戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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お待たせしました、第6話です!

何とかセレナの誕生日に投稿できましたが、誕生日記念ストーリーは書けませんでした…今のところ本編に登場する予定無いので。

あと、今回のラストの内容のためにタグを一つ追加しました。


活動報告のバグスター案はまだまだ募集していますので、よろしくお願いします。

感想、評価が作者の原動力です!



第6話 ガングニールとFriend!

将也がS.O.N.Gのメンバーたちの前から姿を消して2日。

 

石油コンビナートをアルカ・ノイズが襲撃してきたという情報が入り、響達はアルカ・ノイズと戦闘を繰り広げていた。

 

「ったく!毎度毎度数だけは一丁前だな!」

 

コンビナート付近のため、大火力の技が使えないクリスは悪態をつきながらアームドギアのクロスボウを使い、迫り来るアルカ・ノイズを撃ち落としていた。

 

 

「雪音!今はまず敵を殲滅する事を考えろ!」

 

翼は両足のブレードパーツを展開すると、逆立ちした状態で回転し、次々とアルカ・ノイズを切り裂く。

 

 

 

『逆羅刹』

 

 

「だけど!こんなに多いとキリがない!」

 

拳や蹴りで対抗する響も、いつも以上に数の多いアルカ・ノイズの軍勢に参っていた。

 

 

出動してから軽く400体は超えているが、一向に減る様子がないために装者達の心労は着実に溜まりつつあった。

 

 

 

「私たちも出動できれば…!」

 

「もっと簡単に終わるはずなのに…!」

 

 

モニターから見ていることしかできない状態をもどかしく感じる調と切歌。

 

 

先日の戦いでコア部分が損傷した2人のシンフォギアはエルフナインが改修中で、未だに出動できない。

 

 

「アルカ・ノイズの反応、さらに増大!」

 

「どこかにオートスコアラーの反応があるはずだ!探し出せ!」

 

 

アルカ・ノイズがここまで多く出てくるということは必ず、召喚している使い手の自動人形がいるはず。

 

必死になって反応を探すオペレーター達だが…

 

 

 

 

 

 

 

「司令!現場に宝条将也が現れました!」

 

 

報告とともにモニターが変更される。

 

 

そこには、ゲーマドライバーを装着した将也の姿があった。

 

 

 

―――――――――

 

 

「将也君!?」

 

響は報告を聞いてすぐに周囲を見ると、石油タンクの上に立つ将也を発見した。

 

 

「アルカ・ノイズだけか…まあ、ここじゃ戦いづらいな」

 

将也はポケットから紫のガシャットを取り出した。

 

 

 

「あれって…」

「新しいガシャットか…?」

 

3人の視線を気にすることなく、将也はガシャットを起動させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《マイティアクション!エーックス!》

 

 

起動音はあの時と同じ、マイティアクションX。

 

しかし彼の後ろに展開されたゲーム画面は黒と紫をベースにした画面となっており、ガシャットもあの時とは違い紫色だ。

 

 

このガシャットは『プロトマイティアクションX』。

 

 

マイティアクションXの試作品ガシャットであり、所謂ベータ版である。

 

 

 

しかしその性能は正規品のガシャットよりも強力であり、使用者にかかる負担を度外視すれば大きな戦力になる。

 

 

 

 

「変身!」

 

 

ガシャットのグリップに右手の薬指を引っ掛けた状態で目の前まで持っていき、ゲーマドライバーに装填する。

 

 

《ガッシャット!》

 

 

周囲を回転するキャラクターパネルから将也は左手を伸ばし、灰色のエグゼイドによく似たキャラクターを選択。

 

 

 

《レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?》

 

 

 

《アイム・ア・カメンライダー!》

 

 

 

黒をベースとしたデザイン以外はエグゼイド・レベル1と全く一緒のライダーに変身する将也。

 

 

 

「黒い…エグゼイド…?」

 

響は将也が変身したライダーがエグゼイドとは微妙に異なることに気づく。

 

「グレード2」

 

 

黒いエグゼイドはゲーマドライバーのレバーを開いた。

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

紫のゲートが通過し、黒いエグゼイドのレベル1ボディを弾き飛ばす。

 

 

 

 

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!》

 

 

黒と紫をベースカラーにした所を除けば、エグゼイドと瓜二つの姿をした仮面ライダー。

 

 

 

将也はもう一人のエグゼイドと言える『仮面ライダーゲンム』へと変身した。

 

「あれって、エグゼイド…?」

 

「だが、色が以前の姿と違う…?」

 

 

翼はゲンムから発せられるただならない雰囲気に警戒を強めていた。

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダー、ゲンム!」

 

 

 

胸のライダーゲージを左手でなぞるような動きでゲンムは宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

「コンティニューしてでも、クリアする!」

 

 

ゲンムはキメワザスロットホルダーのスイッチを押す。

 

 

《ステージ・セレクト!》

 

 

周囲の景色がドット絵のように変化すると、先程の石油コンビナートからどこかのアリーナのような場所へと変化していた。

 

 

 

「また景色が変わった!?」

「これもあのライダーシステムってやつの能力かよ!」

 

ゲンムはいつの間にか右腕にガシャコンバグヴァイザーを装着すると、アルカ・ノイズの軍勢に向けてビームを放つ。

 

