すたれた職業で世界最高   作:茂塁玄格

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大変お待たせ致しました。

最新話、宜しくお願いします。





メルジーネ海底遺跡の声・中編

 “魔人族による前線基地”、シャアクがこのように断じた廃墟群は、大きな町に匹敵する程の規模だった。

 

 土系魔法によって創り出された防波堤に沿って歩きながら基地全体を見回せば、波に打ち上げられ乱雑に積み重なった小型艇に、建屋の三分の一が抉られた整備場、いくつもの風穴が空けられた施設達が、傷跡をそのままに立ち並んでいる。

 

 荒れ果てた基地の様子から、ここで激しい戦闘が繰り広げられたのだろう過去が想像出来た。

 

 周囲を警戒する倬とシャアク、精霊様達は無言のまま、まず辿り着いた船着き場を調べていく。目に入るのは瓦礫の山ばかりで、魔物の気配も、ここから出る手掛かりになりそうなものも見つけられなかった。

 

「ちっ、見た目以上に広いな。ご先祖様は、こんな規模で戦争してたってのか」

「……ですね。虱潰しでは効率が悪そうです。何か気になる場所とかありませんか?」

 

 ここが魔人族の軍事基地であるならば、シャアクの直感に頼れるかもしれないと、意見を求める。

 

「やっぱアレじゃないか。無駄に飾ってやがるのが気にくわねぇが、あれが“本営”だろう」

 

 水を向けられたシャアクが気に入らなそうに指差したのは、船着き場を見下ろす形に建てられた施設だ。

 

 ただ一つだけ宮殿風の外観になっており、簡素な造りの兵舎が並ぶこの基地の中で明らかに浮いている。嫌でも目に付く建物でありながら、不思議と戦闘の被害も最小限に抑えられているようだった。

 

 ストールを広げて羽織り直しながら、“本営”を睨み付ける光后様の口元は苦々しげだ。

 

「とってつけた様な豪華さが鼻持ちならないが、わらわが視る限り、強力な結界の名残もある。中々どうして、砦としては優秀な部類だぞ」

「であれば……」

 

 基地の中でも特別な施設であるのなら、何かヒントがあるかもしれない。大破した中型船を横切り、広い通りの真ん中に出て“本営”へと足を向けた時だった。

 

 強力な魔法の起動を察知した宵闇様が、頭部の闇に空いた目を大きく広げて、倬に注意を促した。

 

「………………倬、何か発動する」

「……!」

 

 宵闇様の表情から、トラップによって分断される可能性を恐れた倬は、その場から距離を取るべくシャアクにタックルをしかける形で真横に跳び退いた。

 

「うげあっ!」

 

 だが、倬の咄嗟の回避行動と、シャアクが鳩尾に受けた衝撃は無駄に終わってしまう。

 

 荒涼とした景色が溶け出すように変化し、視界に飛び込んできたのは、真新しい建物と人混みだ。先程まで風が吹き込む音すらなかった基地の全体に雑踏が広がり、突然膨大な量の雑音に鼓膜を揺らされる。

 

「愚図共が、隊列を乱すな! とっとと列に戻れ!」

 

 倒れ込んだ倬とシャアクが何者かの怒声を浴びせかけられるのに続いて、数人がかりで無理矢理引き起こされた。聞こえてきた声は少し高い。怒声の主はシャアクよりは若そうな印象を受ける。

 

 完璧に歩調を揃えて行進する集団に放り投げられる形で合流させられた倬とシャアクは、後続に押しやられながら、海へ向かって歩く事になってしまう。

 

「げほッ、げほッ……。な、何だ。コイツら、いつの間にっ」

「すいませんシャアクさん、間に合いませんでした」

「他に詫びるべき事があるんじゃねぇか?」

「自分、不器用なもので」

 

 突発的な事態に対し、冷静を保つために意識して雑なやり取りを交わす二人は、行進する軍列に混ざり、警戒を強めて現状の把握に徹する。

 

 海までの広い通りに沿って真新しい小屋が連なり、黒を基調にした軍服の魔人族が引っ切り無しに出入りして、辺りは緊張感に満ちていた。

 

 軍服達に比べ、行進する一団の服装は酷くみすぼらしい。厚手の布地を雑に黒マントへと仕立てただけで、裾は繕われず切りっぱなしだ。子供達――そう、間違いなく子供なのだ――殆ど全員の頭の位置が倬よりも低く、身長は百六十センチに届かない程度。顔立ちも幼げに見えた。

 

(十歳から十二歳ってところ……。装備も整ってるとは言えない、これは……、一体……)

 

 痩せ細った脚で行進を続ける彼らが向かう船着き場には、天を突かんばりの高さを誇る、帆の畳まれたマストが確認出来た。

 

 子供達は、次から次へと吸い込まれるかのように中型船へと乗り込んでいく。

 

