戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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なんとか6月中に書けました、第21話です。
今回からクリス編に突入しますが、個人的に書いて中々に胸糞悪いキャラを作ってしまいました。

人によってはキツイと思いますのでご了承ください。
それと、今回から『ボルメテウスさん』から頂いたバグスターを登場させます。
ありがとうございました!


先日、シンフォギアXDが1周年を迎えましたね!
オーズのCSMも届き、テンションがマックスです!
エグゼイドの小説版もいい評判を聞きますので、早いところ購入したいです。


感想、評価が作者のフォニックゲインを高めます!



第21話 再会のNIGHT MARE

真っ暗な廊下を、私は一人で歩いている。

いつも一緒に寝ていたはずの友達が、いなくなった。

 

「どこにいるの…?」

歩いていくと、とある部屋の扉が小さく開いている。

その部屋は、勝手に入ってはいけない『ご主人様』の部屋。

 

 

 

 

「……ぁ…!」

聞き覚えのある声が聞こえ、私はそっと覗き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁっ!いやあっ!」

「うるさいな…少し黙ってろ!」

小さな悲鳴と、誰かを殴る音が聞こえる。

 

 

「嫌っ!助けて、クリス!」

その悲鳴が誰のものなのか、私はわかってしまった。

 

「…ミーナ…?」

 

 

 

 

ガスっ!ゴスっ!と何度も聞こえる、何かを殴るような音。

それがやがて止まり…

 

 

 

「…あれ?壊れちゃった?」

ミーナを押し倒していた人は血で真っ赤になった手を拭くことなく、私が見ていた扉の方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み~つけた。いつから君は覗きなんてするようになったんだい?」

気が付くと、私の前にはあの人が立っていた。

 

「ひっ!ご、ごめんなさい!」

「ダメだよ。悪い子にはお仕置きだ」

あの人は私をベッドまで連れて行く。

 

 

その横には、大事な友達が血塗れで倒れている。

 

 

「じゃあ…今日から君は僕の奴隷だ」

ギュッと私は目をつぶるが、勝手にその目は開き…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリス。君は僕の道具だ」

あの人の顔は、私がよく知っていた男に変わっていた。

 

 

――――――――――

 

「はっ!?」

朝、悪夢に苛まれていたクリスは勢いよく起き上がる。

 

「…夢かよ」

大量の汗をかいていたため、クリスは着ていた服を脱いでシャワーを浴びながらさっきまでの夢を思い出していた。

 

 

 

「何で、今更…しかも…」

最後、自分に迫ってくるあの男の顔は将也の顔に変わった。

 

 

「っ!違うんだ…あいつは違うのに…!」

必死で何かを頭から振り払おうとするクリスだが、その手はずっと震えていた…

 

 

 

――――――――――

 

 

朝。制服に身を包み通学路を歩く響達シンフォギア装者と未来の5人。

 

 

 

 

 

 

「で、響さんと将也先輩の大事な一夜はどんな感じだったんデスか!?」

早朝から切歌がとんでもない爆弾を落としてきて、響は危うくコケそうになった。

 

「き、切歌ちゃんいきなり何聞いてくるの!?」

顔を赤くした響が慌てて聞くが、切歌の好奇心は止まらない。

 

 

「そりゃあ、いずれ先輩にキチンと返事を返す私と調としては先輩のテクニックを知っておきたいデスからね!」

「じー………ぜひ、詳しく」

後輩達からの好奇心の視線にたじろぐ響だが、思いがけないところから助け舟が入る。

 

「お前らなあ、そういうことは家で話せ!」

「く、クリスちゃん…!」

クリスからの助け舟に響は感激したのか薄らと涙が光る。

 

 

すると、5人の横を走ってきたオンロードタイプの黒いバイクが横で停まり、乗っていた人物がヘルメットを外して声をかける。

 

「おはよう、皆」

 

「「「将也君(先輩)!?」」」

朝から顔を出した将也に、響達は驚く。

 

 

「どうしたの、こんなに朝早くから?」

未来が聞いてくると、将也は後ろに積んでいたバッグから小さな箱を取り出し、響に渡す。

 

