戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
こちらは久しぶりの更新となります。
仕事続きで中々更新できない日々が続いていましたが、少しづつペースを戻していこうと思っています。
感想、評価がペースアップにつながります!
「ここは…」
気が付くと翼は風鳴邸の一室で眠っており、自分がファラに敗北したことを思い出す。
「大丈夫、翼?」
すると、障子の向こう側からマリアの声が聞こえてきた。
「すまない…またしても不覚を取った」
自身の夢すらも捨ててなお、自分一人の力ではファラに勝てないことに憤りを感じる翼。
「…目が覚めたのならすぐに準備して。翼のパパさんが話があるって」
――――――――――
翼達に説明されたのは、アルカ・ノイズが物質を分解する際に生じる赤い粒子の正体。
その正体プリマ・マテリア。万能の溶媒アルカ・ヘステによって分解還元された物質の根源要素だという。
「…なるほど。文字通りアルカ・ノイズは物質を原初のレベルまで分解させていたってわけね」
「錬金術は分解と解析、そこからの構築によって成り立つ異端技術の理論体系ですが…」
「問題は、キャロルは世界を分解したあとに何を望んでいるのか…」
緒川とマリアはキャロルの目的の先にあるものを考えるが…
「案外、彼女は何も望んでいないのかもしれませんね」
将也のポツリと呟いた言葉に全員が彼に対して視線を向ける。
「以前からキャロルとの戦いの中で感じていたのですが、彼女は世界を分解して『万象黙示録』とやらを作り上げることに拘っている印象でした」
世界の理そのものを解読する。それがキャロルの目的だと将也は推測して
いた。
「だけど、逆に言えばキャロルからはそれ以上の目的が感じられないんです。まるで、そこから先を思考していないように…」
しばし考える一同だが、悩んだところで未だ答えが見つかるはずもない。
「要石が破壊された以上、恐らくファラはキャロルの元へ向かった可能性が高いですね…」
「なるほどな…ところで翼。傷の具合はどうだ?」
八紘の質問に答える翼。
「はい…痛みは殺せます」
「ならここを発ち、然るべき施設にてこれらの情報の解析を進めるといい。お前の守るべき要石はもうないのだからな」
その言い回しに眉をぴくりと動かす将也と、いつものように答える翼。
「…わかりました」
だが、このやりとりにどうしても我慢できなかった人物が居る。
「それを合理的というのかもしれない。でも、傷ついた娘にかける言葉としては冷たすぎるのではないでしょうか?」
「マリア…!今は風鳴さんに対して文句を言う時じゃない」
「ああ…いいんだ、マリア」
寂しげな顔の翼と、いかにもご立腹といった表情のマリア。
八紘の言葉に秘められた感情を理解できる人間は…
―――――――――――
話が終わり、マリアと翼が退室したが将也だけは八紘に言われて部屋に残っていた。
「それで…話とは?」
「君の話は弦から聞いている。君は翼だけでなく6人のシンフォギア装者全員と交際しているとな」
「…はい。仰るとおりです」
切り出された話に緊張する将也。だが…
「そう緊張することはない。君の人となりは弟から聞いているし、少なくともあの翼が本気で愛しているのなら、私は何も言うつもりはないよ」
「………はい?」
予想外の言葉に面食らう将也だが、八紘は自嘲するように笑う。
「君は、翼と私の関係を知っているのだろう?」
「…はい。以前、翼から聞きました。あなたが実の父親ではないこと。そして…父親の正体はあなたと司令の…」
――――――――――
将也がそれを聞いたのは、翼との初夜を終えたとき。
ベッドの中で翼は将也に自身の隠された真実を伝えた。
「…翼のお父さんと翼は、血の繋がりが…?」
「ああ…どうやら私の祖父、風鳴訃堂がお母様から産ませたのがこの私…ということらしい」
つまるところ八紘や弦十郎と翼は母親違いの兄妹という関係性が正しかっ
た。
「だからこそ私は、この身を剣として生きてきた…お父様に振り向いて欲しい。ずっと…そう思ってな…」
――――――――――
「……………君ならば、きっと翼を…」
「八紘さん…やっぱりあなたは…!?」
将也が口を開いた瞬間…
外から轟音が聞こえた。
―――――――――――
一方、将也Bとクリス、切歌、調の4人が向かった深淵の竜宮。
本部に残っていたオペレーター達はキャロルの目的を調べるべく竜宮の管理システムを検索していた。
「キャロルの狙いを絞り込めば対策を打つことが出来るかも…」
エルフナインも協力して情報を探していると…
「発見しました!名称、『ヤントラ・サルヴァスパ』!」
オペレーターの一人が可能性のある聖遺物の名前を告げる。
「なんだそれは!?」
「あらゆる機械の起動と制御を可能にする情報集積体。キャロルがそれを手に入れればチフォージュ・シャトーは完成してしまいます!」