 

赤いビームがアルカ・ノイズの体を貫き、一瞬にして赤い塵へと変えた。

 

「キサマらに用はない。アルカ・ノイズは全て削除する!」

 

 

ゲンムはバグヴァイザーをグリップパーツから取り外すと、180度回転させて装着する。

 

 

 

《ギュ・イーン!》

 

 

先端に付いていたチェーンソーが伸び、バグヴァイザーは近接戦用のチェーンソーモー

ドへと変化した。

 

 

「ハアアアア!!!」

 

高速回転するチェーンソーで次々とアルカ・ノイズを切断するゲンム。

 

 

その鬼気迫る姿に圧倒される装者達だった。

 

 

すると、突然どこからか緑の竜巻が吹き荒れ、アルカ・ノイズとゲンムを襲う。

 

 

「っ!」

 

 

咄嗟に距離をとったゲンムだが、アルカ・ノイズは竜巻に巻き込まれ、一斉に切り裂かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、思ったよりも勘がいいですわね」

 

 

いつの間にか現れていたのは、緑をメインカラーにした女性。

 

人間には到底難しいような珍妙なポーズをとった彼女の姿を見て、翼は声を張り上げた。

 

 

「お前は、あの時の!」

 

 

 

自動人形の1体、ファラ。

 

 

 

ロンドンで翼とマリアを襲撃したのは彼女であり、アルカ・ノイズの分解能力とファラの特殊兵装『ソードブレイカー』によって翼は敗北したのだ。

 

 

「剣ちゃんも、どうやら復活したギアは調子が良さそうですわね」

 

 

 

ファラは持っていた剣を翼に振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 

翼はすぐさまアームドギアで受け止めるが、一瞬にしてアームドギアがボロボロにになる。

 

 

 

「忘れましたか?私の剣はソードブレイカー。刀剣に該当する武器は私にとって脅威ではない」

 

 

ファラの能力の中でも一番の脅威はこのソードブレイカー。

 

刀剣類を問答無用で破壊するその能力は概念そのものに干渉し、剣と分類されたものを全て砕く恐ろしい能力。

 

 

基本性能こそ4体の自動人形の中では最底辺だが、自由自在に風を操る能力や戦闘能力の高さもあり、歴戦の戦士である翼から見てもかなりの強敵と認識している。

 

 

「見つけたぞ、自動人形!」

 

突然、翼とファラの間にゲンムが割り込み、バグヴァイザーで攻撃をする。

 

 

「あら、仮面の戦士さん。以前より黒くなったみたいだけど、どういうからくり?」

 

 

「お前に言う必要など、無い!」

 

ゲンムはバグヴァイザーで攻撃しようとするが…

 

 

「っ!」

 

ファラの放った斬撃によってバグヴァイザーのチェーンソー部分が僅かに亀裂が入ったのを見逃さなかった。

 

 

(まずい!ここでバグヴァイザーを破壊されるわけには!)

 

チェーンソーもどうやら刀剣の類に入るらしく、ファラのソードブレイカーは有効だった。

 

「考える暇は与えない!」

 

 

距離をとったゲンムだが、一斉にアルカ・ノイズが襲いかかってくる。

 

「うわっ!?」

響達の方にも襲いかかってきたようで、ゲンムはこの状態を打破する方法を考えていた。

 

 

 

 

 

 

「仕方ない…少し早いがこいつを使う!」

 

 

ゲンムはホルダーに提げていた黄緑色のガシャットを取り出し、起動させる。

 

 

《シャカリキ!スポーツ!》

 

後ろに表示されたゲーム画面から緑をベースカラーにしたマウンテンバイクが現れる。

 

 

「はあ!?何で自転車なんだよ!?」

 

クリスのツッコミを無視し、ゲンムはガシャットをスロットホルダーにセットする。

 

 

《ガッシャット!》

 

ゲンムは出現した自転車…スポーツゲーマに乗った。

 

 

「最速で殲滅してやる!」

 

 

 

スポーツゲーマを巧みに乗りこなし、ゲンムはアルカ・ノイズを次々と破壊していく。

 

 

機動力で翻弄し、前輪でアルカ・ノイズを叩き、アルカ・ノイズは手も足も出ずに砕かれていく。

 

 

 

《キメワザ!》

 

 

 

タイヤに膨大なエネルギーが集まり、ゲンムは必殺技を発動させた。

 

 

 

《シャカリキ!クリティカルストライク!》

 

 

高速回転するスポーツゲーマとゲンムは、まるで独楽のようにアルカ・ノイズを蹴散らした。

 

 

 

 

 

 

《会心の一発!》

 

 

ブレーキをかけるゲンムだったが、突然緑の斬撃が飛んでくる。

 

 

「油断大敵、ですわ」

 

不敵な笑みを浮かべるファラは、ゲンムに対し攻撃を仕掛けてくる。

 

 

《ガシャコンブレイカー!》

 

ファラの能力によって刀剣類が使えないため、ゲンムはガシャコンブレイカーをハンマーモードにして対抗するが、リーチが短い分決定打を与えられない。

 

(くっ!スポーツゲーマに乗ってもこの攻撃には対抗できない、かと言ってブレイカーやバグヴァイザーではこっちが厳しい…なら!)