「はいこれ。こないだ約束してた弁当」

「え!?ああ、そうだった!!」

先日将也の家に泊まった際、響は将也の弁当を食べてみたいとねだったのを思い出す。

 

「響さん、将也先輩のお弁当デスと!?」

「…今度は、私達にも」

切歌達からの視線に頷いた将也は、ふと様子がおかしいクリスに気がついた。

 

 

「…クリス、ひょっとして調子悪い?」

「えっ!?そ、そんなことないけど…」

明らかに嘘をついているのに気づく将也だが、ふと腕時計を見ると時刻は8時を過ぎていた。

 

 

「やっば!急がないと本部に着かないな…じゃあ、後で!」

 

「うん!将也君も気をつけて!」

響達に頷いた将也は、急いでバイクを走らせた。

 

 

――――――――――

 

 

 

「クリス…最近ずっとあの調子だな…」

バイクを運転しながら将也は近頃のクリスの変化に疑問を抱いていた。

 

全員を好きだと告白したあと、クリスはあくまでも反対派よりの考えを持ってはいたが将也との関係性は以前とさほど変わってはいなかった。

 

しかしここ2、3日でクリスが自分を見る目に『怯え』の感情があるよう

に思えてならない。

 

 

(僕、何かしたっけ…?)

考えても答えが出なかった将也は目の前の赤信号に従いバイクを停める。

(…今度聞いてみるか。いつまでもこの状態が続くのも良くないし…)

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

チフォージュ・シャトー内。

キャロルは現在、次の作戦のために『ある人物』を呼び出していた。

 

「及びですか?ミス・キャロル」

現れたのは細い目が特徴的な青年。

一見穏やかな顔つきだが、その目の奥に宿る冷たさをキャロルは見逃さない。

 

 

「今日はお前に渡すものがあってな…ファラ」

キャロルの言葉に、ファラが頷くと大きなトランクを持ってきて青年の前で開く。

 

その中には4本のプロトガシャットと色彩が変化したゲーマドライバーが入っていた

 

 

「ようやくですか…待ちくたびれましたよ」

キャロルの前であるにも関わらず青年は大きな態度を崩さない。

小さく舌打ちをしたキャロルは青年に指示を出す。

 

「そいつを持って装者達に仕掛けてこい。あと…こいつもな」

キャロルはバグヴァイザーを取り出すと、1体のバグスターが実体化する。

 

 

「これで…ついに『あれ』を取り返せる…クックック…クハッ」

不気味な笑い声をあげる青年に、流石のキャロルとファラも引いた目で見ていたが青年はさっさと姿を消した。

 

 

 

 

「…ファラ。あいつのこと、どう思う?」

「全く信用なりません。念の為にガリィと千翼を見張りに回して、余計なことをしたらガリィに対処してもらったほうが良いかと」

キャロルの質問に間を置かずバッサリと切り捨てるファラ。

 

正直なところ、キャロル達にとってあの青年は『邪魔者』としてしか認識していなかった。

 

 

ゲムデウスに押し付けられたあの青年はこちらへの協力は全くしないにも関わらず態度だけはシャトーにいる誰よりも大きく、あのガリィをもってしても『性根どころか生まれた時から人格が全て腐りきってる』と言わしめるだけの男だった。

 

彼のとある過去もあってかキャロルは一人の女としてあの青年を毛嫌いしている。

 

「だが、それにしては奴はこのシャトーのことを知りすぎた。もし余計なことをほざいたら…」

その時はガリィの手によって青年は『処分』されるだろう。

 

 

「まあ、マスターに手を出せばその時点で千翼に狩られていたでしょうが…」

「オレに手を出さなかった判断だけは正解だったかもしれんな」

 

――――――――――

 

 

「「ハアアアア!!」」

本部のシミュレータールームでは、現在マリアと翼の2人がブレイブ・レベル50に変身した将也と模擬戦を行っていた。

 

「ふっ!」

ブレイブは魔法を発動させ、無数の黒い短剣をマリアと翼に放つ。

 

