戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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何とかゴールデンウィーク中に更新できました!
ほぼバイトに時間を費やしていましたが、更新はなるべく早くしたいと思っています。

エグゼイドトリロジー、先週ようやく全部観れましたが…黎斗に関して色々と納得がいき、最後には泣いてしまいました…

シンフォギアXDも今日限定の端午の節句ボイスがありましたが、ギリギリ全部聞けました!

感想、評価が作者の力になります!

OP EXCITE
ED Real Heart


第18話 最速のNINJA!

どこまでも続く真っ暗な空間で、翼は立ち尽くしていた。

 

周囲に転がっているのは、かつての仲間達の惨たらしく殺された姿。

 

両腕を切り落とされた響。

心臓を一突きされ、絶命したマリア。

下半身が無くなり、イチイバルの欠片が周囲に散らばったクリス。

腕と足を欠損し、重なるように倒れている切歌と調。

 

 

大事な仲間達の凄惨な姿に、翼は思わず後ろに下がる。

「これは…どうして!?」

 

ふと、剣を持っている右手に嫌な感触を覚える。

ゆっくりと右手を見ると…

 

 

「え…?」

右手には真っ赤な血が付着しており、よく見ると全身が血塗れになっていることに気づいた。

 

「私が…やったのか…?」

すると、後ろから物音が聞こえる。

 

振り返ると、そこにはもう一人の大事な仲間がいた。

 

 

「…宝条……」

宝条将也はゲンム・レベル0に変身していたが、すでに装甲はあちこちが破壊され、マスクは半壊している状態だった。

 

それでも、翼に手を伸ばそうとするが翼の体は本人の意思とは無関係に刀を構え、将也にめがけてふり下ろそうとする。

 

 

(よせ!止めてくれ!)

必死に押さえ込もうとするが、翼の体はそれを無視し…

 

 

 

不気味な笑みを浮かべながらゲンムの首を撥ねた。

 

(そんな…嘘だ!頼む!もう…!)

 

 

――――――――――

 

「うああああああ!?」

勢いよく飛び起きる翼は、荒い息を吐きながら周囲を見る。

 

「ここは…」

今自分がいる場所が、S.O.N.G本部内の医務室だということに気がついた。

 

「そうだ…私は…!」

翼は、ここに来るまでの記憶を手繰り寄せ、思い出した。

アモン、アナザーパラドクス、ギリル。3体のバグスターによって敗北したこと。

 

そして、ギリルの卑劣な罠にかかって操られ、マリア達を襲ったこと。

自分達を助けるために将也が殿を努め、ギリル達によってゲームオーバーにされ、消滅してしまったこと。

 

 

「私は…なんてことを…!」

自分は、引き際を誤ってしまった。

将也の負担になりたくないと思い戦おうとした結果、彼を死に追いやる形となってしまった。

 

 

「すまない…宝条……立花…」

将也だけではない。彼と想いを通じ合うことができ、恋人同士になったばかりの響にまでこのような結果をもたらしてしまったことに翼は後悔の涙が流れる。

 

 

すると、扉がノックされる。

「っ!はい!」

慌てて涙を拭い、返事をする翼。

 

扉を開けたのはエルフナインだった。

 

「翼さん!目が覚めたんですね!」

「エルフナイン…」

ややブカブカの白衣を着たエルフナインは、慌てながら翼に話しかける。

 

「どこか痛いところはありませんか!?具合が悪いとか、ありますか?」

矢継ぎ早に質問してくるエルフナインを何とか宥め、ようやくエルフナインは落ち着く。

 

「その…聞きたいんだが、マリア達は…?」

気がかりなのは、自らの手で傷を負わせてしまったマリア達。

 

「マリアさん達なら大丈夫ですよ。つい先ほど皆さん目が覚めましたので」

その言葉にホッとしたのか肩の力が抜ける。

 

「翼さんが無意識のうちにギリルの力を押さえ込んでいたのかもしれませんが、マリアさんの傷も内臓などの損傷は確認されなかったとのことですし、数日で退院できるとの話です」

 

 

命に別状は無いということがわかるが、それでも翼の心は晴れなかった。

 

「だが……宝条は…」

将也のことを口にすると、突然エルフナインが苦笑いを浮かべた。

 

 

「えっと……その事なんですけど…」

どう言えばいいのかわからないといった表情のエルフナインだが、またしても扉がノックされた。

 

 

