戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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お待たせしました、今回からついに第3章、GX後半に突入します!

仮面ライダージオウ、次回はウィザード突入ですがその次にどうやら『神』が関わるという噂があり、実に楽しみです。

感想、評価が作者の力になります!




第3章 奇跡を願ったENDING
第28話 VACATIONで輝いて


(強くなりたい…翻弄する運命にも、立ちはだかる驚異にも負けない力が欲しい…)

 

 

 

(私は、ずっと翼達の影にいた…ずっと、将也の強さに甘えていた…)

灼熱の太陽に照らされながら、マリアは自らの心と向き合う。

 

(求めた強さを手に入れるため…私は、ここに来た!)

決意を新たにしたマリアは堂々と空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…やや派手な水着姿にサングラスという謎の格好で。

 

「…何やってんの、マリア…?」

怪訝そうな顔で見る将也に、マリアは慌て始める。

 

「ま、将也!?いつからそこにいたの!?」

「いや、パラソルの準備とかしててずっと気づいてたけど…」

 

ちょうどサングラスを外し、青空に対してドヤ顔をしていたところまで見られてしまうマリアだった…

 

――――――――――

 

 

チフォージュ・シャトー。

 

千翼はキャロルの遺したダウルダブラを握り、玉座の前で未だに座り込んでいた。

 

「千翼。少し話があるんだけど」

彼に話しかけてきたのはガリィ。しかしいつものふてぶてしい態度ではなくどこか神妙な顔をしていた。

 

 

「…ガリィ?」

顔を上げた千翼の姿を見てガリィは戸惑う。

ロクに物を食べていないせいか以前と比べてだいぶやつれ、目の輝きはすっかり失われている。

 

 

「……千翼。アタシはこれからやらなきゃいけないことがある。だから今のうちに伝えたいことを言っておきたくてね」

ガリィは千翼に目線を合わせた。

「マスターは近いうちに必ず帰ってくるわよ。あんたを置いてマスターが一人で死ぬなんて、絶対にありえないって知ってるでしょ?」

「………」

その言葉に顔を上げる千翼。

 

 

「アタシはマスターに創られた人形。だからアタシの命は、マスターの悲願を叶えるために使われる。でもね………アタシはアンタと会えて、良かったと思ってるから」

「な、何言ってるのさ…?」

突然のガリィの言葉に困惑する千翼。

 

 

 

「だーかーらー!いつまでもウジウジへこたれてるとウザイのよ!」

ガリィの怒鳴り声に肩を震わせた千翼だが、その様子に思わずガリィは笑う。

 

「だからしっかりしなさい。この先、マスターの本当の望みを叶えてあげられるのは、千翼だけなんだから」

「ガリィ…」

その時のガリィの顔は人形とは思えないほどに穏やかで、優しかった。

 

「だから、これはアタシからの…最後のプレゼント」

そう言うとガリィは千翼と顔を近づけ…

 

唇を重ねた。

「ん!?」

何かを流された感触に千翼は戸惑うが、ガリィは顔を離して笑う。

 

「頑張りなさい、千翼。マスターの笑顔を守るために…」

ガリィは千翼から離れると、あらかじめ座標を固定していたテレポートジェムを取り出す。

 

 

「待って、ガリィ!」

「………サヨナラ、千翼」

その言葉とともにガリィはチフォージュ・シャトーから姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ごめんね、千翼」

誰にも届くことのなかったガリィの言葉。それが何を意味するのか、この時は誰もわからなかった…

 

――――――――――

 

 

数日前、本部内。

伊達メガネが半分ずり落ちた将也はマリア、切歌、調のギアを3人に返した。

「はい。3人のギアにリプログラミングのデータを転送したよ」

「おお!ついに私達のギアもパワーアップ完了デスか!」

3人はそれぞれのギアを首にかける。

 

「ついでにエルフナインの協力もあって多少のスペック向上と上位ガシャット…レベル0とかのガシャットに関するデータも入れておいたから」

 

元々ギアとの適合率が低いマリア達だが、それを少しでも補うために特殊能力を含むレベル0やデンジャラスゾンビなどの上位ガシャットのデータを試験的に組み込むことで短時間でも強い力を発揮できるように改造を施した。

 

