戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士   作:狼牙竜

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お待たせしました、第5話です!

ついに平成ジェネレーションFINALの一部情報とエグゼイドVシネマの情報がある程度解禁されましたが…


おかえり神様、弦ちゃん、映司、アンク!!

あとVシネマの黎斗神、予想の斜め上を行く新ガシャットに笑いがこみ上げてきました。


では、今回もお楽しみください。


感想、評価が作者の原動力になります。

また、活動報告のアンケートも募集を続けておりますので、よろしくお願いします。


OP Exterminate

ED Rebirth-day



第5話 失われたOrigin!

………いつもの場所だ。

 

 

 

目を覚ますと、そこは真っ暗な闇の中。

 

唯一見えるのは、仮面の戦士達と怪物の戦い。

 

 

今日はどんな戦いが見れるんだろうか?

 

 

 

 

 

3つ前はバイクに変身するヒーローが黒い鎧で人型になった。

 

 

2つ前は銃使いがオレンジの鎧で空を飛んだ。

 

 

1つ前はピンクのヒーローがドラゴンの鎧でパワーアップした。

 

 

今日は一体どうなるのかな?

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

気を失った将也が医務室に運ばれてから数十分。

 

脳の血管があちこち切れており、非常に危険な状態だったが医務室に運ばれた直後に急速に回復。

現在は眠りについている。

 

 

そして司令室では、装者達及び弦十郎達といったS.O.N.Gの中心メンバーを前にパラドが立っていた。

 

「あ、あの……」

 

おずおずとパラドに話しかけたのは未来。

 

「どうした?」

 

 

「えっと…この間は、響を助けてくれてありがとうございました!」

 

 

この時点でパラドはようやく未来が響と一緒にいたことを思い出した。

 

 

「ああ!あの時の子か!」

 

すると、弦十郎が咳払いをしてパラドの目を向けさせる。

 

「すまないが、話を聞いてもいいだろうか?」

 

 

「ああ。まずは自己紹介からだな。俺はパラド。簡単に言えば将也の…相棒ってところだ」

 

 

そう言うとパラドは近くの椅子に腰掛けた。

 

 

「まずは最初に、あんたたちの聞きたいことに関して答えたいと思う。質問は?」

 

 

すると、エルフナインが質問をしてきた。

 

 

 

「では、貴方達が使っていたシステム、その力の源に関して教えてください」

 

 

 

 

 

パラドは目をつぶると、ゆっくりと語りだす。

 

 

 

「俺達の力の源………それは、バグスターウイルス」

 

 

「バグスター…」

「ウイルス…?」

 

クリスと翼は、パラドの言葉を復唱した。

 

 

「まあ簡単に言えば、新種のコンピュータウイルスってところだ……人間に感染するという、病原ウイルスの特性を持った、な」

 

 

 

 

 

「何だと…?」

 

「人体に感染する…コンピュータウイルス…?」

 

 

突然の話に、誰もが戸惑いの声を上げる。

 

 

「そりゃあ簡単には信じてもらえないよな?だったら、バグスターに関して詳しい説明をしようか」

 

 

パラドはどこからかバグヴァイザーを取り出すと、中央の画面を見せる。

 

そこには、先程の戦いでキャロルが出現させた空母型ノイズと同じ顔をした怪物が映っていた。

 

「この怪物が、バグスター…」

 

 

「そう。そしてバグスターの感染源は…」

 

さらにバグヴァイザーを操作すると、空中に映像が表示される。

 

 

「主に感染したコンピュータを通じてのパターンが多く、通常は人から人への感染は無い」

 

 

パラドはバグヴァイザーをしまうと、説明を続けた。

 

 

「もう一つ気をつけて欲しいことがある。それは、バグスターウイルス感染症、通称ゲーム病に関してだ」

「ゲーム病?」

 

響が病名について気になったのか、聞き返す。

 

 

「ゲーム病。そう言われている理由は、バグスターの殆どがあるゲームのキャラクターを模した姿になっているからだ」

 

 

そして…と一端言葉を切ると、パラドは衝撃的な事実を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、将也に感染しているバグスターだ」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

「パラド君が…バグスター?」

 

 

響の声は、信じられないといった感情が伝わる。

 