「甘い!」

が、マリアはアームドギアを蛇腹剣にして弾き、その隙に翼が短剣をブレイブめがけて投げつけた。

短剣はブレイブではなく彼の影に突き刺さり、動きが取れなくなる。

 

 

「影縫いか!」

動きが止まった瞬間、翼とマリアが前後から挟み撃ちを仕掛けるが…

 

 

ブレイブの瞳が輝き、円形のバリアが張られて攻撃を防いだ。

「バリアだと!?」

 

防がれたことに驚く翼達だが、ブレイブはかろうじて動く右手首のスナップだけでガシャコンソードを投げ、近くのエナジーアイテムにぶつける。

 

 

 

《縮小化!》

 

アイテムが発動すると、ブレイブの体は小さくなって影縫いの範囲から脱出した。

 

「嘘!?」

マリアが驚く中、ブレイブは素早くマリアの後ろに回り込んで縮小化を解除しマントをまるでドリルのように尖らせて攻撃。

 

 

「フィニッシュだ!」

宣言したブレイブはゲーマドライバーのレバーを閉じた。

 

《ガッチョーン!キメワザ!》

瞬間移動で2人と距離をとり、レバーを再び開く。

 

 

《ガッチャーン!タドル!クリティカルスラッシュ!》

「セアアアアアアア!!!!」

気合の入った声とともに、2つの斬撃が翼達に襲いかかった。

 

 

――――――――――

 

 

模擬戦を終え、翼とマリアはシャワーを浴びながら今回の戦いに関して振り返っていた。

 

「でも、正直油断してたわね…ブレイブの魔法、甘く見ていたつもりはなかったんだけど…」

「ああ…将也の手札には驚かされるばかりだが、あいつはそれ以上に知恵が回る時がある」

 

まさか影縫いを脱出する方法にデメリットの多そうな縮小化を使うとは思わなかった。

 

それ以前にも弦十郎と戦った時はその戦闘力の差を利用し、『逆転』のエナジーアイテムを使うことで強さそのものを入れ替えて勝利するなどの芸当を行っており、弦十郎はそれを真似して自身に『混乱』のアイテムを使うことで酔拳の動きを取り入れるといった発想を思いついた。

 

 

「…流石に、司令の『酔拳』は誰も真似できないが…」

「ええ…あれは無理よね」

弦十郎の『酔拳』によって圧倒されたブレイブとパラドクスの姿を思い出し、背筋が寒くなる2人。

 

「それにあの技…以前私がガングニールを使ってたときの技をアレンジするとはね」

ブレイブのマント攻撃は飛彩も用いたことがあったが、将也は過去にマリアがガングニールを使っていたときに多用していたマントによる即席の盾を見てアレンジを考えていた。

今回のはシンプルな使い方だったが、他のパターンでは3つに割ってまるで剣のように操るといった使い方もあったりするらしい。

 

 

「だが、我々とて将也に頼りきりというわけにもいくまい」

「そうね…いつまでも助けられてばかりじゃ…」

レベル50を使いこなすために毎日のように戦い続ける将也。

 

響や翼が恋人となり、彼を肉体的にも精神的にもサポートすることで将也の無茶は多少なりとも改善されたが、キャロルとの戦いが続いている以上彼が無茶を押し通さなければならない局面もあるかもしれない。

 

「…将也が私達の笑顔を守ると言ってくれたのだから…今度は私達があいつを助けてやらねばな」

「ええ…」

 

すると、突然緊急アラートが鳴り出した。

 

 

――――――――――

 

 

将也と翼、マリアが司令室に到着すると、既に響達学生組が準備をしていた。

 

「状況は!?」

「現在、この山中にある廃墟の周辺をアルカ・ノイズが徘徊中だ」

弦十郎がモニターに映像を映すと、山の中を彷徨いているアルカ・ノイズの軍勢が確認された。

 

 

「またこっちを待ってるのか…」

「ああ。だが、この山の麓には町がある。もしアルカ・ノイズが襲撃してきたら、どれほどの被害が出るかなど…」

被害を出す前に止めなければならない。

 

