今回は幸人の宝具が登場!
相変わらずのナンセンスな文ですが、どうぞ。
「僕はね…正義の味方になりたかったんだ。」
男はそういった。
「なれなかったのか?」
赤髪の少年、士郎が問う。
隣にいる黒髪の少年、幸人も首を傾げ、疑問を抱いている。
「うん。正義の味方は期間限定で大人になったらもうなれないんだ。」
男、切嗣はそう答える。
「もっと早くから気付いていればよかった……」
そう語る彼から後悔のような感情が伝わる。
「じゃあ、俺が爺さんの夢、叶えてやるよ。」
士郎が、
「うん、俺も、兄さんと一緒に父さんの夢、叶えるよ。」
幸人が、それぞれ元気一杯に答える。
「そうか、叶えてくれるか。」
切嗣は二人の言葉を聞くと安心したように、
「それなら、お願いしようかな。」
と言い、眼を閉じた。
〜数年後〜
あれからしばらくして、二人に妹ができた。
しかし、彼女は……だった。
二人はそんな彼女を大人達から守ろうと必死になった。
そして…………
「おい…ユキ、やめろ!」
士郎が目の前にいる
このままでは、死んでしまう。
そんな確信が彼の中にあったのだ。
「ごめんね、兄さん。約束、果たせないみたいだ。」
幸人は振り返り士郎を見てそう告げる。
「俺には正義の味方になる権利なんて無かったんだ。」
その様子はいつか見た切嗣のよう。
「あとは…任せたよ、兄さん。」
幸人はそこで区切り、さらに後ろにいる妹の方を向く。
「……海に三人で行こうってやくそくしたけど、俺は一緒にはいけない。」
「ユキお兄ちゃん………」
妹は今にも泣きそうなのを堪え、幸人を止めようとする。しかし、
「どうか、俺のことは忘れてくれ、
それだけ言うと、幸人は前を向き、目の前の女を睨む。
「もういいのか?」
「ああ、もう心残りはない。全てお前にぶつける。」
そう言うと、幸人は詠唱を始める。
「……聴け。我は記憶の管理人………」
詠唱を始めると、目の前の女も攻撃を開始する。
「……我が記すは希望の道標………」
迫り来る攻撃に怯みもせず、幸人は詠唱を続ける。
「……我が詠うは絶望の讃美歌………」
攻撃を受けても何食わぬ顔で詠唱も終盤に。
「……今ここに、その全てを開示しよう………」
そして、ゆっくりかつ堂々とその真名を呼ぶ。
「……開け、記憶の図書館、
……………………………!!!」
瞬間、世界が切り替わった。
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「………で、これは一体どういうことだ?」
長い夢から覚めた俺は、今の状況に困惑する。
なぜかって?そりゃあ……
「すぅ………すぅ……」
美遊が添い寝をしているからだッ!!
……いやいや、なんで添い寝?しかもなんでメイド服?
一人考え込んでいると、
「ん、ん〜〜」
美遊が起きた。
目があう。
「おはよう」
「おはよう、ユキお兄ちゃん。」
とりあえず、挨拶する。
「それで、どうして添い寝を?」
俺が問うと、
「添い寝は、妹の役目。」
きっぱりと答えた。
〜少女説明中〜
どうやら、看病に来ていたら、思わず一緒に寝てしまったという。
なるほどわからん。
「それよりも、聞きたいことがある。」
聞きました?そんなことって言いましたよこの子。
「なんだ?」
とりあえず、対応する。
「お兄ちゃんは、東雲雪刀さん?」
oh………
「どうしてそれを………」
何故ばれた?…いや魔力切れのことか。
「昨日、その人が魔力切れになってお兄ちゃんも丁度体調を崩したから。」
「まあ、そりゃあそうか。ああそうだ。俺が東雲雪刀だ。」
とりあえず、同意する。
「まだ聞きたいことがあるけど、まず……」
「今日の夜中は来ないで。」
………え?
「な、なんで?」
何故ダメなんだ?