無理もない。目の前の青年はどこからどう見ても人間。それなのに自身をウイルスだというのだ。

 

 

 

「俺は色々と存在自体が特殊なバグスターだ。それに、将也とは生まれた時からずっと感染していることで、人間の遺伝子を持ったバグスター…まあ要するに半分人間のバグスターって存在になってる」

 

 

パラドの説明によるとこうだ。

 

 

曰く、バグスターは人間に感染することで現実世界で肉体を得る。

 

 

感染者は『存在力』を少しづつバグスターに奪われ、感染者のストレスによって進行が早まる。

 

 

症状が進行して感染者の肉体が完全に消滅することで、バグスターは人間への感染をすることなく自由に肉体を得られる『完全体』へと進化する。

 

感染者を救うには、バグスターを倒すなどの手段で『攻略』をする必要があり、それを行えるのはあらかじめバグスターウイルスへの耐性を持った仮面ライダーのみ。

 

 

ここまで説明すると、パラドはゲーマドライバーを取り出した。

 

「因みに仮面ライダーに変身するのに必要なのがこのゲーマドライバー。ただこいつを扱うには肉体がバグスターへの抗体を持っていないといけないうえに、人間用であるこいつはバグスターには扱えない」

 

 

 

 

「そうか…では君と宝条君がそのベルトを使えるのは…」

 

 

弦十郎の言葉に正解と言わんばかりの笑顔を浮かべるパラド。

 

 

 

「その通りだ!俺は人間である将也の遺伝子を持ったバグスター。そして将也は長年俺に感染したことによってウイルスへの耐性を持ち、互いにゲーマドライバーの使用条件を満たしている。これが俺達が仮面ライダーへと変身できる理由だ」

 

 

そんな中、クリスは今までパラドが行っていた言葉の中で気になった事を聞く。

 

 

 

「そういえば、さっきの戦いでエクスドライブを使ったとか言ってたけど、あれってシンフォギアのシステムのはずだろ?何でシンフォギアと関係ないはずのそっちがエクスドライブを使えんだ?」

 

 

クリスの質問に少し悩んだ顔をするパラドだが、すぐに説明する。

 

 

 

 

「今から3ヶ月くらい前…俺達のバグスターウイルスは、ある理由から突然変異を起こしたんだ」

 

3か月前。そこから連想されたものはただ一つ。

 

 

「それってまさか…フロンティア事変!?」

 

マリアの予想は的中した。

 

 

「その通り。3か月前、そっちの言うフロンティア事変とかで膨大な量のフォニックゲインが集まった。それはシンフォギアの力を再び全開まで高めただけじゃなく、俺達の体やライダーシステムにもある変化を起こした」

 

 

 

 

 

「ガシャットの起動に必要だったのはゲームのデータとバグスターウイルスだけだったんだが、どういうわけかレベル10以降のガシャットはフォニックゲインが集まらない限り起動しなくなった」

 

 

 

 

 

パラドはマイティブラザーズのガシャットを取り出して全員に見せる。

 

 

「このガシャットはレベル10から20。さっきの戦いでフォニックゲインをかき集めたことによってようやく起動したんだが、将也は3人分のフォニックゲインを一時的にブーストすることによってレベルを超越した性能を発揮できる状態…わかりやすく言えば、擬似エクスドライブといった状態で使ったのさ」

 

 

 

 

 

 

そこまで説明がされた中、マリアはふと浮かんだ疑問を口にする。

 

 

「でも…これまでバグスターやゲーム病なんて、聞いたことないわよ?」

 

幼い頃から裏の世界にある程度関わりがあり、今では国連所属のエージェントであるマリアだが、ゲーム病といったことに関しては聞いたことがない。

 

 

これはマリアだけでなく弦十郎達も同じだった。

 

 

 

 

 

 

「そりゃそうさ。だって今までのゲーム病患者は全員、俺達『3人』で治療してきたんだからな」

 

 

3人。確かにパラドはそう言った。

 

 

「え…3人?」

「将也さんと、パラドさんと…あれ?」

 

 

今まで自分達の前に姿を現したのは、将也とパラドの二人のみ。

 

 

「もう一人、俺たちの他にライダーがいたんだよ」

 

パラドは、過去形で返す。

 

