戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
さて、今回はあの破壊者が現れ、GX編もクライマックスに…
感想、評価はいつでもお待ちしております!!
薄暗いどこかの建物。
その中で2人の男が言葉を交わしていた。
「そうか。行ってくれるのか、千翼君のところへ!」
「ああ…奴がもしこのタイミングで『万象黙示録』の真実を話してしまえば、後々この世界の歴史に大きな歪みが出来かねない」
不遜な態度の男は、私物であるマゼンタカラーのトイカメラを持つと彼の目の前に灰色のオーロラが出現。
「期待しているよ…『門矢士』」
男に名前を呼ばれ、士は一瞬嫌そうな顔をしてオーロラに消えた。
「さて…ならば君もそろそろ動こうか、存在意義のためにも!」
男が見つめていたのは、カプセルに入っていたあの青い怪物だった…
――――――――――
パラドの自宅。
そこでは現在、パラドと未来に対して千翼が向かい合っていた。
「…それは、本当なのか?」
「ああ…ガリィが死ぬ間際に教えてくれたんだ。イグナイトモジュールをエルフナインが持ち出してそっちに渡ったのは、キャロルの計画通りだったと」
千翼は、ガリィから聞いた万象黙示録完成のための計画、その重要なピースを全てパラドと未来に明かした。
「イグナイトモジュールは魔剣ダインスレイフの力でシンフォギアに呪われた旋律を奏でる。キャロルはガリィ達がイグナイトの力で倒されることで、ダウルダブラを完成させることが真の狙いだったんだ」
その言葉に驚愕する未来だったが、パラドはこれまでの違和感が拭えた感じがした。
「なるほどな…だから奴らはこれまで追い込んでも撤収させる場面が多かったのか」
最初から倒されるために誕生した人形達。彼女らもまた、キャロルの計画に利用されていただけだと知ってしまう。
「…で、千翼君はどうしたいの?」
未来の言葉に、千翼は少し項垂れるが…
「…俺は、ガリィ達のこともキャロルのことも大切だった。だけど俺は…感情のままにキャロルの心を追い込んだんだ…」
本来は見ず知らずの自分を助けてくれるくらいには心優しいキャロル。だが、彼女の心はこの数百年で限界が近づいていた。
「傷つけておいて助けたいなんて思うのは勝手かもしれない…でも、あいつがこれ以上自分の心を壊さないように………俺は、キャロルのことを助けたいと思っている」
キャロルから拒絶され、失意のそこに墜ちていた千翼。
だが、別世界で出会ったかつての友達と過ごしていくうちに千翼は前を向けるくらいには心のゆとりができた。
「…うん!なら決まりだね!」
「ああ。まずは司令に話してお前が自由に動けるように…」
立ち上がるパラドは通信機を取り出し…
「悪いが、これ以上余計な真似をされるとこの世界が壊れちまう」
突然どこからか聞こえた言葉と共に、通信機を持っていたパラドの左手に何かが直撃、通信機が弾かれる。
「っ!どこだ!?」
パラドが周囲を見回すと、さっきまでいなかったはずの人物がリビングの入口で腕を組んだ状態で立っていた。
「お前…いつの間にこの部屋に?」
「そんなことはどうでもいい。だが…」
青年…士は首にかけていたトイカメラを持つと千翼、パラド、未来を被写体にシャッターを押す。
「俺のやるべきことは二つ。一つはお前達この世界に存在する仮面ライダーによるこの余計な介入を止めること。そして…」
士は懐からマゼンタカラーのカメラに似た道具を取り出した。
「泉千翼…いや、アマゾンネオ。お前の力を試すことだ」
すると、灰色のオーロラが出現して士を含む4人を包む。
オーロラが消えると、部屋には誰も残っていなかった…
――――――――――
「「うわああっ!?」」
「キャアアッ!?」
3人が投げ出されたのは、さっきまでとは違うサッカースタジアムの客席のような場所。
「ここなら邪魔者は入らない。思う存分暴れられるぜ?」
士は持っていたマゼンタのカメラにも似た道具…『ネオディケイドライバー』を腰に当てると自動的にベルトが伸びて腰に固定される。
そして左腰に出現したカードホルダー兼武器の『ライドブッカー』を開き、その中から1枚のカードを取り出した。
「変身」
低い声と共に開いていたネオディケイドライバーに裏返したカードを装填。
《KAMEN RIDE…》
待機音声がベルトから鳴り、士はドライバーのハンドル部分を同時に閉じる。
