俺ガイルSS 貴方を守る為ならば   作:碧井

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投稿遅くなって申し訳ないです!


俺ガイルSS 貴方を守る為ならば(4)

前置き~ 投稿がかなり遅くなってしまい本当に申し訳ないです……。それと前から読んでくださっている方でちょっと記憶違いで前作と同じことを書いてしまった表記の部分があるので前作の(3)を少し修正していますので予めご了承ください!

 

では本編の方どうぞお楽しみください……

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドから重い体を起こしスマホを見る。時間は6時26分。本来なら起こしてくれるはずの小町が今日は起こしに来ない。

 

何故か急に不安になり俺は飛び起きて階段を急いで降りる。が、毎朝作ってくれる朝食は卓上には無く、キッチンにも小町の姿は見えなかった。何かあるとするならば、昨日の夜小町の為に買ってきたオレンジジュースが空になって置いてあるだけだった。

 

妙に胸騒ぎがする。とてつもない悪寒と身震いする程の震えが同時に体を襲い、思わずその場で手をつきうずくまる。

 

まさかそんなはずはないと、ただ小町がまだ部屋にいるだけだと思い小町の部屋に急いで駆け込む。そこに小町の姿はなくて、代わりに床に敷いてあるカーペットの上に紙切れのようなモノが落ちてあった。

 

俺はそれを拾い上げ、それに書かれてある赤い文字を読んだ。

 

『君は一人だ』

 

たったそれだけ書かれていた。突然堪え切れない震えで足がガクガクと揺れ、遂には力が抜けて半ば倒れ込む形で座り込んだ。俺の手から逃れてヒラヒラと舞い落ちるその紙を呆然と見つめ、床に落ちると同時に荒々しく掴んで力の限り引き裂いた。

 

(どうして、どうしていなくなるのはいつも……っ!!)

 

耐え難い苦しみと、やり場のない怒りに苛まれて俺は床を何度も殴る。殴って、殴り続けて、床に触れる拳の先が赤く腫れ上がっても止まらない。止められない。痛みなんて気にする余裕がない程に、それ程に俺の心は廃れて、憎しみに包まれていた。

 

そんな時、右ポケットに入っていた携帯が着信音を鳴らして振動する。俺はそれでなんとか正気に戻り、深呼吸してから携帯を開く。雪ノ下さんからのメールだった。メールには『今すぐ総武校に来て』と書かれている。フラフラとなりながら体を奮い立たせて、連れ去られた雪ノ下と小町を救い出す為に俺は家を出た。

 

総武校に着くと雪ノ下さんと葉山、それから平塚先生だった。

 

「遅いぞ比企谷」

 

「比企谷君にしては遅かったね?」

 

葉山と雪ノ下さんに言及され、その理由を話すために場所を移動してもらうことにした。

 

「警察には連絡したのか?」

 

「いや、まだです……。本当に急だったので冷静な判断が出来なくて……」

 

すると平塚先生は「ちょっと煙草を吸ってくるよ」とだけ言って席を外した。大方俺の代わりに警察に連絡してくれているのだろう。その時は本当に感謝した。

 

「そっか……小町ちゃんも……」

 

「まだ雪ノ下も見つかっていないんですよね?」

 

「……うん」

 

その場に重い空気が立ち込める。その空気の中でも葉山は凄い。

 

「それより陽乃さん。急に来いって連絡が来てたけど、何ですか?」

 

「なんだ、葉山の方も呼ばれたのか」

 

「あぁ」

 

雪ノ下さんは頼んでいたアイスティーを一口啜ると、意を決して話し始めた。

 

「多分、次のターゲットは私か隼人達の後輩のいろはちゃんかもしれないの」

 

急な話に俺と葉山は顔を見合わせる。

 

「陽乃さん、その根拠は?」

 

「この事件は本当に不思議でね。ある人を中心にして起こっているの」

 

「俺、ですか」

 

「そう。比企谷君、君の周りの人間関係を大体網羅的にした結果、だけどね」

 

それだけ言って雪ノ下さんはまたアイスティーを飲む。葉山はあまり驚かなかった。恐らくこのことは粗方予想していたのだろう。

 

俺は正直ショックを受けた。自分でも分かっていた。分かってはいたけれど、それを言葉にして、直接現実の事として突きつけられたこと。ただそれだけの事だけれど、それは俺には重過ぎる程の罪悪感として、もう二度と償えない罪と化した。それでも俺は償わなくてはならないと、その意思を強くする。

 

「……雪ノ下さん。話すことはそれだけですか?本当はまだあるんじゃないですか?」

 

彼女にそう尋ねると、「さっすが比企谷くーん!鋭いな~」とおちゃらけて、残り少ないアイスティーを空にする。そして、先程とは違う真剣な顔で俺達に告げる。

 

「……実は、とっておきの作戦があるの。これで多分犯人は特定出来る、かな」

 

そこまで言うと俺はその作戦が何なのか分かってしまった。葉山もそうだろう。拳を強く握り締めるのが分かった。

 

