戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
久しぶりのシンフォギアエグゼイド更新となります!
少しづつですが投稿ペースを上げていきたいなと考えてはいます。
感想、評価が作者の励みになりますので、いつでもお待ちしています!
挿入歌 リトルミラクル-Grip it tight-
浮上したS.O.N.Gの潜水艦に対し最大の自動人形『レイア妹』がその巨体を生かしたチョップを打ち込み、潜水艦が爆発する。
すると、潜水艦から本部の部分が切り離され、残された船体のハッチが開きイチイバルを纏ったクリスとレベル3のスナイプが飛び出した。
「これでも…」
「くらいやがれ!」
クリスは巨大なミサイルを出現させ、スナイプはジェットコンバットのガシャットをホルダーに装填。
《キメワザ!ジェット・クリティカルストライク!!》
スナイプの放ったガトリングが命中し、続けざまにクリスが弓を展開。
『ARTHEMIS SPIRAL』
放たれた矢はミサイルに変形し、レイア妹に直撃。
爆音とともに、レイア妹は海の藻屑となった。
「連中…何もかも吹っ飛ばす気かよ…!」
すると、スナイプの通信機に連絡が入る。
『先輩!今すぐ本部に来て欲しいです!』
「切歌?何があった?」
切羽詰まったような口調の切歌に疑問を持ったスナイプは変身を解除し、S将也の姿に戻る。
『今の攻撃で降ってきた瓦礫でエルフナインが怪我をしたんデス!傷が深くて、血が止まらなくて…!』
「わかった!今すぐそっちに向かう!」
S将也はゲーマドライバーを装着したまま艦内の本部まで走る。
――――――――――
「エルフナイン!」
S将也とクリスが本部に入ると、ソファに横になっているエルフナインの姿が。
「切歌!調!包帯と止血剤の準備を!」
S将也は切歌達の助けを借りながらもエルフナインに応急処置を施す。
「将也…さん…ボクのことは気にしないで…キャロルを…止めてください…!」
「そういうわけにはいかないだろ…!君の治療が優先…」
途中まで言おうとしたS将也の手を、エルフナインが掴む。
「ボクが…ボクがダインスレイフを持ち込まなければ…キャロルの計画は進まなかった…」
キャロルの計画の駒として知らず知らずのうちに利用されていた真実を聞き、エルフナインは酷いショックを受けていた。
だからこそ、将也達にキャロルを止めて欲しいと強く願っている。
「ボクでは……なんの力にもなれない…だから、キャロルを止めてください…!」
血に塗れた手でS将也に頼み込むエルフナイン。
その手を、S将也はそっと握り返した。
「…ああ。わかった」
そう言うと、S将也は止血剤と包帯でエルフナインの傷を抑える。
「とりあえずは絶対安静だ。あまり体を動かすと、すぐ傷口が開く」
続いて、S将也は近くのコンソールを操作して本土と潜水艦の距離を確認。
「この距離なら…!司令!俺は一度アジトに戻って、最後の仕上げをする!分身した俺も恐らく向かっているはずだから、融合して準備を整え次第合流する!」
「ああ!急ぎ響君達にも伝えよう!」
クリス達や朔也達も頷く。
「エルフナインのことは俺達に任せてくれ!」
「先輩!アタシ達もすぐ追いつくデスよ!」
「すぐに…会いましょう!」
力強く頷いたS将也はコンソールに触れると、その身を粒子状のバグスターウイルスに変化させ、ネットワークを通じてその場から消えた。
――――――――――
将也のかつて使っていた旧アジト。
そこでは既に最後の仕上げに取り掛かるオリジナルの将也がいた。
