戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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お待たせしました、クリス編も後半に突入します!

今日は奏さんの誕生日ですが、こちらでは今のところ出番がないため、誕生日特別編は行いません…

なお、今回は何人かの過去設定がオリジナルになりますのでご了承ください。

感想、評価が作者の力となります!

OP EXCITE
ED Next Destination


第23話 Linkする想い

鴻野俊明、メタルアヴェンジャーといった強敵を退けたもののガリィと千翼によって全ては振り出しに戻ってしまう。

 

「…宝条とクリス君の様子は?」

前回の戦いで将也はライフを2つ消費してしまい、現在のライフは96。

問題はないと言っていたのだが響達によって検査入院となった。

そしてクリスもまた、俊明による怪我を治療するために入院しているのだが思った以上に傷も軽く翌日には退院できると判断された。

 

「クリスさんの怪我は大したことなく、明日には退院できるそうです。将也君も、検査入院ですので…」

緒川が報告をし、司令室から去る。

 

 

「…ところで、あのスナイプ擬きに変身してた奴の身元は分かったの?」

マリアが弦十郎に尋ねると、弦十郎は手元のキーボードを操作してモニターに俊明の写真と経歴を表示させる。

 

 

 

「あの男の名前は鴻野俊明。数年前世間を騒がせた『鴻野一族』の一人だ」

その名前を聞いた瞬間、翼や未来、響だけでなくあおいと朔也までもがギョッとする。

 

 

「鴻野…一族?それって何デスか?」

よくわからないのか、切歌が聞く。

 

「鴻野一族。元々は輸入品を取り扱う大企業の重役だったんだが、元従業員の一人が彼らのとんでもない不祥事の証拠を世間に晒したことで日本じゃ大ニュースになったんだ」

 

「その不祥事って…何ですか?」

調が恐る恐る聞くが、答えたのはあおいだった。

 

 

 

「………所謂、人身売買って奴ね。鴻野一族は当主である『鴻野呉流』の意向で紛争地域で身寄りを失い、奴隷として売られていた女性を買ってあの屋敷に住まわせていたらしいわ」

 

 

人間をまるで物のように扱う、余りにも非人道的な行為を行っていたことに怒りを感じる一同。

 

「…翼には教えていなかったが、ある一件で俺達がまだ二課だった頃、奏君と共にあの屋敷を調査したことがある」

「司令と、奏達で…?ですが、私達はノイズ絡みの案件でなければ行動できなかったはずでは…」

翼が疑問に思ったのは、なぜ司令官である弦十郎が直々に、しかもノイズと関係のない事件に天羽奏を連れてまで向かったのかということ。

 

 

 

 

 

 

 

「その理由は………一晩であの屋敷はノイズによって襲撃、一家が全滅したからだ」

「な…!?」

装者達は弦十郎の言葉に驚く。

 

 

「じゃあ、ニュースで言ってた、一族の心中って報道は…」

「余りにも都合よくノイズが出現したからな。情報統制を行わざるを得なかったんだ」

 

人身売買を行っていた一族の家に突如として出現したノイズ。

寧ろ何らかの外的要因を疑わない方がおかしかった。

 

 

「あの頃翼は別の任務が入っていたからな。人員も少なかったし、奏君にしか頼めなかった」

「それで…何を見たのですか?」

 

翼の問いに弦十郎は少し悩みながらも、その時に見たものを語る。

 

 

 

 

 

 

 

「…俺達は屋敷の奥まで調査したが、奏君が偶然にも隠し扉を発見してな…」

今でも弦十郎はあの地下に転がっていたものを鮮明に思い出せる。

 

 

 

 

「…地下には、少なくとも百は下らない数の白骨死体が転がっていた。詳しく調べたところ、全て女性や子供の死体だったらしい」

 

その言葉に目眩がしたのか、未来がわずかにふらつく。

 

 

「大丈夫か、未来…?」

パラドがすぐに未来を支えると、未来は頷く。

 