《DECADE!》
すると、士の周囲を20枚ものカードのようなエネルギーが囲み、士の姿を全く違う外見に変化させる。
マゼンタと黒をメインカラーとし、マスクは黒いプレートが何枚も突き刺さったデザインに緑の目が一瞬輝いた。
「あいつは…?」
見たこともない姿に変身した士に対して警戒心を露にする千翼だが、パラドはこの戦士のことを知っていた。
「…仮面ライダー…ディケイド…!」
「パラド、知ってるの?」
「ああ…昔ゲンムの奴がこいつのデータを持ってたことがあってな…」
かつて檀黎斗は過去の仮面ライダーに関してのデータを集めており、仮面ライダークウガからゴーストまでの17人のライダーのガシャットを開発していた。
その中にこのディケイドの名前も存在していたのだ。
「ほう?俺のことを知っているのなら話は早い」
ディケイドはライドブッカーをガンモードに変形させるとパラド達目掛けて発砲する。
「未来!」
「キャッ!?」
パラドは咄嗟に未来を抱きかかえ、隠れる。
「未来は下がってろ!こいつは俺達が!」
理由は不明だが、攻撃してくるのならこちらも迎え撃つしかない。
「行くぞ千翼!」
「ああ、パラド!」
千翼はネオアマゾンズドライバーを、パラドはゲーマドライバーを装着してそれぞれインジェクターとガシャットを装填。
《デュアル・ガッシャット!》
《ネ・オ》
「マックス大変身!」
「アマゾンッ!」
パラドは素早くレバーを開き、千翼はインジェクターの中身をドライバーに押し込む。
《マザルアーップ!パーフェクトノックアーウト!》
パラドクスとアマゾンネオはパラブレイガンとアマゾンブレイドを装備し、ディケイドに攻撃。
「ハアッ!」
「ふっ!」
アマゾンネオの攻撃をソードモードに変形させたライドブッカーで受け止め、軌道をずらしてパラブレイガンに重ねることで2人を妨害。
「テヤッ!」
ぶつかったところで袈裟懸けに斬る。
「グアアアア!?」
ライドブッカーの攻撃をモロにくらい、ダメージを受けるアマゾンネオ。
「千翼!」
間に入ったパラドクスはガンモードのパラブレイガンで攻撃し、ディケイドは怯む。
「…なるほど。流石に最強形態のパラドクスなだけはあるか…なら」
ディケイドはドライバーを開くとライドブッカーを再びホルダーモードに戻し、その中から1枚のカードを取り出す。
「変身」
《KAMEN RIDE…》
カードを装填し、素早くハンドルを回す。
《W!》
すると、ディケイドの体が大きく変化。
体の中心に銀色のラインが入り、右半身が緑、左半身が黒くなったシンプルな外見の仮面ライダー。
「さあ…お前の罪を数えろ…」
『ディケイドW』へと変身を遂げ、武器であるメタルシャフトを出現させた。
「仮面ライダーW!?あいつ、自分が誕生した以降の仮面ライダーにも変身できたのか!?」
パラドクスの疑問を無視し、ディケイドWはシャフトで攻撃をしてくる。
「ああああ!!」
《クロー・ローディング》
アマゾンネオはアマゾンブレイドからクローに武器を変えてディケイドWの首に巻きつけるが、ディケイドWは落ち着いた様子で金色のカードを取り出し、ドライバーに挿入。
《FINAL ATTACK RIDE…》
そのままディケイドWはドライバーのハンドルを回す。
《DO・DO・DO・W!》
変身のときとは異なるハイテンションな音声が流れ、ディケイドWの持つメタルシャフトの両端から炎が吹き出す。
そしてディケイドWは炎でクローのワイヤーを焼き切ると、走りながらアマゾンネオに炎の棒を叩きつける。
「ハアアアア!!」
「グウアア!?」
吹き飛ばされたアマゾンネオを見て、パラドクスはすぐさまアマゾンネオを守るために間に入る。
「パラドクスか…なら、これだな」
ドライバーからWのカードが排出され、ディケイドWは次のカードを取り出す。
《KAMEN RIDE…》
「大変身」
《EX-AID!》
《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!エーックス!》
ドライバーを閉じると、パラドクスも未来も見覚えのあるキャラクターセレクトのパネルとマイティアクションXのゲーム画面、さらにエグゼイド・レベル2に変身するときのゲートが出現。
ゲートをくぐると、ディケイドWの姿は見覚えのある『仮面ライダーエグゼイド』に変化していた。