 

 

反撃の手段が頭に思い浮かんだゲンムは、すぐさまガシャコンブレイカーのBボタンを押し、地面を叩く。

 

エネルギーをチャージされた状態で放ったため、コンクリートの床が砕け、ファラは吹き飛ばされる。

 

 

 

 

「予定外だが、こいつの本当の力をみせてやる!」

 

ゲンムはシャカリキスポーツをスロットホルダーから引き抜き、再起動させた。

 

 

《シャカリキ!スポーツ!》

 

再び表示されたゲーム画面にスポーツゲーマが収納され、再度出現。

 

 

しかし、色彩が微妙に変化し、さらにはゲンムの半分以下の大きさにまで小さくなっている。

 

 

「あいつ、何でわざわざ再起動させたんだ?」

 

 

 

「もしかして、こないだと同じように…」

 

響の予想は的中していた。

 

ゲンムはゲーマドライバーのレバーを閉じ、シャカリキスポーツをドライバーのもう一つのスロットに装填。

 

《ガッシャット!》

 

「グレード3」

すぐさまドライバーのレバーを展開した。

 

 

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

ゲンムの周囲をスポーツゲーマが走り回る。

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティーアクショーン!エーックス!》

 

 

 

 

 

《アガッチャ!》

 

 

 

 

 

 

《シャカリキシャカリキ!バッドバッド!シャカっと!リキっと!シャカリキスポーツ!》

 

 

 

上半身をスポーツゲーマが覆い、両肩には強力な武器になるタイヤ『トリックフライホ

イール』が装備されている。

 

 

特徴的なのは、スポーツヘルメットを模した装甲が頭部に追加されたこと。

 

 

 

将也は、ゲンムの強化形態『スポーツアクションゲーマー レベル3』へと変身した。

 

 

 

 

「自転車を…鎧に!?」

「チャリを着たアアアァァァ!?」

 

 

以前のエグゼイドとは全く異なる強化変身に驚く装者達。クリスに至っては驚きのあまり叫んだ。

 

 

彼女達を気にすることなく、ゲンムは右肩に装備されたホイールを外して投げつける。

 

 

「ふん、そんなもの!」

 

 

ファラは剣でホイールを弾くが、まるで自らの意思を持つように空中で急旋回、回転しながらファラを切り裂いた。

 

「ぐううっ!?」

 

服の右袖が破け、球体関節が露になる。

 

 

 

 

「強化リミッター、開放…!」

 

ゲンムが小さな声で呟くと、僅かだがゲンムの体が紫色に光る。

 

 

「はああ!!」

 

今までとは段違いのスピードで接近し、ファラを殴りつけるゲンム。

 

「急にスピードが…どういうこと…?」

 

 

 

 

 

 

 

「はあっハッハッハ!!!わざわざ説明する義理は無ぁい!」

 

 

 

強化リミッター。本来はゲーマドライバーで変身する仮面ライダーについている機能で、変身者の負担を抑えるために搭載されているシステム。

 

 

 

ゲンムは自らの意思でリミッターを外すことが出来るが、その反面体にかかる負担は非常に大きなものとなり、またどういうわけかリミッターを解放するとテンションが非常に高くなり、周囲から見れば非常に鬱陶しくなる。

 

 

が、元々高い戦闘力を持ったゲンムがリミッターを開放したことによって、その強さは段違いである。

 

 

「くらえええ!!」

 

 

バグヴァイザーを再び装着すると、ビームガンモードへと変形、エネルギーをチャージしてより強力なビームでファラを怯ませ、すかさずシャカリキスポーツのガシャットをキメワザスロットホルダーにセット。

 

 

《ガッシャット!キメワザ!》

 

 

ホイールを掴むと、黄緑やピンクといった様々な色のエネルギーがホイールに集まり…

 

 

 

 

《シャカリキ!クリティカルストライク!》

 

『SHAKARIKI CRITICAL STRIKE!』

 

「はああっ!」

全力で投擲されたホイールの表面が鋭利な刃に変形、必殺の一撃がファラに放たれた。

 

 

「ぐっ!アアアア!!」

 

 

剣で受け止めたファラだが、高速回転する刃によってあっさりと両断。

 

ファラの右腕、肘から下を切断し、ホイールはゲンムへと戻る。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「勝負アリ、だな」

 

ゲンムはファラに対してバグヴァイザーを向ける。

 

 

それと同時に、変更されていたステージが元に戻り、アリーナからコンビナートに戻る。

 

 

「ええ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最低限の目的は果たせたけど」

 

すると、後ろで爆発音が聞こえた。

 

 

響達が後ろを見ると、海上が炎に包まれている。

 

「何だと!?まさか、石油が海に流れたのか!?」

 

 

そう。ファラの狙いは最初からそれだった。

 

コンビナートを襲撃して、石油を海上に流し、爆発させる。

 

 

「転んでもただでは起きない、という言葉があるでしょう?」

 

 

 

一瞬、海上に注意が逸れたのをみてファラはバグヴァイザーを蹴り飛ばし、転がっていた右腕を回収する。

 

 

「ですが、今回の借りはいずれ返させていただきます」

 

 

テレポートジェムを使い、逃げ出すファラ。

 