「一体、雪音はあの屋敷で何があったのか…」

「さあな…少なくとも、簡単に聞けるようなことではない。それだけは確かだ」

 

 

――――――――――

 

 

病室のベッドの上で、クリスは外から見える海を眺めていた。

すると、扉がノックされる。

 

「あ…どうぞ」

返事をしたクリスだが、入室した人物が翼だと知るといつもの口調に戻る。

 

「何だ、先輩か…」

「その様子だと、思ったよりも大丈夫そうだな」

翼はお見舞いに持ってきたリンゴを取り出し、ナイフで革を剥こうとするが…

 

 

「痛っ!?」

剥き始めようとした途端、指を軽く切ってしまった。

 

「おいおい、戦いと歌以外不器用にも程があるだろ…」

想像以上に皮剥きが下手だったため、結局クリスが全部剥くが…

 

 

 

 

 

 

「…雪音。私はお前や立花と出会えた事を、心から嬉しく感じている」

突然の翼の言葉にクリスの手が止まる。

 

 

「もし皆と出会うことがなければ、私は何も知らないまま戦い続けることしかできなかった。だが、今は違う」

 

「共に背を預けて戦える同士がいる。あの頃の私では理解できなかったであろう想いを、私は知ることができた」

 

 

 

「…何が言いたいんだよ」

 

「……あの屋敷で何があったのか、私達は何もわからない。だがもし雪音が誰かを信じて動くつもりなら、私達はいつでも雪音を受け入れるつもりだ」

翼は椅子から立ち上がる。

 

 

「それともう一つ。『あいつ』なら、何があっても雪音への想いは変わらない。それだけは忘れないでくれ」

去り際に翼が口にした『あいつ』。それが誰なのか、クリスにはわかっていた。

 

 

「………わかってるよ。あいつ…将也なら絶対に変わらないって…」

響達だけでなく自分のことも好きだとはっきり言ってくれた将也なら、クリスの過去を知っても受け入れてくれると信じている。

 

「でも………やっぱり怖い…!」

既に俊明の口からクリスの過去の一端を知った将也。

もし次に会った時、彼から自らの汚された過去が原因で軽蔑されたらと思うと、会いに行く勇気が出なかった。

 

 

「………だからって、このままじゃ…」

 

手をギュッと握ったクリスは、ベッドから降りるとハンガーに掛けてあったリディアンの制服…初めて掴んだ自分の居場所を思い出させてくれる服に袖を通した。

 

 

―――――――――――

 

クリスが将也の入院している部屋へ向かうと、丁度扉が開いてパラドが出てきた。

 

 

「あれ?クリス…将也に話があるのか?」

「え?あ、ああ…」

少しオドオドしていたクリスを見て大体のことを察したパラドは、親指で後ろの扉を指差す。

 

「将也ならそこにいる。暇してるだろうから、あいつのこと、頼むわ」

「わ、わかった…」

 

パラドが去っていき、クリスは深呼吸してから扉をノックする。

 

 

「どうぞ」

向こうから声がしたので、クリスは扉を開けて入る。

 

部屋にはベッドで横になっていた将也がいたが、服装は入院着ではなくいつものTシャツになっていた。

 

「…思ったより元気そうだな」

「まあ、ライフこそ削ったけど、外傷はないから…」

 

 

来客用の椅子に座るクリスは、こうして将也と一緒にいることで自分の想いを自覚した。

 

 

自分の秘密を知られたくなかったこと。俊明に痛めつけられた時に将也に助けられ安堵したこと。怒りに任せて暴れる将也の姿を見て助けたいと心の底から感じたこと。

 

 

 

自分の本当の気持ちを理解したクリスは、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

 

「………聞いてほしい…アタシの過去を…」

 

 

 

 

――――――――――

 

「将也は、アタシの過去についてどれくらい知ってる?」

ベッドの横に座るクリスが聞いてくる。

 