だが今回最も喜ぶべきことは3人もイグナイトモジュールを使えるようになったことだろう。

 

 

「響達のお陰でイグナイト暴発の理由もわかったし、後は実践でモジュールを使えば自動的にリプログラミングが働いて、変異型ラヴリカウイルスを駆逐できるはずだ」

こうして響達はイグナイトモジュールの完全制御を、将也達はレベル99の力を手に入れてレベルアップを果たしたことになる。

 

 

「よし!新たな力の投入に伴い、ここらで一つ特訓だな!」

 

 

「「「「「「「「特訓…!?」」」」」」」」

 

―――――――――

 

そして現在、響達シンフォギア装者6人と将也、パラド。そして未来とエルフナインは海へと特訓という理由をつけて遊びに来ていた。

 

「でもまあ、これもある意味仕事なんだよね…」

司令の話によると元々筑波の異端技術研究機構に趣き、調査結果を受領するという任務があった。

それを利用して研究のデータを受け取るまでの間、研究所の近くに有るビーチで鍛錬に励むというのが目的となっているのだ。

 

そこで名乗りを上げたのが、弦十郎の一番弟子である響だった。

しかし響が夏のビーチで特訓だけをするはずがなく、いつの間にか海で遊ぶことがメインになっていた。

 

 

 

 

「暑い…日差しで殺菌とか冗談じゃねえぞ…」

夏の日差しにダウンしていたパラド。

元がバグスターウイルスである彼にとって暑さは危険なものであり、下手すれば人間より弱いのかもしれない。

 

「ちょっとパラド!いつまでその長いコート着てるつもりなの!?」

パラソルの下でダウンしていたパラドに未来が駆け寄る。

 

「もう、せっかくパラドに似合う水着選んだんだからキチンと着てよね!」

半ば無理やり連れて行かれたパラドを横目で見て、将也は水着にパーカーを着た状態で空を見上げながら砂浜に寝転がる。

 

 

 

 

(…あれが、マリア達のお母さんだった人が遺した物か…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分前に将也と朔也、慎二の3人は見つかったもの…マリア達の母親代わりだったナスターシャ教授が遺した黄色く光る球体…『フォトスフィア』を見つけた。

途中で抜ける形になったものの、将也はあの球体に表示されていた無数のラインが気になっていたのだ。

 

(司令達の話だと教授は未来のシンフォギアの力を使ってあの巨大な聖遺物…フロンティアを浮上させたと聞く。だが、あの球体に表示されていたのは恐らく地脈とか龍脈と呼ばれるものかも知れない)

地球の大地に眠る大きな力を使わなければ浮上できないほどの強力な聖遺物、フロンティア。かつてマリア達はその力を使い月の欠片の衝突を防ごうと行動していた。

 

 

(…そういえば、キャロルの目的は地球そのものを破壊することだった…)

すると将也のスマホに着信が入り、慌てて手に取る。

 

表示されていた名前は『慎二さん』だった。

「はい、もしもし?」

『調査データの受領、無事に完了しました。そちらの特訓は進んでいますか?』

「進んでいるというか…まあ、それなりにタフなメニューをこなしているかと…」

『?』

煮え切らない将也の言葉に疑問を持つ緒川。それもその筈…

 

 

―――――――――――

 

 

現在はマリア、エルフナインチーム対翼、クリスチームのビーチバレー対決になっていた。

 

「…どうしよう、翼さん、本気にしちゃってるよ…?」

苦笑いの未来に対して響が返す。

「と、とりあえず肩の力抜くためのレクリエーションなんだけど…」

本気の翼達を見て脱力する将也。

「マジでどうしてこうなったのさ…」

 

まあ、負けず嫌いな翼達が遊びとは言え勝負するのなら、この結果は当然かもしれない。

そうこうしている間にエルフナインがボールを高く上げ、サーブをしようとするが…

 

 

「あ、あれ?」

ジャンプしてサーブしようとするも失敗し、コケてしまう。

「何でだろう?強いサーブを打つための知識はあるんですけど…」

 

ボールを取ったマリアが優しく語る。

「無理に背伸びをして誰かの真似をしなくても大丈夫よ」

 

マリアはエルフナインに対し、手本を見せ始めた。

失敗に落ち込むエルフナインだが、マリアは目線を近づける。

 

「弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つことだから」

マリアの言葉を将也は無意識に復唱していた。

「大事なのは、自分らしく…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ビーチバレー以外にも様々なビーチスポーツを終えた一同はパラソルの下などで倒れ込んでいた。

「気がついたら特訓になってた…」

パラソルの影に避難する調と、疲れ果てた顔の切歌。

 

「でも、晴れてよかったですね」

青空を楽しそうに見上げるエルフナイン。

「昨日、台風が通り過ぎたおかげだよ」

「お陰で俺達も、こうしてそこそこ平和を満喫できるわけか」

 

 

すると響が何かを企んだ顔をしてきた。

「ところでみんな、お腹が空きません?」

突然の響の問いに翼が答える。

 

「しかしここは政府保有のビーチ故に…」

「一般の海水浴客がいないと、必然的に売店の類も見当たらないけど…」

 

 

 

 

 

 

「なら、僕とパラドが近くのコンビニまで買い出しに行ってくるよ」

そう将也が言った途端、女子メンバー全員の目が鋭くなり…

 

『コンビニ買い出しジャンケンポン!!』

突然始まったジャンケンに将也とパラドは戸惑いを隠せなかった…

 

 

――――――――――

 

近所のコンビニで食べ物や飲み物を購入したのは将也、翼、切歌、調の4人。

人数が多かったので今回パラドはビーチに残り、4人は買い出しに向かったのだ。

 

「切ちゃん自分の好きなものばっかり…」

調の言葉に切歌は自慢げに答える。

「こういうものを役得と呼ぶのデース!」

大きめのペットボトルの入った袋の他、男メンバーとマリアが飲むであろう酒類の入った袋を持った将也はその微笑ましい光景に少し笑っていた。

 

 

そんな中、将也は近くで話している少年達の言葉が耳に入る。

「あれ、昨日の台風かな?」

「お社も壊れてるし、何があったんだろうな…?」

 

その言葉が気になった将也達が見たものは、鳥居が崩れ所々が凍りついた神社だった。

 

「凍りついてる…?だけど、夏場にこんな現象が起きるはずは…」

 

 

すると、突然パラドからテレパシーが聞こえた。

 

――――――――――

 

 

数分前、海に残った一同の前に現れたのはガリィだった。

「夏の思い出作りは十分かしら?」

突然の敵に対しクリスとパラドが前に立ち、クリスはイチイバルを握りパラドはゲーマドライバーを装着。

 

「Killiter Ichaival tron…」

《デュアル・ガッシャット!》

クリスの着ていた水着が分解され、シンフォギアのアンダースーツが代わりに身を包む。

 

《The・strongest・fist!》《What,s・The・Next・Stage?》

ガシャットギアデュアルに内蔵されたゲームの待機音声が交互に鳴り、パラドは変身ポーズをとった。

 

 

「マックス大変身!」

《ガッチャーン!マザルアーップ!》

ゲートをくぐり、パラドは仮面ライダーパラドクスへと変身する。

《赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!》

 

それと同時にクリスと響もギアの展開を完了させ、クリスとパラドクスは先手必勝とばかりにクロスボウとパラブレイガンでガリィを攻撃する。

 

しかし攻撃したのはガリィが作り出した水の分身体だったために攻撃は空振りに終わってしまう。

 

「!?」

すると響とクリスの背後からガリィが現れ、2人を一蹴する。

 

「響!クリス!」

パラドクスはすぐさまブレイガンをアックスモードに変形させてガリィに攻撃し、マリアに叫ぶ。

「マリア!お前は先にエルフナインと未来を頼む!」

「ええ!」

マリア達が走り出し、体勢を立て直した響とクリスはパラドクスの横に立つ。

 

 

「あなた、キャロルちゃんからの命令もなく動いてるの!?それとも、千翼君からの命令!?」

千翼の名前が出たとたん、一瞬だが嫌な顔をしたガリィだがすぐさま人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 

「さあねぇ?」

懐から取り出したテレポートジェムを放り投げると、無数のアルカ・ノイズが周囲を取り囲む。

 

 

「はあっ!せやあっ!」

響とパラドクスが近接攻撃でアルカ・ノイズを打ち砕き、クリスはガトリングを展開して次々とアルカ・ノイズを粉砕していく。

その戦いの中でパラドクスは将也にテレパシーを送っていた。

 

(将也!今こっちに例の青人形が!)