 

すぐに将也は持っていた白衣に袖を通し、ガシャットが入ったトランクを持って準備をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よりによって、何でここなんだよ」

すれ違う瞬間、クリスが小さく呟いた言葉が耳に入った。

 

「クリス?」

将也が声をかけるが、クリスはどこか顔が青ざめており、腕がわずかに震えていた。

 

「どうかしたの?」

「え!?い、いや…何でもない…」

そう言うとクリスは走るように司令室を出た。

 

「………」

あの慌てよう、クリスは何かを知っている。

そう思っても、今の将也は問い詰めることはできなかった。

 

 

が、この時無理にでもクリスから話を聞かなかったことを彼は悔やむことになるとは、誰も思っていなかった。

 

 

――――――――――

 

廃墟となった屋敷の周囲をうろつくアルカ・ノイズ。

すると、頭上から無数の弾丸が降り注ぎアルカ・ノイズを消滅させる。

 

「さっさと片付けるぞ!」

頭上には将也とパラドが変身したエグゼイド・レベルXXがおり、パラドが変身したRがガシャコンキースラッシャーを、将也が変身したLがガシャコンマグナムを構えていた。

 

「オッケー!」

「了解デス!」

続けて、響達シンフォギア装者が降り立ち、エグゼイド達は着地して別のガシャットを起動。

 

 

《TADDLE FANTASY!》

《PERFECT PUZZLE!》

2つのギアデュアルをそれぞれ起動、エグゼイドLはゲーマドライバーにギアデュアルβをセットし、叫ぶ。

 

「術式レベル50!」

「大変身!」

《ガッチャーン!デュアルアーップ!》

《デュアルアップ!》

 

ブレイブのパネルを選択し、ファンタジーゲーマがエグゼイドLの体に装着。

途中でエグゼイドからブレイブにスーツが変化して完全にゲーマが装甲になった。

 

 

《辿る巡るRPG!タドルファンタジー!》

 

 

エグゼイドRは目の前に展開されたゲートをくぐってパラドクス・パズルゲーマーに変身。

 

 

《Get the Glory in the chain!PERFECT PUZZLE!》

 

 

並び立つ2人のレベル50ライダーは、互いに並び立つ。

 

「これより、アルカ・ノイズ切除手術を開始する!」

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

 

 

――――――――――

 

 

キャロルからガシャットを受け取った青年は真っ暗な部屋の中、ブレイブ達の戦いをモニター越しに観察していた。

 

「くっくっく…そろそろかな」

青年はバグヴァイザーを取り出すと銃口を空に向け、ウイルスを散布。

バグスターウイルスはやがて1体のバグスターとして完成し、飛び立つ。

 

 

「次は………君だよ、クリス」

不敵な笑みを浮かべ、青年は紅いゲーマドライバーを装着。

 

 

「ゲームの始まりだ…!」

青年は屋敷に仕込んでいたトラップを発動させた。

 

 

――――――――――

 

 

「くっそ!数ばっかりで鬱陶しいんだよ!」

無数に出現するアルカ・ノイズを蹴散らす装者達だったが、クリスが悪態をつく。

そして移動を繰り替えていいるうちにクリスは屋敷の門の近くまで移動していた。

 

 

 

すると、突然門と屋敷の扉が開き、4本の電気コードのようなものが扉から出現してクリスの四肢に巻きつく。

 

「なっ!?」

「クリスちゃん!」

響が手を伸ばそうとするが、それよりも早くクリスは屋敷の中に引きずり込まれてしまう。

 

「雪音!」

翼は急いでクリスの救出に向かおうとするが、屋敷の門と扉は固く閉じられてしまい、結界のようなものが張られた。

 

 

「ぐっ…!」

 

刃が通らず、弾き飛ばされた翼をブレイブが咄嗟に助ける。

すると、今度は頭上から光が迸った。

 

 

「何が……全員、頭上に気をつけろ!」

頭上の光の正体を知ったブレイブは叫び、ゲーマドライバーのレバーを閉じる。

 

 