「…前に司令から聞いたのは、クリスの両親のことと、3人でバルベルデ共和国に行ったこと。そしてクリスが両親を殺されてゲリラの捕虜になったこと…」

 

 

その後の経緯はよく知らないが、クリスはルナアタックの主犯であるフィーネと手を組んで響達と戦い、後にフィーネに捨てられて響達と和解。

二課、及びS.O.N.Gに登録されたシンフォギア装者として活動を続けている。

 

 

 

「…言わなきゃいけないのは、アタシがどうやってバルベルデから日本に帰ってきたかって話だな」

 

それが、将也にとって疑問だったのだ。

幼いクリスがどうやってバルベルデから海を越えて故郷の日本に戻ってこれたのか。

 

 

 

「パパとママを失ったアタシは、現地のゲリラに捕まってな。毎日のように殴られたし蹴られた。正直、あの時の傷がまだ痛む時もある…」

クリスは右腕を左手でギュッと握る。

 

 

「毎日辛かったし、いっそ自殺しようかと思ったけど……ある日、一緒に支えあおうって約束を交わした相手がいたんだ」

 

「そいつがアタシの友達だった…ミーナ」

 

 

―――――――――――

 

 

クリスが拉致されてから3ヶ月ほど経過した頃、地元の少女が一人連れてこられた。

自分とさほど変わらない年齢だった彼女…ミーナとクリスはいつしか打ち解け合い、片言ながらもクリスはミーナとコミュニケーションを重ね、互いに支えあって生きていた。

 

 

そんなある日、クリスとミーナは目隠しをされて何処かへ連れて行かれた。

 

「ねえ、クリス…私達、どうなるのかな?」

「わかんない…けど、ミーナと一緒なら…」

それから何時間が過ぎたのか、2人は目隠しを外されると…

 

 

 

 

「凄い…綺麗な家…」

山の中にそびえ立つ豪邸が目の前にあった。

呆然とするクリスとミーナのそばに初老の男が話しかけてくる。

 

 

「はじめましてだね。私は、鴻野呉流。この屋敷の主だ」

呉流と名乗った男は人の良さそうな笑顔でクリス達に挨拶をする。

 

「えっと…雪音、クリスです…」

「ミーナって言います…」

オドオドしながらも挨拶をするクリスとミーナに対し、呉流は後ろにいた少年を紹介する。

 

「この子は私の一人息子の俊明だ。君達と歳は近いから、仲良くするんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、あいつとはその時から…」

「ああ。元々アタシ達はあの家で俊明の遊び相手として連れてこられたらしい」

だが、ゲリラの下で荒んだ暮らしをしていたクリス達にとってそこはまるで天国のようだった。

 

「あの家で過ごすようになってから、アタシ達は毎日ちゃんとしたご飯も食べることができたし、綺麗な服だって着ることができた」

苦痛に満ちた日々を過ごしてきたクリス達にとって、屋敷での生活は幸せがいっぱいだったという。

 

 

「だからかもな…アタシ達に対して優しくしてくれた俊明は………アタシの初恋の相手だった」

自分達を助けてくれたとはいえ、呉流達大人は未だにクリス達2人にとって警戒する相手だった。

 

長い間捕虜としての生活の影響でクリス達は大人を信じることができなかったのだ。

だが、自分達に手を差し伸べてきた俊明は歳が近いこともあり、2人が唯一心を許した存在だった。

 

幼いクリスからすれば、絶望的な世界から助け出してくれた少年。

しかし、彼女の淡い恋心はこの後残酷な結末を迎えることとなる。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「アタシとミーナがあの屋敷に住んで2ヶ月くらい経って…あの夜、アタシは隣で寝てたはずのミーナがいないことに気がついたんだ」

 

不思議に思ったクリスは、そっと部屋から抜け出してミーナを探す。

 

 

 