「今度はエグゼイドに!?」
「テメェ…よりによって将也と永夢のエグゼイドまで…!」
パラドクスはパラブレイガンをアックスモードにして攻撃したが、ディケイドエグゼイドはガシャコンブレイカーで応戦。
「どうした?エグゼイドの姿では攻撃できないとか言うのか?」
パラドクスに対してガシャコンブレイカーで攻撃してくるディケイドエグゼイドの苛烈な攻撃に耐え、パラドクスはゲーマドライバーに装填されているガシャットギアデュアルのダイヤルを回転、レバーを操作した。
《ガッチョーン!ウラワザ!》
「っ!」
パラドクスの狙いに気づいたディケイドエグゼイドだが、既に時遅し。
《ノックアウト!クリティカルスマッシュ!》
「デヤアアアアアア!!!」
強烈なボディブローが入り、ディケイドエグゼイドはディケイドの姿に戻る。
「…なるほど。パラドクスの力を見誤っていたか。なら…」
さらにディケイドは別のカードを取り出し、ドライバーに装填。
《KAMEN RIDE…GHOST!》
《レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!》
骨を模した素体『トランジェント』にパーカーが被さり、ディケイドは『ディケイドゴースト』に変身。
「命…燃やしていこうか」
《ガンガンセイバー!》《サングラスラッシャー!》
二つの剣を召喚し、ディケイドゴーストはパラドクスに攻撃。
「パラド!」
アマゾンネオはブレードを作り出して攻撃するが、ディケイドゴーストはまるで本物の
幽霊のように動いて攻撃を避ける。
《FINAL ATTACK RIDE…GHO・GHO・GHO・GHOST!》
《ダイカイガン!ガンガンミナー!ガンガンミナー!》
《闘魂ダイカイガン!》
二つの武器から必殺技の起動音が鳴り、ディケイドゴーストは二つの武器の斬撃を組み合わせて2人のライダーを切り裂く。
「くっそ…あいつ、絶対俺が知ってる情報よりパワーアップしてやがる…!」
「さて…そろそろ本気でカタをつけよう」
ディケイドは新たにカードを取り出し、ドライバーに装填。
《KAMEN RIDE…AMAZON!》
次にディケイドが変身したのは、パラドクスも知らない仮面ライダー。
だが、その姿を見てアマゾンネオは動揺した。
「な………!?どうして…!」
細部や色合いは異なるが、マスクのデザインなどは父親である鷹山仁が変身した『アマゾンアルファ』に酷似した戦士。
「仮面ライダーアマゾン…こいつなら、お前の相手にちょうどいい」
ディケイドアマゾンに変身し、今度は徒手空拳でアマゾンネオとパラドクスを攻め立てる。
《FINAL ATTACK RIDE…》
いつの間にかカードを装填しており、素早くハンドルを回す。
《A・A・A・AMAZON!》
「ハアアアアア!」
ディケイドアマゾンは腕のヒレでアマゾンネオとパラドクスを切り裂いた。
「があああ!?」
「ウアアア!!」
血飛沫を撒き散らして膝をつくアマゾンネオと、胸のライダーゲージが大きく減少したパラドクスをディケイドは蹴り飛ばす。
《KAMEN RIDE…DECADE!》
再びディケイドは元の姿に戻り、自身の紋章が刻まれた金色のカードを装填。
《FINAL ATTACK RIDE…DE・DE・DE・DECADE!》
「トドメだ」
必殺技を発動させるとディケイドとアマゾンネオ達の間に10枚のカード状のエネルギーが出現し、ディケイドは高く飛び上がる。
「ふっ!」
するとディケイドの動きにシンクロするかのようにエネルギーもゲートのようにディケイドの眼前まで移動し、ディケイドは空中でキックを放った。
「テヤアアアア!」
カードを1枚潜るごとにエネルギーが集まっていくディケイドの必殺技『ディメンションキック』を避けることもできず、パラドクスとアマゾンネオに直撃。
直後、未来の目に映ったのは爆発に巻き込まれる2人の姿だった。
――――――――――
「ぐ…うう…!」
「パラド!千翼君!」
変身が解除されたパラドと千翼に駆け寄ろうとする未来だが、ディケイドは千翼の前に立つ。
「…そんなものに頼っていては、貴様はいつまでたっても『化け物』から上にはなれないな」
そう言うと、ディケイドは千翼の左腕に巻かれていた方のネオアマゾンズレジスター…アマゾン細胞の抑制剤が入っていた方をライドブッカーで撃った。
