戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
そろそろ本編に進みたいのですが、中々進めなくて申し訳ございません!
今回、変身は無いのでいつもより短くなっています。
装者達の誕生日調べて知ったんですけど、自分と調、誕生日が一日違いなんですよね…
感想、評価が作者の原動力となりますので、お待ちしています!
「ん……」
朝日が差し込み、月読調は自室のベッドから目を覚ます。
ふと、キッチンの方からいい匂いがすることに気づく。
「……?」
ドアを開け、リビングに向かうと…
「おはよう、調」
お手製のエプロンを着けた将也が朝食の準備をしていた。
「将也さん…おはようございます」
「丁度良かった。もうすぐ朝ごはんできるから、切歌を起こしてきて?」
「はい…」
寝ぼけ眼のまま歩いていく調を横目で見ながら将也は準備に取り掛かっていた。
ちなみに、今回のエプロンはレーザー・レベル1とチャンバラゲーマやハンターゲーマ、プロトスポーツゲーマとコンバットゲーマが描かれており、ご丁寧に『NOSERARE・TYATTA?』の台詞入りである。
――――――――――
リディアン音楽院。
調と切歌は将也の手作り弁当を食べながら放課後のことに関して会話していた。
「調、今日はこのあと将也先輩とデートデスよね?」
「うん。今朝出発前に約束した」
本日、2月16日。
今日は調の誕生日であり、そのために前日から将也に泊まってくれるよう頼んだのである。
「やっぱり調としては、先輩の立てるデートプランは楽しみデスか?」
「そうだね…正直、全然眠れなかったし」
恋人関係になってから初めての誕生日デートに、内心わくわくしている調。
親しい間柄の切歌から見れば、今の調が楽しみにしていることは一目瞭然だった。
「帰ったら、調のコーディネートはバッチリ任せるデスよ!」
―――――――――――
放課後。早速切歌の協力のもと誕生日デートのための服装に着替えた調は将也との待ち合わせ場所まで向かっていた。
「調!丁度だったね!」
調が待ち合わせ場所に訪れたと同時に、将也も到着する。
今回の予定は、久しぶりに街を見て周りたいという調のリクエストに応えるために将也と一緒にウインドウショッピングをする予定だ。
「こうやって2人だけで出かけるって、そういえば初めてですね」
手を繋ぎながら歩いていると、ふと調が思い出したように口にする。
「そういえばそうだね…いつもは切歌と3人で出かけることが基本だったし…」
将也が装者全員と正式に付き合うようになってから暫く経つが、調や切歌とデートする場合は必ずと言っていいほど一緒に行動するので、気が付けば3人でというパターンが日常化していた。
「ふふ…今日は私が先輩を独り占め、ということですよね?」
今日は将也を独り占めできる。そう考えると調の心に独占欲が湧いてきた。
いつもより楽しそうな表情を浮かべ、調は少しだけ早足になって将也を引っ張っていく。
――――――――――
それから数十分。
様々な店を見ていた将也と調だが、将也はとある店を見て調に声をかける。
「調、ちょっと待っててくれる?」
「…どうかしたんですか?」
何やら慌てた様子の将也に疑問を抱きながら調は聞く。
「えっと…ちょっとトイレ行ってくるから、少しだけ待ってて!」
そう言うと足早に去っていく将也。
あっという間にいなくなった後ろ姿に、調は小さなため息をついた。
「………もう…」
少し拗ねた様子で近くのベンチに座る調。
夕暮れの空を眺めながら、調は無意識に将也から聞いた歌を口ずさんでいた。
「…ヒカリ輝く未来を、その手に掴んでギュッと…誰よりも強く今、想い願う…」
半年前、将也の記憶が戻ってから彼がたまに口ずさんでいた曲。
どこか切なくなるが、調はこの歌が好きだった。
「零れる涙はきっと…誰かの為の涙…」
静かに、だが楽しそうに将也から聞いた歌を歌う調だった。
――――――――――
それから数分経ち、調は立ち上がる。
「…遅いな…先輩…」