「…戻ってきたか」
モニターから出てきたのはクリス達と行動していたS将也。
二人はバグスターウイルスに分解され、一つの体に再構成される。
「さて…あとは最終調整を済ませれば…」
将也はパソコンの前に座り、キーボードを操作。
パソコンの横には、彼の切り札と言える最強のライダーガシャットが接続されていた。
「………今できるのは、これくらいか」
それから一時間。キーボードを操作する手を止めた将也は『金色の特異な形のガシャット』を手に取る。
「あとは実戦で完成させる…!待ってろよ…!」
全ての準備は整った。
いつものジャケットに袖を通した将也は、そのガシャットをしっかり掴みながらアジトを後にするのだった…
――――――――――
その一方、響はというと…
「………」
先日父、彰と話をしたレストランで再び彼と顔を合わせていた。
全ては、自身の迷いを振り払うために。
「…あのね、お父さん。本当にお母さんとやり直すつもり?」
「本当だとも。お前が口添えしてくれたらお母さんも「だったら!」…」
彰の言葉を強い言葉で遮る響。
「だったら、最初は…始めの一歩はお父さんが踏み出して?逃げ出したのはお父さんなんだよ…帰ってくるのもお父さんからじゃないと…」
そこだけは、響にとって絶対に譲れない一線でもあった。
父が自らの意思で自分から踏み出してくれないと、響にとって望んだ未来にはならない。
「…そいつは嫌だな。だって、怖いだろ?それに………何より俺にも男としてのプライドってもんがある」
だが、彰の返事は今ひとつなものだった。
そんな父の姿に苛立ちを覚えたのか、響は拳をぎゅっと握る。
「私は…もう一度やり直したくて、勇気を出して会いに来たんだよ…」
正直、響は直前までずっと迷いを抱えていた。
そんな彼女が勇気を出せたのは、今の響を支えてくれた親友、仲間、そして愛する人の存在があったからでもある。
「だから…お父さんも勇気を出してよ!」
すると、響から目をそらすため空に視線を送った彰が何かに気がつく。
1拍遅れて響が空を見た瞬間、その『不可思議な光景』が瞬く間に発生した。
「空が………割れてる!?」
突然青空がまるでガラスのように割れて、内部から巨大な城のようなものがゆっくりと降りてきたのだ。
――――――――――
チフォージュ・シャトー内部。
現在、ウェル博士がシャトーと自らの体内に宿していたネフィリムの腕の力を接続していた。
「ワールドデストラクターシステムをセットアップ…シャトーの全機能をオートドライブモードに固定」
元来、全ての機械を操る聖遺物『ヤントラ・サルヴァスパ』を使う予定のキャロルだったが、S将也達に破壊されてしまったため計画は断念せざるを得ないと思われていた。
しかし、ネフィリムの腕を持つウェル博士ならばその代用が可能。博士は自らに宿した力のみでチフォージュ・シャトーを本格的に起動させてしまったのだ。
「自動人形達によって呪われた旋律は全て揃った。これで世界はバラバラに噛み砕かれる!」
そんなキャロルの言葉にウェル博士が訝しげな声を出す。
「あぁ?世界を噛み砕くぅ?」
「それこそ…オレが父親から託された命題だからな」
突然俯いたキャロルはその体を震わせ…
(キャロル…生きてもっと世界を知るんだ)
「わかってる…わかってるよパパ!だから私は世界をばらばらにするの!解剖して分解すれば、万象の全てを理解できるわ!」
顔を上げたキャロルの目は狂気に染まっていた。
声色も普段とは異なり、まるでまだ幼かった頃のように…
――――――――――