真夜中の屋敷に怯えながらも親友を探すクリスだが、俊明の部屋から誰かの声が聞こえて、そっと様子を見た。

そこで見たものは…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁっ!いやあっ!」

「うるさいな…少し黙ってろ!」

衣服を脱がされ、押し倒されているミーナと今まで見たことのない怖い顔をした俊明の姿。

 

 

「嫌っ!助けて、クリス!」

一糸纏わぬ状態で親友に助けを求めるミーナだが、途中で助けを求めることができなくなる。

 

 

「うるさいんだよ!お前みたいな奴隷女、僕以外に世話してやるような奴はいないんだ!」

顔面を殴られ、悲鳴を上げるミーナ。

 

何度も暴行を続ける俊明はミーナを嘲笑う。

 

 

「父さんが買ってこなければ、今頃はどっかのオッサンの上で腰振るだけの人生だったくせに!ご主人様に逆らうな!」

 

 

嫌だと叫び続けるミーナを、俊明は何度も殴り続ける。

そして…

 

 

 

 

 

ゴンッ!!

俊明の拳の皮が捲れる頃には、ミーナの顔は見るも無残な姿となり、彼女は事切れていた。

 

「…あれ?壊れちゃった?」

ミーナを殺したというのに、俊明は『壊れた』と表現している。

それが、彼の今まで隠していた歪んだ性格をはっきりと表していた。

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「み~つけた。いつから君は覗きなんてするようになったんだい?」

気が付くと、クリスの前に俊明が立っていた。

しかしその目は今までとは違い、優しげな表情でも隠しきれないほどの狂気がにじみ出ていた。

 

 

「ひっ!ご、ごめんなさい!」

必死に謝るクリスだが、俊明はそれを拒否。

 

「ダメだよ。悪い子にはお仕置きだ」

無理矢理ベッドまで連れて行かれ、クリスは衣服を全て破かれる。

 

 

 

 

「クリス…君は今日から、僕の奴隷だ」

 

 

 

 

 

 

無残な形で純潔を散らされ、クリスの心には大きな傷が残った。

騒ぎ立てたらミーナのように殴ると脅迫され、泣きながらも必死に口を押さえるクリスには、早く終わってほしいと願うことしかできなかったのだ…

 

 

 

――――――――――

 

 

全てを話したクリスは、途中で耐えられなかったのか僅かながら涙が流れていた。

 

 

「………その後、突然屋敷にノイズが現れた。俊明が寝ていた隙にアタシはベッドの下に隠れたんだけど、気がついたらアタシはあいつに……フィーネに助けられてた」

 

 

 

 

突然現れたノイズに震えていたクリス。

それからどれほどの時間が経ったのか、ベッドの下を覗き込む人物がいた。

 

 

「あら…ちゃんと生きてたのね」

ゆっくりと目を開けたクリスの目に映ったのは、どこかくすんだ金髪の女性。

 

 

後にルナアタック事件を引き起こした古代文明の巫女、フィーネだった。

行く場所を失ったクリスは、何も考えることができずフィーネに連れて行かれることとなる。

 

その後、クリスはフィーネが持っていたイチイバルの装者となり、彼女に言われるがままノイズを自在に操る完全聖遺物『ソロモンの杖』を起動させ、フィーネの野望の手駒となった。

 

――――――――――

 

 

「…後は、将也も知っての通りだ。フィーネから切り捨てられたアタシは今、S.O.N.Gのメンバーとして活動している…」

クリスの話を、将也は横でずっと聞いていた。

 

 

 

「一つだけ良かったと思えるのは、おっさん達の存在かな」

初恋の相手によって無理矢理純潔を散らされたクリスだが、弦十郎や緒川、朔也といった一回り歳の離れた男性陣と接したことでクリスはそこまで男性に対して恐怖心を持つことはなかった。

 

 

特に、フィーネに捨てられたクリスにとって一時的とは言え心の拠り所になった弦十郎は、彼女にとって父親がわりの存在になっていたのだ。

 