 

鮮やかな逃走に、ゲンム達は為す術もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……右腕を失ったのは失敗でしたが、収穫はありました)

 

 

 

ファラは切断された腕の断面を見つめる。

 

 

(後はこの腕を、マスターに届ければ…)

 

ゲンムによって切り落とされた腕。

 

 

それがいずれ、彼らを苦しめる始まりとなることを、この時の将也達はまだ知らなかっ

た。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

《ガッシューン!》

 

ゲンムはファラに逃げられたことを知ると、ゲーマドライバーからガシャットを抜き、変身を解除する。

 

 

「…宝条…」

 

後ろから翼が声をかけると、将也は振り返る。

 

 

「…助かった。改めて礼を言う」

 

ギアを解除した翼が頭を下げるが、将也は別に…と小さな声で答えた。

 

 

 

「……前にも言いましたよね。錬金術師が暴れたら、介入するって。それだけのことですよ」

 

 

爆走バイクを起動させてバイクを召喚すると、ヘルメットを被って乗り込む。

 

 

「待って、将也君!」

 

 

響が声をかけると、将也はアクセルを踏み込もうとした足を止める。

 

 

 

「私は、貴方と一緒に戦いたい。いや、私だけじゃなくて調ちゃんや切歌ちゃん達も同じ気持ちだから…」

 

 

響の言葉に迷うような表情を浮かべた将也だが、すぐさまバイクのエンジンを点火して走り出す。

 

 

「将也君!」

響の叫びに、今度は振り返ることはなかった。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

将也が再び装者達の前から姿を消した翌日、パラドと将也の2人はアジトに戻っており、将也はパソコンを操作していた。

 

 

その横にはいくつかの装置が置いてあり、青をベースとした今までとは違う形のガシャットがセットしてある。

 

 

 

 

「………よし、できた」

 

画面に表示されていたのは、二つのゲームタイトル。

 

 

「…『パーフェクトパズル』と『ノックアウトファイター』、二つのデータは思ったよりも早く集まったな。やっぱり、こいつのデータを取れたのは大きかった」

 

 

将也はマイティブラザーズXXのガシャットをチラリと見る。

 

 

元々マイティブラザーズは今開発中のこのガシャットを作るための試作品という意味合いが強かった。

 

 

 

一人のエグゼイドを二人で変身できるようにする。

 

 

異なる2人のエグゼイドの戦闘データを集める事によって、ジャンルの異なる2種類のゲームを一つのガシャットに集め、上手くバランスをとったのだ。

 

 

パソコンのエンターボタンを押すと、ガシャットの表と裏にそれぞれのゲームタイトルが表示された。

 

「できたのか?」

 

 

扉を開けてパラドが入ってくる。

 

「ああ」

 

将也は完成したガシャットをパラドに投げ、パラドは片手で受け止める。

 

 

形はマイティブラザーズと同じ2枚重ねのような分厚いデザインだが、普通のガシャットと違い黄色いダイヤルのようなものが付いていた。

 

 

「ガシャットギアデュアル。収集データがこないだの1回しかなかったからレベル50の力を発動させることしかできない。それもまだ制限時間付きだ…」

 

 

「いや、今は十分すぎるさ。これで俺も本格的に戦えるってことだしな」

 

 

今までブレイブをメインで使っていたが、パラドと相性のいいガシャットはこのガシャットギアデュアルに保存されているゲームである。

 

 

しかし、今はギアデュアルのデータが不足しており、ゲーマドライバーと連動させるには至らない。

 

 

「…なあ、将也。そろそろいいんじゃないか?」

 

ガシャットを受け取り、笑顔を見せていたパラドだったが、急に真面目な顔になる。

 

 

「…何がだ?」

 

 

「決まってんだろ。S.O.N.Gから何度も誘われてんだし、向こうと力を合わせたっていいと思うぜ」

 

 

 

パラドからすれば、S.O.N.Gから仲間に誘ってくれたのは正直幸運だった。

 

司令官の風鳴弦十郎は間違いなく信用に足る人間だろうと考えており、シンフォギア装者達との関わりは他者に対して心を閉ざしている将也にとってプラスの要素をもたらすと思っていた。

 

 

正直、確たる後ろ盾もない状態でバグスター達やノイズ、錬金術師を倒し、ゲムデウスを見つけ出すのは非常に難しい。

 

 

だからこそ、情報収集能力の高いS.O.N.Gならばゲムデウスを見つけるのにも苦労することがないと考えていたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど、今の僕は彼女達と協力できない」

 

将也は、自分が壊れかけていることを自覚している。

 

ハヤトを喪い、彼の中にはゲムデウスに対する復讐心が芽生えていた。

それは決して小さいものではなく、次に敵のバグスターと遭遇したらこの怒りを抑えられる自信がない。

 

 

それに、戦う理由すら忘れてしまった自分がもし響達と一緒に戦った時、バグスターと出会ったら…

 

 

我を忘れ、彼女達を巻き込んででもバグスターを削除しかねない。

 

 

自分でもそう思っているからこそ、S.O.N.Gの仲間にはなれないと思っていた。

 

 

「だからあの時、他の装者達を敵に回すようなことを言ったのか」

 