 甲板上は八十人を超える子供達で埋め尽くされているが、一人ひとりが背筋を伸ばし直立不動を維持している為、すし詰めになるような事は無い。

 

 船に乗り込む前から黙ったままの精霊様達の心が殺気立ってるのを感じて、倬は胸を締め付けられる想いだった。精霊様達が人の所業に対し怒りの感情を抑えられず、倬に直接伝えてしまうのは珍しい事なのだ。

 

 子供達の様子から精霊様が察した事実に、倬は眉を顰めたまま、シャアクの表情を伺う。

 

 シャアクはその手を固く握りしめ、震わせている。子供達の肌色はシャアクより浅いが、人間族にしては濃い。金、緑、青、茶とそれぞれ異なった瞳の色に、髪色もばらばらな子供達が純粋な魔人族でないことは明白だった。

 

「我らが神の御意思の下に、我らは魔人族の礎とならん……」

「我らが神の御意思の下に、我らは敵を討ち滅ぼさん……」

 

 虚ろな瞳でどこを見るでもなく、ぶつぶつと神への忠誠を呟き続ける子供達。

 

「帆を広げよ! 出撃だっ」

 

 最後に中型船へ乗り込んできた四十代ほどの魔人族が命令を告げると、広げられた帆が瞬時に膨らみ、船が動き出した。帆に備えられた魔法陣を起動させ、必要な強さの風を産み出す事で船を操作する仕組みのようだ。

 

 中型船が出航するのを待っていたのか、周りに浮かんでいた小型艇が後に続いて外洋へと船首を向け始める。

 

 小型艇を引き連れて、陸を離れ十分少々経過した所で、進行方向から複数の爆発音が聞こえてきた。倬は技能“憙眸”によって視力を強化して、分厚い海氷上で魔人族と人間族による激しい戦闘が繰り広げられているのを確認する。

 

 戦闘による爆音が船を揺らしているのではと錯覚する程の距離まで接近すると、後方に陣取っていた四十代の魔人族が、魔道具の拡声器を利用して新たな命令を飛ばした。

 

「“地(なら)し”、詠唱始めッ」

 

 命令を受けた子供達は、全員が同じ音程、同じテンポで詠唱を開始する。一人ひとりの声は決して大きいものでは無いが、完全に重なった詠唱は船の上で不気味に響いた。

 

 三分以上を費やす長い詠唱を聞いたシャアクの表情が、徐々に強張っていく。

 

「氷、系……?」

 

 子供達が囁く魔法は、水系上位である氷系魔法だったのだ。魔人族は高い魔法適性を誇るとは言えど、その全員が氷系や雷系の上位魔法を満足に使いこなせるわけではない。どれほど過酷な訓練を積んでいても、子供が八十人居たとして、その内の四分の一、二十人が使えこなせれば上等と言っていい。

 

――――“冽錘(れっすい)”――――

 

 告げられた魔法名に呼応して、船の側面から冷気を帯びた巨大な氷柱(つらら)が撃ち出された。撃ち出される氷柱の数は、一発や二発では収まらない。砲台のように運用される船の側面に刻み込まれた魔法陣によって、氷柱の砲撃は止めどなく続けられた。 

  

 両軍による戦闘が続いている場所へ次々に氷柱が突き刺さり、そこで戦っていた者達を巻き込み、海氷を叩き割っていく。砕けた海氷の一部が氷山となって持ち上がると、その底に沈められていた朽ちた船の残骸や兵士達の死骸が飛び出してくる。それらは、“冽錐”が纏う冷気によって、海水と共に凍らされ、足場となって戦場を拡張していく。

 

 一連の流れに言葉を失っていたシャアクの目の前で、子供が一人卒倒する。

 

「うおっ……ッ!?」

 

 咄嗟に子供を支えたシャアクだが、倒れた子供の顔を間近で目撃し、その表情が険しく変化する。倒れた子供は、魔力枯渇によって目を見開いたまま気絶していたのだ。船の上では、同じように気を失う子供が続出しており、受け身も取れずに倒れ、そのまま放置されている。

 

 甲板に整列していた三分の一が昏倒しているが、誰一人として倒れた者を介抱する様子は無い。

 

「突撃準備ー!」

 

 この号令に従い、子供達は殆どの魔力を使い果たした状態のまま強化魔法を呟く。気を失わない為に、使用される強化魔法はごく低級な魔法ばかりだ。

 

 新たに広げた海氷に接舷すると、子供達は血の気が引いた顔をそのままに、体を投げ出すように戦場へと飛び出していく。中型船に人間族側からの砲撃が集中し、倬もシャアクも、船から飛び降りざるを得なかった。

 

 氷の上の戦場では、乗ってきた中型船から撃ち出された氷柱や、人間族の船から撃ち込まれる岩石を受けながらも、依然として激しい戦闘が繰り広げられている。

 

「至上なる神、エヒト様の為にぃッ!」

 

