俺ガイルSS 貴方を守る為ならば   作:碧井

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俺ガイルSS 貴方を守る為ならば (1)

比企谷家にて

 

「お兄ちゃーん!プリン買ってきて〜!」

 

「小町…人を使うんじゃありません」

 

「え〜だってお兄ちゃん暇でしょ〜?こんな休日の真昼間にどこにも出かけないでゴロゴロしてるじゃん」

 

「こ、これでも忙しいんだよ!」

 

「へぇ……そ れ が 忙しいの?」

 

「……買いに行きます行かせて下さい小町様……」

 

「よろしい!あ、あと次いでにカフェラテもよろしく〜!」

 

「へいへい」

 

 

 

小町視点↓

 

 

 

私比企谷小町は最近兄がおかしいと感じている。明確な根拠はないんだけど妹の勘というものだろうか?長年一緒に一つ屋根の下で暮らしてきたが故に兄の様子が最近おかしいと感じる。

 

ちょっとしたことなのだけれど、兄が夜中遅くまで起きているのである。これはまぁ特に、という訳ではないのだけど問題は夜中に何をしているかである。兄がコソコソと部屋から出て外に出かけていくのである。

 

前にコッソリついて行こうとしたらとんでもなく怒られてしまった。あの時怒ったお兄ちゃんは本当に怖くてビックリして泣き出してしまった。お兄ちゃんはおろおろしていて私を慰めてくれて、やっぱり私の勘違いなのかな……

 

 

八幡視点↓

 

 

 

(ふぅ……プリンとカフェラテをコンビニに買いに行こうとしたらまさかのソールドアウト……仕方なく少し遠い駅前のコンビニに行く羽目になっちまった……まぁ小町の為だしいいか……)

 

「あれ?比企谷じゃん?」

 

「げっ、折本…」

 

「うっわ〜今あからさまにげって顔したでしょーマジ受ける〜!」

 

「受けねぇよ……」

 

「てか比企谷こんなところで何してんの?」

 

「あ?別になんでもいいだろ?」

 

「なんか比企谷冷たくな〜い?」

 

「いつもこんなもんだろ?」

 

「それもそっか。てかあの時はマジ受けたわ〜!」

 

「いやどの時だよ……」

 

「ほら、あの何だっけ?合同で企画やった時のミーティングの時さ〜」

 

「あー……あの時はまぁ……な」

 

「比企谷と一緒にいたあの女子まさか彼女だったりするの?」

 

「なわけねぇだろ!」

 

「だよね〜!あんな綺麗な人が比企谷となんて付き合うワケないよね〜!受ける〜!!」

 

「てかもうそろそろいいか?俺もう帰るんだが」

 

「あ、いけない私もこれから友達と映画見に行くんだった〜!あ、比企谷友達いるの?」

 

「う、うるせぇ!さっさといけ!」

 

「ごめんごめん、それじゃまたね〜」

 

(出来ればもう二度と会いたくない……)

 

(さぁ小町が待っている我が家へ帰るとするか……)

 

 

 

比企谷家

 

「ただいま」

 

「お兄ちゃんおかえり〜!買ってきてくれた〜?」

 

「おう、ほれ」

 

「……お兄ちゃんこれプリンじゃなくて焼きプリンじゃん……」

 

「プリンだろ?」

 

「違うよ!焼きプリンじゃん!私が食べたいのは普通のプリンなの!」

 

「す、すまん間違えてしまった…」

 

「いいよ、私がちゃんと言わなかったのも悪いし、カフェラテは大丈夫だね!ありがとうお兄ちゃん!」

 

「おう」

 

 

 

小町視点↓

 

 

(お兄ちゃん私の大好物プリンだって知ってるはずなのに……なんで間違えちゃったんだろ……いつも間違えないで買ってくるのに……やっぱりお兄ちゃんなんかあるのかな……?)

 

八幡視点

 

 

(マズイ……何故俺は間違えたんだ……小町の大好物はプリンだと知っていた筈なのに……次は間違えないようにしないと……)

 

 

ピンポーン

 

「はーい!あ、結衣さんこんにちは!」

 

「小町ちゃんやっはろー!ヒッキーいる?」

 

「いますよ!ちょっと待ってて下さいね!」

 

階段タッタッ

 

「お兄ちゃん!結衣さん来てるよ!」

 

「あ?由比ヶ浜が来てんのか?」

 

「うん!なんか用があるのかも」

 

「分かった今行く」

 

タッタッ

 

「どうした由比ヶ浜」

 

「あ、ヒッキー!ちょっと話したいことがあって……」

 

「ここで話せるか?」

 

「場所変えてもいい?」

 

「分かった。それじゃサイゼに行くか」

 

「小町ー、ちょっと出かけてくる」

 

