俺ガイルSS 貴方を守る為ならば   作:碧井

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遅くなりました


俺ガイルSS 貴方を守る為ならば (2)

あれからどれくらい経っただろう。俺が目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。側には雪ノ下と葉山がいた。後から平塚先生も来たのだがすぐにまた『用がある』と出ていってしまった。

 

「比企谷君?大丈夫?」

 

「比企谷、大丈夫かい?」

 

「……俺は……何故ここに?」

 

「今朝君が倒れているのを発見した人が通報してくれたらしい」

 

「そうか……あ、由比ヶ浜は!?由比ヶ浜はどうなったんだ!?」

 

「彼女は……行方不明なんだ……」

 

「は?……行方不明……??」

 

「あぁ、警察の調べによると部屋にはおびただしい量の血と肉片が散っていたらしい。DNA検査によって彼女だということは分かっているんだが彼女の遺体が発見されていないんだ……」

 

「比企谷君。昨日のこと……覚えてる?」

 

雪ノ下にそう問われて昨日のことを思い出す。あの凄惨な光景を思い出して思わずえずいてしまった。

 

「ごめんなさい……配慮に欠けたわね……」

 

「いや、いいんだ。俺は昨日の夜、葉山と由比ヶ浜と別れた後本屋に寄ったんだ。それ数十分後に由比ヶ浜から電話があって……それで家に向かったら……うぅ……」

 

「大丈夫かい比企谷!?くそっ……しっかりと彼女を家に送っていってあげていたら……」

 

「いいえ葉山君。例え貴方と比企谷君が由比ヶ浜さんを送っていたとしてもこの犯罪を防ぐことは出来ないわ」

 

「その通りだ。恐らく犯人は由比ヶ浜が一人になるタイミングを待って隠れていたんだろう。それが由比ヶ浜の家だった。由比ヶ浜の両親はたまたま出かけていていなかったらしいからな……」

 

「そうか……それにしても酷すぎる……なぜ彼女が殺されなければならないんだ!優美子はショックで今日も学校に来ていないらしいし……」

 

コンコン

 

「はい」

 

「お兄ちゃん!?大丈夫なの!?」

 

「あ、あぁ……俺はなんともないよ。ただ……」

 

「……」

 

「こんにちは、小町さん」

 

「こんにちはです雪ノ下さん!」

 

「比企谷の妹さん……かな?」

 

「はい!妹の小町です!」

 

「よろしくね」

 

「こちらこそ!」

 

ガラガラッ

 

「比企谷!目を覚ましたのか!」

 

「はい……お陰様で……」

 

「そうか、それは良かった……それよりも、だ」

 

「??」

 

「由比ヶ浜の死体が見つかったそうだ」

 

「「!?」」

 

「ど、何処にあったんですか平塚先生!?」

 

「……聞きたいか?」

 

「……はい」

 

「駅の近くに少し大きな公園があるだろう?」

 

「はい」

 

「その公園のゴミ箱五つに彼女の死体を五つに切り分けて捨てていたらしいんだ」

 

「……」

 

その瞬間俺は思い出した。彼女の体とは全く別のところに転がっていた彼女の頭部を。切り刻まれた彼女の肢体を。

 

「す、すまんトイレに……」

 

「比企谷……」

 

「平塚先生。由比ヶ浜さんは……殺されたんですよね?」

 

「それ以外に何があるというのだね」

 

「私は犯人を許しません。絶対に許しません」ギリッ

 

ガラガラッ

 

「雪ノ下!どこに行く気だ!」ガラガラッ

 

「小町ちゃん。俺はちょっと比企谷の様子を見てくるよ」

 

「……はい」

 

ガラガラッ

 

 

小町視点↓

 

どうしてこんなことになってしまったんだろう。人が死ぬのは知っている。いつか私も死ぬのだから。けどそれはもっと先の未来の話であって、今そのようなことが、そしてそれがとても身近な人に起こったという事実が私を苛んでいる。

 

しかもその死因が老衰や病気ではなく、『他殺』ということこそが一番の理由なのかもしれない。人が人を殺す。生命が生命を奪う。これはあってはならないことであって、どんな理由があったとしてもしてはならないことだと誰かに習った。人が死ぬ。赤の他人からしたら儚いだろうが、身近な人ならばそれはとてつもなく重大なことなのである。

 

八幡視点↓

 

由比ヶ浜結衣。いつも俺のことをヒッキーと呼んでいた。俺と由比ヶ浜と雪ノ下とで奉仕部の教室で三人で語り合う。それが最近の日常だった。俺はそれがずっと続くと思っていた。そう願っていたのだ。しかしそれは続かなかった。叶わなかった。

 

由比ヶ浜結衣が死んだ。俺達がおじいちゃんおばあちゃん世代なら「そうなのか」と大半はなんとなく納得できる。しかし由比ヶ浜は10代だ。途中で大病でも患って万が一が起きない限り何十年も生き長らえたであろうその命を他人が奪った。憤りを覚えない人がいるであろうか?いやいないだろう。いるとすればそれは俗に言う「サイコパス」だとでも呼ぶのだろう。その類の中に犯人はきっと分類されるだろう。

 

『別に殺すつもりなんてなかったんだ』ソレはそう言い訳出来るものではないものだった。あの殺し方、遺体の処理、その全てが常人が考えるには至らない結末なのだ。許されないその行為を彼らはきっと自己で正当化しているのだろう。

 

 

 

 

────────────────

 

 

学校にて

 

ザワザワ

 