一方、響は弦十郎と連絡を取り合っていた。
『手短に言う。キャロルの計画がついに最終段階に入った』
電話の向こうで告げられた言葉に響も思わず息を呑む。
『少し前にこちらも敵の襲撃を受け、エルフナイン君が負傷。宝条君が応急処置を施したものの危険な状態が続いているため、到着が遅れてしまう』
「わかりました…将也君は?」
『こちらにいた彼は翼達と行動していた分身の宝条君と合流し、最後の戦いの準備に入っている。もう少し遅れるそうだが、パラドが助っ人を連れてそちらに向かっている。なるべく無理はしないように』
通信を切った響は彰を避難させるべく声を掛けようとする。
「お父さん!みんなの避難を…」
「なあ響、こういう映像ってどうやってテレビ局に売ればいいんだっけ?」
「お父さん……!」
異常事態に多くの人間が避難している中、彰は我関せずとばかりに目の前の光景を撮影していた。
――――――――――
シャトー内部でキャロルはウェル博士に対し怒りの感情を抱いていた。
「お前…父親からオレが託された命題を『なんか』を切って捨てたか!」
キャロルにとって『世界を知る』という命題は父、イザークから託されたもの。それこそが彼女をこの凶行に走らせた理由。
だがそれをウェル博士は下らないとばかりに切り捨てたのだ。
「ああ、ほかしたともさ!はぁっ!レディーがそんなこんなでは、その命題とやらも解き明かせるのか疑わしいものだ!」
ウェル博士の言葉にキャロルは鋭い目を向ける。
「いつだって世界を制するのは英雄だけ!その器が小学生サイズのレディーには荷がかちすぎる!やはりこの世界に必要な英雄は僕一人…二人と並ぶものはいない!」
キャロルは修理を完了させたダウルダブラを出現させると、背後からウェル博士を貫いた。
「………え?ィヤァン………?」
「支離にして滅裂…貴様みたいな左巻きが英雄になどなれるものか!」
キャロルはダウルダブラを引き抜くと、ファラが持っていた風の力でウェル博士を吹き飛ばす。
「う…あ……ダメじゃないか…楽器をそんなことに使っちゃ…」
腹の傷を抑えるウェル博士に対し、キャロルは歩いてくる。
「シャトーは起動し、世界制御のプログラムは自律制御されている…すなわち、もう貴様に用はない」
キャロルはダウルダブラを振り上げ…
「顔はやめて!」
ウェル博士をシャトーの奥底まで突き落とした…
「ふん………ぐっ!?」
消えていったウェル博士を見ていたキャロルは突然言いようのない苦しさに襲われる。
本来の手順やプロセスを無視して強引に今の体にこれまでの記憶を入れたことによって発生した負担が彼女の体を襲ったのだ。
「…今更立ち止れるものか…!」
ここに来るまで彼女は多くを犠牲にした。
千翼も、自動人形も…多くを犠牲にして彼女は悲願を達成しようとしている。
「計画の障害は…全て排除する!」
キャロルは手元に残された最後のプロトガシャット…プロトドラゴナイトハンターZのガシャットを握り締めた。
――――――――――
「いい加減にしてよお父さん…今の状況が本当にわからないの!?」
危機的状況でも自分勝手な行動をする彰に響が詰め寄る中、頭上から声が聞こえた。
「ほう…そいつが貴様の父親か」
振り返ると上空にはキャロルが浮遊しており、冷ややかに響達を見つめていた。
「世界を分解する手始めに貴様を切り刻めと、慣れない身体が急かすものでな」
「慣れない…やっぱり無理のある方法で復活したってことだね」
響の言葉に意外そうな顔をしたキャロル。
「ふん。貴様も意外と知恵が回るようだな…それとも、貴様が愛しているエグゼイドの奴から学びでもしたか?」