 

――――――――――

 

「ああ、わかった!こっちもすぐに向かう!」

パラドからの連絡に応えた将也。

 

翼達もクリスが撃ち落としたアルカ・ノイズを見て大体の状況はわかったらしい。

切歌と調が急いで走り出し、翼と将也は近くにいた赤い服の男性に話しかける。

 

 

「すいません!この場は危険ですから、子供たちを連れて安全な場所まで避難してください!」

 

しかし声をかけられた男は間髪入れずに叫んだ。

「冗談じゃない!どうして俺がそんなことを!?」

そう叫ぶやいなや、男性は近くの子供たちを置いて一目散に逃げ出してしまう。

 

「マジかよ…!」

将也は男性の言い分に困惑するが、翼が動き出した。

「将也は先に現場に行ってくれ!私は子供たちを避難させてから向かう!」

「そうか…翼も気をつけて!」

翼は頷くと子供たちに声をかける。

 

 

「大丈夫だ!まだ離れてるし、慌てなければ問題はない!」

 

――――――――――

 

 

戦う中で響は違和感を感じた。

そう。アルカ・ノイズと戦っているうちに呼び出していた張本人のガリィがいなくなっていた。

 

 

「ひょっとして、マリアさん達の方に!」

「っ!響、クリス!伏せろ!」

《デュアル・ガッシャット!》

ガリィの狙いに気づいたパラドクスはブレイガンにギアデュアルを装填、必殺技を発動させた。

 

《パーフェクト!クリティカルフィニッシュ!》

『PERFECT・CRITICAL・FINISH!』

真上に銃口を向けて引き金を引くと、拡散されたエネルギー弾がアルカ・ノイズの殆どを蹴散らす。

 

「響!俺はマリア達の方に向かう!」

「パラド君!マリアさん達をお願い!」

パラドクスは頷くと近くにあった高速化のアイテムを使用してマリア達の走った方向へと向かった。

 

 

 

―――――――――――

 

未来とエルフナインを連れたマリア達だが、目の前にガリィが現れた。

「見つけたよ?パワーアップおいてけぼりのハズレ装者」

 

未来とエルフナインの前に立つマリアだが、ガリィは左手に氷の剣を作り出し…

 

 

 

 

「Seilien coffin airget-lamh tron…」

次の瞬間、ガリィの右頬にマリア渾身の左ストレートが炸裂した。

「っ…!一足遅かったか…」

ガリィは憎々しげに呟くと、マリアの体は白銀のシンフォギア…アガートラームの装甲に包まれる。

 

 

「こっちもそろそろ遊びは終わらせたいから…今日こそぶっ潰してあげるわよ!」

ガリィは再びテレポートジェムを砕き、無数のアルカ・ノイズを出現させる。

 

 

(BGM 白銀・アガートラーム)

戦いの歌を口ずさみながらマリアは無数の短剣を出現させ、一斉に放つ。

 

 

 

『INFINITE✝CRIME』

 

 

放たれた短剣によってアルカ・ノイズは次々と破壊され、マリアは逆手に持った短剣で流れるようにアルカ・ノイズを切り裂いていく。

 

元々マリア自信のスペックが高いこともあってか、更なる強化改造を施されたアガートラームの前にもはやアルカ・ノイズは脅威ではなくなっていた。

 

 

 

「…これ、俺が来た意味あったか?」

「あ、パラド」

全力で走ってきたがマリアが絶賛無双中なので困惑するパラドクスに気づく未来。

 

(特訓用のLINKERの効果はまだ続いてるし…今なら行ける!)