 

その意味は、ただ一つ。

 

 

「もしかして…そのもう一人の仮面ライダーって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消滅した。あの日…ルナアタックの日にな」

 

ルナアタック。

それは響達の最初の戦いに決着がついた日。

 

そして、将也の故郷である聖都町が壊滅した日。

 

 

あの日、宝条将也は故郷だけでなく、仲間の仮面ライダーまでも失ったという。

 

 

「教えてくれ!あのルナアタックの日に一体何があったんだ!?」

 

 

弦十郎の剣幕に、パラドはゆっくりと話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「あいつの名前は、久城ハヤト。3人目の仮面ライダー、レーザーだった」

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

ハヤトとの出会いはあくまでも偶然。

 

 

当時聖都町でのみ確認されていたバグスターウイルスに感染した少年の兄が、弟を助けるためにバグスターに挑んだことがきっかけ。

 

そのバグスター、モータスは専用のバイクで移動するためにエグゼイドやブレイブといったライダーでは対処が非常に難しく、対抗するには爆走バイクのガシャットで変身する仮面ライダーと、その乗り手が必要だった。

 

 

それに立候補したのが久城ハヤト。彼は爆走バイクのガシャットを起動させ、ウイルス

に苦しみながらも耐え抜き、ガシャットの適合者である仮面ライダーレーザーへの変身を果たす。

 

 

自らの体をバイクへと変形させるレーザーは、運転手を乗せることによってはじめてその真の力を最大まで引き出せる。

 

激しいレースの末、モータスに勝利した将也達。

 

 

しかし、ハヤトはガシャットを返す気などなかった。

 

 

 

「自分が少しでも頑張れば、バグスターやノイズから誰かの命を救えるんだろ?」

 

 

普段はどこか飄々としていたが、家族がバグスターによって命を失いかけたことで、バグスターの恐怖を知った。

 

 

だからこそ、救える力があるなら一人でも多く救いたい。

 

 

「だったら乗ってやるよ。自分も、あんたたちの力になりたい」

 

 

ハヤトの印象は一言で表せば、『頼れる兄』。

 

 

実際、自分たちより年上だった彼はいざという時は頼れるリーダーだったハヤトの加入によって、たった二人でバグスターを倒していた時とは少しづつ心の持ちようが変わっ

た。

 

 

 

強さだけでなく他人を笑顔にしてくれるハヤトに、相手を倒すためだけに戦うだけだった将也は誰かの笑顔を守ることの大切さを理解した。

 

 

しかし、そんな日も長くは続かない。

 

 

 

 

月の一部が突然砕けたあの日、すべての運命が狂い始めた。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

月の一部が砕てからほどなく、聖都町だけでなく隣町にまで大量のノイズが出現。

 

S.O.N.Gの前身であった『特異災害対策機動部二課』は、同じ頃別の敵を相手にしており、ノイズが出現していたことに気づくことができなかった。

 

 

それらのノイズを倒していたのは、将也、パラド、ハヤトの3人。

 

 

将也とパラドはノイズが多い隣接する町を、ハヤトは聖都町を防衛しており、3人は順調にノイズを倒していた。

 

 

 

「ハアッ!セアッ!」

 

 

仮面ライダーブレイブへと変身していたパラドは、炎を模した刀身の剣『ガシャコンソード』でノイズを切り払っていた。

 

 

「くっそ!いくらなんでも多すぎだろ!」

 

 

 

パラドはキメワザスロットホルダーのホルダー部分から蛍光イエローのガシャットを取り出して起動する。

 

 

 

《ドレミファ・ビート!》

「俺の心を滾らせるな!」

 

新たなガシャットの起動によってブレイブの周囲に黄色いDJを模したメカ『ビートゲーマ』が出現、ブレイブはガシャットをタドルクエストがセットしてあるスロットの横にセットする。

 

 

《ガッシャット!》

 

 

「術式レベル3」

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

ドライバーのレバーを展開すると、黄色いパネルのようなものが重なり、ビートゲーマ

がブレイブと融合する。

 

 

《タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!》

 

《アガッチャ!》

 

 

《ド・ド・ドレミファソ・ラ・シ・ド!OK!ドレミファビート!》

 

 

