がただのコミュニケーション能力が高い男と思っているようだがそんなものではないぞ」
「なに?」
「彼奴が中学でクラスの生徒や教師から絶大なる信頼を得ていたのは知っているな。その信頼を彼奴はどれだけで得たと思うかね?」
クラス全員しかも教師もとなるとかなりの歳月が必要だろう。少なくても半年はかかるのではないか。そんな考えを見透かしてか高円寺が不敵に笑う。
「彼奴はそれを一週間で得た。それも私以外のクラスの生徒全員と教師の信頼をね。この異常さが君には理解ができるかね」
ありえない。いくら相手の思考が読めても一週間で全員の信頼を得るなど不可能だ。
「あれは、もはや洗脳のレベルなのだよ。彼奴の恐ろしさはそこだ」
倉持勇人という人間は私が思っていた以上に危険な人物であったらしい。果たして私はそんな奴を利用できるのか。
「安心したまえ。彼奴はもう昔の生き方は捨てている。君の障害にはならないだろう」
こいつはどこまで分かっているのか。私の考えをすべて見透かしているかのように話す高円寺。
どうも今年のDクラスはとんでもない奴が集まったらしい。綾小路に高円寺そして倉持。もしかしたら、本当にできるのではないだろうか。”D"が”A"に変わる下克上を。
感想、評価、お気に入りありがとうございます!
この小説の高円寺は幾分か丸くなっております。