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険しい山肌を転がるようにして駆け抜ける。
「くそっ! こんなところで死んでたまるか!」
文字通り必死に叫ぶオーレヌと二人の仲間達。頭部の造りは犬に似ているが、見せつけるかの如く歪めた口元からは夥しい数の牙が覗く。巨大な四つ足でしっかと地面を踏みつけ、全身の毛を逆立てながら獰猛な雄叫びを上げ続ける。
「どうするのよ! 杖が無きゃあんなのと戦えないわよ!」
「知るか! 死にたく無きゃ黙って走れ!」
得意の魔法が使えないジュゼがこの状況に悪態をつく。それに対し武闘派のコワレンが無駄口を叩くなと叫ぶ。もう、すぐそこまで“四つ足”が迫っている。どれだけ走り続けたのか、三人は開けた場所にたどり着いたものの、目の前は断崖絶壁。頭が真っ白になってしまう所に、更に三匹の“四つ足”が抜けてきた木々の間から、ぬっと姿を現す。
「うそ、だろ……」
「仲間を呼んでたってのか!」
「いや、いや、もう、いやぁ」
四匹の“四つ足”がぐるぐると三人の周りを回っている。まるで獲物が竦み上がっている姿を楽しんでいるかのようだ。ピタリと四匹がその動きを止めると、その中で一回り小さい一匹がジュゼめがけて飛びかかる。
その時だった。
「“破断”」
気負いを感じさせない落ち着いた声音が三人の耳に届く。飛びかかった一匹の側頭部を鋭く圧縮された水流が貫いた。突然の出来事に、その場に居合わせた三人と三匹は驚愕の表情を隠すこともできない。崖の上から直立の姿勢を保ったまま落ちてくるのは、鼠色のローブと肩まである高さの杖を持った男だ。地面に足がつく寸前に“来翔”を唱え、滑らかに着地する。
「……逢引きには適さん場所だと思うが? ……ふぅむ、二対一とな、
一瞬、男が何を言っているのか分からなかった三人。一足先に下品な想像をされたことに気が付いたジュゼが、状況も忘れて抗議する。
「どこをっ! どう見たらっ! そんな話になるの! この二人を男として見た事なんか一度だって無いわよっ!」
その台詞に若干の衝撃を受けている男二人を尻目に、突然現れた男は微笑を浮かべている。
「……それだけ元気なら問題ないな。まぁ意味は違うが、訳ありには変わりあるまいよ」
言い終わる前に、周囲の“四つ足”達が気を取り直し、
「あ、あんたは一体……」
「ん? 私か? なぁに、通りすがりの祈祷師だ。覚えといてくれ」
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「どこの平成ライダーなんだ、この祈祷師は……」
倬が読んでいるのは、【神山道中
【世界樹に宿るもの】、【オアシス探訪笑遊記】、【トータス童話集】等々、長机の上には他にもいくつかの本が重ねられている。これらは若手司書ティネインや司書長ノーベルトがかき集めてきた祈祷師が登場する物語だ。もっとも、これらの物語で出てくる祈祷師は平気で中級以上の魔法を使って戦闘の手伝いをする事もあれば、道案内や、神父の真似事をするなど端役が大半だ。
「……しかし、神山道中の初版なんてよく残っていましたね」
「まぁ正確には初稿の写しを更に写した物らしいが。儂の爺さんの爺さん――高祖父だが――は各地の童話やら、お伽噺やらを集めるのを生業にしていたらしくてな。トータス童話集なんかは高祖父が編纂したそうだ。それもあってか、我が家の書庫も中々に宝の山さ」
「まさか、あの“通りすがりの魔法使い”が元々は祈祷師だったなんて知りませんでしたよ」
「まぁ、祈祷師だと無理がある場面が多いからのぅ。結果、天職をぼかして“魔法使い”で改変されてしまったのだろうな」
ティネインとノーベルトは小部屋の整理を休憩し、読書家談議に花を咲かせている。上司と部下の関係且つ五十歳近く年が離れている二人だが、どこか友人同士のような気安い雰囲気を持っていた。おもむろにティネインが【世界樹に宿るもの】を手にとり、疑問を口にする。
「子供の頃から不思議だったんですけど、これって樹海の話って事でいいんですよね?」
「うん? 樹海を参考にしているのは確かだろうが……、それがどうした?」
「いえ、その割には亜人族が全く出てこないのは不自然だな。と」
二人が話している樹海とは【ハルツィナ樹海】のことだ。大陸の東側に南北に渡って広がる森林地帯であり、その深部には獣に近い特徴を持つと言う亜人族が暮らしている。
「我々人間族向けのお話だから、では理由としては足りんかの。神から魔力の恩寵を頂けず、亜人族は魔法が使えんからな。お伽噺に魔法無しでは派手さを出しにくいんじゃないか」