 船から降りた直後、撃ち込まれた炎弾によって分断されてしまったシャアクを探していた倬を、屈強な人間族の兵士が斬りかかってきた。錫杖の先に呼び出した魔力刃で剣を弾き飛ばし、間合いを取ろうとするが、その兵士は素手のまま飛び掛かり、倬への攻撃を中断する隙を見せない。

 

「うおォォォォォッ!」

(……なら、強引にでもッ)

 

 身体強化を利用して、殴り飛ばそうと突き出した倬の拳が、兵士の身体をすり抜ける。

 

「な……ッ!?」

 

 殴った手ごたえを全く感じず、倬は戸惑いを隠せない。その瞬間を見逃さず、兵士は倬の腕を脇腹に抱え込み、その大きな手で首を鷲掴みにする。

 

「死ねェ! 異教の悪魔がァッ! 悪魔めッ! 消え失せろ! 死ねッ、死ねッ、死ねェッ!」

 

 怨嗟をまき散らし、ギリギリと握力を強めていく兵士。

 

 その血走った目を覗き込み、倬はそっと呟く。

 

「……__“削水”」

「あがぁっ……」

 

 兵士の頭部から水系魔法“削水”が飛び出した。兵士の口の中に出現させた“削水”によって、頭を抉り抜いたのだ。屈強な兵士は、倒れ込むと同時に光の粒となって跡形もなく消え去ってしまう。

 

 兵士が消えるのを見届けながら、倬は全身に殺意の刃が突き立てられるのを感じていた。詠唱を呟き、剣を振りかぶり、人間族も魔人族も区別なく、倬に襲い掛かる。

 

「「「死ねェェェ!」」」

「“海共”」

 

 足元の、赤黒く血に染まった海氷を貫いて飛び出した鋭い流水が、迫りくる者達を同時に撃ち抜き、消滅させる。発動させた技能“海共”で、鋭利に砕けた固い氷を含んだ海水を自在に操り、押し寄せる両軍の兵士達を削り切っていく。

 

 十メートルの距離まで離されていたシャアクが、さっきまで同じ船に乗ってきた子供達に取り囲まれて居るのを見つける。どうにか回避こそ続けているものの、既に呼吸が乱れているのが倬には聞こえていた。

 

「劣等種族に死をォ!」

「御心は我らにありィ!」

 

 この戦場では、人間族も魔人族も、己の信仰を叫び合って、殺し合っている。

 

 倬の眼には、最早、誰がどの神を信じて戦っているのか、区別が付けられない。人間族と魔人族の瞳に浮かぶ狂気は、まるで同一のものに見えたのだ。

 

 人間族からの攻撃はサーベルで何とか往なしているシャアクだが、魔人族側の子供達を前にすると、明らかに動きが鈍ってしまっている。

 

 シャアクが苦戦しているのを見守る風姫様は、歯痒そうに言葉を零す。

 

『いっそ魔法使えれば早いんでしょうけどね……』

『……兄さん、頭領、キツそうだ』

『万が一の時は、お願いできますか?』

『……いってくる』

 

 精霊様達は、シャアクが実力を発揮できていない事実を知っている。まともに魔法を使っていないのが、詠唱する余裕がないだけとは違う事を知っているのだ。

 

 小さな体で、何かに駆り立てられるように戦う子供達の独特な容姿を、アイーマの頭領であるシャアクはよく知っている。 

 

 トータスにおいて、異なる種族の間に産まれた者は、侮蔑の意味を込めて“混ざり者”と呼ばれる。

 魔人族の兵士として、“混ざり者”に最前線を託す事など、シャアクの記憶にある“()()()()”魔人族は決して認めない。目の当たりにしているこの光景は、本来、あり得ないモノなのだ。

 

 実際、子供達の様子は他の魔人族の兵士とは一線を画している。陶然として己の信仰に酔う兵士と比べ、子供達の表情は寒気を感じるほど感情に乏しい。

 

 狂信に突き動かされるのでは無く、神への忠誠以外の言葉を知らないのではとさえ感じてしまう。

 

『……たぁ様』

 

 子供にサーベルの切っ先を向けるのを躊躇うシャアクを見て、治優様はポツリと倬の名前を呼ぶ。

 

 今にも泣き出しそうな治優様の頭をそっと撫で、倬は錫杖を構え直した。

 

 操る海水をしならせ、襲い来る数多の兵士達を薙ぎ払って、死肉が散乱する氷の上を駆ける。

 

 火系付与魔法で自らの拳を焼きながらシャアクに迫る少女の、その小さな背中を、倬の突き出した魔力刃が貫く。

 

「__“石殻”」

 

 シャアクの目の前に躍り出ると同時に土系魔法“石殻”によって、自分とシャアクを包み込み、続けざまに魔法を唱える。

 

「__“辻風”。“ここ築きし堅牢は、外に向かいて拷ずる礫と成れ”」

 

 放射状の強風を発生させるのに続いて、追加詠唱で“石殻”を炸裂させる。撃ち出された岩石が風で加速され、取り囲んでいた兵士達を撃ち抜いていく。

 