ビートゲーマを追加の鎧として纏うことで誕生したブレイブの強化形態。

 

『仮面ライダーブレイブ ビートクエストゲーマーレベル3』。

 

 

「いくぜ!」

ブレイブは右腕に装着されたターンテーブルを回転させると、肩に装備されたスピーカーから音楽が流れる。

 

「目指すは、ノーミスクリアだ!」

 

ガシャコンソードを構え、音楽に合わせた動きで次々とノイズを斬るブレイブ。

 

 

ドレミファビートの特殊能力。

 

 

それは、流れる音楽のリズムに乗りながら攻撃をすることで、相手に追加ダメージを与えるというもの。

 

 

 

足踏みや指などでリズムを取りながら相手を切り裂くブレイブ。

 

 

「ラストスパート、決めてやる!」

 

 

ドレミファビートのガシャットを引き抜き、ガシャコンソードに装填。

 

 

《ガッシャット!キメワザ!》

 

音符型のエネルギーが剣に収束し、トリガーを押す。

 

 

 

 

《ドレミファ!クリティカルフィニッシュ!》

 

『DOREMIFA CRITICAL FINISH!』

 

 

音楽記号の♯を描くような軌道で剣を振るブレイブ。

 

 

 

すると、全く同じ形の斬撃が発生してノイズを全て切り裂いた。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

一方、将也はエグゼイドでノイズに対抗していたが、空中から飛来するコウモリ型が多く、飛び道具のないエグゼイドでは苦戦を強いられていた。

 

「くっそ…だったらキャラを再選択だ!」

 

 

エグゼイドは紺色のガシャットを起動させる。

 

 

《バンバンシューティング!》

 

エナジーアイテムの入れ物だったチョコブロックが消滅し、代わりに大量のドラム缶が配置される。

 

 

「第二戦術、変身!」

 

 

マイティアクションXを引き抜き、代わりにバンバンシューティングをセット、レバーを開く。

 

 

《ガッシャット!》

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

周囲に再びキャラクター選択のパネルが出現し、今度は右目の部分が前髪のようなパーツで隠れた少し目つきの悪いキャラを指で銃を撃つかのような仕草で選ぶ。

 

 

 

 

 

《ババンバン!バンババン!(イェア!)バンバン!シューティング!》

 

 

狙撃手を思わせるデザインに、マスクには特徴的な『STG』の文字。

 

そして目を引くのが、右肩を覆う蛍光イエローのマント『スタンヘキサマント』。

 

 

エグゼイドから姿が大きく変わり、将也はシューティングゲームをベースとした戦士、『仮面ライダースナイプ』へと変身する。

 

 

「ミッション、開始」

 

 

スナイプの周囲を武器のアイコンが回転し、一丁の銃へと変化する。

 

 

 

《ガシャコンマグナム!》

 

ガシャコンマグナムを掴んだスナイプは、マグナムのBボタンを押して弾丸を放つ。

 

マシンガンのように大量の弾丸が放たれ、ノイズ達を撃ち抜く。

 

 

 

「幾らなんでも多すぎだろ…仕方ない!」

 

スナイプはホルダーからオレンジ色のガシャットを取り出し、起動。

 

《ジェット・コンバット!》

 

 

戦闘機をモチーフにしたメカ『コンバットゲーマ』がスナイプの周囲を飛び回る。

 

 

「第三戦術」

 

《ガッチャーン!レベルアーップ!》

 

 

コンバットゲーマがまるで噛み付くかのようにスナイプに覆いかぶさる。

 

 

 

《ババンバン!バンババン!(イェア!)バンバンシューティング!》

 

 

《アガッチャ!》

 

 

 

《ジェット・ジェット・イン・ザ・スカイ!ジェットジェット!ジェットコンバ~ット!》

 

 

 

戦闘機のような外見のアーマーに、腰にはそれぞれ大型のガトリングが2門装備された姿。

 

 

 

『仮面ライダースナイプ コンバットシューティングゲーマーレベル3』。

 

「これで条件は同じ…いや、俺のほうがかなり有利だな」

 

 

スナイプは空を飛びながらガトリングを構え、引き金を引く。

 

 

 

無数の弾丸がコウモリ型ノイズを蜂の巣とし、炭素の塊へと変えた。

 