キャロルは不敵な笑みを浮かべ、天にそびえる巨大な城をダウルダブラで指す。
「あれこそ、俺の城『チフォージュ・シャトー』。アルカ・ノイズを発展した世界をバラバラにする解剖機関でもある」
シャトーを出してきたということは、キャロルの準備は完全にできたということになる。
「世界の分解…やっぱり、それをやめるつもりはないんだね?」
「愚問だな。今更辞めるとでも本気で思っていたのか?」
彼女の目が本気だと悟った響はガングニールのペンダントを取り出そうとするが、キャロルが放つ風の弾丸を手に受け、ペンダントが弾かれてしまう。
「以前の失敗から学んだ…ギアを纏わせることすらさせん!」
キャロルは続けざまに錬金術を使い空気を圧縮、風の弾丸を連射して攻撃をする。
「俺は父親から託された命題を胸に、世界へと立ちはだかる!」
そのキャロルの信念を聞いて、響は思わず手を止めてしまう。
「お父さんから託された…」
「誰にだってあるはずだ!親から託された想いが!」
その言葉に響は動揺し、動きが鈍る。
「私は…何も………託されていない」
その隙をキャロルは見逃さず、強力な攻撃が響を襲うが…
「響!」
咄嗟に彰が響を助け、攻撃は空振りに終わる。
「ちっ…なら、貴様から世界の前に分解してくれる!」
キャロルは彰をターゲットにし、彰は情けない悲鳴を上げながら響を置いて逃げてしまった。
「お父さん…!」
「何なんだよ…なんだよこれ!?こんなの、どうかしてやがる!」
娘を置いて逃げようとする彼の姿に、響は幼い頃抱いていた大きな背中がまるで否定されたかのような気持ちを抱いてしまう。
「はっ!情けなく逃げたぞ!娘を放り出して…身軽な男が駆けていきやがる!」
キャロルは彰に対し、甚振るかのようにわざと攻撃を外しながら追いかける。
やがて彰は倒れ、近くに落ちていた石を必死に投げつけながら抵抗をする。
「ひい!来るな!来るなああ!!」
デタラメに石を投げるその姿にキャロルは失望の目を向けながらダウルダブラを握った。
「お前の父親は大したものだな…オレの父親は死ぬ最期まで逃げたりしなかった!!」
嘲笑うかのように攻撃するキャロルだったが、彰は必死に走りながら響に叫んだ。
「響!今のうちにお前は逃げろ!壊れた家族を戻すには…そこに響も、そしてお前のことに真摯に向き合ってくれた彼がいなきゃダメなんだ!!」
再会してから初めて聞いた、響を気遣う言葉。
その言葉に顔を上げた響だったが、攻撃が彰の足元を吹き飛ばし彼は地面に転がる。
「お父さん!!」
ボロボロになり、足を引きずる彰。
だが、彼は目を逸らすことなく響に笑いかける。
「大丈夫だ響…これくらい………『へいき、へっちゃら』だ」
それは、いつも響を支えてくれていた言葉。
誰が教えてくれたのかは忘れてしまったが、どんな辛い時でも響を支えてくれた言葉だった。
「そうだった…その言葉は…」
幼い頃、響のためにと時折ご飯を作ってくれていたとき。
彰は包丁で指を怪我しても、彼女に笑いかけてくれた…『へいき、へっちゃら』。今の響にとって大事な言葉とともに。
「あの言葉…お父さんが教えてくれたんだ」
「貴様…逃げていたのではなかったか?」
「逃げてたさ…今までずっと…怖いものから、嫌なものから…でも!」
彰は立ち上がり、必死に言葉を繋いだ。
「わかったんだ…この子の父親であることからは逃げられない…いや、逃げてちゃいけないんだって!」
思い出すのは、再び歩み寄ろうとしてくれた娘と彼女を支えてくれた青年。