ノーベルトが言う様に、亜人族は魔法を使えない。エヒト神と他の神々が創世に用いた神代の魔法、その劣化版こそが現代の魔法だと信じられているのだが、その劣化版すら使えない事で亜人族は悪しき種族として差別が正当化されている。神こそ違うが、魔人族も同じ認識だ。
「書き手側の問題ですか? だとしたら力任せに暴れる大人数の亜人族を打ち倒す話があってもいいじゃないですか」
「そんなことしたら戦物になってしまうではないか……。儀式魔法の描写なんかに気合が入っとるが、そいつは森の妖精たちと、その森の再生をほのぼのと描いた話だろう」
二人の話が聞こえていた倬も、そういう話題なら、と【オアシス探訪笑遊記】を掴み二人に質問してみる。
「これも亜人族出てこないですよね? 砂漠でオアシスを訪ね歩いて、火山に寄り道した後、最終的に港町に到着って割には海人族も出てこないですし」
「あー、砂漠が大砂漠でオアシスの内一つが公国、大火山を横切ったとして、港町がエリセンに向かうための宿場だとすれば、確かに海人族が出てきても良さそうですね」
海人族とは、大陸の西から更に沖にある【海上の町エリセン】に住み、水産業に従事する事で【ハイリヒ王国】が保護している唯一の亜人族のことだ。大陸西に広がる【グリューエン大砂漠】の東側から【海上の町エリセン】に向かおうとすれば、現実では輸送の要所として重要なオアシスを持つ【アンカジ公国】と移動の目印である【グリューエン大火山】を横切る事になる。
「ふむ、とぼけた内容のせいで気にならんかったが言われてみるとそうだの……」
「でも笑遊記に出てくる火山があの大火山だとすると、ハチヴェ達って大迷宮攻略者って事になっちゃいますね」
「五人の男たちが徒歩で砂漠横断して海岸まで行くわけだから、実は素の体力凄いんじゃないです?」
【オアシス探訪笑遊記】の主人公たちが大迷宮攻略者。これをティネイン達が冗談として話すのは、大迷宮攻略を成し遂げた者がフィクション位でしか知られていないからだ。
世界で有数の危険地帯である“七大迷宮”は、王国南西にある【オルクス大迷宮】、【ハルツィナ樹海】、【グリューエン大火山】が知られている。残りの四つは伝承で存在こそ信じられているものの、詳細な場所が判明しておらず、大陸を真横に引き裂くように横たわる【ライセン大峡谷】、魔人族領がある南大陸の【シュネー雪原】奥地【氷雪洞窟】の二か所が有力視されている。
「それはそうと、霜中様はさきほどから何を書き留めておいでで?」
「あぁ、それは……」
先ほどから続けていたメモを二人に見やすいように百八十度回す。
「色々読んでて気づいたんですけど、大体の話で、出てくる祈祷師が何処から来たのかが言及されてるんですよ。“ここから駿馬で東に四日、北に三日、更に北に山を三つ超えた修行の地”ってな具合で。ちょっと気になったのでまとめてみようかなと」
「ほほぅ、面白い試みですな。……ティネイン、王国周辺の地図をいくつか持ってきてくれるか」
「は、はい、ただいま」
ノーベルトの雰囲気がギラついたものに変わったことにたじろぎながら、ティネインが小部屋を出る。それを見送り、ノーベルトが倬に向かってのほほんと言う。
「ところで霜中様、時間はよろしいので?」
げぇ! と時間を確認する倬。訓練開始七日目にして午後の教練に大遅刻をしてしまうのだった。
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召喚され、訓練が始まってからと言うもの、倬は妙に忙しない日々を送っていた。王宮で寝食と訓練を、王立図書館では祈祷師関連の調査を続け、とある事情から王宮の魔法工房にも通いつめる必要があり、魔力枯渇で診療所に担ぎ込まれる常連でもあった。
魔力枯渇については、中年魔女教官がその日の訓練が終わる直前にアーティファクトを持ってきて、何かしら中級以上の魔法を倬に使わせるのが原因である。診療所で目覚めた時の一言は既に“やだな、またこの天井だ”に変わってしまっていた。
「お陰様で“瞑想”は大分安定してできる様になりましたとさ」
もはや慣れ親しんだ図書館の小部屋で、掌より若干小さいが、ある程度厚みのある革表紙の手帳を眺めながら愚痴るように零す。悪目立ちしないように気を付けようと決めていたのに、想定外に注目を集める機会が多くなっているせいで、少々参っていた。
机の上には六枚ほどの紙を使って大きく書き写した地図が広げられている。その地図には沢山の書き込みがなされ、それは王国から更に北東の山岳地帯に集中している。
別の地図を両手で広げ、真剣な表情で机の上と見比べていたノーベルトが、口元を和らげて倬の言葉に反応する。