「エルフナインちゃ~ん!翼さん、目が覚めたの!?」

「ひ、響さん!?」

どうやら、向こうにいるのは響だがどこか違和感を感じる翼。

 

将也が死んだというのに、そういったことを感じさせないくらいいつもの響の口調だったことが気になるが、エルフナインは扉越しに響に声をかけた。

 

 

「は、入っていいですよ!」

すると、扉が開いて2人の人物が入室し、翼は目を見開いた。

 

入ってきたのは、さっきから声をかけてきた響。

そして…

 

 

 

 

「良かった…目が覚めたんだね、翼」

白衣を着た、消滅したはずの将也だった。

 

「宝条…どうして…?」

消えたはずの将也が目の前にいることに困惑する翼だが、将也は翼の点滴パックを交換しながら説明する。

 

 

「翼だけじゃなくて、みんなは以前パラドから聞いたよね?黎斗達の事」

 

点滴を交換し、近くの椅子に座って将也は説明を開始する。

全ては、将也が消滅して数分後のことだった…

 

――――――――――

 

 

 

「いやああっ!将也君!」

響は悲鳴を上げながら将也の名を叫ぶ。

現在、司令室は将也の消滅という最悪の結果に騒然となっており、モニターの映像ではギリルが何かを拾っている。

 

それは、消滅した将也が遺した、プロトバンバンシューティングのガシャットだった。

 

 

「今日の収穫はこれで十分…かな」

ガシャットを回収したギリルとアモンは、ワープを使って姿を消した。

 

「ギリルとアモンの反応、完全にロストしました…」

朔也の報告に、誰も答えようとしない。

 

 

「俺達は…結局何もできなかったのか!」

無力感に苛まれる弦十郎達だったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、弦十郎の足元に紫色の土管が出現した。

 

「ど、土管!?」

慌てて下がる弦十郎だが、彼の声を聞いた他のメンバーも急いで駆け寄り、弦十郎が見つけた土管に困惑すると…

 

 

 

ウィーン…ウィーン…という妙な効果音が流れ土管に様々な色で描かれていた『CONTINUE』の文字が輝き、土管から勢いよく将也が飛び出してきた!

 

 

「いよっと!」

空中回転しながら綺麗に着地する将也に、弦十郎だけでなくその場の全員が驚いた。

 

 

「ほ、宝条!?」

「将也さん!?これって…?」

将也が飛び出したと同時に土管は消滅するが、将也は首を鳴らしながら歩いてくる。

 

 

「心配かけてごめんね?でも、こいつのおかげで何とか脱出できたよ」

そう言いながら将也はプロトマイティアクションXオリジンのガシャットを見せる。

 

「将也君…どういうこと?」

未来が聞いてきたが、将也はガシャットを見せながら説明する。

 

 

「以前パラドから聞いてたと思うけど、このプロトマイティアクションXは最初期に作られたα版でね。他のガシャットにはないコンティニュー機能が搭載されているんだ」

その言葉に、全員が過去の映像を思い出した。

 

「そういえば、檀黎斗がそのガシャットで!」

「正解ですよ、朔也さん。あと、このガシャットには僕のバックアップデータが保存されているから、万が一消滅してもこのシステムによって好きなタイミングで復活が可能になってたんです」

ただし、当然ながら回数制限も存在する。

 

「ちなみに今回一度消滅したから、残りライフは一つ減って残り98個ですね」

「結構余裕あるな…」

 

 

といっても、将也にとって実はこの策、半ば賭けでもあったのだ。

いくらパラドが複製したガシャットでも、コンティニュー機能がキチンと搭載されているかは実際に使ってみないとわからない。

そのため、もしコンティニューが搭載されていなかったらこのまま将也は消滅していたかもしれないのだ。

 

すると、響が将也の手を握り締めてきた。

 

「…その、少し俺達外の空気吸ってきますね?」

それで伝わったのか、弦十郎が頷いた。

 

「ああ。詳しい話はゆっくり聞かせてくれ」

 

将也は響と手を繋いで司令室の外に出ると、響がギュッと抱きついてきた。

 

 

「響…」

「…怖かった。将也君が死んだんじゃないかって…」

響の手は震えており、普段の力強さは感じられなかった。

 

(そうだった…響は…)

 

 

一度大切な家族が離れてしまい、響にとって大事な人がいなくなるのは想像以上のトラウマとなっていた。

 