「うん!いってらっしゃい!」

 

「ういー」

 

 

比企谷視点↓

 

 

「それで……どうしたんだ?」

 

「えっとね……最近私誰かに付けられてる気がするの……」

 

「ストーカーか何かか?」

 

「分かんない……でも夜歩いてたりすると後ろから足音が聞こえてきて怖くなって走ったら後ろの足音も速くなって……私怖くなって……

すぐに家に帰ったの……それが昨日で……」

 

「なるほど……確かに女の子だしさぞかし怖いだろうな……俺に何か出来ればいいんだが……」

 

「こんなこと相談出来るのヒッキーだけだから……」

 

「三浦とかにはしたのか?」

 

「優美子は絶対危なっかしいことするから言わないよ…」

 

「雪ノ下は?」

 

「ゆきのんには心配かけたくないし……」

 

「そうか……それじゃあどうする?犯人を探突き止めるか?」

 

「そんなこと出来るの?」

 

「一か八でリスキーだが一つアイデアがないこともない」

「教えて教えて!」

「お前を夜出歩かせて、俺がポイントに隠れておく。そんでその時後ろに誰かいたら走ってくれ。そしたら俺が捕まえる」

 

「ヒッキー1人で出来るの?それに私怖いし……」

 

「確かに俺1人じゃ無理かもしれない……葉山でも呼ぶか?」

 

「それなら安心かも……」

 

「それじゃあ今夜決行するか」

 

「分かった!それじゃあまた後で連絡するね!」

「おう」

 

比企谷家

 

「戻った」

 

「おかえりお兄ちゃん!何か進展でもあった?ニヤニヤ」

 

「お前は何の話をしてるんだ……あ、それより今夜はちょっと出かけるから夜飯はいらん」

 

「あ、そなの?りょーかい!てかもしかして結衣さんと夜会うの?」

 

「い、いや……ちょっと本屋で立ち読みしてくるから遅れるってだけだ」

 

「へぇ〜……まぁいいや。それじゃ私は友達の家に泊まりに行ってくるのでよろしくで〜す!」

 

「お、おう」

 

 

夜22:00過ぎ

 

 

「あ、悪い遅れて」

 

「全然良いよ!隼人君も今日は来てくれてありがとう!」

 

「全然良いよ、結衣にもしものことがあったら優美子も心配するだろうし」

 

「そんじゃ俺と葉山はこっから200m先にある路地裏に隠れておく。由比ヶ浜は駅前から歩いてきてくれ」

 

「分かった!」

 

「もし何かあったら携帯で電話なりメールしてくれ、即向かう」

 

「うん!よろしく!」

 

「それじゃあ頼む」

 

タッタッタッ

 

「比企谷…」

 

「なんだ葉山」

 

「まさかとは思うが君、犯人が分かっているんじゃないのか?」

 

「な、なんでそう思うんだ?」

 

「いや、特に理由はないが……君の顔がいつにもまして険しいからね……もしやと思ってな」

 

「一応言っとくが俺は誰が犯人か分かってないからな……誰が犯人かなんて……分からない……」

 

「比企谷?」

 

「いや、なんでもない。それより早く向こうへ行くぞ。由比ヶ浜ももうじき駅に着く」

 

「そうだな」

 

 

由比ヶ浜視点↓

 

(駅に着いた……それじゃ行こう……)

 

タッタッタッ

 

(今のところ怪しい人は見当たらない……)

 

100m歩いて

 

(まだいないみたい……え?)

 

タッタッ タッタッ

 

(いる……!?怖いよヒッキー……!!)

 

(そうだメールしよう!)

 

ピロリンッ

 

「ん?メールだ……ん、葉山、ストーカーが現れたらしい」

 

「それは本当か……!?大丈夫なのか結衣は!?」

 

「今のところはな。もし危なくなったらまた連絡が来ると思う」

 

「そうか……」

 

ピロリンッ

 

(ヒッキーからだ……『落ち着いて歩いてこい、危なくなったら電話しろ』……よし、もう少し頑張ろう!)

 

タッタッ タッタッ

 

(少しずつ近くなってる……怖い……あ、もう少しで路地裏だ!)

 

タッタッ タッタッタッ

 

「ビクッ!?」

 

(走ってきた!?怖い怖い怖い!!ヒッキー!!!)