真の目的が判明したことで、本部のメンバー達は管理区域を割り出すべく動き出すが…
「さて、僕も行かなきゃ…」
先ほどのオペレーター…葛城は紫色のボトルを振ると、誰にも気づかれることなく姿を消した…
――――――――――
ゲーマドライバーを巻いた将也が風鳴邸の庭園にたどり着くと、そこにはギアを纏ったマリアと翼がファラを相手に戦っていた。
「あいつ…どうしてまだこっちに!?」
少し考える将也だが、懐から『白いガシャット』を取り出す。
「…いや、こいつはまだ起動してない。なら!」
《TADDLE FANTASY!》
「術式レベル50、変身!」
《デュアルアーップ!タドルファンタジー!》
ブレイブ・ファンタジーゲーマーに変身した将也は魔法で火球を作り出し、ファラに攻撃。
「あら?もう来たのね…それじゃ」
《ガッチャーン!》
ファラはバグルドライバーツヴァイを装着し、プロトドレミファビートを起動。
《ドレミファ・ビート!》
《バグルアップ!ドレミファビート!》
ドレミファビートの力を宿したファラは音波攻撃でブレイブ、翼、マリアを圧倒。
しかもソードブレイカーの能力を宿しているのか、3人の剣にも僅かながらヒビが入っていた。
「お前…何が目的でここに訪れた?」
要石を破壊したはずなのにここに現れたファラ。
だが、彼女は嘲笑うかのように語る。
「そんなの…もう一度剣ちゃんの歌を聞きたいからに決まってるでしょ?」
はぐらかすようなセリフに内心苛立ちながらもガシャコンソードで斬りつけるブレイブ。
だが、ファラは音波攻撃でブレイブ達を近寄らせない。
「く………なら、私が!」
翼は音波攻撃を強引に突破しようと突っ込むが、剣だけでなく翼のギアや肉体にまで目に見えるダメージが出ていた。
「翼!」
吹き飛ばされ、倒れそうになる翼を支えるブレイブ。
「将也…すまない、今の私では、奴に一矢報いることも………」
自らを一本の剣として鍛錬を続けてきた翼。
だが、その思想はファラ相手に相性が悪かったと言わざるを得ない。
「…私は、身に余る夢を捨ててここまで来た…なのに…!」
「立ち上がれ、翼!!」
翼の危機に駆けつけたのは、八紘。
「お父様…ですが私は風鳴の道具にも…そして剣にも…」
「ならなくていい!夢を見続けることを恐れるな!」
それは、翼の背中を後押ししようとしていた父の本心。
「そうだ…翼の部屋、十年間そのままなんかじゃない…!」
将也と八紘が話していた頃、マリアは翼に案内されかつて彼女が使っていた部屋を訪れていた。
今と変わらず片付けができていなかったが、あの部屋には塵一つ落ちてすらいなかった。
「お前との思い出を無くさぬよう、そのままに保たれていたのがあの部屋だ!それは決して、娘を疎んだ父親のすることではない!」
「いい加減に気づけ、バカ娘!」
マリアの言葉で父の真意を知ることができた翼。その目には一筋の涙がこぼれる。
「まさかお父様は…私が夢をわずかでも追い続けられるよう風鳴の家より遠ざけて…?」
「ああ…ホント、二人は似た者同士だよ」
変身の解けた将也が翼の手を掴み、立たせる。
「不器用で気難しくて頑固で…でも誰よりも信じたい人や愛する家族を想う。紛れもなく八紘さんは翼を育て、愛していた父親だよ」
将也はギアデュアルβと共に白いガシャットを構える。
「お父様…私が夢を追いかけるのがお父様の望みなら…私は、もう一度夢を追いかけても良いのですか!?」
翼の言葉に八紘は無言で頷く。それが肯定だということにそこにいた全員が気づいた。
「ならば聞いてください…今の私達がたどり着いた歌を………」
「イグナイトモジュール、抜剣!!」
翼はダインスレイフを起動させ、イグナイトの力を解放。
するとそれに同調するかのように白いガシャットが変化する。
「このガシャット…!」
ガシャットのスイッチを押すと、将也の目が紅く輝き、黒いロングコートを着たもう一人の将也が現れる。
「行こう…俺!」
「ああ…翼の夢を叶えるためにも!」
《TADDLE FANTASY!》
本物の将也はギアデュアルβのダイヤルを回転。
《タドルレガシー!》
分身は白いガシャット『タドルレガシー』を起動。
「「術式レベル50!変身!」」
《デュアル・ガッシャット!》《ガッシャット!》
同時にガシャットをゲーマドライバーに装填し、レバーを開く。
《ガッチャーン!デュアルアーップ!》《ガッチャーン!レベルアーップ!》
変身が完了したとき、並び立っていたのは2人のブレイブ。
《辿る巡るRPG!タドルファンタジー!》
仮面ライダーブレイブ・ファンタジーゲーマーと
《辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!》
素体が通常のブレイブと異なる、白い聖騎士『仮面ライダートゥルーブレイブ・レガシーゲーマーレベル50』。