「ごめんな?もう…何処にも行かないから」

そっと響の頭を撫でた。

 

 

 

――――――――――

 

 

「ってわけ」

復活の経緯を説明し終えた将也は、プロトマイティアクションXオリジンガシャットを指に引っ掛けて回転させる。

 

「そうだったのか…」

レベル0のコンティニュー能力だと知り、翼は納得した。

 

「後は…」

将也は首にかけていたゲームスコープを持ち、翼にかざす。

すると、目の前に心電図のような映像が投影され、将也はそれをじっと見ていた。

 

「やはりカイデンの変異種…パックマンウイルスとギリギリチャンバラが結びついて………ん?」

 

一瞬、将也の目が鋭くなる。

「ど、どうかしたのか、宝条?」

「…いや、何でもない。それより…」

 

将也は首を振ると、ゲームスコープを外して説明を開始する。

「翼。やっぱり君はあの戦いでバグスターウイルス…それも変異種のウイルスに感染している」

 

エルフナインと響が驚くが、翼はなんとなく察していたらしい。

 

「やはり、あの時か…」

上葉によってプロトガシャットを突き立てられ、体を奪われたときに感染させられていたらしい。

 

「でも、変異種って…?」

「多分…あいつらが持っていた『パックマンウイルス』のせいだと思う」

 

「パックマンって…あのゲームの?」

あまりゲームに詳しくない翼でも、どうやらパックマンのことは知っていたらしい。

 

「ああ。かつて財前美智彦は、レトロゲームのパックマンを利用して変異種のバグスターウイルスであるパックマンウイルスを作ったんだが…おそらく仲間達も感染していたんだろうな」

 

上葉の他、Dr.パックマンこと財前の仲間達はプロトガシャットを使った際、元となるバグスターとは異なる姿に変異した。

 

「本来のバグスターとは違うパックマンウイルスのせいで、プロトガシャットのウイルスが変異したのかもしれない。だけど治療方法は通常のバグスターと同じだ」

 

つまり、ウイルスを治療するには本体のバグスターであるギリルを倒す。

 

「…翼。これを」

将也は、プロトマイティアクションXオリジンのガシャットを翼に渡す。

 

「何故だ…?」

「そのガシャットにはバグスターウイルスを抑制する効果がある。さっき調整して半起動状態を維持しているから、それを持っていれば当分の間は発症しないはずだ」

 

前回の戦いでかなり精神的に追い詰められていた翼は、消滅寸前まで追い込まれた。

そのため、将也は翼のバグスターウイルスを抑制することが可能なレベル0で戦いに趣いたのだ。

 

「じゃあ、暫くは安静にしているように!主治医との約束だよ?」

「しゅ、主治医!?」

翼は寝ているベッドの札を見ると、確かに『主治医・宝条将也』と書かれていた。

 

「そりゃあ、ゲーム病の治療ができるのは僕だけだからね。というわけで、僕は今から司令と今後について相談してくる!」

そう言って将也は医務室を出て行き、エルフナインも慌てて後を追っていった。

 

――――――――――

 

 

将也達がいなくなり、響と翼だけになる医務室。

しばらくの間妙に気まずい空気が流れていたが…

 

 

「立花…」

「な、何ですか、翼さん?」

翼が、俯きながら話しかけてくる。

 

「すまなかった…宝条のこと…」

謝りたかったのは、自分のせいで一度将也を死なせたこと。

コンティニューの力で蘇生できたものの、自分が足を引っ張ってしまい、将也の命が一度失われてしまったことに変わりはない。

 

 

「実は…夢を見たんだ……真っ暗な場所で、皆が殺されている…」

悪夢を思い出し、翼は手が震えていた。

 

 

「やったのは…私だった…!私は、あの戦いでマリア達を斬った時に感じたんだ!相手を斬る感覚と…それに伴う快楽を…!」

 

「翼さん…」

今の翼に、普段の凛々しさは感じられない。

 

「私は…もう戦えないのかもしれない」

ベッドの横に置いてあった天羽々斬を手に取る気にならない。

いつもとは異なる弱気な翼の姿に、響は何も言うことができなかった。

 

 

 

――――――――――

 

 

(…思ったよりも重症だったな)

病室のドアの向こうで、将也は腕を組みながら翼の言葉を聞いていた。

響相手なら自分の考えを正直に話すと考え、席を外したが思っていた以上に翼の心は折れていた。

 