 

ピロピロリンリン

 

「由比ヶ浜大丈夫か!?」

 

「ヒッキー助けて!走ってきてるよ!」

 

「今行く!待ってろ!」

 

タッタッタッ

 

「ヒッキー!!!」

 

「由比ヶ浜!」

 

「結衣!」

 

「怖かったよ〜……」

 

「ストーカーはいるか!?」

 

「……いないみたいだね……」

 

「今日は一旦帰るか……もう遅いし」

 

「そうだね……」

 

「比企谷、結衣を送っていこう」

 

「そうだな」

 

「お願いしてもいい?」

「当たり前だ。万が一があるからな」

 

「ありがとう……」

 

タッタッタッ

 

「ここまででいいよ!今日はありがとう!」

 

「家まで送るぞ?」

 

「いいの、ここから家近いしすぐそこだから」

「本当にいいのか?」

 

「送っていくよ?結衣?」

 

「大丈夫だって!今日は本当にありがとう2人とも!またね!」

 

「分かった。またな」

 

「またね結衣」

 

「なんかあったら連絡しろよ!」

 

「うん!また明日!」

 

タッタッタッ

 

「それじゃあ俺はこっちだから」

 

「おう、お前は1人でも大丈夫だよな?」

 

「ハハハ、もし無理だったら家まで送ってくれるのかな?」

 

「それはない」

 

「相変わらず変な奴だな比企谷は」

 

「うっせ」

 

「ハハ…それじゃあまた明日」

 

「またな…」

 

 

 

(さて、少し本屋にでも寄ってくか……)

 

30分後…

 

ピロピロリンリン

 

(ん?由比ヶ浜?)

 

「どうした?」

 

「……」

 

「由比ヶ浜?」

 

「……」

 

「おい、由比ヶ浜?」

 

「……」

 

「悪戯ならやめろ由比ヶ浜」

 

「……」

 

「おい、本当にどうした?」

 

「………………ひ……き……ぃ…………」

 

「ゆ、由比ヶ浜!?どうした!?何があったんだ!?」

 

「プツンッ」

 

(何か嫌な予感がする……)

 

タッタッタッタッ

 

ピンポーン

 

「由比ヶ浜!」

 

ピンポーン

 

「由比ヶ浜!出てくれ!」

 

「出ねぇ……鍵は……空いてる?」

 

ガチャッ

 

「おい!由比ヶ浜!いるなら返事をしてくれ!」

 

玄関に上がり廊下を進むところで何か嫌な予感がした。何故なら異臭がするからだ。血生臭い嫌な感じの臭いが二階の方から下の方へと漂ってきている。

 

嘔吐感を抑えつつ鼻を塞いで1歩ずつ階段を登っていく。

 

「由比ヶ浜……いるのか……?」

 

ある部屋の前に着いた。しかしそれと同時に全身に鳥肌がたった。足元、ドアの隙間から赤黒い液体が溢れ出てきている。足につきそうになり、避けようとして俺は尻餅をついた。

 

何かねっとりとしたそれは異臭を放ちながら未だ進行し続け、止まることを知らない。俺はそれを『血』と認識することを本能的に否定していた、しなければならなかった。

 

そうすれば最悪の事態を想像することを避けられると考えたからだ。しかし扉を開けたその先の光景はその全てを黒く染めて、覆す。

 

俺は嘔吐してしまった。止まらなかった。口元を手で覆い鼻水も出ていたがそんなことを考える余裕なんてなかった。俺は何故ここにいるのかさえ分からなくなっていた。その光景があまりにも非日常過ぎて、俺は足から崩れ落ちた。

 

目の前に転がっているのは彼女であろう由比ヶ浜結衣の頭部であった。しかし彼女の顔は恐怖に歪み血によって顔は紅く染められ髪は乱れていた。

 

ベッドの上には彼女の肢体が切り刻まれて乗っていた。腕と足をロープのようなもので結ばれていて、俺はまた吐いてしまった。もう見たくもなかったのにソレは俺の目を悪い意味で釘付けにした。もう二度と頭から離れないだろうと、その光景はあまりに凄惨で殺伐としていた。

 

「由比……ヶ浜……」

 

もうそこには彼女はいない。そう悟った時涙が両目から溢れ出た。彼女との思い出がフラッシュバックする。彼女は一生懸命今を生きていた。まだたった十数年しか生きていない若者が、たった一夜にしてその全てを終えたのだ。まだやりたいこと、行きたい所、なりたいもの、沢山あっただろう。だがしかし彼女は全てをやり終えることなくその生涯に幕を閉じたのだ。

「由比ヶ浜……結衣……」

 

無意識に彼女の名前を呼んでいた。何度も呼んでいた。いつか返事をしてくれると、そう信じて何度も呼んだ。

 

「由比ヶ浜……由比ヶ浜!!由比ヶ浜!!」

 

しかし彼女は返事をしない。何故ならもうそこにはいないのだから。諦めの悪い俺は何度も何度もその名を呼ぶ。

 

「由比ヶ浜……」

 

それが最後だった。彼女からの応答はない。

俺は立ち上がり部屋を出た。そして家を出てから気を失った。そこからの記憶はない。

 

 

 

 

 

 

 

 


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