「お疲れですなぁ。すっかりツェーヤ様に気に入られてしまったようで」
「あぁ、霜中様が診療所通いをなさっていた原因はツェーヤ様でしたか。通りで」
ツェーヤ・オバンサ、中年魔女教官の本名である。ティネインが納得しているのは、ツェーヤ・オバンサが弟子を限界ぎりぎりまで追い込む事で王宮関係者の間で有名だからである。ここ数十年の間、魔人族との大規模な戦闘は無かったにも関わらず王宮診療所の稼働率が高いのは、彼女が一因であるとまで言われている。
やっぱり有名人だったかと納得して、手帳への書き込みを再開する。手を動かしながら、いつもの二人に聞いてみる。
「結構、場所絞られてきましたよね?」
「ざっくり二か所までは絞れそうですが……」
「そこからが問題だのぅ。その辺りに点在する集落は手元の地図では省略されてしまっとる」
ふーむ、と三人で悩むが、そうそう簡単に妙案が浮かんでくるものでもなかった。ここ最近の三人は、お伽噺に登場する祈祷師達が語る“修行の地”の検証作業に熱中しているのだ。戦闘に直接関係する調査を中心にしなければならない倬に代わり、ノーベルトが特にやる気を漲らせており、私費どころか“勇者の同胞”たる倬の名を存分に活用して図書館の予算まで使い込む張り切りようだ。
少し気分を変えようと、倬は一度この後の訓練に意識を切り替えて、久しぶりにステータスプレートを確認してみる。訓練開始から二週間が経過し、どれだけ成長したのだろうか。
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霜中倬 15歳 男 レベル:6
天職:祈祷師
筋力:40
体力:60
耐性:80
敏捷:30
魔力:150
魔耐:120
技能:全属性適性・魔力回復[+瞑想][+瞑想効率上昇]・言語理解
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筋力と敏捷以外は中々の上昇率を誇っていた。召喚された生徒の中では“言語理解”を含めて技能数三つと言うのは少ない方であるものの、“瞑想”もいつの間にか強化されており、診療所通いも無駄ではないようだ。
ちなみに“勇者”のステータスはと言えば……
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天之河光輝 16歳 男 レベル:10
天職:勇者
筋力:200
体力:200
耐性:200
敏捷:200
魔力:200
魔耐:200
技能:全属性適性・耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読み
高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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さすが勇者としか言いようがない。しかし、レベル差を考慮して魔力と魔法耐性に着目すれば、倬のステータスはとくに悪いわけでは無い。この世界の基準で言えば、光輝がずば抜けているだけで二人とも十分ふざけたステータスである。
「さて、もう遅刻できませんし、そろそろ訓練行っていきます」
「おや、もうそんな時間ですかな」
「わかりました。こちらのことはお任せください」
二人の返事を聞いた後、ちらと地図に視線を移して尋ねる。
「……今思ったんですけど、候補地周辺出身の人に話って聞けませんかね」
「んー、どうでしょう、この辺りの出身者ですか……」
「まぁ、探すだけならタダですからな。駄目でもともと、こちらで探してみましょう」
「あはは、何から何まですいません」
「いえいえ。この手の研究は中々出来ませんし、面白がって勝手にやってるだけですよ。特に司書長が」
楽し気に「お気になさらず」と言うティネインの言葉と、何故だか自慢げなノーベルトの態度に改めて感謝して小部屋を出る。途中、図書館の一角にある読書スペースが自然と目に入る。生徒達で倬を除いて唯一、図書館に通い詰めている少年、南雲ハジメの姿は既にそこには無かった。
案外慣れちゃうもんだなぁと、感慨に耽りながら図書館と王宮までをのんびり歩いていると「ししょっ……」と言い淀むような声が聞こえた。倬が気になってそちらに顔を向けると、白崎香織がいつもの三人と一緒に反対方向から歩いてくるのが確認できた。更に歩みを進め、その四人と合流する形になると、香織が軽くコホンと咳ばらいをしてから話しかけてくる。
「……えっと、霜中君、今日も図書館?」
「あ、あぁうん。そう図書館」
(あっぶねー、どもってない? 大丈夫?)