おそらく、ガシャットを渡していなかったら近いうちに過度のストレスで消滅していたかもしれない。

 

「さて…エルフナイン」

「はい!」

「今夜は…徹夜確定だ」

 

エルフナインを連れて、将也は自分の研究室に戻る。

 

目の前には紺色のガシャットと、色違いのゲーマドライバーに様々なコードが接続してある。

 

「今日中に完成させるぞ…!」

「了解です…!」

 

 

将也は机の引き出しから『神の才能』と書かれたハチマキを取り出して頭に巻き、エルフナインは『れんきんじゅつし』と平仮名で書かれたハチマキを巻いた。

 

「いざ…」

「開始!」

 

――――――――――

 

翌朝、処置を終え病室で安静にしていたマリア、クリス、切歌、調の4人。

すると、突然警報が鳴る。

 

 

「まさか…!」

「こんな時に、敵が出たデスか!?」

 

絶対安静を言い渡されたにも関わらず病室を出て司令室に向かう4人。

案の定、司令室にいた弦十郎は驚いていた。

 

「お前達!?宝条君から絶対安静だと言われたはずだろ!」

「でも、あの馬鹿と二人だけで出撃させられるかよ!」

 

現状、出撃できるのは響と将也の二人だけだが、弦十郎はやけに冷静だった。

 

「問題ない。出てきたのはアルカ・ノイズだけだし、それに…」

いつの間にか横に立っていたパラドがモニターに目を向ける。

 

「将也のやつ、助っ人まで準備していたみたいだからな」

アルカ・ノイズの軍勢の前に立っていたのは、彼女たちもよく知る人物。

 

 

 

「おいおい、マジかよ…!」

「緒川さん!?」

将也と並んで立っていたのは、翼のマネージャー兼S.O.N.Gのエージェント、緒川慎次だった。

 

 

――――――――――

 

遡ることおよそ3時間前。

将也とエルフナインは、完成させた『それ』を司令室に持ってきた。

 

「司令…これが」

将也はトランクを開けると、中には紺色のライダーガシャットと本体カラーが銀色、レバーの部分が紺になったゲーマドライバーが収められていた。

 

「完成したのか?」

「はい。新しいガシャットと、『ゲーマドライバーライト』です」

ゲーマドライバーライト。それは一週間前から将也が密かに作り上げていた新型のゲーマドライバーだった。

ガシャットの力で仮面ライダーに変身するにはどうしてもバグスターウイルスを取り込む必要があり、適合者でなければゲーム病に感染するのが弱点となっていた。

 

だが、将也はこのゲーマドライバーライトを作る際限界までバグスターウイルスの感染を防ぐためにドライバーにフィルターを作り上げることでウイルスの感染率をほぼ0%までにした。

 

「これがあれば、適合手術無しで仮面ライダーに変身できるってことか」

朔也が横からドライバーを見るが、将也は首を振る。

 

「ですが、一つだけ問題が残りました」

将也はゲーマドライバーライトを作った際に完成させた資料を見せる。

そこに記されていたのは、装着した場合の変身者の身体能力がどこまで補助されるかといった内容。

 

「え…?」

「これ…生身より多少強くなる程度だろ」

あおいと朔也は資料を何度も見返すが、記された内容は変わらない。

このドライバー、バグスターの感染をほぼ防げる代わりに変身者の身体能力はそこまで引き上げられないのだ。

 

これでは、まだライドプレイヤーやレベル1で戦ったほうがマシなレベルである。

 

「なるほど…だからこのガシャットを付けたわけか」

弦十郎はドライバーの横のガシャットを手に取る。

ゲームタイトルは『ハリケーンニンジャ』と記されていた。

 

「ハリケーンニンジャ。昔僕がディレクだった頃、幻夢コーポレーションとは違う会社が作ったガシャットです」

まだ将也がディレクだった頃、幻夢とは違う外資系ゲーム会社『マキナビジョン』が作り上げたこのガシャットのデータにたまたまアクセスすることができた。

 

まだ殆ど完成していなかったためか、ゲームのグラフィックや主人公のスペックなどしか読み取れなかったため本来のスペックと比べて落ちるコピー品だが、何とかゲーマドライバーライトの性能に合わせることができたガシャットだ。

そしてこのガシャットとドライバーを使うのは…

 

 

 

「緒川さん。あなたにお願いしたい」

「わ、私ですか!?」

将也がドライバーを渡したのは緒川だった。

 

「なるほど…確かに緒川さんなら…」

外見こそ普通の青年だが緒川の正体は忍者の末裔であり、その身体能力は弦十郎に次ぐレベルの人外クラスであるため、ドライバーの力でノイズやバグスターに対抗さえできれば十分な戦力になり得る。

 

 

「それに…緒川さんがライダーになることは、翼のためでもあるんです」

「翼さんの…?」

 

自分が仮面ライダーになることと、翼がどう繋がるのか?