 

「クリス…」

 

「でも、アタシって馬鹿だよな!何だってあんな奴に惚れたりしたんだろ……」

ワザと明るく振舞うように話すクリス。

 

 

「あんな男の性格すら見抜けないで、助けてくれたからって好きになるとかホント、チョロすぎるよ…だからあっさり騙されちまうんだろうな…」

だが、口調とは裏腹に俯いていくクリスを見て、将也は拳を強く握る。

 

 

「騙されやすくてチョロくて…俊明の奴だけじゃなくてフィーネやあの変態博士にもあっさり利用されて、挙句の果てにはミーナを見捨てて、ホント…アタシって救いようがない馬鹿だよ」

 

 

クリスの目からこぼれ落ちた涙。

 

 

 

 

すると次の瞬間、自分より大きく、そして暖かい感触がクリスを包む。

視界の端に黒い髪が見え、クリスは自分が将也に抱きしめられていることに気がついた。

 

 

 

 

「え……将也…?」

「違うよ、クリス…救いようがないなんて、絶対に違う」

強く抱きしめたまま、将也は言葉を紡ぐ。

 

 

「少なくとも、あの時のクリスにとってあいつは大事な人だったんだろ?俊明の奴やフィーネを信じたのだって、クリスは信じたかった相手だったから信じたんじゃないの?」

 

 

助けてくれた相手を疑うのではなく信じる。それはクリスが持つ長所でもあった。

 

「だったらそれでいいんだよ!誰かを信じようとする、それがクリスの持つ優しさだろ!?」

 

 

 

「僕がここにいるのも、クリスがあの日僕を信じてくれたからじゃないか!仲間だって受け入れてくれたから、ここが僕の居場所だってはっきり言えるようになったんだ!」

 

 

自身の正体が知られたあの日、S.O.N.Gに居場所がないと思った将也はバグスターと戦い、死のうとした。

だが、そんな自分を救ってくれたのがシンフォギア装者の6人。

なぜ助けたのか聞いた将也にクリスはハッキリと言ったのだ。

 

 

 

『そんなの、お前が仲間だからに決まってんだろ!』

 

 

バグスターだと知ってもなお、クリスは仲間だと言ってくれた。

 

「あの日、確かに僕の心は救われたんだ…だから、救いようがないなんて言うな!」

 

 

 

 

「約束する…僕は、クリスが心から笑顔でいられるようにする…絶対に」

どこまでも自分の存在を肯定してくれる将也の言葉に、クリスの涙は止まらなかった。

 

 

「ぐすっ………どうしてだよぉ…どうしてお前は、そこまでアタシを…」

 

 

「好きだから。それ以外に理由なんてないよ」

クリスのことが好きだから。それは将也にとって十分な理由。

 

 

「でも…アタシは最低な女だ…友達を見捨てて、あんな奴に汚されて…心も体ももう汚れてるよ…」

過去のトラウマがハッキリと蘇り、クリスは自分で自分の傷口を抉る。

 

「確かに逃げたのかもしれない…でも、クリスは大勢の人たちの命を、明日を救ってきたんだ…僕はそんなクリスが最低だなんて思ってないし、一人の綺麗な女の子だって知ってる」

 

困っている人を放っておかず、誰かに手を差し伸べることができるクリス。

大勢の人達を守るために戦うクリスの姿は、将也から見て十分美しかった。

 

 

「だけど、こんな乱暴な性格だし…口も悪いし、礼儀とかもなってないし…」

「知ってる。でも、それも含めて今のクリスでしょ?強気の口調とか、僕からしたらいつも元気をもらってるから好きなんだけど」

 

優しく笑う将也に戸惑うクリスだが、将也はクリスの涙をそっと拭った。

 

 

 

 

「大丈夫。これ以上、クリスだけに悲しみも苦しみも背負わせたりしない。辛い時は僕が絶対そばにいる」

「何があっても僕はクリスが笑顔でいられるようにする。だから今は…思いっきり泣いていいんだ」

 