ザワザワ

 

「由比ヶ浜さんが殺されたらしいよ〜」

 

「何それコワーイ!」

 

「おいおいマジかよ」

 

「マジらしいぞ!」

 

案の定クラスは由比ヶ浜の件でザワついている。三浦が欠席しているのが追いうちとなっているのだろうか、彼らの話題の信憑性はとても高いものとなっている。

 

ガラガラッ

 

「お前達席につけ!」

 

「……お前達も知っているようだが、昨夜由比ヶ浜が何者かに殺害された」

 

『ほらなやっぱり!』

 

『嘘マジ〜!?』

 

「静かにしろ!」

 

シーン

 

「……今日は先生達の臨時集会と念のため今日は授業を取り止め帰宅するよう連絡がきた。終礼はもうしないから各自集団で下校するように。それじゃあまた明日な」

 

そういって平塚先生は教室を出ていった。

 

俺はすぐに奉仕部に向かった。もしかしたら雪ノ下が来ているかもと思ったからだ。

 

ガラガラッ

 

「雪ノ下!」

 

「あら、比企谷君……こんにちは」

 

「おう、お前は帰らないのか?」

 

「私は調べ物をしているの」

 

「調べ物?」

 

「由比ヶ浜さんを殺した犯人を探しているのよ」

 

「……探し出せるのか?」

 

「正直不可能だって分かってるわ。でもこのまま黙って指をくわえて警察の人達が解決するのを見てろって言うの?」ギリッ

 

「それも確かにそうだな……でもまだ犯人は捕まってないからあまり執拗に嗅ぎ回るなよ……危ないからな」

 

「そうね……今日のところは帰ろうかしら」

 

「そうした方がいい……あ、送っていこうか?」

 

「遠慮しておくわ、と言いたいけれど怖くないといえば嘘になるわ……お願いするわ比企谷君」

 

「おう」

 

タッタッタッ

 

「比企谷君は今回のことを……どう思う?」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

「彼女がなぜ狙われたのか、犯人はどのような人物か、とかよ」

 

「そうだな……由比ヶ浜は良い奴だし他人に恨まれるようなことをするようなタイプじゃないと思う……犯人については見当もつかん……」

 

「やっぱりそうよね……そうだとしたら余計腹が立つわ……」

 

「同感だ。でもだからってあまり無茶はするなよ?」

 

「心得ているわ。でも必ず犯人をこの手で……ボソッ」

 

「雪ノ下?」

 

「いいえ、なんでもないわ。それより今日はありがとう送ってくれて」

 

「いや、当たり前のことだしお礼を言われるようなことはしてない」

 

「ふふ、それじゃあまた明日……ね」

 

「あぁ、また明日な」

 

 

 

───────────────

 

 

 

比企谷家・夜

 

 

 

「小町、お前はあまり外を彷徨くなよ。お前に死なれちゃ困るからな」

 

「はいはい分かってますよー。あ、お兄ちゃんも死んじゃダメだよ?今の小町的にポイント高いっ♪」

 

「へーへー俺は死なねーよ」

 

「それならいいけど……ね」ギュッ

 

「ど、どうした小町……?」

 

「お兄ちゃんに何もなくて良かったよ……ホントに……」

 

「あぁ、ありがとう」ギュッ

 

「それじゃあ私そろそろ寝るね!」

 

「おう、おやすみ」

 

「おやすみっ」

 

タッタッタッ

 

(俺も寝るか……それにしても流石にちょっと疲れたな……)

 

自室のベッドに横たわり俺は軽く本を読み、眠気が強くなってきたので目を瞑った。

 

…Zzz

 

一時間後・夜中の一時

 

ピロピロリンリン

 

(ん?なんだ?雪ノ下?)

 

『……比企谷君、助けて……』

 

「どうした雪ノ下!?何があった!?」

 

『今……私が寝ていたらいきなり何者かに襲われて……私は相手を蹴ってお風呂場で鍵を閉めて隠れてるわ……お願い……来て……』

 

「待ってろ!今行く!電話は切るなよ!」

 

『えぇ……早く……お願い……』

 

(クソったれ!)

 

タッタッタッ

 

『比企谷君……』

 

「どうした!?まだ無事か!?」

 

『……』

 

「雪ノ下……?」

 

『……もう……ダメみたい』

 

「雪ノ下!待ってろもうすぐ……」

 

『…………ミイツケタァァァァァァァ』

 

プツンッ

 

「雪ノ下ぁぁ!!」

 

俺はそれから夜道を必死に走りなんとかマンションに辿り着いた。途中で警察にも通報して彼女の部屋へと着いた。

 

「鍵が……空いてる……」

 

俺は恐る恐るドアを開け部屋に入った。風呂場を探して慎重に探索する。

 

しかし問題のお風呂場にもこの部屋の何処にも彼女は見当たらないのだ。血飛沫も無く争った痕跡もない。

 

それから数分後警察が到着して俺は事情を説明した。

 

「なるほど……つまり行方不明なんだね?」

 

「はい……お願いです!雪ノ下を!雪ノ下を探してください!お願いします!!」

 

「全力を尽くすよ。君は一旦家に帰ったほうがいい」

 

「……分かりました」

 

そして俺はなんともいえないモヤモヤを抱えて帰宅した。あれから2時間経過していて時間は夜中の3時だった。

 

小町もカマクラも父さんも母さんも皆眠っている時間帯だ。

 

俺はこっそりと自室に戻り眠りについた。

 

 

 

 


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