「があああああ!?」
腕輪が破壊され、左腕を襲う激痛に絶叫する千翼。
「千翼おおおお!!」
パラドは、腕を押さえ絶叫する千翼に手を伸ばす。
彼にとって左腕の腕輪がどれほど大事なものなのかは教えられている。
人食いの本能を抑えるための抑制剤が切れてしまえば、数日も経たないうちに千翼は本能のままに人間を襲って食らう怪物になってしまう。
そうなれば、もう『千翼』は二度と帰ってこない。
「あああああ!!」
《マザルアーップ!パーフェクトノックアウト!》
再び変身したパラドクスはディケイドに攻撃するが、ディケイドはそれを軽々と受け止めてソードモードのライドブッカーで切り裂く。
「グウウ…くっそ…!」
「あまり無理するな。強制解除からの再変身がキツい事くらい知ってるだろ?」
赤子の手をひねるかのようにディケイドは一撃でパラドクスの変身を解除させる。
「…悪く思うな。これは全て、お前のためでもある」
ディケイドは倒れ伏す千翼に対して声をかける。
だが…
「何ですかそれ…」
なんと、物陰で隠れていたはずの未来が突然ディケイドの前に立った。
「未来…何やってんだ!」
倒れるパラドが叫ぶが、未来はディケイドの前から離れようとしない。
「千翼君の腕輪を壊して…それがどういうことか知っててこんなことをしたんですか!?」
「ああ。じゃなければわざわざ腕輪を壊すはず無いだろ?」
あっさりと。あまりにも冷酷に言い放ったディケイドに絶句する未来。
「邪魔をするのなら、お前にもここで…」
ディケイドは何とライドブッカーの銃口を未来に向け…
――――――――――
腕輪を壊されたことによる痛みと、薬が切れたことで湧き上がってきた人食いの衝動に苦しむあまり声を出すことすらできない千翼。
(また…俺は何もできないのか…!)
脳裏に浮かぶのは、あの世界で死んだ時の記憶。
(溶源性細胞は危険すぎる…君自身にも制御できないくらいに)
極めて淡々と言い放った青年、水澤悠。
彼と父、鷹山仁はそれぞれのベルトで変身して千翼を殺しにかかる。
(いつもそうだ…俺は、何にもできずに終わって…)
記憶の中に残っているのは、自分のせいで命を落としてしまった1人の少女。
(イユ…俺は、君の笑顔すら取り戻せずに…君を殺してしまった)
記憶の中の彼女は、とうとう自分に笑いかけることなくその命を終え、冷たい死体に逆戻りした。
ただ作業でもするかのように自分を殺そうとする父親とその宿敵。
そんな父に自分を殺すように伝えていた母親。
出会った時から死んでおり、感情を取り戻すことなく死んでいった少女。
(俺は…何のためにこの命を持って生まれたんだ…?)
(本当に、そう思ってる?)
ふと、自問自答していた千翼の心の中で誰かが呼びかけてきた。
(千翼は、本当に自分のやってきたことが無意味って、思ってる?)
どこかで聞いたことのある少女の声に、千翼は答えることができない。
(あなたは…大切なことを忘れてる)
(思い出して…あなたがやってきたことには、必ず意味があった…)
すると、千翼の脳裏に何かが浮かぶ。
ぼやけてはっきり見えないが、過去の自分がだれかの隣に座っていることだけはわかった。
「……!今、…って…!」
はっきり見えない中で、千翼が唯一見えたのは『誰かに対し、嬉しそうな表情を浮かべている過去の自分』の姿。
「………俺は…あの時何が嬉しかったんだっけ…?」
(…大丈夫。すぐに思い出す…だから)
謎の少女は千翼の後ろに立つと、未だに血が流れている千翼の左腕をそっと労わるように撫でる。
(それまでは、私があの子と君を守るから…)
―――――――――
「うああああああああ!!」
左腕を押さえて苦しんでいたはずの千翼。
だが、彼は突然立ち上がると未来に銃口を向けていたディケイドを全力でぶん殴り、一撃で変身解除まで追い込んだ。
「……っ…やるじゃないか。それでこそ『仮面ライダーの候補』だ」
「何…?」
士は殴られたにも関わらず楽しそうに笑い、ドライバーを外す。
「合格だ。人食いの衝動より前にその女を守るために動いたとは…やはり人間の遺伝子を持ったアマゾンは、きっかけさえあれば本能を抑制できるようだな」
千翼の父である仁は元々人間であり、人食いの本能は完全にコントロールに成功していた。
そして水澤悠もまた、抑制剤の投与を受けてはいたものの本来なら薬が切れているはずの5年間、人を食わずに生きていた。