 

 

――――――――――

 

 

「オートスコアラーの強襲だと!?」

一方本部ではガリィの襲撃の報告が届いていた。

 

 

『はい、装者達は現在3つに分断され、ガリィとアルカ・ノイズを相手にマリアさんとパラドが対抗しています』

緒川の報告と同時に将也から通信が入る。

 

『宝条です!切歌達は道中のアルカ・ノイズを撃破して響達に合流したので、僕はマリアとパラドに合流します!』

将也達に対抗するためガリィがどんな手を使ってくるかはわからない。

 

バグスターやプロトガシャットを所持している可能性もあり、状況次第ではぶっつけ本番でイグナイトモジュールをマリアが使うしかない場面になるかもしれなかった。

 

 

「イグナイトは諸刃の剣…もしもの時は宝条君、君が止めるんだ…」

『了解です!』

将也は通信を切るとゲーマドライバーを装着し、走りながらガシャットを

起動。

 

《マイティアクション!エーックス!》《デンジャラスゾンビ!》

「グレードX‐0!変身!」

 

 

―――――――――――

 

パラドクスも気を取り直して参戦し、あっさりと倒されていくアルカ・ノイズ達。

 

「あ~、アタシ負けちゃうかも~!」

呑気なことを言っているガリィにマリアが短剣を振り抜くが…

 

《タドルクエスト!》

突然聞こえた電子音声とともにガリィの氷の刃がより鋭くなり、マリアの短剣をいなした。

 

「あいつ、プロトガシャットを!」

「大せいか~い!」

ガリィの背後にモノクロのゲーム画面が表示され、ガリィの左手に創られた氷の剣がより鋭利になっていく。

 

「やはりプロトガシャットの力を使って…だったら!」

マリアは胸のマイクユニットに手を伸ばし、ガリィは何かを企むかのような表情を浮かべた。

 

「聞かせてもらうわ…♪」

その様子に一抹の不安を覚えるパラドクスだが、マリアは立ち上がるとユニットを掴む。

 

 

「この力で決めてみせる…」

 

 

 

「イグナイトモジュール!抜剣!」

《Dainsleif!》

やや無機質な電子音声が鳴り、ユニットはマリアの手を離れて自動的に変形、紅く光るトゲがマリアの胸に突き刺さった。

 

 

「ううっ!…ぐう…ああああ!!」

ダインスレイフによって増幅される破壊衝動に苛まれそうになるマリアだが、必死に衝動を押さえ込もうとする。

 

 

 

 

 

 

「…弱い自分を…殺す…!」

 

 

しかしマリアの思いに反して黒い破壊衝動は強くなり続け…

 

 

 

「あああああああああ!!!」

マリアはイグナイトモジュールの制御に失敗、かつての響同様真っ黒な獣のようになってしまう。

 

 

「マリア!」

パラドクスは見境なしに暴れまわるマリアを止めようとするが、手加減なしのマリアはパラドクスを振り払ってしまう。

 

「ちっ!獣に堕ちやがった!」

ガリィは冷たい目でマリアを見るが、マリアはすでにガリィではなくパラドクスに狙いを定めていた。

 

「マリア!目を覚ませ!」

パラドクスはマリアに怪我をさせまいと攻撃を受け流すが、向こうは手加減なしで暴れてくる。

すると…

 

 

 

 

 

《マイティアクショーン!エーックス!》

《アガッチャ!デンジャラスゾンビ!》

「ヌウエェアア!」

マリアを羽交い締めにしたのは、将也が変身したゲンムだった。

 

「将也!」

「悪い、遅くなった!」

ゲンムの拘束から無理やり離れるマリアだが未だに獣の状態を維持していた。

 

「ふん。やけっぱちで強くなれるなんてのぼせ上がるな」

パラドクスをしつこく追い回すマリアを見て心底落胆したような表情のガリィ。

 

「あーあ、こんなんじゃアタシが来た意味ないし。あとは任せるわね~」

そう言い残すとガリィはテレポートジェムを砕き姿を消した。

 

「っ…まずはマリアを元に戻さないとな…」

すると合流してきた響とクリスが走ってくる。

「戻すって…どうやって?」

「恐らく、このゲンムなら可能だが…」

そう言うとゲンムはデンジャラスゾンビのガシャットを引き抜いてサブガシャホルダーにしまう。

 

「っておい!何でレベル下げてんだよ!?」

あえて自分からレベルを下げたことに驚くクリスだが、レベル0に戻ったゲンムが説明する。

 

「デンジャラスゾンビの影響はダインスレイフに近い特性を持ってる…下手すればさらに暴走が酷くなりかねないから…」

「あ、そういえば前に使った時も…」

トーテマゲンムの一件を思い出した響はゲンムがレベルを下げた理由に納得する。

 