《ガッチョーン!キメワザ!》

ガシャコンソードに赤黒いオーラを纏わせたブレイブは、レバーを開いた。

 

《ガッチャーン!タドル!クリティカルスラッシュ!》

「せあああああ!!」

必殺技のエネルギーを蓄え、振り抜かれた一撃は光…何者かが放った無数の光弾を切り裂いた。

 

 

 

「これは…!」

爆風が晴れると、頭上に現れたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦艦…だと!?」

空を飛んでいたのは、左右に合わせて30もの副砲を装備し、中央には巨大なレーザーキャノンを備えた人間サイズの戦艦だった。

 

すると、空中で戦艦は大きく変形して人型になり、両手に分割したレーザーキャノンを装備した状態で着地する。

 

「ようやく会えましたね、バグスターでありながら脆弱な人間の仲間になった愚かなる同胞…!」

 

 

 

 

「我が名はメタルアヴェンジャー!絶対なる勝利者なり!」

バンバンシミュレーションズから誕生した4体目の新型バグスター『究極変形戦艦 メタルアヴェンジャー』は高らかに宣言する。

 

 

「私の尊敬していた偉大なるバグスター、リボル様の仇!今ここで討たせてもらうぞ!」

その言葉とともにMアヴェンジャーは右手のレーザーキャノンを放つ。

 

「っ!」

ブレイブはマントを広げ、その上から防御魔法をかけるがそれでも3メートルほど後ろに押された。

 

「将也先輩!」

膝をつくブレイブに調が駆け寄る。

 

「このパワー…単純な破壊力だけなら他のバグスターより上かもな…!」

 

すると、Mアヴェンジャーが笑い出す。

「ふん、いつまでももたついてていいのか?」

ブレイブはMアヴェンジャーの後ろにある屋敷をチラリと見る。

 

目の前の敵を倒す事も重要だが、優先すべきは屋敷の内部に囚われたクリスの救出。

 

 

「………先輩。お願いがあるデス…」

ブレイブの横にいつの間に立っていた切歌が、『ある作戦』を耳打ちする。

 

「な…!?だけど、それはお前に危険が!」

「大丈夫デス…将也先輩がクリス先輩を助けるくらいの時間は稼ぐデスから…」

 

切歌の本気の目を見た将也は、とあるガシャットを出現させて切歌に渡す。

「…無理だと思ったらそのガシャットはすぐに外せ。それと、響達に説明は任せるぞ」

「ガッテンデース!」

切歌は頷くと素早く将也から離れ、ブレイブの姿のままガシャットギアデュアルβをドライバーから引き抜く。

 

「ん?何をするつもりだ?」

Mアヴェンジャーの質問に答えることなく、将也はデュアルβのダイヤルをいつもとは反対の右方向に回す。

 

 

《BANG・BANG・SIMULATIONS!》

新しいゲームのタイトルがコールされ、変身が解除された将也の背後には戦艦のような形をした『シミュレーションゲーマ』が浮遊していた。

 

《I ready for Battleship!I ready for Battleship!》

待機音声が流れる中、将也は銃を持つかのようにガシャットを構え、宣言する。

 

 

「第伍十戦術………変身!」

《デュアル・ガッシャット!》

ガシャットをドライバーに装填し、勢いよくレバーを開いた。

 

《ガッチャーン!デュアルアーップ!》

出現したセレクトパネルから、将也はスナイプを選択。

 

 

 

《スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーションズ!発進!》

 

スナイプ・レベル2に変身すると分割されたシミュレーションゲーマがスナイプの上半身と合体。

 

両肩にはそれぞれ4つの副砲が装備され、両手には戦艦の主砲を模したパーツが装着されている。

 

 

将也は仮面ライダースナイプの最強形態『シミュレーションゲーマー・レベル50』へとレベルアップを果たした!