頷いた将也はパソコンの電源を落とし、いつもの白いジャケットに袖を通す。

 

 

「どこ行くんだ?」

 

 

 

 

 

「…ちょっと散歩。お前も来るか?」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

街中を歩く将也とパラド。

目的は無いが、胸の内のもやもやを振り払うための散歩だった。

 

 

 

 

当然、そこで顔見知りに会うなんて、全くの想定外であった。

 

 

「あれ?将也君、パラド君?」

 

 

後ろから声をかけられて振り返ると、そこにはリディアン音楽院の制服を着た響と未来、そして彼女達の友人らしき少女3人がいた。

 

「…どうして?」

 

 

さすがの将也も、気分転換の散歩で今距離を取っている最中の相手と遭遇するとは考えておらず、内心焦っていた。

 

 

 

「えっと…私は今日、未来達と一緒に遊ぼうと思って来たんだ。ほら、ここの所ずっと任務ばっかりだったし…」

 

 

「なるほどね…って、それ後ろの人達の前で言っていいの?」

 

 

「うん、皆知ってるから…」

 

 

すると、未来が響の服の袖を引っ張る。

 

 

「どうしたの、未来?」

「…響、危ないって。あまりこの人とかかわらない方が…」

 

 

正直なところ、装者達に対してお世辞にも友好的とは言えない態度を取ってきた将也を未来は警戒していた。

 

 

以前響達がイグナイトモジュールの起動に失敗したとき、響達から無理矢理フォニックゲインを奪ってマイティブラザーズを起動させた。

 

 

そのため、未来は将也が響達を傷つける可能性があると考えていた。

 

しかし、響達と仲間になるつもりが無かった将也にとって彼女の態度は寧ろやりとりがしやすく、味方として見られるよりはいいと判断していた。

 

 

 

 

「悪いけど、俺達はこれで帰る…」

「待って!」

 

慌てて響は将也の手を掴んだ。

 

 

「響…」

 

 

「大丈夫、将也君も私達も、目指す目標は同じなんだから。戦いじゃなければ、分かり合えるはずだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、互いにもっと分かり合わないか?」

以外にも響に助け舟を出したのはパラドだった。

 

「パラド!?」

 

 

思わぬ援軍に驚く響だが、これは好機到来と考える。

 

 

 

「じゃあ、これから一緒に遊ばない?これから近くのゲームセンターとカラオケに行こうと思ってたんだけど…」

 

 

「ゲームか…俺は構わないけど、後ろの3人にも聞いたほうがいいんじゃいか?」

 

 

パラドが言ったのは、ちょうど後ろで話についていけそうになかった3人。

 

 

「あー!そうだった!」

 

響と未来が3人に説明をしている間、将也はパラドに耳打ちをしていた。

 

 

(おい、なんのつもりだよパラド!)

 

 

(俺は良かれと思って判断したんだ。万が一装者と手を組む必要が出てきたとき、少しでも互いのことを知っておいて損はないはずだろ?)

 

 

 

 

 

 

もうどうにでもなれ…内心諦めた将也だった。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

響と未来の友人である3人の少女と将也、パラドは歩きながら互いに自己紹介することとなった。

 

 

「僕は、宝条将也。えっと…よろしく?」

 

 

S.O.N.Gのメンバーとパラド以外とは殆ど会話をしていなかったことでいかんせんぎこちない将也だった。

 

 

「俺はパラド。ゲームと名のつく物なら何だってクリアできる、将也の相棒だ」

 

自己紹介でもゲームが得意だと言い切るパラドはぶれることはなかった。

 

 

「まさかビッキーに男の子の知り合いが居るなんてね~。私は安藤創世。よろしくね、まさやん、パララン!」

 

 

「まさ…やん?」

 

「ちょ、パラランって…」

 

 

珍妙なあだ名に思わず声を上げる2人に対し未来が説明をしてくれた。

 

 

 

「…創世はね、親しい人を渾名で呼ぶんだけど…基本的にそれが独特すぎてあまり浸透しないの。だから、気にしないであげて?」

 

 

「…了解」

 

パラドは小さな声で返事をする。

 

 

今度は一番背の小さいツインテールの少女が声をかけてきた。

 

 

 

「私は板場弓美!それにしても二人の関係は相棒って…なんかアニメ的な雰囲気だよね?」

 

 

 

「はあ?あ、アニメ?」

 

 

「そうだよ!2人とも響のこと知ってるってことは、同じように変身とかしたりするんでしょ!?やっぱり響が使うようなアニメチックな感じに?それともロボット的なパワードスーツとか!?」

 

 

 

ものすごい勢いで迫り来る弓美に、思わず後ずさりする将也とパラド。

 

 

 

流石の仮面ライダー達も、彼女の独特な感性には敵わなかった。

 

 

「板場さん、宝条さんとパラドさんが困ってますわよ」

 

「あ、ごめん…つい熱くなっちゃって…」

 

ヒートアップした弓美を止めたのは、おっとりした雰囲気の少女。

 

 

「申し遅れました。私は寺島詩織と申します。よろしくお願いしますね?」

 

 

「ああ…」

 

「よろしく…」

 

 

 

比較的普通な感じがしたので内心ホッとしている将也とパラド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お二人共随分格好いい殿方ですが…お二人のうち、どちらか立花さんの恋人ですか?」