危うくどもりそうになるのを必死に押しとどめて返事をする。光輝と坂上龍太郎が見たことの無い光景に戸惑った表情を浮かべているのがわかった。
「霜中君、毎日忙しそうよね。話しかける暇もない位に」
「……あははは、なんかやること多くてね。祈祷師って」
いたずらっぽく言うのは八重樫雫だ。一瞬ドキリとさせられたが、どうにか気を取り直し会話を成立させる。この状況に気まずそうにしていた光輝が、何かに耐えられなくなったように口を開いた。
「香織、雫。その、霜中とはいつの間に話すように? 教室で三人が話しているのを見た記憶がないんだが……」
「あぁ、霜中君と私たち、途中まで帰り道同じなのよ。たまたま、私が部活で遅くなって一人で帰る時に、霜中君も部活帰りで一緒になる時があって。それがきっかけね」
雫がさらりと説明し、香織もうんうんと頷いている。訝し気な目を光輝と龍太郎から向けられた倬は、男二人がよからぬことを考えていると確信してしまう。
(八重樫さんと帰りたくてストーキングしたんじゃないかとか思ってんなコイツら。違わい! ホントに部活帰りだったんだよ! こっちだってあの時、急に話しかけられて
倬は軟式テニス部に所属しているのだ。部員で部活後に麻雀大会をしていて帰りが遅くなった時に、雫から話しかけられたのだった。ちなみに話しかけられた内容のお陰で、浮ついた勘違いをしなくて済み、変な期待を倬は持っていない……持っていないったら、持っていないのだ。
ちらちらと図書館の方を気にする香織を見かねて、前を歩く男二人に聞かれないように小声で教える。その声音には面白がっている響きが多分に含まれている。
「南雲君なら、先に行ったみたいだけど?」
「へっ? ……へー。そ、そうなんだ。ふ、ふーん。どうして霜中君がそんなことを教えてくれるのか、わっかんないなぁー」
「……香織、狼狽えすぎ。誤魔化せてないわよ」
「うー」
ほんのり顔を朱に染めながら、つい大袈裟な反応を返してしまった香織。雫が正直すぎるその返事にくすりと笑う。自分たちの後ろで、小さく笑いあう香織達の会話が聞こえず、居心地の悪さが増しているらしい光輝と龍太郎はこちらを気にかけつつ適当な話をしている。
倬が百八十センチ越えの二人組の背中を何となしに眺めていると、訓練施設の脇にできた空間に複数の人影が見えた。どうやら、さっきまで隣で話していた女子二人の目にも入り込んだようだった。
一瞬、目を細めた香織が、その目をカッと開いて突然走り出す。
「ちょっとっ! 香織!」
「うわっ、なんだ? 急に走り出してっ」
「おいおいどうしたってんだ?」
それを慌てて追いかける雫、つられるようにして光輝と龍太郎も走り出す。倬はと言えば、革表紙の手帳に手を添えて何事か呟いていた。呟きの後、溜息をひとつ零し、一人訓練施設へと向かう。
疾走する四人を置き去るように、猛烈な風が砂や草を巻き込みながら駆け抜ける。その先では、檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の四人が蹲る南雲ハジメを取り囲んでニタニタと下卑た笑みを浮かべている。
四人が順番にハジメの腹を蹴り飛ばす。二巡目に入ったのか、檜山が勢いをつけてその右足を後ろに引く。と同時に、四人の足元から顔に向かって、ぶわり、突風が強かに吹き付けた。
「うわっ! 痛ぇ! なんだこれ!」
「ぺっ。ぺっ。うえぇ、口に、す、砂が」
「目、開け、らんねぇ」
「ごほっ、さ、斎藤っ! お前、“風術師”だろ、なんとかしろよっ」
四人は砂埃でごほごほと咽て、涙を堪えられないでいる。ハジメが突然の事態を理解できずに茫然としていると、遂に香織が到着した。
「何をやってるの!?」
その怒りに満ちた声は、施設の入り口に足を掛けた倬の耳にもかすかに、だが、確かに届く。
倬は施設内入り口近くの壁に、もたれかかるように座り込んで、開いた手帳を読むでもなく眺める。そのページには魔法陣と呪文が書かれ、魔法名には“
(もしも、……もしも、彼と俺とが逆の立場だったら、彼はどう、するんだろう。あんな、回りくどい真似、しないのかな)
“もしも”、“だったら”、“していれば”、そんな言葉が倬の頭をぐるぐると巡る。今はただ、自分の弱さが憎らしかった。そして、頭の中で自分を責めて、誰でもなく自分に許しを請う、その在り方の自己満足の程に自嘲する。
少しして、檜山達と、更に遅れてハジメ達が倬を横切って奥へ進んでいくのを目だけで追う。倬は澱んでいく思考を振り払う様に、頭を軽く左右に振りながら手帳を懐に入れ、訓練に意識を集中させることを決めた。
訓練終了後、珍しく魔力枯渇に陥らずに済んでホッとすると同時に、今からツェーヤさんが来るんじゃないかと不安になってキョロキョロしてしまう。来る前に図書館へ行こうと、いそいそ歩いていると、メルド団長が生徒達を引き止める。メルド団長はそのまま野太い声で告げた。
「明日から、実戦訓練の一貫として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」
(ツェーヤさん来なかったのそのせいか! くっそ、なる程な!)
明日から暫く図書館通いが出来なくなることを知って、自分が落ち込んだことに無自覚なまま、知らず小走りになって何時もの小部屋に向かうのだった。