「もういっちょオマケだ!」

 

 

 

スナイプはガシャコンマグナムを取り出すと、ゲキトツロボッツのガシャットを装填。

 

 

《ガッシャット!キメワザ!》

 

 

赤いエネルギーがガシャコンマグナムの銃口に集まり、スナイプはマグナムのAボタンを押す。

 

 

 

《ズ・キューン!》

 

 

銃身が伸びた状態の『ライフルモード』へと変形し、スナイプはコウモリ型が集まる一角へと狙いをつける。

 

 

 

「くらえ!」

 

 

《ゲキトツ!クリティカルフィニッシュ!》

 

ゲキトツロボッツのロケットパンチを思わせるエネルギー弾が放たれ、コウモリ型を数百体は爆発させる。

 

 

 

「残りはあと少し…」

 

 

 

スナイプはジェットコンバットのガシャットをキメワザスロットホルダーにセット、スイッチを押した。

 

 

 

《キメワザ!》

 

 

二つのガトリングを構え、すぐにスイッチを再度押す。

 

 

 

 

《ジェット!クリティカルストライク!》

 

 

『JET CRITICAL STRIKE!』

 

 

 

ビーム、ミサイル、ガトリング。

ありとあらゆる飛び道具がコウモリ型を消滅させていき、やがて空を飛んでいたノイズはすべて消滅した。

 

 

 

「ミッション終了」

 

 

ノイズが全滅したことを確認し、着地するスナイプ。

 

 

すると、視界の端に通信を知らせるマークが映ったのに気が付く。

 

 

「通信?ハヤトさんからか…」

 

 

すぐさま通信を繋げるが、そこから聞こえた声は思いがけないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

《グアアアアアァァッ!?》

 

 

突如聞こえる、レーザーの悲鳴と、爆発音。

 

 

「ハヤトさん!?どうかしたんですか!?」

 

 

将也が話しかけるが、返事が返ってこない。

 

「くっそ…!」

 

 

将也はすぐさまジェットコンバットのブースターを点火し、聖都町に向けて飛ぶ。

 

 

 

(一体、ハヤトさんに何があったんだ…!?)

 

 

すると、無数のノイズがスナイプの目の前に現れた。

 

 

「邪魔を…するなアアアァァァ!!!」

 

 

 

 

ガトリングを乱射してノイズを破壊しながら進むスナイプ。

 

 

しかし、ノイズはスナイプを無視してある一点を目指して進んでいた。

 

 

「邪魔だ…!」

 

 

 

前に進み続けるスナイプ。

 

 

そんな中、スナイプはふと頭上に高エネルギー反応を検知した。

 

 

 

「!?一体、何だよ今度は!」

 

 

スナイプが見たもの。それは…

 

 

 

 

まるで天使を思わせる白い戦装束に身を包んだ3人の少女。

 

 

 

彼女達は透き通るような歌声を戦場に響かせながらノイズ達を殲滅していた。

その視線の先には、遠目から見てもはっきりと形が確認できるほどの巨大な赤い龍。

 

 

 

「ノイズだけじゃない…あれは…?」

 

 

 

すると、赤い龍から高レベルのエネルギーを検知する。

 

 

「!まさか、ビームでも撃つ気か!?」

 

しかも、その射線の先には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マズイ!聖都町に命中する!?」

 

 

町の住人は今、地下のシェルターに避難している。

 

 

その中には将也の家族と、ハヤトの弟もいた。

 

 

しかし、幾ら災害を想定して作られたシェルターでもあの攻撃を防げるとは思えない。

 

 

「くっ!」

 

 

スナイプは最短距離で聖都町まで飛ぼうとする。

 

 

(頼む!間に合え!間に合ってくれ!)

 

同じように、パラドも聖都町まで向かっていた。

 

 

 

(急がないと、ハヤトだけじゃない!大勢の命が失われる!)