 

 

 

 

前言撤回。この場においてとんでもない爆弾、いや核爆弾を投下してきた。

 

「え……えええ!?///」

 

「は…!?」

 

「おいおい……」

 

 

響と将也は慌て、パラドは愉快そうに見ている。

 

 

 

 

「ちょちょちょちょっと!何言っちゃってるの!?」

赤面して慌てる響をみて悪乗りする創世と弓美。

 

 

「随分と慌てちゃって、怪しいなぁビッキー」

 

 

「で、そこんとこ詳しく教えて!」

 

 

悪乗りが過ぎた二人に対してため息をつきながら違うと言い切ろうとする将也だったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことあるはずない…よね?」

 

 

瞬間、今までに感じたことのないレベルの殺気を感じ、無意識のうちに将也は懐に入れていたガシャットを掴み、パラドは先程渡されたギアデュアルを掴んでいた。

 

詩織以外のメンバーが後ろを向くと、そこには見惚れるくらいの、それでいて温かみを感じない笑顔を浮かべた小日向未来がいた。

 

 

「え…えっと…未来?」

 

響が恐る恐る声をかけるが、未来は一切表情を変えないまま話す。

 

「皆変なことばっかり言うんだから…ねぇ、響」

 

 

「は、はいっ!!」

 

思わず背筋を伸ばし、敬礼してしまう響。

 

 

 

「響が宝条君かパラド君と付き合うなんて、そんなわけ

 

 

 

 

 

ないよね?」

 

素敵な笑顔を浮かべる未来だが、正直な話ノイズやこれまで戦ったバグスターよりも遥かに恐ろしかった。

 

 

「ヒイイッ!?」

 

「あ、ありません!」

 

 

弓美はもはや涙目になり、響は恐怖のあまり敬語になった。

 

「あらあら…」

 

 

あくまでも態度を崩さない詩織に創世が耳打ちする。

 

「…ねぇ、どうすんの?ヒナ、本気で怒ってるけど…」

 

 

どうやら、未来の前でこの話題は禁句だったらしい。

 

 

バグスターやノイズが出た時よりも恐ろしい雰囲気の中、未来は笑顔を保ったまま、将也とパラドに近づく。

 

 

「宝条君も、パラド君も……響に対してやましい感情なんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

持ってるはず、無いよね?」

 

「!?あ、ああ…」

 

 

(なんだよこれ!?今まで戦ったどのバグスターよりも怖えぇぇ!?)

 

 

「あ、当たり前だろ?」

 

 

(何なんだこれは……心が………震える…!?)

 

この間戦ったキャロルよりも恐ろしく、全くと言っていいほど勝てる気がしなかった。

 

ハイライトの消えた瞳に、将也とパラドは思わず臨戦態勢になっていたが、心の奥から

湧き出てくる恐怖心で無意識のうちに手が震えていた。

 

 

 

「そっか」

 

 

その答えに満足したのか、未来はいつもの調子に戻った。

 

「じゃ、じゃあ早速出発だね!」

 

 

創世と響が先頭に立って動き出し、7人は歩き出した。

 

 

―――――――――

 

 

 

 

目的地へと向かって歩く一行。

 

 

そんな中、未来が将也に話しかけてくる。

 

 

「あの…宝条君」

 

「ん?どうかしたの?」

 

 

 

つい数分前までの殺気に満ちた雰囲気はすっかりと消え、未来はどこか申し訳なさそうな表情で話しかけた。

 

 

「えっと…さっきはごめんなさい。あなたに対して失礼な事を言って…」

 

将也に対して警戒していた未来だが、友人達と意外にも打ち解けていた(少なくともそう見えている)将也に対して少しだけ警戒心を抑え、さらに響がミカによって傷を負った時に彼らが助けてくれたことを思い出し、今までの態度は失礼だと冷静になって考えた。

 

 

「…別にいいよ。僕はただ、彼女達を都合よく利用しただけだし」

 

 

それだけ言うと、また何も喋らなくなる将也。

 

機嫌を損ねてしまったのかと考える未来だが、パラドが話しかけてくる。

 

 

「悪いな。今の将也は、色々参ってんだ」

 

 

大事な人を失う気持ち、未来も一度味わったことがある。

 

ルナアタックのときに響、翼、クリスは地球に迫る月の欠片を破壊するために空に飛び立ち、一度行方不明になった。

 

 

大事な親友である響を失ったと思い、一度はショックのあまり彼女の墓前で泣き崩れたことがある(実際にはその直後に再開した)未来にとって、その喪失感は何となくだがわかった気がした。

 

ほどなくして、一同は新しくできたゲームセンターに到着。

 

 

「えっと…そういえばどうしてゲームセンター?」

 

 

将也の質問に響が答える。

 

「だって将也君って、ゲーム好きでしょ?」

「まあ…そうだけど…」

 

思い返せば、聖都町が壊滅して以降、ゲームセンターには立ち寄っていない。

 

 

ゲムデウスを倒すことを優先していたことも理由だが、昔と違いゲームを楽しむことができなくなったのではないかと思ったことが理由である。

 

 

そのためにゲームセンターを敬遠していたのだが…

 

 

 

 