 瞬く間に半径五メートルの範囲に居た兵士達が消し飛ばされ、戦場に蠢く殺意が倬へ集中するのを、肌で感じる。

 

「“氷同”、__“凍気”、__“風陣”」

 

 冷気を纏う技能に、気温を急激に低下させる氷系魔法。そして、シャアクを中心にして風の結界を展開。“風陣”の範囲を徐々に広がるように指定し、兵士達は凍結すると同時に膨らむ風に巻き上げられ、吹き飛ばされる。

 

 シャアクはこの光景を、ただ呆然と見るしかなかった。だらりと下げられた手にはサーベルが辛うじて引っ掛かっているだけだ。

 

「なんだ、なんでだ、なんで、こんな風に戦える……っ」

 

 灰色のローブが、風の結界の外で躍動している。人間族も、魔人族も、それが子供であろうと関係なく、殺し続ける倬をシャアクはただ見ているしかなかった。

 

 灰色の背中からシャアクが目を逸らそうとする直前、倬が急に厳しい表情を浮かべて振り向いた。何かを叫んでいるのだと分かったが、激しい戦闘音で聞き取ることが出来ない。

 

 倬に抱いた“恐れ”に一歩後退りしたシャアクは、全身を凍えさせながら突撃してきた魔人族に肉薄されてしまう。

 

「ぐわッ……?!」

  

 必死に振るったサーベルは、虚空を滑るだけ。迫る魔人族の兵士が浮かべる歓喜の表情に、汗が噴き出る。

 

 正面を両手でガードする選択しか出来なかったシャアクは、その頭上に、バチリと電光が散る音と舌打ちを聞いた。

 

「ちっ……! 間に、合え……っ!!」

 

 兵士とシャアクとの間に割り込むように跳び込んできた倬は、“氷同”の冷気を維持したままの左手で兵士に触れて凍り付かせ、シャアクの襟を右手で引っ掴み、そのままアンダースローで海に向かって投げ飛ばした。海面を水切りの要領で跳ね飛ぶシャアクは、転覆した小型艇に衝突させられる。

 

「がはッ……」

(アイツ、一体、何のつもりで……)

 

 全身を襲う衝撃に朦朧としながらも倬の真意を確かめようと顔を上げたシャアクは、天空に浮かぶ()()()を目撃し、絶句する。  

 

「嘘、だろ……。“蒼天”、なのか……?!」

 

 “蒼天”は、同じ火系上級魔法である“炎天”よりも更に高度かつ強力な魔法だ。魔人族で火属性適正が高い者であっても、単独で行使する事は不可能であるとされる程の魔法なのだ。

 

 そんな()上級魔法が、未だ大規模な戦闘が続いている足場の中心に落されたのである。

 

 “蒼天”が落ち、青白い爆煙が足場の海氷を燃やし、両軍の兵士諸共に焼き尽くしていく。

 

 海上の有様は、正しく阿鼻叫喚。響き渡る絶叫が、崩れ落ちる海氷が、海を荒立てる。

 

 降り注ぐ生温かい海水の飛沫に、鮮血が混じる。

 

 降り注ぐ死に、歓声が沸き上がるのを、シャアクは聞いた。聞いてしまった。

 

「アルヴ神の名の下に!」

「正統なる世界の為に!」

 

 燃え続ける“蒼天”の炎へ接近する小型艇から、アルヴ神を称え、魔人族を誇る声が上がり続けている。

 

 同時に、百を超える氷柱が撃ち込まれ、新たな足場が再形成されていく。

 

「待ちに待った“残党狩り”の時間だ! 愚かなる人間族は一人とて生かしてはならぬ! 我らが陛下の仇をとるのだ!」

「「「「うおぉぉぉぉぉッ!!」」」」

 

 魔人族の船団が、新たに築き上げた海上の足場に降り立ち、死に損なった者達を嬉々として殺していく。

 

「そうだ、アイツは……?」 

「……平気だ。兄さんには、あれくらいの炎なんて、何でもないからな」

「“霧の精霊様”……」

 

 霧司様が広げる淡い霧越しに、爆炎の中で口を噤み、戦場を見渡す倬の横顔を、シャアクは目撃する。

 

 “邪悪な他種族”を滅ぼす名誉を得んが為、武勲を積み上げんが為、百や二百では済まない数の兵士達が、シャアクを横切り、我先にと戦場へ向かっていく。

 

 “蒼天”によって溶けた戦場の中心では、沈められていた巨大な船の残骸がせり出し、戦場の様相を一変させる。

 

 全ての兵士が戦いに前のめりになっている中で、浮かび上がった超大型船の上に降り立った倬の、真っ直ぐな立ち姿が異彩を放つ。

 

 倬の頭上には、赤々とした炎の塊――“燃維”――が浮かび、そこから撃ち出される炎弾が、兵士達の上半身を吹き飛ばし、次々に霧散させていく。

 