「まさかそれって──」

 

俺の放った言葉とほぼ同時に葉山がバッと立ち上がった。立ち上がって雪ノ下さんをキッと睨みつける。突然の彼の行動に、雪ノ下さんは驚いたのか口がうっすらと開いているのが分かった。

 

「陽乃さん。それって貴方が囮になるってことかな……?」

 

語気を強めて葉山は雪ノ下さんにそう捲し立てる。雪ノ下さんも負けじと立ち上がった。

 

「そうだよ。そうすれば雪乃ちゃんを助け──」

 

最後まで彼女が言い切ることはなかった。何故なら、彼女は涙目で頬を抑え、その代わりに彼女の視線の先にいる葉山、彼が大きく伸ばした腕が彼女の顔の横、その直線上に浮いていた、そう葉山が雪ノ下さんはさんをぶったのだ。

 

「そんなことダメに決まってるだろ!!」

 

葉山の怒声が店内に響き渡る。しかし彼はそんなこと気にせずに雪ノ下さんだけを、彼女だけを見ていた。

 

「だって……だってそうしないと雪乃ちゃんを助けられない!今もこうして話しているうちに雪乃ちゃんが……雪乃ちゃんが!!」

 

「もしも、もしも貴方が殺されてしまったらどうするんだ!」

 

「私は別にいいよ!雪乃ちゃんが助かればそれでいい!」

 

「だから──」

 

そこまで言って俺が二人の頭をチョップする。自分でも何故チョップなのか分からないが、二人が止まったのでそれはそれで良いか。

 

 

「まずは店の人達に謝れ」

 

店内は完全に賑やかムードから一変して俺達の方を見ていた。店員さんでさえも仕事の手を止めてこちらを見ていたくらいだ。

 

二人はやっと冷静になったのか「お騒がせしてすみません」と謝っている。そしてまた賑やかさが戻ると二人は席に座った。

 

「ごめんね隼人……感情的になっちゃって……」

 

「俺の方こそ悪かった……」

 

そうやって互いに謝り合っている二人を見て俺は気づいた。俺だけじゃない、二人も犯人に対して怒りや憎しみを抱いているのは、大切な人が突然日常から消えて混乱して、悲しんでいるのは俺だけじゃないのだと。

 

「まぁとりあえず雪ノ下さんが囮になるって作戦はかなりリスキーだしもし何かあったら大変です。と言いたいところですが警察に相談したところですぐに動いてくれそうにないし窮地に陥ってるってのは否めないですね……」

 

俺が悩んでいると、雪ノ下さんが良いアイデアを見つけたかのようにハッとなる。俺と葉山は?マークだ。

 

「比企谷君と隼人で私を守るってのはどう? あ、具体的に言うと私を監視するの。もし何かあればすぐに警察に連絡出来るし二人が近くにいれば流石に男二人なら対抗出来ると思うし、どう?」

 

「まぁ確かに良い案だとは思うけど、逆にそんなに都合よくいくかな……比企谷はどうだい?」

 

「俺も良い案だと思う。けどやっぱりお前の言う通り不安も残る。が他に良い案はないし警察にも頼るに頼れない。最善策としてはこれがベストだと思うぞ」

 

そこまで言って雪ノ下さんはニコッと笑って「じゃあこれで決まりね!」と嬉しそうにする。俺ももうすぐ小町を助けだせると、その一歩としてこの状況に喜々とした。

 

「でも隼人。万が一があるからいろはちゃんにも連絡してもらえる?」

 

「分かった」

 

そして葉山は財布から三千円を取り出して店を後にした。やっぱイケメンだ。

 

「じゃあ静ちゃんも暫くは帰ってこないだろうし私から連絡入れておくから今日は一旦解散しよっか」

 

その日はそれで解散になり、俺は念の為もあり雪ノ下さんを駅まで送ることになった。

 

「……今日はごめんね。二人して取り乱しちゃって」

 

「別に気にしてないです。でもちょっとビックリしましたね」

 

そう言うと雪ノ下さんは「なんで?」と首を傾げている。

 

「だって雪ノ下さん、あまり感情とか表に出さないでしょ?」

 

雪ノ下さんはそれを聞いてムスッとして、「そんな事言われたらお姉さん傷ついちゃうな~」なんて言って俺の頬を抓ってきた。痛いんですかそれは。

 

「今日は本当にありがとう!またね!」

 

何分か前に来ていた電車に彼女は駆け込む。と同時にドアが閉まった。手を振ってニコニコと笑っている。

 

俺も恥ずかしながら、手を振り返す。それに気付くと今度はニヤニヤと口元を手で隠して笑う。俺はそれにイラッとしてしっしっと手で払う素振りをする。それと同じくして電車は発車した。雪ノ下さんはまだ見えるか見えないかの場面で口パクで何かを言っていた。俺には彼女が何を言っていたのか、伝えたかったのか、分かることが出来なかった。

 

 

 

────私を守ってね

 

 


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