「あとは俺がやる。響達は万一に備えて未来達を守ってくれ」

響達が頷くとゲンムはバグヴァイザーツヴァイを右腕に装着し、ビームガンでマリアを牽制。

 

「ウウウ…ガアアアアアア!」

マリアが飛びかかるがゲンムはマリアの腕を掴み足払いをして膝を付かせる。

 

 

「この距離なら、俺の独壇場だろ!」

するとマリアの体を包んでいた赤黒い光が僅かだが薄れていく。

 

「そうか!ウイルスの変異した今の将也なら、レベル0の力はシンフォギアにも干渉できる!」

本来ゲンムのレベル0はバグスターウイルス、もしくはその力を持つ敵にのみ有効。

だが将也は二度に渡る響達が繰り広げてきた戦いによりウイルスがフォニックゲインの影響で変異している。

シンフォギアに近い性能を持つ今のライダーシステムならば干渉できると判断してゲンムはマリアに接触したのだ。

 

 

 

「マリア…こないだ言ったこと、もう忘れたのかよ…」

マリアは唸り声を上げてゲンムを振り払おうとするが、ゲンムは決して離そうとしない。

 

 

「強くなりたいのなら、もっと周りを見ろよ!また何にも言わずに一人で考えて…」

 

 

力が薄れていく中、マリアはついにゲンムの拘束を破る。

 

「グウウウ…アアアアアアア!」

 

《ガッシャット!キメワザ!》

ゲンムはマリアを見据え、キメワザスロットホルダーにガシャットを装填した。

《マイティ!クリティカルストライク!》

 

 

 

「小難しく考えてんじゃ…ねえええええ!」

紫のオーラを纏ったゲンムの拳と、黒いオーラを纏ったマリアの拳が双方の胸部装甲に直撃し…

 

「う………っ!」

眩い光とともにギアが解除されるマリアと…

 

 

 

《ゲーム・オーバー…》

ライダーゲージが尽きてゲンムは消滅した。

 

――――――――――

 

ギアが解除され、マリアは仰向けに倒れそうになるなかさっきまでのことを思い出していた。

 

 

 

(勝てなかった…)

強くなったと思った。これまでとは違い、他の装者の援軍がなくても戦えると思った。

 

しかしガリィには良いようにあしらわれ、挙句の果てにはイグナイトを制御できず将也とパラドに襲いかかってしまった。

 

 

 

(私は……何に負けたの…?)

薄れていく意識の中、マリアは誰かの腕の中にいることだけはかろうじてわかった。

 

――――――――――

 

「ふっ!」

マリアが倒れそうになった瞬間、彼女の背後に紫の土管が出現し将也が出てくる。

 

 

「将也君!マリアさん!」

「おい、大丈夫なのか!?」

響とクリスが声をかけてくる。

 

 

「残りライフ…95。僕の怪我は無いけど、マリアはだいぶ体力を消耗している。一度ビーチの近くに借りていた宿舎に戻ろう」

気絶したマリアを背負いながら将也はガリィが襲撃してきた理由を考える。

 

 

(…あの時、確かにキャロルは死んだ。なのに何故、ガリィは襲撃してきた?)

将也の仮説ではガリィ達に指示を出せる存在は自分の知る限り2人しかいない。

 

 

(一人目は主であるキャロル。そしてもう一人は…)

 

 

脳裏に浮かんだのは、青い仮面ライダー(アマゾンネオ)

 

「…まだ、事件は終わってないのか…?」

 

 

To Be Next GAME…

 

 




次回、シンフォギアエグゼイドは!

「強くなりたい…もっと、もっと…!」
力を求める白銀の戦乙女は…

「教えてくれたのは、マリアさんです」
「本当は気づいてるはずだよ。自分の求めた答えを」
本当の強さを胸に…

「これが…アガートラームの力だ!」
「見せてやるよ、俺達2人の力を!」
最強コンビで立ち上がる!

『シルバリオアーム・アガートラーム!』
「グレードスペシャル…変身!」
誕生、白銀のゲンム!


第29話 本当のHERO!












「千翼。今日を持って貴様を、シャトーから追放する」


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