 炎の灯りに揺れる影が、舟の残骸を土台にした分厚い氷の表面を覆っていく。

 

 揺らめく影は薄い板状になって立ち上がり、戦場を駆け巡る。兵士達の身体を撫でて、通り過ぎるだけ。そうとしかシャアクには見えなかった。だが、魔力を高めた“影撫”に触れた兵士達は、音もなく体を真っ二つに切り裂かれ、鮮血を散らす暇もなく、消滅してしまう。

 

 倬一人に、生き残った兵士達、新たに戦場に現れた両軍の戦士達が群がるのと同時に、シャアクの体を、“痛い程に冷たくて、焼けるように熱い”奇妙な風が吹き抜ける。

 

 全身に鳥肌が立ち、震えが止まらない。ガチガチと歯がぶつかる音を、自分が出しているのだと気づいた時、背後から澄んだ声が掛けられた。

 

「今のが人の子にとっての魔力の()()だ。まぁ、今解き放ったシモナカの魔力は、少々濃過ぎるくらいだけどな」

 

 海姫様は説明しながらシャアクの肩に座り込み、じっと倬を見つめている。

 

「どうして、()()()()の所に?」

「傍から見ても分かりにくいだろうがな、ぼく達はこれでも、シモナカが安心して修行に励めるように気を遣っているんだ」

 

 シャリンッ、と涼やかな音だけが、海の上に響き渡った。

 

 たった一人で、ただ一度解き放った()()()()で、全ての兵士達を消し去ったのだと理解したシャアクは、再び景色が溶け出すのを見送るしかできなかった。 

 

 景色が荒れ果てた基地に戻ると、二人は船着き場で大破した中型船の傍に移動させれていることに気づく。

 

 波に打ち上げられ、反転した小型艇に背中を預けたまま、シャアクは改めて倬を見る。

 

 中型船の側面で剥き出しになった緻密な魔法陣を、細めた目でじっと見つめている倬の表情は物憂げだ。

 

 シャアクの視線に気づいた倬が、傍にしゃがんで傷の有無を尋ねにやってくる。

 

「痛むところはありませんか?」

「……なぁ、呆れてるか?」

 

 この問いの意味を掴みかねて、倬は僅かに首を傾げる。

 

「? 何の話です?」

「勝手についてきて、何の役にも立っちゃいねぇ。村のガキ共を思い出しちまって、詠唱どころか、“シュリュッセル”だってまともに振るってやれなかった。あいつらが、さっきの連中が幻だって分かっても、何も……、何も出来なかったッ」

 

 鞘に納めたサーベルを握り締めながら絞り出されたシャアクの悔恨に、倬は口を挟まない。

 

「なぁ、どうすりゃお前みたく、容赦なく戦える?」

「あれが幻だと、理解しているだけです。……ただ、それだけの事でしかありません」

「はっ、血も涙もねぇな」

「あれら幻にだって、血も、涙も、無いんですよ」

「……悪ぃ。八つ当たりだ。……すまねぇ」

「構いません。あの光景に何も感じない、あの場での戦闘に一切の躊躇が無い奴の方が、どうかしてるんですから」

 

 淡々とした口調で首を横に振った倬は、シャアクに治癒魔法を施してから、中型船の魔法陣を書き写しに戻ってしまう。

 

 倬との覚悟の差を感じて、シャアクは拳を小型艇に打ち付ける。

 

「くそ……」

 

 長い髪を掻きむしり、シャアクは自分の意思を再確認する。アイーマの頭領として愛する妻アーニェを救う事、それが、自分の目的だ。アーニェを救えるのなら、安いプライドなど捨ててしまうべきだと心を定め、深呼吸のあと一気に立ち上がり、周囲の探索に加わった。

 

 先程景色が変化した通りに出ても何も起こらない事を確認した二人は、まだこの場所での試練が続いているらしいと判断し、改めて“本営”へと向かう。

 

 “本営”の蔓に巻き付かれた門を通る手前で、雷皇様が倬を呼び止めた。

 

「倬殿、一度止まってくれ。さっきと似た魔法の気配がある。此処から先で巻き込まれそうだ」

「となると、もう一度同じような戦闘になる可能性もありますね……」

 

 倬の懸念は、自分が戦えなかった事が原因であると自覚するシャアクは、取り繕わない。

 

「……この際だから、正直に白状しておく。またガキ共が相手なら、俺は、魔法をまともに使えない。足を引っ張る事になる……、と思う。それでも、ついて行っていいか?」

「シャアクさんがどうしたいのか次第です」

「……悪ぃ。恩に着る」

 

 意思を確かめ合い、二人で“本営”の門を開くと、目に見える世界がどろりと歪んだ。

 

 

 門から蔓は消え、色褪せていた筈の“本営”が煌びやかさを取り戻し、まず聞こえて来たのは、兵士の号令だった。

 

「各隊、随時出撃! 忌々しき陛下の仇、蛮族共を殲滅せよ!」

「行け行け行けーー! 駆け足!」

 

 基地の中では大声が飛び交い、殆どの軍服達が船着き場へ向けて駆けていく。海を埋め尽くすほどの船団が、北へと進路をとっているのが“本営”の入り口からもはっきりと見えた。

 

(……さっきとは雰囲気が違う?)