 

 

 

 

 

しかし、無情にも攻撃…カ・ディンギルの一撃が放たれた。

 

 

 

一瞬で通り過ぎた閃光は聖都町に命中。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

大きな爆発の中で将也とパラドの意識は一瞬にして刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「う……」

 

全身に鈍い痛みを感じて、将也は目を覚ます。

 

 

「そうだ…町は、聖都町は………っ!?」

 

 

すぐに目的を思い出した将也だが、目の前の光景に声が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖都町があったはずの場所は、大きなクレーターとなっていた。

 

 

将也にとって馴染み深かった故郷は、そこにはない。

 

 

彼が通っていた大学も、行きつけのゲームセンターも、いつか医者として入ることを夢見ていた病院も。

 

 

彼という人間が育った場所は、一瞬にして消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……………アァァ……!」

 

 

 

必死で走り、生存者がいないかを探す。

 

 

 

「誰か!?誰かいるのか!?」

 

 

返事はない。それでも将也は探すことをやめなかった。

 

 

「親父!母さん!修平!」

 

 

大事な家族を呼ぶが、返事はない。

 

 

 

「頼むよ!誰か返事をしてくれ!」

 

 

建物の残骸だけが残った町に、将也の声が虚しく響く。

 

 

「淳吾!ハヤトさん!」

 

 

大事な仲間と、その弟の名を呼ぶ。

 

 

 

しかし、誰一人として返事が返ってこない。

 

 

否、既にわかっていた。

 

あの光によって、この町の人たちは死んだ。

 

 

 

それを認識して、将也は崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぅ……」

 

 

今、僅かに人の声が聞こえた。

 

将也はすぐに声の聞こえた場所へと走る。

 

(生きてた!まだ、生きてるんだ!)

 

あの爆発の中で生き延びた命がある。

それだけが将也の心を支えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいた人物は、ボロボロになった状態で倒れていた。

 

その腰には、将也と同じゲーマドライバーが装着されており、スロットには黄色と黒のガシャットがセットされている。

 

倒れていたのは、紛れもなく久城ハヤトだった。

 

 

「ハヤトさん!」

駆け寄った将也は、すぐにハヤトに声をかける。

 

 

すると、ハヤトの肉体がまるでバグったようなノイズが走る。

 

 

 

「悪い…さっきの戦いで、ライダーゲージが、0になっちまった…」

 

仮面ライダーのHPを示すライダーゲージ。

それが尽きれば、体内にあるバグスターの抗体が作用しなくなり、ガシャットに内包されているバグスターウイルスによって肉体が消滅する。

 

 

「一体、何があったんですか!?」

 

 

ハヤトは、普段からは考えられない弱々しい声で返す。

 

 

「とんでもなく強ぇ…バグスターに……名前は……ゲム…デウス…」

 

「ゲムデウス…!」

 

 

その名前は、将也の頭に焼き付いていた名前。

 

 

 

 

生まれた頃から、将也はどこからともなく頭の中に聞こえる声があった。

 

 

 

 

『ゲムデウスを倒せ』。その言葉に導かれるように将也はゲーマドライバーとライダーガシャットを手に入れ、仮面ライダーとなっていた。

 

そして、ハヤトはそのゲムデウスの手にかけられた。

 

 

「そんな…!」

 

 

「ハハッ……ちょっと、悪乗りが過ぎたみたいだな…」

 

 

 

体の輪郭がだんだんとぼやけてきて、傍から見てもハヤトの命は長くないことが分かる。

 

 

「将也…これを…」

 

ハヤトは、最後の力を振り絞ると自らのゲーマドライバーを外し、ガシャットが挿入された状態で将也に渡す。

 

 

 

 

「将也……忘れんなよ………この先、どんなに辛いことがあっても………絶対に、自分を見失うな…!」

 

 

 

 

 

 

「いいか………お前が、笑顔でいる限り…………お前はお前だ!」

 

 

 

それは、自分を慕ってくれた仲間への、最後のメッセージ。

 

 

 

「お前の運命は………お前が変えろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺達の…皆の分まで、生きてくれ…」

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、ハヤトの手は力が抜けたように落ちる。

 

 

 

 

 

「ハヤト……さん…?嘘ですよね…?」

 

 

 

しかし、ハヤトが返事をすることはない。

 

 

 

 

 

やがて、分解が進んでいくハヤトの体は、ほどなくして完全に消滅。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ゲーム…オーバー…》

 

 

 

低く、余りにも淡々とした電子音と共に、久城ハヤトという存在は消え去った。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「…以上が、あのルナアタックの日に起きた事件だ」