「俺は半端な気持ちだったかもしれない…でも響は壊れた家族を取り戻そうと勇気を出して向かい合ってくれた!娘を本気で大切に思ってくれた彼は、何一つ臆すことなく娘の幸せのために戦おうとしてくれた!」
彰は手元の石をデタラメに投げ続け、叫んだ。
「だから俺も、この情けないなけなしの勇気を振り絞ると決めたんだよ!!」
投げ続ける石。
だが、その中で違うものを彰はいつの間にか拾ってキャロルの後ろにいた響に投げた。
「響!受け取れえええ!!!」
「なっ!?」
キャロルでさえ一瞬油断し、見逃してしまった。
彰が投げた『ガングニール』はキャロルの横をすり抜け、響の手元に飛び…
「くっ!!」
キャロルは響がギアを起動させようとした瞬間、攻撃を放ち響の足元が爆風に包まれる。
「ひ…響!!」
(BGM リトルミラクル-Grip it tight-)
「へいき、へっちゃら…」
煙の中から聞こえた声に、彰は顔を上げる。
「私…ずっと前からお父さんに大切なものを受け取ってた…!」
響はガシャコンギアシンフォニーを起動させる。
「お父さんの言葉は、いつだってくじけそうになる私を支えてくれてた…ずっと、守ってくれてたんだ!」
キャロルは無数のアルカ・ノイズを出現させるが響はアルカ・ノイズに向かい合う。
「私は…一番大事だったことを思い出せた」
響が取り出したのは、以前将也が念のためにと置いていった最新のレプリカガシャット。
「ありがとう」
《マキシマムマイティ!エーックス!!》
将也の使うオリジナルと違い、通常のガシャットと同じデザイン。
しかし、そこには彼の思いが込められていた今の響が使える強化の一つ。
「…マックス大変身!!」
《ガッシャット!レベルマーックス!!》
エグゼイドの時と同じ、だがBGMのみが流れ響は左腰のホルダーにギアシンフォニーを装填。
《マキシマムパワー!エーックス!!》
すると、響のガングニールの外見が変化する。
ガントレットやブーツのサイズが大きくなり、エグゼイドの胸部装甲らしきデザインのアーマーが追加。
さらに、ヘッドギアにエグゼイドのライダーズクレストが刻まれマフラーにマキシマムマイティのキャラクターがデザインされた姿へと変身を果たした。
これぞ響が将也から託された力により変身した姿。
その名も、『ガングニール・マキシマムゲーマーレベル99』!
「ハアッ!」
響は脚部に装着されていたジャッキを使い加速すると距離を詰めてアルカ・ノイズの群れに殴りかかる。
マキシマムマイティXの能力で全体的なスペックが引き上げられ、その威力は最早アルカ・ノイズでは足止めにすらならなかった。
「うおおおおおおお!!」
腕のガントレットが巨大化し、バーニアで加速しながら次々とアルカ・ノイズを貫く響。
(やっぱり…あの時の女の子は響だったのか…)
フロンティア事変のとき、世界中に映し出された6人のシンフォギア装者の中心に立っていたのは今と少し違うギアを纏っていた響。
(ずっと逃げていた俺と違って…お前は何があっても踏み止まって、ずっと頑張ってきたんだな…!)
「うああ!?」
気が付くと響はキャロルの攻撃によってビルに押し付けられていた。
「貴様を見ているといらつく…ここで貴様の希望をへし折ってくれるわ!」
《ドラゴナイトハンター!ゼーット!》
キャロルはプロトドラゴナイトハンターZガシャットを自らの肉体に直接突き刺し、ダウルダブラが刺々しい形状に変異していく。
「く…響!負けるなあああ!!」
彰は倒れそうになる響に対して呼びかけるが、キャロルは彰の足元にテレポートジェムを複数ばらまく。
(まだ…まだだ!)