 

「その理由は…」

 

将也は緒川が仮面ライダーになることのメリットと、翼にどう関係するの

か。そして今回のある『計画』を説明する。

 

 

 

「そういうことですか…だったら協力します」

ドライバーとガシャットを受け取った緒川は、ガシャットを見つめる。

 

「あと、一つ教えてください」

「なんですか?」

緒川は、ガシャットに描かれた機械的な忍者を見つめながら聞いた。

 

「このガシャットで変身する、仮面ライダーの名前は?」

「はい。その名前は…」

 

――――――――――

 

無数のアルカ・ノイズがひしめく中、将也と緒川はドライバーを装着した状態で立っていた。

 

「行きましょう…緒川さん!」

「ああ!」

将也はタドルクエストのガシャットを取り出し、緒川はハリケーンニンジャのガシャットを構えて同時に起動させる。

 

《タドルクエスト!》

《ハリケーンニンジャ!》

二つのゲームタイトルが表示される。

 

 

「術式レベル2!」

 

2人はそれぞれガシャットを構え、同時に叫んだ。

 

「「変身!」」

《ガッシャット!》

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

出現したセレクトパネルから、将也は左手を真横に伸ばしてブレイブのパネルを選択。

 

 

《辿る巡る!辿る巡る!タドルクエスト!》

レベル1のボディが弾け飛び、ブレイブ・レベル2に変身。

 

 

《マキマキ竜巻!ハリケーンニンジャ!》

緒川は真正面に出たニンジャのようなライダーのパネルを右手ではじき飛ばすように触れ、選択。

白い髪のようなパーツが付いた独特なデザインのマスクに、忍者を思わせるエグゼイド達とは大きくコンセプトからして異なるデザイン。

 

「仮面ライダーブレイブ。これより、アルカ・ノイズ切除手術を開始する!」

ガシャコンソードを持ったブレイブは、手術に臨む執刀医のように両手を挙げ、緒川も自らの新たな名前を名乗る。

 

 

 

「私は…仮面ライダー………風魔!」

 

その名はかつて相模、足柄を拠点にしていた謎多き忍者集団が由来である仮面ライダー。

 

「翼さんが戦えない今は…私が戦う番です!」

背負っていた2本の忍者刀を引き抜く風魔。

そして、2人は一斉に走り出した!

 

 

「行くぞ!」

「いざ!」

 

 

――――――――――

 

武士型アルカ・ノイズが解剖器官で攻撃をするが、ブレイブはガシャコンソードで受け止めて逆に切り裂く。

 

「ハアッ!」

ガシャコンソードに炎をまとわせ、アルカ・ノイズは炎に包まれた。

 

「やりますね…!」

風魔は忍者刀ですれ違いざまにアルカ・ノイズを細切れにして光の手裏剣でアルカ・ノイズは次々と消滅する。

 

「なるほど…これなら十分!」

風魔はどんどんスピードを上げ、その速さは翼をも上回っていた。

 

 

「おいおい、あれで能力向上が殆ど無いって嘘だろ!?」

クリスが叫ぶが、装者達は全員が同じ事を思っていた。

 

緒川の戦闘力の高さは知っていたつもりだったが、アルカ・ノイズに対応できるようになったことで翼達の穴を埋めるには十分な戦力となっていたのだ。

 

「緒川さん!風魔の固有スキルを、忍者プレイヤーを使ってください!」

ブレイブはガシャコンソードを氷剣モードに切り替え、氷の矢でアルカ・ノイズを蹴散らす。

 

「忍者プレイヤー?」

すると、風魔のマスク内に詳細が浮かび上がる。

 

「そうか…なら!」

風魔の周囲にガシャコンウェポンと同じマークが出現し、単眼の風魔と同じ素体スーツのキャラクターが3体出現する。

 

「な、何か増えたデスよ!?」

司令室では風魔が召喚した分身体を見て切歌が叫ぶ。

 

 