「また魔力切れで倒れられたら困るから。」
「……………ぁ」
そうか。そうだよな。
「……ああ、わかった。じゃあ美遊は気をつけて。」
「俺のことはきにしなくていいから。」
「っつ!」
美遊が肩を震わせる。
「分かってたよ。俺みたいな出来損ないはいらないって」
「いや、ちが、」
「いいよ、ホントのことだし。」
そうだ。こんなのが居なくても美遊達だけでなんとかなる。
「とりあえず、そろそろ帰った方がいいんじゃないか?準備なり色々あるだろ?」
「…………ぁ」
だからここは拒絶をする。
俺のことなんて忘れたようにしてくれればいい。
どうせ、俺なんてその程度だ。
「じゃあな、美遊。また」
「…………うん」
そう言うと美遊は暗い影を落とし部屋から出て行った。
「やっぱり俺じゃあ兄さんのかわりなんてできないな。」
さっきの夢、あれは本当のことだろう。
つまり、美遊の言っていた兄とは、正真正銘俺のことだ。
「ま、死人がああだこうだ言うひつようはないな。」
寝よう。
〜翌日〜
朝、起きる。体調は万全だ。
準備をして学校へ向かう。
「…ぁ」
「……」
途中、美遊に会った。
「あ、えと、その」
何を話そうか、迷っているみたいだ。
俺は美遊に近付き、頭を撫でる。
「何かあったのか?美遊?」
俺が聞くと美遊はうなづいた。
どうやら、イリヤが暴走してしまい、これ以上イリヤを危険に晒さないようにときつい言葉をかけたらしい。
「そうか、辛かったな………」
「うん………」
そうだろう自分を友達だと言ってくれたイリヤを跳ね除けてしまったからな。
でも、
「……え?」
「でも、俺がいる。俺がそばにいる。だから、安心してくれ。」
美遊を抱きしめる。
俺に兄さんのかわりなんてできない。
でも、俺という存在として寄り添うことならできるはずだ。
「絶対に君をひとりにはさせない。」
美遊にとって大切な人ができるまで俺はそばにいる。絶対に。
夜、いつもの時間に集まる。
「今日は来たわね。」
「ああ、昨日は済まない。一通りのことは聞いている。」
遠坂凛も完全に回復しているようだ。
そして、俺たちは鏡面界へと向かった。
「狭いな…」
「ええ、カード集めも終わりが近い証拠よ。」
俺の呟きに遠坂凛が答える。
〔皆さん、来ますッ!〕
サファイアの一言に、一同の緊張が高まる。
そして現れたのは、
「■■■■■■!!!」
全身が真っ黒に染め上げられた、大男だった。
「っ、三人とも、直ぐに離脱を!!」
幸人は叫ぶ。
あれは人が戦って勝てるような存在ではない。
本能が言っている、あれと戦ってはダメだ、と。
「そうは言っても、あんたはどうすんのよ!!!!」
「そうですわ!!」
二人の言い分はもっともだ。しかし、
「自惚れるなよ、人間。貴様らなど、あれとまともに戦えるわけがない。」
「!!!」
最大限の殺気を込めて告げる。
「わ、分かったわ。」
幸人に気圧され、撤退を開始する。
(よし……じゃあ、)
三人が撤退したと思い、戦闘準備を開始しようとする幸人。
しかし、
「ユキお兄ちゃん!!」
美遊が幸人の元へ走ってきた。
「な!お前も撤退を!!」
「いやだ!!」
なんとか、撤退を促す幸人だが、美遊はそれを拒否する。
「お兄ちゃんはそばにいるって言った!だから、私もお兄ちゃんのそばにいる!!今度は、ひとりになんてさせない!!!」
今度は、という言葉に引っ掛かりがあるが、今はそれどころではない。
「分かった。一緒に戦おう。」
「うん!」
改めて、戦闘準備を開始する。
(バーサーカーの真名はヘラクレス。宝具は
「美遊、最大火力で畳み掛けるぞ!!」
バーサーカーの分析を済ませ、指示を出す。
美遊もそれを受け、攻撃を行うが、
「なっ!」
効いていない。無傷だ。
〔おそらく、一定ランクに達していない攻撃を無力化するのが敵の宝具かと。〕
「クソッ、美遊少し時間を稼いでくれ!!」
美遊にそう言うと、幸人は詠唱を始める。
「……聴け。我は記憶の管理人………
……我が記すは希望の道標………
……我が詠うは絶望の讃美歌………
……今ここに、その全てを開示しよう………
……開け、記憶の図書館、」
そして、幸人は叫ぶ。
「不滅の記憶を記す図書館《ライブラリーズ マーキング インモータル メモリーズ》ッッッ!!」