「『もうへいき、へっちゃら!ハート響かせ、愛!』」
胸の歌を叫び、響はキャロルのところまで最速で、最短で、一直線に飛ぶ。
「『なけなしの勇気…だって、勇気』いいいいい!!」
変形させたアームドギアを使い、キャロルの腹に強烈なアッパーカットを打ち込んで空に弾き飛ばす響。
「『泣けるほどずっと、愛になる』!!」
一度着地した響は腰にセットしたままのギアシンフォニーを操作。
《キメワザ!》
大技が来ると予測したキャロルは自分の持つ最大の防御を発動させた。
「ヘルメス・トリスメギストス!!」
それはキャロルの奥の手である三重層術式防護。
錬金術だけでなく天体の運行力学や降魔儀式といった本来キャロルの専門外な分野の要素が融合して完成された術式であり、事前準備が必要など運用性に関してはキャロルの持つ武器の中で一番使い勝手が悪く、彼女もそうそう使うことはないと考えていた最強の盾。
手間と労力がかかる分防御力に関しては最強だったこの技だが、響はそれに対抗する術を既に発動させていたのだ。
《マキシマム!クリティカルクラッシュ!!》
『MAXIMUM・CRITICAL・CRASH!!』
オリジナル同様、マキシマムゲーマーに組み込まれた能力『リプログラミング』が発動し、響の拳とキャロルの防護術式が接触した瞬間破壊されていく。
「知るもんかああああ!!」
例え最強の防御術式であろうと、エグゼイドの力と何者をも貫く無双の槍の力をその拳に宿した響の敵ではなく、響の拳は正確にキャロルの顔面を捉え思いっきり殴り飛ばすとキャロルの身体はきりもみ回転をしながら地面に叩きつけられる。
「ぐ……よくもやってくれたな」
キャロルの合図によって彰の周囲にばらまかれていたテレポートジェムが砕け、大量のアルカ・ノイズが彰を取り囲んだ。
「お前も父親を力へと変えるなら…まずはそこから引いてくれる!」
無数のアルカ・ノイズによる解剖機関が彰に迫り、響は彰を助けようと走る。
「お父さん!!」
すると、どこからかバイクの音が聞こえてくる。
「伏せて!」
その声に咄嗟に従い彰が伏せると、バイクに乗っていた人物は行動を起こす。
《ガッシャット!キメワザ!》
《爆走!クリティカルフィニッシュ!!》
バイクに乗っていた人影…将也はレーザー・レベル2に乗りながらドリフトをして斬撃と余波でアルカ・ノイズを消滅させる。
「響!待たせた!」
ブレーキをかけ、将也は響へと声をかける。
「将也君!」
すると、上空から攻撃しようとしてきたアルカ・ノイズが次々と降ってきたミサイルと短剣によって消滅。
「翼さん!クリスちゃん!」
「私達だけではない!マリア達も揃っているぞ!」
上空を見ると、クリスが移動用に放ったミサイルからマリア、切歌、調が着地する。
それと同時に2台のバイクが停車し、そこからパラドと千翼がヘルメットを外して降りてくる。
突然のことに驚く彰の前に黒い車が停まり、運転席に乗っていた緒川と助手席に乗っていた未来が声をかける。
「ここは危険です!早く乗ってください!」
「おじさん!早く!」
「未来ちゃん…?でも、響が…」
彰に対し、未来は揺るぎない目で語る。
「響なら大丈夫です!翼さん達が…それに、将也君達もいます!」
やがて、彰を乗せた車は戦いの場から離れていく。
「千翼…貴様、オレを裏切ったか…」
「違うよ…俺は気がついたんだ。今の行動が、本当にキャロルの望んだ世界につながるのかって!」
そんな千翼に対し、キャロルは睨みつけながらダウルダブラを取り出す。
「本懐を遂げようとしているのだ!今更やめられるものか…思い出も何もかも焼却してでも!」
再びダウルダブラの音色を奏で、キャロルは大人の姿に変化しファウストローブを展開。
「だったら…俺達で止めてみせる!」
将也はゲーマドライバーを装着してマイティアクションXを取り出し、パラドはガシャットギアデュアルを構え、千翼はアマゾンズドライバーを装着。
《マイティアクション!エーックス!》
《PERFECT PUZZLE!》
ゲームエリアが広がり、将也とパラド、千翼はそれぞれの変身ポーズを取る。
《アルファ…!》
「アマゾンっ!」
「変身」
「大変身っ!」
千翼はアマゾンアルファブル、パラドはパラドクスレベル50、将也はエグゼイド・レベル2に変身を果たす。
「最後の戦いだ…ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」
To Be Next GAME…?
次回、シンフォギアエグゼイド!
「これが…キャロルの本気か!」
最大最強の力、解放!
「これが世界の分解だ!」
始まる、キャロルの最終計画…
「止めてみせる!」
「この絆は時限式じゃないのデス!」
最後の希望は、彼女達に託された!
第41話 決戦のPRELUDE