そしてその力に呼応するかのように翼もまた、ダインスレイフの闇を乗り越えたイグナイトモードを解放させた。
「「これより、ファラ・スユーフとバグヴァイザーの切除手術を開始する!」」
―――――――――――
(BGM Beyond the Blade(IGNITED arrangement))
「それがあなたの歌…味見させていただきますわ!」
強大な力を携えた翼は自身の刃でファラに攻撃。
空中に逃げたファラをブレイブとトゥルーブレイブが追いかけ、ガシャコンソードと専用の剣から炎の斬撃を飛ばした。
「ちょこまかと…!」
「いや…翼!」
ブレイブの肩を踏み台に高く跳んだ翼は、得意の技を放つ。
『蒼ノ一閃』
イグナイトによって強化された一撃を受け流すファラだったが、翼は続けざまに攻撃。
「俺達を…」
「忘れるな!」
《透明化!》
エナジーアイテムによって姿を消した2人のブレイブの攻撃はファラの腰に巻かれていたドライバーに狙いを定めており、ファラは紙一重で防ぐ。
『千ノ落涙』
翼が放った短刀の雨だが、ファラは余裕綽々といった態度で剣を振るい、斬撃を飛ばす。
「いくら出力を増したところで…その存在が剣である以上、私には毛ほどの傷も負わせられない」
ソードブレイカーの特性を持つファラにとって翼やブレイブ、トゥルーブレイブの存在は脅威には感じられなかった。
「否…剣にあらず!」
翼の支えとなったのは、父からの本心からの激励。
長きにわたって続いてきたわだかまりが解けたことで、翼はファラの力を打ち破る術を得ていた。
「行け、翼!!」
ブレイブの言葉に頷く翼は得意技の『逆羅刹』でファラの刃とぶつかり…
砕け散ったのはファラの刃だった。
「ありえない…哲学の牙が何故!?」
「貴様はこれを剣と呼ぶのか…?」
翼の両足に装備されていた剣が炎を巻き起こす。
「否!これは夢に向かって羽ばたく『翼』!」
「そうか…剣ではない。それがソードブレイカーを越える方法!」
自らを剣ではなく『夢へと羽ばたく翼』と認識することで、剣を打ち砕く哲学の牙を無力化したのだ。
「貴様の哲学に、翼は折れぬと心得よ!!!」
炎の鳥のように飛び立つ翼。
その姿を見て2人のブレイブもまた必殺技の準備に入る。
「「決めるぞ、翼!!」」
《ガッチョーン!キメワザ!》
《ガッシャット!キメワザ!》
ブレイブはドライバーのレバーを操作し、トゥルーブレイブはガシャットをキメワザスロットホルダーにセット。
空中で翼は両足の剣を合体させ、足と両手に炎の剣…否、翼を持ち高速回転。
《タドル・クリティカルスラッシュ!》
《タドル・クリティカルストライク!》
黒と白のオーラを纏った2人のブレイブも共に飛び上がり、空中でキックの体制に。
「「せやああああああ!!」」
『TADDLE・CRITICAL・SLASH!』
『TADDLE・CRITICAL・STRIKE!』
2人のキックが命中し、バグルドライバーが外れてファラの装甲が消滅。
「デヤアアアアアア!!!」
そこに翼の渾身の一撃が放たれ、ファラの胴体を切断した。
『羅刹零ノ型』
「アハハハハハ!ハハハハはハハハハ!」
切断されながらも狂ったように笑い声を上げるファラ。
その姿はまるで勝ち誇っているようにも見えた…
――――――――――
だが、この時…既に物語はクライマックスへと向かっていた。
場所は深淵の竜宮。クリスと切歌、調、スナイプと交戦するキャロルの前に現れたのは…
「久方ぶりの聖遺物!甘くとろけてクセになる~!!」
キャロルに対して放たれたクリスのミサイルを受け止める謎の人物。
彼はなんと、異形の左腕でミサイルを捕食した。
「嘘…だろ?」
この人物を、クリス達はよく知っている。
「嘘なものか。僕こそが真実の人~…」
「ドクター・ウェルうううううううう!!」
高らかに名乗りを上げたこの奇人にスナイプ達は一歩引いた…
そして、危険はもう一つ…
「ぐ…ああ…!」
どこかのスタジアムのような場所で、左腕を抑えて苦しむ千翼と彼を守るべく立ち上がるパラド。
「千翼君!お願い、しっかりして!」
未来が声をかけるも、千翼は出血している腕を抑えるのに必死で返事をする余裕がない。
「お前…!」
「悪いが…これで終わりにする」
パラドの前に立っていたのはメインカラーがマゼンタの仮面ライダー。
S.O.N.Gが与り知らぬところで、3人もまた危機に陥っていたのだった…
To Be Next GAME…?
次回、シンフォギアエグゼイドは!
「俺の目的は、お前の力を試すこと」
破壊者、仮面ライダーディケイド現る!?
「お前はいつまで経っても化物のままだ!」
ディケイドとの出会いが…千翼に変化をもたらすのか?
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
第35話 破壊者の名はDECADE