 

 基地の中で戦闘に巻き込まれる様子は無い。ただ映像の中に居る、そんな感覚があった。

 

 “本営”の広い庭を道なりに歩いていると、ぐにゃりと景色が切り替わり、敷地の四隅に聳える(やぐら)の一つに移動させられる。

 

 物見櫓には、口髭を蓄え、装飾の多い軍服を堂々と着こなす男性と、紫色が混じった黒ローブの魔法師らしき者――その体格から女性であることが推測できる――が並び立ち、出撃する船団を見据えていた。

 

 櫓の下から、駆け上がる足音が聞こえてくると、男性が階段の方へと振り返る。

 

 現れたのは一兵卒のようで、口髭の男性を前にして歓喜に打ち震えているらしかった。

 

「将軍閣下、人間族共の囲い込みは予定通りです」

「ほう。使い捨ての割によく働いているようだな。……いや、違うな、あれらを上手く使いこなす優秀な我が部下達あっての事。実に頼もしい限りだ」 

「そんな、滅相も御座いません……! 閣下がかねてより準備されていたからこそでありましょう! 元より穢れた“混ざり者”達の命です。陛下の仇であるアレイストを打倒する為の兵器として役立てるのは、実に寛大なお心遣いでありましょうとも!」

「うむ。アレイストが我らが陛下を、我ら魔人族を(たばか)った罪は、人間族全てに(あがな)ってもらわねばなるまいよ。……宜しい、良い頃合いだろう。“火葬”を許可する」

「はっ! 直ちに“火葬”の準備にかかります!」

 

 新たな指示に対して、使命に燃える兵士が“来翔”を唱えて櫓から飛び降りると、基地全体にけたたましいサイレンが鳴り響く。

 

 甲高い音を合図にして、一斉に船が出航し、基地中で詠唱が木霊した。

 

 何らかのアーティファクトを介しているのだろう、全員の詠唱によって注がれる魔力が先程出撃した船団へと向かっていくのが倬には感じ取れる。

 

 詠唱は五分近く続き、基地内で魔法名が地鳴りのように轟いた。

 

――――“蒼天”――――

 

 これが先程の戦場に落とされた最上級魔法である事は、過去の戦闘に巻き込まれた倬達には明らかだった。

 

 基地内は歓喜に包まれ、兵士たちは競い合うかのように船に乗り込んでいく。

 

 そんな浮かれた空気の中にあって、櫓から蒼い炎を眺める将軍の表情は、退屈そうにすら見える。

 

「やれやれ、これで平等(イーブン)と言ったところか。アレイストは良くやってくれたものだ。我らの陛下が魔人族に広めんと躍起になった“融和”、“友愛”などと言う幻想を打ち砕くのに、実に丁度良い。“混ざり者”の兵器化実験の成果も上々、これで平和ボケの老中連中も首を横には振れまい」

「この成果にアルヴ様もさぞお喜びの事でしょう」

 

 将軍の言葉に、ローブの女性が囁く。蠱惑的な響きを秘めた声音に、将軍はその口元を緩め、天を仰いで神への祈りを叫ぶ。

 

「そうか、そうか! ……おぉ、我が主、アルヴ神よ! この戦は全てが御身の為に!」

 

 将軍が恍惚として遠く戦場を見ていると、“本営”の門に兵士が二人、激しい動悸をそのままに倒れこむ。ここまで肩を貸してきたらしい兵士が先に立ち上がり、慌てた様子で人を呼んだ。

 

「誰か! 誰か居ないか!」

 

 兵士の必死の呼びかけは虚しく響くだけ、“本営”の兵士達の殆ども戦場に出てしまっているのだ。

 

 自らの部下の声を、鬱陶しいとでも言わんばかりに顔を歪める将軍は、表情を穏やかなものに直し、櫓の上から声をかける。

 

「私自ら聞こう! 何があった!」

「しょ、将軍閣下?! 申し訳ありません、伝令の者が帰りました! 火急の要件であるとの事で、無礼をお許し下さい!」

 

 兵士は倒れたままだった伝令役を担ぎ直し、報告するように促す。汗にも砂にも(まみ)れている伝令役は、すでに体力の限界が近い様子だ。

 

「ぜはぁ……、ぜはぁ……、かっ、閣下……。人間族……、アレイスト率いる軍勢が、砂漠を越え、こちらに……!」

  

 二人の兵士は苦悶の表情を浮かべている。その態度から、只ならぬ危機が基地に迫っているのだと倬とシャアクでさえ感じ取ったのにも関わらず、将軍は一切の動揺を露わにしない。