店内に足を踏み入れた瞬間、将也は昔の感覚を思い出した。

 

 

「…久しぶりに暴れてみるか」

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

数分後、レースゲームで響達5人を圧倒する将也の姿があった。

 

 

「っしゃぁ!これで5連勝!」

「う~!負けた~!!」

 

 

子供のように駄々をこねる弓美。

 

そもそもの始まりは響がレースゲームをやってみようと提案したのが始まりだった。

 

 

最初の渋々した様子から一変、子供のように目を輝かせていた将也は彼女達のうち一人でも自分に勝ったら全員分の昼食を奢ると宣言した。

 

未来、響、創世、詩織と続きチャレンジしたが、完敗。

 

 

かつて聖都町で最強と言われた『ゲーマーM』の強さは健在だった。

 

 

「まさやん強すぎ~…ちょっとは手加減してくれてもいいのに~」

 

創世の言葉に対して将也が返す。

「賭けがある勝負だからね、俺も本気で行かせてもらうよ」

 

 

 

すると、今まで静観していたパラドが立ち上がる。

 

「だったら将也。久しぶりに俺とガチの勝負しないか?」

 

 

次の瞬間、パラドと将也の間の空気が張り詰め、緊張のあまり5人がドキドキしながら2人を見る。

 

 

「いいぜ。その勝負、乗った」

 

 

再び筐体に100円を投入し、ゲームを始める将也。

 

 

 

「俺とお前の本気の勝負。心が躍るなぁ!」

 

 

 

互いにハンドルを掴み、勝負が始まった!

 

 

 

 

「「ゲーム、スタートだ!」」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

レースは白熱していた。

 

将也の操る車とパラドの操る車が何度かぶつかりながらも進み続ける。

 

「おお!また将也君が追い抜いた!」

 

 

「いや、パラランが妨害した!」

 

熱い戦いにギャラリー達も盛り上がる中、2人のプレイヤーは真剣な目で勝負を繰り広げていた。

 

 

 

「こいつで…フィニッシュだ!」

 

最後の直線コースに入り、アクセルを一気に踏み込む将也。

 

 

「もう少し…で!」

 

 

同時に踏み込んだパラド。

 

 

 

 

ほぼピッタリにゴールに入った2人のうち、勝利したのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしゃあ!パラドに勝ったァ!」

 

 

 

わずか0.1秒差で将也が勝利を手にした。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

それから数時間後、一通りゲームを楽しんだ将也達は響達女子メンバーに引っ張られてカラオケに突入。

 

 

終盤は味を占めたパラドと弓美の独壇場になりつつあり、弓美の勧めで気に入ったアニソンを2人で熱唱するというカオスな雰囲気になっていた。

 

「なんていうか…パラド君がアニソンにハマるって、正直意外だよね…」

 

 

響の言葉に将也も苦笑いして返す。

 

 

「あいつがあそこまで楽しそうにするなんて、ゲーム以外では見たことなかったからな…」

 

 

 

そう言っているが将也の顔はいつものようなどこか険しい表情ではなく楽しそうな顔をしていた。

 

 

(やっぱり、将也君は悪い人なんかじゃないよね…)

 

 

これまでの戦いだってそうだ。

 

 

最初の出会いはネフィリムに襲われたとき、黄金のエグゼイドとなって颯爽と現れた。

それからしばらくして現れた時には切歌と調の命を救ってくれたし、キャロルとの戦いでは自分達を助けてくれた。

 

先日の戦いでも周囲に被害が出ないように別空間を作り、その内部で戦闘を行った。

 

 

 

 

「ねえ、将也君」

 

響は、先日からずっと伝えることができなかった言葉を将也に伝えた。

 

 

「ありがとう。何度も私達を助けてくれて」

 

突然の言葉に面食らったのかキョトンとした表情の将也だが、すぐにいつもの仏頂面に戻る。

 

 

 

 

 

「…言っただろ。僕の目的はあくまでもゲムデウスと、錬金術師達人間に危害を加える敵を倒すことだって」

 

 

 

 

 

「それでも、将也君には感謝してるんだよ。私だけじゃない。調ちゃんや切歌ちゃん

も、将也君にお礼を言いたがってた」

 

 

 

あの時、もしも将也が間に合わなかったら切歌の目の前で調はアルカ・ノイズによって残酷な形で殺されていたかもしれない。

 

 

命を懸けることができるほどまでに切歌は調のことを大切に思っている。

もしも目の前で調が殺されていたら、切歌は心に一生消えない傷を負っていたのかもしれない。

 

 

「あの時、調ちゃんと切歌ちゃんの笑顔を守ってくれたことは、皆が感謝してるんだよ」

 

 

 

 

笑顔を守る。

 

 

響の言葉を聞いて、将也の脳裏に何かがよぎった。

 

 

 

 

 

 

(僕は、…………の笑顔を……戻…た…!)