 

「それが私のゲームで変身した姿ですか…遊んであげましょう」

「勘違いするな!俺の目的はお前じゃなく…」

スナイプは屋敷の方を向き、プロトマイティアクションXオリジンのガシャットをキメワザスロットホルダーに装填し、発動。

 

 

《マイティ!クリティカルストライク!》

「まさか…やめろ!」

Mアヴェンジャーが副砲から攻撃をするが、スナイプはレベル0の力が宿った砲弾で攻撃を撃ち落とす。

 

 

「ついでに…」

スナイプはゲーマドライバーのレバーを閉じ、必殺技の準備をする。

《ガッチョーン!キメワザ!》

そして素早くレバーを開いた。

 

《ガッチャーン!バンバン!クリティカルファイヤー!》

両手のユニットを合体させたスナイプは、紫のオーラをまとわせた状態で屋敷めがけて砲撃を叩き込んだ。

 

 

 

――――――――――

 

 

時間は遡って少し前。

クリスは屋敷に引きずり込まれるが、扉が閉まると同時に四肢に巻きついていたコードは解け、屋敷の奥へと消えていった。

 

 

「ってて…」

引っ張られた衝撃でシンフォギアが解除され、変身前に着ていた制服に服装が戻っていたことに気づくクリス。

 

 

 

 

 

「…よりによって、こんな形で戻ってくるなんてな…」

屋敷の階段、吊るされているシャンデリア、入り口付近の鎧騎士の像。

この屋敷に残っている全てをクリスは知っていたのだ。

 

 

(っ!ダメだ!ここにいると辛気くせーことばっかり考えちまう…)

急いで脱出を図ろうとイチイバルを再び纏い、ギアシンフォニーの力でガシャコンマグナムを出現させたクリスはコードが消えていった屋敷の奥へとゆっくり歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、どこからか拍手の音が聞こえる。

 

「流石だね、クリス。扉から逃げるんじゃなくてわざわざ僕を探しに来てくれるなんて」

突然どこからか聞こえた声に、クリスは周囲を見回す。

 

「!?どこだ!」

クリスはガシャコンマグナムを持った手に無意識のうちに力を込めていたが、声の主はクリスの真後ろの部屋から現れる。

 

「やだなぁ、僕のことを忘れちゃったの?」

現れたのは、細い目が特徴的な端正な顔立ちをした青年。

しかし、その目の奥に宿る感情は決して好意的とは言い難いものだった。

 

「お前………どうして生きてる!?」

クリスは目の前の現実が信じられなかった。

 

 

「鴻野…俊明!」

俊明と呼ばれた青年は、不気味に笑いながら紅いカラーリングのゲーマドライバーを見せつける。

 

「君に会う…そのために僕は力を手に入れたのさ!」

俊明が取り出したガシャットを見て、クリスは愕然とする。

 

 

《マイティアクション!エーックス!》

以前キャロルに奪われた、レベル2のプロトマイティアクションXガシャット。

それを目の前の男が持っていたのだ。

 

 

「テメェ…キャロルの仲間になってたのか!」

クリスの問いかけに俊明は無視し、ガシャットをベルトに装填。

 

《ガッシャット!》

「………変身」

俊明はレバーを開き、出現したゲートをくぐる。

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!》

 

ゲーマドライバーのデザイン以外は前に将也が変身していたゲンム・レベル2と同じデザインの『仮面ライダーダミーゲンム』へと変身した。

「僕のレベルは100…君に残された道は、昔のように僕の物として生きていくことだけ…!」

 

Dゲンムは首を左右に捻りながらクリスに向かって歩いていく。

 

「ふざけんな…!お前を、ぶっ潰してやる!」

クリスはガシャコンマグナムの弾丸を放つが、Dゲンムはどこからか鞭を取り出して弾丸を破壊する。

 

「…ワガママな『道具』には、お仕置き……約束、忘れたわけじゃないよね?」

 

Dゲンムの鞭を見て、クリスは一瞬だがガシャコンマグナムを持った手が震えた。

 

 

 

 

『どうした!ごめんなさいも言えないのか!?』

 

 

『ごめんなさい!ごめんなさい!もうご主人様に逆らいませんから!」

 

 

 

『立場も弁えない奴隷には、お仕置きだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う…アタシは…!」

クリスはガシャコンマグナムを戻すと、スカートアーマーから大量のミサイルを放つ。

 