「お前を蘇生させた奴らから話は聞いたよ。お前を拾ったあの女はお前が人を食わなくても良いように、その変異型アマゾン細胞を弄ってかつての力を封じたと」
「そうだ…キャロルは、俺の溶源性細胞を…」
キャロルの手によって千翼の細胞はかつてほどの驚異はない。
だが、その分以前よりも戦闘力は減退しており、長時間戦えないデメリットがあったことを千翼は思い出す。
以前、一度だけオリジナルの力を行使したこともあったが、本来の力であるはずのオリジナルの能力を千翼は長く維持できなかった。
「まあ、そのおかげでお前はギリギリ間に合ったんだろうな」
千翼とパラド、未来は唖然としながら士を見上げる。
「お前…一体何が目的で…?」
「さっきも言ったが俺は二つの目的があってこの世界に来た。一つは、これから起きる歴史の大きな流れをなるべく崩さないようにお前らを足止めすること」
「大きな流れ…?」
未来の疑問に士は答えた。
「ああ。今から数時間後、あの錬金術師の女とシンフォギア装者、そして仮面ライダーが最後の戦いを始めることになる」
「それって…キャロルの計画が完成したってことなのか!?」
士は近くの椅子に座り、足を組む。
「その通りだ。だが、お前達が奴のもとにたどり着くには、これから起きる最後の試練を乗り越えなければならない。そのためには、お前が『覚醒』する必要があったということだ」
すると、士は椅子から立ち上がる。
「俺が教えられるのはここまでだ。後はお前達が決めろ………あの女を救うか、このまま全てを捨てて逃げるのか、な?」
士が指を鳴らすと、再び銀色のオーロラが出現してパラド達を飲み込んだ。
――――――――――
気が付くと千翼達はパラドの部屋に倒れていた。
「…あれは、夢…じゃないな」
左腕の腕輪が無いことで、あの戦いが夢じゃないことを確認する千翼。
すると、パラドの端末に通信が入る。
『パラド君!ようやく繋がったか!』
「司令…?何かあったのか?」
通信相手は弦十郎。だが、彼の声はやけに切羽詰まった物言いだった。
『ああ!先ほど深淵の竜宮を脱出して移動を開始しているのだが、どうやら君達の付近でノイズともバグスターとも違う怪物が現れたらしい!』
「何だと!?」
パラドは急いで部屋のパソコンを起動させ、弦十郎から送られてきたマップデータをパソコンに移す。
「…マジか。将也は?分身してたあいつは今都内にいるはずだろ?」
『…それが、そうも行かなくなってな。現在向こうの将也君とは連絡が取れない。恐らく、向こうでも何らかのトラブルが起きているものと思われる』
『ってことだ。向こうと繋がりしだい俺は戻る。パラドには、街に現れた敵を頼みたい』
通信に入ってきたのは深淵の竜宮に派遣されていたS(スナイプ)将也。
「ああ…わかった」
パラドは通信を切り、未来と千翼の方を振り返る。
「…どうやら、もう始まっているらしい」
パラドの言葉に2人とも頷き、急いで部屋を出る。
――――――――――
パラドは未来を乗せてS.O.N.Gから支給されたバイクを、千翼はジャングレイダーを運転しながら怪物が現れた方向へと向かう。
だが、千翼は移動の中で怪物の『気配』を感じ取っていた。
(この気配………あの鴻野が溶源性細胞に感染してた時と同じ…)
そして、その様子を見つめる5人の影。
「さて、あとはじっくり見届けるだけなワケダ」
鴻野をアマゾンに変異させていた3人の女とエンジンブロス、リモコンブロス。
3人の女のうち蛙のぬいぐるみを抱えたメガネの少女『プレラーティ』がポツリと口にする。
「局長のとっておきとかいうからあーしも警戒してたけど…アレ、想像以上にヤバい怪物ね。ホントにあの子達だけで勝てるのかしら?」
浅黒い肌の美女『カリオストロ』の言葉に、男装の麗人『サンジェルマン』が首を振る。
「勝てるか勝てないか、じゃないわ。彼らが先に進むには、勝つしかない」
「今の私たちが為すべきことは一つ。そのためにも…この戦いは重要なものになる」
サンジェルマンの視線の先には、千翼の姿があった…
To Be Next GAME…?
次回、シンフォギアエグゼイドは!
「よせ、クリス!」
後輩達への見本。そのプレッシャーが…
「正論で超常と渡り合えるか!」
彼女の心を追い込んでいく…
第36話 絆のRip
「頭を冷やせって言ってんだよ!何でそんなことにも気づかない!?」