「あれは忍者プレイヤー。風魔が召喚できる分身ですよ」

エルフナインが説明する。

 

「忍者プレイヤーは一度に3体まで召喚が可能で、1体あたりの戦闘力は変身者のおよそ半分になっています」

「ってことは、3体揃えば緒川さん1.5人分の強さ!?」

「もう援軍としては十分すぎるわね…」

変身者のスペックに依存するのが弱点となるゲーマドライバーライトだが、緒川ほどの超人となればそれは弱点とは言わないのだ。

 

 

「これ、アタシらが出張る必要無いよな…?」

クリスが何気なく呟いたが、その言葉は翼の心に少しだが残った。

 

(私達は…)

 

――――――――――

 

「見つけましたよ!」

風魔は、アルカ・ノイズを出現させ続けている場所を見つける。

そこにはテレポートジェムを使うときに出現する魔法陣が消滅することなく残り続けていた。

 

 

「あれを破壊すれば…」

忍者刀で魔法陣めがけて斬撃を飛ばす。

 

「これで…」

素早くガシャットをキメワザスロットホルダーに装填。

 

《ガッシャット!キメワザ!》

2本の刀にエネルギーが集まり、必殺技を発動させる。

 

《ハリケーン!クリティカルストライク!》

「せあああああ!!」

 

 

連続で刀を振り下ろし、魔法陣を完全に打ち砕いた。

 

「よし!俺も一気に決める!」

ブレイブはクリーム色のガシャットを取り出し、起動させる。

 

 

《ナイトオブサファリ!》

起動音楽とともにゲーム画面が開き、ハンターゲーマに似たヒョウ柄の『サファリゲーマ』が出現する。

 

「術式レベル4!」

ガシャットをベルトに装填し、レバーを開く。

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

周囲をサファリゲーマが走り回り、ハンターゲーマと同じようにブレイブの体を覆う。

 

《ライオン・シマウマ・キリン!真夜中のジャングル!ナイトオブサファリ!》

全体的にハンタークエストゲーマーとシルエットは似ているが、デザインはヒョウをモチーフとした姿。

 

 

『仮面ライダーブレイブ・サファリクエストゲーマーレベル4』!

「アルカ・ノイズは全て切除する!」

装備されたブレードでアルカ・ノイズを攻撃し、猛スピードで走り回る。

ナイトオブサファリはドラゴナイトハンターZと違い飛行能力は無いが、その分地上での戦闘に特化している。

 

「はあああ!!」

まるで猛獣のように駆け抜けながらアルカ・ノイズを蹴散らすブレイブと、忍者プレイヤーを率いて戦う風魔。

 

2人は背中合わせになり、互いに頷くとガシャットをキメワザスロットホルダーに装填する。

 

 

《ガッシャット!キメワザ!》

エネルギーをチャージし、同時に必殺技を発動させた。

 

 

《ナイトオブ!クリティカルストライク!》

『KNIGHT・OF・CRITICAL・STRIKE!』

 

ブレイブはソニックブームが出るほどの速さでアルカ・ノイズに飛びかかり、アルカ・ノイズ達を一瞬にして切り裂く。

 

 

《ハリケーン!クリティカルストライク!》

『HURRICANE・CRITICAL・STRIKE!』

 

風魔はエネルギーが集まった刀をまるでプロペラのように回転させる。

 

「ハアアア…せあああ!!」

回転させて発生した竜巻はアルカ・ノイズを一箇所に集め、そこを狙って風魔は刀を振る。

振るわれた刀から真空の刃が放たれ、アルカ・ノイズを細切れにした。

 

 

 

――――――――――

 

 

全てのアルカ・ノイズが倒され、緒川と将也は本部に戻った夜。

翼は本部内の談話スペースで座り込んでいた。

 

(緒川さんも…宝条も…強かった)

思い出すのは、圧倒的な力を見せた将也と緒川の2人。

 

緒川に至っては身体能力のブーストも殆ど無い状態であそこまでの力を発揮し、改めて力の差を見せつけられたようだった。

 

その後司令から説明があったが、翼達が戦線復帰できるまでの間は将也と緒川、そして響の3人が中心となるらしい。

 

(だけど、私が戦うことは…)

緒川ほどの実力者が出た以上、心が折れた自分はもう必要が無くなるのではなかろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翼」

声をかけられ、顔を上げるとそこには白衣を着た将也がいた。

 