 

「随分と速いな……。して、数は?」

「その、総数、およそ二万……ッ!」

「ふむ二万か。あー……、ところで君の役職は何だったかな?」

 

 二万もの軍勢が迫っていると報告を受けながら、将軍が確認したのは肩を貸す兵士の役職だった。まさかこのタイミングでそんなことを聞かれるとは思いもよらず、思考を停止しかける兵士だったが、将軍には何か考えがあるのかと思い直し、どうにか答える。

 

「え……? あ、いえ、私は戦技教官の取りまとめ役としてこちらに……」

「あぁ、そうだったな。では教官長、現状の我らの戦力はどれ程だったかな?」

「……その多くが海上での戦闘を継続しており、指令本部の兵も出払っているのだとすれば、この基地で防衛に当たれる者は精々千人程度、かと」

 

 圧倒的な数の差に絶望しながら報告する教官長に対して、将軍は思案顔で口髭を撫でるだけだ。

 

「……はて? おかしいな」

「は……? おかしい、とは……?」

 

 偉大な将軍が自分の報告に疑問を持ったらしいと知って、教官長の背中に緊張が走る。櫓の上から体を覗かせていた将軍が教官長の死角に入ったと気づいて、その額に冷や汗が滲む。

 

 ゆっくりと櫓の階段を降りてきた将軍は髭を撫でながら、教官長に歩み寄り、そして、立ち並ぶ兵舎の内の一つを指差した。

 

「私の記憶違いでなければだが、あれは既に部屋が埋まっているのではなかったかね? 確かベッドの数は……」

 

 緊張のあまり将軍の言葉に答えを返せない教官長に代わって答えたのは、ローブの女だ。

 

「千床に御座います」

 

 将軍に寄り添う、側仕えのような態度の女に、教官長とシャアクがその体を硬直させる。魅惑的な声と色香に惑わされているのも原因だが、それだけではなかった。教官長もシャアクも、この女が将軍の隣に居たことに、彼女が言葉を発するまで気づけなかったのだ。

 

 教官長が女の存在に動揺していると確信して、瞳を愉悦に輝かせながら、将軍は続ける。

 

「ふむ、これで二千。他に私が連れてきた“混ざり者”の予備が兵舎に残っていた筈だが?」

「五百程を残してあります」

「これで二千五百……。捕らえた人間族と獣共は三百だったか。まぁ、かねがね三千と言った所か。一人当たり七人潰せば釣りが出る計算になるかな?」

 

 余りにも非現実的な将軍の計算に、教官長は緊張を忘れて異を唱える。

 

「お、お待ちください! あれは救護兵舎で、あそこで治療を受けている者達ではとても戦闘には耐えられません! 残る“混ざり者”も未だ訓練の途上で、戦力として数えることなど、とても!」

「では、教官長、君はどうするべきだと考えるかね?」

「……全軍を撤退させるべきであると進言致します。仮に海上で戦闘中の者達を帰還させたとしても、二万の兵には対応できません」

 

 この進言に、将軍はつまらなそうに口を尖らせる。その顔には一欠片の威厳すらありはしなかった。

 

「砂漠越えを強行した兵士など物の数にもならん。干からびた人間族共から、おめおめと逃げ出せと言うのかね?」

「如何に愚かな人間族と言えど、何の用意もなく砂漠越えに挑むとは思えません。相応の装備を身に着けている事でしょう! 今の戦力では兵を無駄死にさせるだけです!」

 

 将軍と教官長の間で二秒程の睨み合いがあった。教官長の立場からすれば、永遠にすら感じる時間だっただろう。

  

 根負けしたと言わんばかりに両手を上げた将軍が二度、頷いてみせる。

 

「流石は優秀なる教官長殿だ。冷静かつ説得力のある分析だな」

「で、では……!」

 

 進言が受け入れられたと、胸を撫でおろす教官長。

 

「ふむ、君に命令だ」

「はっ!」

 

 微笑みを浮かべる将軍の口から、命令が告げられる。

 

「ここを死守せよ」

「はっ! ……は?」

 

 予想していたものと正反対の命令を与えられ、教官長は目を(しばた)かせる。この命令が敬愛すべき偉大な将軍の口から告げられた事実を受け入れることは、彼には到底できることではなかった。聞き違いであって欲しいとする教官長の願いは、直ちに将軍によって唾棄されてしまう。

 

「聞こえなかったかね? 死守だよ。この基地は我ら魔人族唯一の弱所たる“数”を補うべく、私自ら手掛けた“混ざり物”生産の実験場であり、大量の資料が存在する。人間族にそれを知られ、あまつさえ利用される事など断じてあってはならなぬのだ」

「て、撤退を優先し、資料は焼却、破棄を決断すべきと考えます!」

「“愚進”だな。これらの研究はアルヴ神の御意思に沿ったものだと知っての発言かね?」

 