『MEGA DETH PARTY』

しかし、Dゲンムは鞭を振るうとミサイルを破壊し、もう一本のガシャットを取り出す。

 

 

《シャカリキ・スポーツ!》

シャカリキスポーツのプロトガシャットを起動させ、ベルトに装填。

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

黒いスポーツゲーマが出現し、ゲンムに装着される。

 

《マイティーアクショーン!エーックス!》

《アガッチャ!》

《シャカリキ!メチャコギ!ホット!ホット!シャカシャカコギコギ!シャカリキスポーツ!》

 

Dゲンムはレベル3形態にあたる『スポーツアクションゲーマー』に変身し、鞭を床に強く叩きつけた。

 

 

「まさか、あの装者達と自分は一緒だと、本気で思っているのか?」

Dゲンムはクリスの右手に鞭を巻きつけながら語る。

 

 

 

 

 

 

「思い上がるな!お前が日本に帰って来れたのは、元々僕の父さんがお前とおまけの女を『買ってきた』からだろうが!」

 

 

「っ!」

その言葉に動揺するクリスだが、Dゲンムによって床に叩きつけられてしまう。

 

 

「父さんがお前を買ってきた時点で、お前は『物』なんだよ!お前は僕の奴隷だ!奴隷は大人しく、僕の言うことを黙って聞いてればいいんだ!」

 

 

執拗なまでに背中を踏みつけられるクリス。

人間をはるかに超えたライダーの攻撃を前に耐えられているのは、シンフォギアを纏っているからこそだが、当然限界は存在する。

 

 

「思い出せよ……誰がお前に躾をしてやった?」

Dゲンムはクリスの髪を掴む。

 

 

「何にも知らないガキだったお前を、女にしてやったのは誰だ!?」

 

 

「…うぅ…あぁ…」

 

何度も踏みつけられ、ボロボロの状態になっていたクリスはまともに答え

ることができなかったがDゲンムはクリスの腹を全力で殴る。

 

 

 

「ガハッ!?」

「もう一度、その体に教え込んでやるよ………!」

 

 

《キメワザ!》

Dゲンムはシャカリキスポーツガシャットをキメワザスロットホルダーに装填し、右手に黒いエネルギーを集め…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《バンバン!クリティカルファイヤー!》

壁の向こう側から聞こえた音声に気を取られ、派手な爆発にDゲンムは吹き飛ばされた。

 

「うああああ!?」

盛大にこけたDゲンムは、突然の乱入者に向かって叫ぶ。

 

「だ、誰だ!?」

爆煙が晴れ、立っていたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

ギアが解除されたクリスを抱えた、スナイプ・レベル50だった。

 

「クリス…遅れてごめん」

スナイプの変身が解除され、将也は制服のあちこちがボロボロになったクリスに自らの白衣を着せる。

 

 

「お前…!」

Dゲンムが睨むが、将也はポケットから2つのガシャットを取り出しながら聞く。

 

 

「何で…クリスにこんなことをしたんですか?貴方は、クリスとどういう関係なんですか?」

将也の問いかけにDゲンムは笑う。

 

 

「何だよ、その女から何も聞いてないのか!

 

 

 

 

 

 

 

そいつはなぁ!僕の父さんが誕生日に買ってくれた『奴隷』の一人なんだよ!」

 

 

 

 

「バルベルデとかいう国で売られてた女で、まだキズモノじゃないからってプレゼントで貰ったんだ!」

 

 

Dゲンムによって過去が明かされ、クリスはどんどん顔が青ざめていき、震えが止まらなくなっていた。

 

 

 

 

「もう一人一緒についてきた方は、抱いてやろうとしたら喚き散らして煩かったから殴りまくってうっかり『壊しちゃった』けど、お陰でクリスは大人しく言うこと聞いてくれてさ…

 

 

 

 

 

 

 

最高だったよ…クリスの『初めて』奪ってやったのは…!」

 

絶望に俯くクリスを見て、Dゲンムはさらに笑う。

 