 

 

 

「う………あああああああ!!」

優しく頭を撫でられ、クリスは今まで心の奥底に抑えていた感情が溢れてきた。

 

 

 

多くの悪意に利用され、親友さえも失い裏切られ続けてきた少女。

しかし、彼女は自分の意志で一歩を踏み出したことでかけがえのない大事な人達に出会うことができた。

 

 

手を繋ぐことを恐れなかった一人の少女。

敵として出会いながらも、互いに背を預けられるまでに信頼できるようになった大事な先輩。

大事な家族を失い、それでも前に進むことを諦めなかった仲間。

少し生意気だが、守りたいと心から思える後輩達。

 

そして、過去を知ってもなお自分を愛してくれた一人の青年。

 

 

 

 

 

 

 

「将也…今なら、はっきり言える…」

クリスはしっかり顔を上げ、自身の想いを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシ…将也のことが好き…大好き!」

言い切るやいなやクリスは将也の背中に手を回し、顔を近づけると…

 

 

将也と唇を重ねる。

 

 

一瞬驚いた将也だが、クリスを受け入れて互いに目を閉じる。

 

 

 

やがて、2人は目を開けるとクリスの方から顔を離した。

 

 

 

「キス…したんだな///」

顔を赤くしながらも自身の唇にそっと触れるクリスは、嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

 

「…やっぱり、クリスはその笑顔が一番似合うよ…」

クリスの優しい笑顔に一瞬ドキッとしたが、何事もないように振舞う。

 

 

「ありがとう…将也」

クリスはもう一度将也に抱きつくと、優しい声色で囁く。

 

 

「胸の奥が暖かい…これが、『好き』って気持ちなんだ…」

「クリス…」

今度は将也の方からクリスにキスをする。

 

 

「将也…アタシ、ずっと一緒にいたい…だから…」

 

 

「心も体も、全部将也の優しさで満たして…?」

 

「っ…!仰せの通りに…」

 

 

 

 

やがて病室の明かりは消え、円環のある月の光が二人を優しく照らしていた…

 

 

――――――――――

 

 

数年前、とある屋敷で何かの書類を確認していたフィーネに対し、クリスは質問をした。

 

「なあ…フィーネは、何でアタシを助けたんだ?」

「…どうしたの、突然?」

いきなりの質問に面食らうフィーネ。

 

「いや、少しだけ気になっただけだよ。どうしてアタシを助けて、装者にしたのかさ…」

 

クリスの質問を聞いて、フィーネは少しだけ考える素振りをするが…

 

 

 

 

「そうね…強いて言うなら………『貴女がまだ、本当の恋を知らないから』…とでも言っておくわ」

 

まさかのフィーネからの答えに呆然とするクリス。

「…ハァ!?ふざけてねえで真面目に答えてくれよ!」

 

横で叫ぶクリスを尻目に、フィーネはそばに置いてあった紅茶の入ったカップを手に取る。

 

「そのうちわかるわよ…生き残りさえすれば、ね?」

 

この時、クリスは気がつかなかった。

 

フィーネが自分を見る目は、普段と違うとても穏やかな目だったことを…

 

 

 

 

このフィーネの答え、それは彼女の本心だったのか?それとも、クリスの質問をはぐらかすためのウソだったのか?

 

その真実を知る者は一切真相を語ることなく死亡し、クリスがフィーネの本音を知ることはなかった…

 

 

 

To Be Next GAME…?

 




次回、シンフォギアエグゼイドは………

「貴様をこれ以上、シャトーには置けないな」
俊明の運命は…?

「こんなところで、死んでたまるか…!」
全てを失った男の前に…

「人間を捨てる賭け、貴方は乗るかしら?」
最悪の秘密結社が迫る!

第23.5話 人喰いへのCOUNT DOWN

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