 神の名を出されては、教官長()()に抗弁の余地など無い。それが、一介の戦技教官長と将軍との決定権の差なのだ。

 

「そ、それは……ッ」

「はぁ~。話にならんな。頼めるかね?」

 

 大きな溜息を吐く将軍は、教官長と疲労のあまり言葉を発せないでいた伝令役から興味を失い、着ていた制服の袖に見つけた糸くずを摘み、ふっと息を吹きかけて空に飛ばす。

 

 子供じみた将軍の仕草に全員の視線を奪われた刹那、ローブの女が教官長の真正面、一メートルの距離に移動する。

 

 この時、ローブの女が対になった大剣を振るうのを目撃できたのは、倬と精霊様だけだった。

 

「な……っ?!」

「ぐ……ぁッ???」

 

 教官長と伝令役の小さな悲鳴の後、二人の首が地面へと転がり落ちる。

 

 なんの感慨も無く、将軍へ振り返ったローブの中に、精巧な蝋人形のような美貌と輝く銀髪が確かに見えた。この世の物とは思えないほどの美しい女性の顔は、ローブの奥が陽炎のように揺らめき、先ほど首を()ねられたはずの、教官長の顔に変化する。

 

 ついさっきまで女だった筈の黒ローブは教官長の姿で、将軍に向け丁寧すぎる辞儀をしてみせる。

 

「では、エリファス将軍閣下、死守でよろしいですね」

「よろしく頼む。……あぁ、役に立ちそうにない者共は先に廃却しておいてくれて構わんよ」

 

 コクリと頷き、教官長に化けた黒ローブは救護兵舎へと向かう。

 

 エリファス将軍は、単独で馬型のゴーレムが引く馬車に乗り込み、南へと消えていった。

 

 立ち並ぶ兵舎の内部から、刺すような閃光が迸り、絶叫が漏れ聞こえる。

 

 基地に辿り着く前に見えていた長い煙突から黒々とした煙が昇り、怨嗟に唸る声が、基地を埋め尽くす。

 

 基地から東の方角では、濃い砂塵が空を覆い、基地に迫る。

 

 圧倒的な数の人間族に押しつぶされ、魔人族の負傷兵や“混ざり者”の子供達は、抗う間もなく、蹂躙されていった。

 

 倬とシャアクが知る、荒れ果てた基地へと姿を変えるまで、そう時間はかからなかった。

 

 

 基地で起きた一方的な戦闘の一部始終を見せられた後、ようやく景色が歪み、二人は現実の“本営”に戻ることが許された。

 

「……シャアクさん、休憩しますか?」

 

 顔を真っ青に染めたシャアクに、倬は休息を促す。この基地の在り様が、“賢明なる魔人族”が神に従って行った結末だとするには、余りにも杜撰に過ぎる。特にアイーマの頭領となったシャアクにとって、かつての祖先の“混ざり者”に対する扱いは、ショックが大きいだろう事と配慮しての事だ。

 

 だが、シャアクは首を振って、そのまま歩きだしてしまう。

 

「……平気だ」

「まだ、ここからは出られないみたいです。調べ続ける必要があります」

「見せられた過去が手掛かりで、大迷宮が挑戦者の覚悟を試してるってんなら、ローブの女が暴れた救護兵舎が怪しい。俺は、そこを調べる」

「シャアクさん、落ち着いてください」

「……俺は昔、連隊だって任されてたんだ。これ位の話で、いつまでも動揺を引っ張るような雑魚じゃねぇ」

 

 独り言で自分に言い聞かせながら、シャアクは歩調を早める。一刻も早くこの大迷宮からから立ち去りたいと足掻いているかのようだった。

 

 シャアクを追いかけて、救護兵舎入り口の飾り気のない扉を開け放つ。

 

 どこからか吹き込む生温かい風が高い音を物悲しく鳴らして、光の入り込まないエントランスで反響する。

 

『主殿、ここの淀みは特に酷いでござる』

『……ワタクシも、息苦しいです』

 

 侵入した救護兵舎は、刃様と雪姫様が入るのを躊躇する程の淀んだ気配で満ちていた。

 

 入り口の扉から手を離すと、扉は固く閉ざされ、どれだけ力を込めようともビクともしない。

 

 凄惨な過去を抱えたこの兵舎で何が待っているのか。倬に今出来るのは、冷静さを失いかけているシャアクの背中から、目を離さない事くらいだった。

 

 

 




……はい、と言うわけでいかがだったでしょうか。

何とか十二月中に投稿するべく頑張ったのですが、結局三分割になってしまい、本当に申し訳ないです。

また、これまで一応の投稿予告をしていたのですが、前回、前々回、そして今回とかなり投稿予定がズレてしまった反省から、少し投稿ペースを見直したいと考えております。

今後は、投稿の目途が立ってから報告する形になります。重ね重ね、筆が遅くてすいません。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
では、良いお年を。

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