すると…
「あれ?超可愛い子み~つけた!」
調に興味を持ったのか、随分と派手な外見の男達が絡んでくる。
見た目から恐らく高校生くらいだろうが、その視線はお世辞にも好意的とは言えない、下心を隠せていない目だった。
「ねえねえ、ひょっとして一人?暇なら俺達と一緒に遊びに行かない?」
リーダーらしい派手な青年が調に聞いてくる。
「…結構です。一人で来てるわけじゃないんで」
はっきりと嫌悪感を顕にした表情で調は言い返す。
「え~?でもいないじゃん。だったら、そいつが来るまで俺たちと遊ぼうよ?」
男達が調の腕を掴む。
「っ!?嫌っ!」
振り払おうとする調だが、小柄な少女である彼女では男達の腕力を振り払うことはできない。
生身の人間相手ではシュルシャガナを纏って反撃することもできず、連れて行かれるばかりかと思われたが…
「はいストップ。嫌がってるからその手を離そうか?」
男の手を掴んだのは、いかにも怒ってますといった表情の将也。
「あ?何だよお前?」
「この子の彼氏…って言ったらどうする?」
将也が来てくれたことでホッとする調だが、男達は訝しげな目で見てくる。
「お前…調子のんなよ?」
男の一人が殴りかかってきたが、将也は素早く攻撃を避け、掴んでいた男を突き飛ばした。
「テメェ!」
怒った男が次々と殴りかかるが、将也はそれを全ていなし、投げ飛ばす。
「ちょいちょい、こんな衆人観衆で攻撃するなよ!?」
それでも余裕を崩さない将也に、キレた男達は、何と警棒やバタフライナイフを取り出した。
「うっそ!?」
流石にナイフを取り出すとは思わなかった将也。
周囲の人達も驚きの悲鳴を上げる。
「くたばれこの野郎が!」
流石にナイフを持った相手に今までの手加減はできない。
そう判断した将也は、今までとは段違いの威力の回し蹴りを放つ。
「ハッ!」
気合の入った蹴りは、一撃でナイフをへし折った。
「……え?」
ナイフが折れるほどの威力の蹴りを目にした男達は目を点にする。
「………さて、どうする?まだ続けるなら……もうちょい威力強めのやつ、叩き込んでもいいけど?」
バグスターとの戦いの時のように目を細める将也に、男達の顔が青ざめる。
「い、いえ……すいませんでした!!」
慌てて逃げ出した男達の姿が見えなくなったのを確認して、将也は警戒を解いた。
「えっと…ごめんね?遅くなって」
「…遅いです。でも…」
調は、将也と腕を組んだ。
「今日ずっとこうしてくれたら、許します」
腕を組んだ際、僅かに調の腕が震えているのに気が付く。
怖い思いをさせたと反省する将也は、そのまま歩き出した。
――――――――――
ウインドウショッピングを途中で切り上げた将也と調は、将也のバイク(爆走バイクではなく、S.O.N.Gから支給されたバイク)である場所へと向かっていた。
「先輩、どこに行くんですか?」
「ある情報筋からゲットした、オススメスポット。着いてのお楽しみだよ」
ほどなくして、2人は目的の場所に着く。
「ここって…!」
調は、夜空に輝く星の数々に目を輝かせる。
ここは、響と未来がルナアタック以前に流れ星を見ようと約束していた場所。
星空に調が見とれていると、将也は小さな箱を調に渡す。
「調。これを…」
「え?」
受け取った調は、箱を開ける。
箱の中には、銀色の懐中時計が入っていた。
「調のプレゼント、何がいいかって考えてたんだけどね。少し迷ったけど、それにした」
時計の裏には、小さな兎の絵が彫られている。
「ありがとうございます…先輩…!」
嬉しさのあまり、少し涙を流す調だが、将也はそっと調の涙をハンカチで拭う。
「先輩…私は、将也先輩が大好きです」
改めて、調は将也に思いの丈をぶつける。
それは、あの日命を救われてから抱いてきた想い。
「これから先、ずっと一緒にいてください…」
「……わかった。約束するよ」
ずっとそばにいる。将也は横に居る愛しい少女の姿を見つめ、改めて誓う。
星空の下、2人はそっと手を繋いだ。
Happy Birthday 調…
調、誕生日おめでとう!