「やっぱりたまんないよね~。泣きながら痛いの堪えてる姿って!折角だからその映像、見せてやりたかったよ!ケハハハハハハ!」

 

Dゲンムがマスクの内側ではどのような表情を浮かべているのか、今の将也には想像できない。

否、そんなことを考えている余裕すら無くなっていた。

 

 

 

 

「…ふざけんな」

悔しかった。クリスを傷つけて笑う、この男の存在を知らなかったことが。

 

 

 

 

「お前だけは…」

耐えられなかった。こんな男がライダーガシャットを…檀黎斗が長年に渡って作り上げた夢の結晶を使うことが。

 

 

 

 

「俺の手で…」

何よりも許せなかった。こんな奴によって、クリスは汚され、心に大きな傷を作っていたことに気づけなかったことが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺す…!」

怒りと殺意。今の将也にある感情はその二つのみ。

 

その姿に、クリスは困惑する。

「将…也…?」

クリスの困惑を余所に、将也は手をクロスさせ、持っていたガシャットを起動させた。

 

 

 

 

《マイティアクション!エーックス!》

1本目はプロトマイティアクションXオリジンのガシャット。

 

 

 

《デンジャラスゾンビ!》

もう一本はサバイバーとの戦い以降使っていなかったデンジャラスゾンビのガシャットを起動。

 

 

 

「………グレードX‐0。変身」

《ガッシャット!》

2つのガシャットをゲーマドライバーに装填し、レバーを開いた。

 

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

周囲を回転する5枚のモノクロになったセレクトパネルから将也はゲンムを選択。

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!》

2枚のゲートが出現し、将也の体を黒い霧が覆った。

 

《アガッチャ!》

《デンジャー!デンジャー!デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!》

 

「ヌウェアァ!!」

ゲートを蹴り破って出現したのは、ゲーマドライバーを装着している点とライダーゲージが満タンになったところ以外ゾンビゲーマーと同じ姿のゲンム。

 

 

 

将也は、仮面ライダーゲンムの最強形態『ゾンビアクションゲーマー・レベルX‐0』へとレベルアップした。

 

 

 

 

「お前だけは…殺してやる!」

殺意と狂気に満ちた目で、ゲンムはDゲンムを睨んだ。

Dゲンムは鞭を、ゲンムは右手にガシャコンブレイカー、左手にガシャコンバグヴァイザーツヴァイを持ち…

 

 

 

 

 

 

「「アアアアアアアアア!!」」

2人のゲンムはぶつかりあった。

 

To Be Next GAME…?

 




次回、シンフォギアエグゼイドは!

「何が奴隷だ!何が物だ!クリスの痛みを笑うお前を、俺は絶対に許さない!」
怒りに燃えるゲンムX‐0!
「あれが…将也君なの?」
燃え滾る黒い炎は…


《デンジャー!デンジャー!デンジャー!》
「うぐ…グウウアアアアア!!!」
ゲンム『最凶の姿』を呼び覚ます!?
「もういいよ…お願いだから…」
鍵はクリスの言葉…?

「これが…暴走?」
第22話 憎しみのRIDER

そして…
「ちょうどいい実験体を見つけたワケダ」
「あーしらも、そろそろ動きますか?」
「そうね…局長の命令通りに動くのは正直癪だけど」

――――――――――
鴻野 俊明
外見は『ハイスクールD×D』に登場したディオドラ・アスタロトに酷似している。
幼い頃のクリスと、彼女の友達出会った少女『ミーナ』を引き取った青年。
外見こそは優しげだが、性格は少女の心を折ることが趣味という外道。
その性格故にゲムデウスからも厄介者扱いされ、キャロルからも毛嫌いされていた。
性根が腐っていると評判のガリィでさえも性格が悪いと言われている。

武器はかつてクリスに使っていた拷問用の一本鞭。
ゲムデウスの力によってライダーと戦えるレベルに強化されている。


ダミーゲーマドライバー
ゲムデウスが作り出したゲーマドライバーのコピーで、装填したガシャットのレベルを50倍まで引き上げることが可能。
だが、当然ながら弱点も存在するらしい…?

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