 

 

 

 

 

 

 

一瞬頭の中に流れたビジョンに驚く将也だったが、表情を変えることなく歩く。

 

 

 

「だからせめて言わせて欲しい。2人の命と、笑顔を守ってくれて…」

 

 

 

 

 

「ありがとう、将也君!」

 

 

そのあとのことを、将也はよく覚えていない。

 

 

 

ただ何となく覚えているのは、響達から逃げるように姿を消したこと。

 

 

そして、響の伝えた『ありがとう』『笑顔を守る』といった言葉だけが延々と将也の頭の中を駆け巡っていた。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

キャロルの本拠地、チフォージュ・シャトー。

 

 

自動人形ですら滅多に立ち入らない城の奥深くで、キャロルは切断されたファラの腕の断面からあるものを採取した。

 

 

 

 

「これが……奴の力の源、バグスターウイルスか」

 

ファラの腕から採取されたのは、ゲンムの必殺技の際に付着したバグスターウイルスの欠片とでも言うべきもの。

 

 

 

感染力は無く、バグヴァイザーでの培養も難しいほどの量しかないが、キャロルにとってはこの量で十分だった。

 

 

 

 

「どうやら、無事に変異体のサンプルは手に入れたようだな」

 

 

突如後ろから聞こえた声にキャロルは振り返ることもなく答える。

 

 

「キサマ、また無断で侵入してきたな?」

 

 

キャロルの後ろにいたのは、将也よりも少し年上の青年。

 

派手な金髪にガラの悪い服装と、お世辞にも好印象とは言い難い人物だったが、青年は気にすることなくどこからかトランクを取り出す。

 

 

 

「お前が欲しがっていたものを持ってきた」

 

 

 

青年がトランクを開ける。

 

 

その中には、9本のライダーガシャットが入っていた。

 

 

通常のガシャットと異なるのは、9本全てのカラーが黒で統一されており、ゲームタイトルの部分が全てモノクロになっているということ。

 

 

 

 

「これがプロトガシャットか…」

 

 

 

キャロルはどこからか取り出したメモリーカードのようなものを青年に渡し、青年も黒いガシャット…プロトガシャットの入ったケースを交換する。

 

 

「良い取引が出来たことを感謝する」

 

 

「フン。心にもないことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲムデウス」

キャロルが青年の本当の名前をつぶやく。

 

すると、青年は黒いオーラに包まれ、人間とはかけ離れた外見へと変化する。

 

黒と金をベースとした外見。

 

頭部に目立つ一本角に、背中には金色の翼。

 

そしてドラゴンの頭を模した両肩の金色の鎧。

 

 

彼の名前はゲムデウスバグスター。

 

 

将也が追う、最強最悪のバグスターである。

 

 

 

 

ゲムデウスは何も言わずにシャトーから姿を消し、キャロルはプロトガシャットの入ったケースを持ちながら歩き出す。

 

 

 

 

(…やはり、今のオレではエグゼイドやゲムデウスには勝てない…)

 

 

認めたくはなかったが、力の差は歴然だった。

 

数百年という長い年月を生きてきたキャロルでさえ知らない力を使うエグゼイド。

 

 

『万象黙示録』の完成のために動き出す数ヶ月に突如現れたゲムデウスは、自分達に取引をもちかけてきた。

 

 

曰く、近い将来キャロルの悲願の邪魔をする敵が現れる。

 

半信半疑だったキャロルだが、エグゼイドの存在によって計画に必要だったミカが破壊寸前まで追い込まれ、さらにファウストローブを纏ったキャロルですらエグゼイドには勝てなかった。

 

だからこそ、キャロルは悔しさを抑えてゲムデウスとの取引に応じた。

 

 

しかし、キャロルは薄々ゲムデウスの企みに気づいている。

 

 

 

(…このままゲムデウスの思い通りに行動したところで、奴の捨て駒にされるのは目に見えている…)

 

「一刻も早く、こちらも切り札を準備しなくてはな…」

 

 

キャロルが訪れたのはシャトーの最深部にある研究室。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目には目を。仮面ライダーには仮面ライダーをぶつけるしかないか」

 

キャロルの目の前には人がちょうど1人入れるほどの大きさのカプセル…生体ポッドがある。

 

その中に入っていたのは1人の少年。

 

 

右手や左足などが欠損しているが、ポッドの中で少年は確かに生きていた。

 

歳は18歳ほどだが、あどけない顔がより一層少年を若く見せている。

 

 

 

そして特徴的だったのが、彼の両腕に付けられた『鳥の顔を模した腕輪』。

 

 

 

 

「待っていろ…いずれお前が自由に生きていけるようにしてやる…」

 

 

キャロルは愛しそうに生体ポッドの表面に触れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレに力を貸してくれ………『千翼』」

 

 

 

ポッドから手を離したキャロルは、テーブルの上に置いてあった赤いベルトをそっと手にとった。

 

 

To Be Next GAME…?

 

 




次回、シンフォギアエグゼイドは!



「想い出回収作戦、開始!」

自動人形、総攻撃!


「変身」
パラド、新たな変身の時!

「俺が戦う理由は…!」


思いが交錯する中…

「目の前の命を救うために!」

仮面ライダーエグゼイド、本当のスタート!

《ドラゴナイトハンター!ゼーット!》
「大・大・大・大・大変身!」

第7話 DRAGONでぶっ飛ばせ!

――――――――――


今回のラストに登場したキャロル陣営の新メンバーに関しては、いずれ近いうちに出番を作ります。


ゲンムの決め台詞ですが、本編で神がレベル1で使っていたのでそのまま採用することにしました。


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