「宝条…」

「いつまでも座ってると、体を冷やすよ」

横に座った将也はコーヒーの入ったカップを差し出し、翼をそれを受け取る。

 

「……なあ、宝条」

「ん?」

翼はカップを握りながら聞く。

 

 

「何故、あの時お前は自分の命を一度捨ててまで私達を助けた?」

 

以前の戦いで、将也がリスクの高いゲンム・レベル0に変身したのは翼のゲーム病を抑制するためだった。

だが、翼が消滅しても上葉のプロトガシャットを取り返せばいずれ復元は可能だったかもしれない。

 

にも関わらず将也は自らの背負うリスクも顧みず変身し、挙句の果てには取り返せない命であるライフを一つ削った。

 

 

「………そんなの、最初から決まってる」

立ち上がった将也は振り返ることなく語る。

 

「俺の命はコンティニュー可能だ。でも、他の命はそうじゃない」

 

 

 

 

 

「もう二度と…仲間を、大事な人を目の前で失いたくなかったからさ」

 

ルナアタックで失われた仲間の命。

目の前で救えず、背中から消えていった少女の命。

 

これ以上仲間を失いたくなかった。その思いが将也を動かしていたのだ。

 

 

「そう…だったな。お前は、そういう男だ」

 

大事な人。そう言われ翼は知らぬ間に頬が緩む。

 

 

「そ・れ・に!」

振り返った将也は翼の肩を掴む。

 

「ほ、宝条!?」

「言ったよね?翼のことも俺は好きだって」

 

「なっ!?」

不意打ちの言葉に翼は顔を赤くした。

 

 

「好きな人に死んでほしくないなんて、当然のことだろ?」

「え、えっと、その//」

 

突然のことにパニクる翼だが、将也は翼の手を掴んだ。

 

「ちょ、ちょっと待って!まだ心の準備が!」

「何勘違いしてんの?早く病室に戻ろう」

翼の手を掴んで病室まで歩く将也。

 

 

「今は治療を終わらせる。返事は、それからでも待ってるよ」

 

 

「……宝条は、優し過ぎる」

 

 

 

やり方は違えど、自分のペースを掴ませないこのやり方はかつての友の面影を感じる翼だった。

 

 

 

 

 

「………宝条も、奏と同じで意地悪だ」

 

「ん?何か言った?」

「いや、何でもない」

翼は将也とつないでいる自分の手を見つめる。

 

 

兄のような存在の緒川とも、もう一人の父親同然である弦十郎ともどこか違う、大きな手の感触。

 

 

それを意識すると、翼は少しだけ胸が熱くなるのを感じた。

 

(私は…どうしたいんだろうか?)

胸の内に疑問を投げかける翼だが、その問いに答えるものはまだいなかった…

 

 

To Be Next GAME…?

 




次回、シンフォギアエグゼイドは!

「翼の…本当の気持ちを教えて?」
翼は、再び立ち上がれるのか!?

「私の…私の答えは!」
美しき防人と、蒼き勇者の心が重なり…


《月光・天羽々斬!》
第2の奇跡が巻き起こる!


「術式レベルスペシャル!」
そして…

「術式レベル50…変身!」

第19話 愛情のDUAL WING!

――――――――――

ゲーマドライバーライト
将也が『誰でも使えるゲーマドライバー』を目指して開発した試作機。
極限までバグスターウイルスをカットするフィルターをドライバーに仕込むことで適合者でなくてもこのドライバーを用いることでゲーム病のリスクを背負うことなく仮面ライダーに変身が可能。

ただし、ウイルスの力をカットしてしまったために戦闘能力の向上は殆ど望めないが、プロトガシャットやバグヴァイザーなどによる感染、及びノイズやアルカ・ノイズの持つ分解能力を無効化することができる。
性能としてはシンフォギアXDで登場した『RN式回天特機装束』に近く、1回の出撃の度にメンテナンスが必要。



ハリケーンニンジャガシャット
エグゼイドの夏映画『トゥルー・エンディング』でマキナビジョンが開発したガシャットを将也が独自にコピーしたもの。
ただしディレク時代に覗いたデータから作っているために本来のスペックには遠く及ばず、忍者プレイヤーも最大3体までしか呼び出せない。

だが、変身者である緒川の持つ高い戦闘力によってレベル4クラスの強さを出すことが可能。

また、将也が調整したことによって他の仮面ライダーと同じく変身時にセレクトパネルが出現するようになった。

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