 

 

パラドが語った、余りにも凄惨な事件にその場にいた者たちは声を失った。

 

 

「俺たちにとっての、ある意味始まりの事件…『ゼロデイ』」

 

 

 

 

帰る場所も、家族も、仲間も。

全てが、0へと消えた日。

 

「それからだ。将也が変わったのは」

 

 

大事な仲間を失い、将也は無意識に他者を拒絶した。

 

誰かの命を救うことは変わらないが、パラド以外の仲間を迎えることに消極的になり、他人との距離を取るようになった。

 

 

それを聞いて、翼はかつての自分と将也を無意識に重ね合わせていた。

 

 

 

(同じだ…あの時の…奏を喪った時の私と…)

 

かつての相棒だった天羽奏を喪った後の翼は、響と再会するまでの2年間を独りで戦っ

てきた。

 

 

そして半年前、新たなガングニールの適合者として現れた響を翼は当初、ともに戦う仲間とは思うことができず、一方的に拒絶してしまった過去がある。

 

 

孤独な剣として戦う道を選び、誰かを失うことの恐怖から目を背けた。

 

 

今の将也の姿は、到底他人事とは思えなかった。

 

 

「…ところで、ゲムデウスとは、何者だ?」

 

弦十郎が質問をすると、パラドは拳を握り締めて答える。

 

 

 

「…ゲムデウスは、俺が知る中でも最強最悪のバグスターだ」

 

最強最悪。パラドの言葉に嘘偽りは無かった。

少なくともこれまで、ライダーの一人を葬っただけあり実力は非常に高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、突然司令室の扉が開く。

 

全員が振り向くと、そこには緒川と将也の姿があった。

 

 

「将也!」

 

 

入院着ではなく、いつもの白ジャケットに袖を通した将也は冷たい目をしたままでパラドに話しかける。

 

 

「帰るよ、パラド」

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいデス!」

 

 

そのまま帰っていこうとする将也だが、切歌に呼び止められる。

 

 

「…何?」

「え……えっと…その……一緒に戦っては、くれないんデスか…?」

 

 

切歌としては、将也が仲間になるのは賛成だった。

 

 

強さではなく、ただ単純に自分を助けてくれた将也の優しさを信じたいという気持ちが強い。

 

しかし、今の将也は彼女達に協力する気は全くなかった。

 

 

「悪いけど、これは僕達の問題だ。それに、君達ではゲムデウスには勝てない」

 

 

その言葉が気に障ったのか、クリスが詰め寄る。

 

 

「おいおい、そりゃあ聞き捨てならねえな。アタシ達じゃそのゲムデウスには勝てねぇって言いたいのか?」

 

クリスの睨みにも引くことなく、将也は言い返す。

 

 

「何度でも言いますよ。貴女達では奴には絶対に勝てない」

 

無言の迫力に圧され、クリス達は僅かに後ろに下がる。

 

 

「錬金術師達が暴れたり、人命が危険にさらされた場合は力を貸します。ですが、僕たちの本来の目的であるゲムデウスが出たら、邪魔をしないでください」

 

 

 

将也はそれだけを言い残し、さっさと司令室から出て行った。

 

 

 

「おい、待てよ将也!」

 

 

パラドが急いで追いかけていき、司令室は静寂に包まれる。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

将也の態度は余りにも頑なだった。

 

 

 

 

 

「…今の我々では、彼を仲間に加えるのは難しいか…」

 

弦十郎ですら、今の将也に自分達の声は届かないと考える。

 

 

 

 

 

 

「別に、あいつの力なんて必要ないだろ」

 

 

冷たく言葉を返したのは、先程将也に言い返されたクリス。

 

 

 

「あいつはあいつで好き勝手に戦うって言ってんだ。寧ろ、無理にこっちに加えたらアタシらの足を引っ張りそうだしな」

 

 

さっきの姿が頭に浮かび、クリスは忌々しそうに吐き捨てた。

 

 

ゲムデウスの前には自分たちは無力。そう言い切った将也の印象は悪い方へと固まりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それでも、私は将也君を仲間にするべきだと思う」

響の言葉に全員が注目した。

 

 

「でも、今の彼には私達の言葉が通じるとは思えないわ」

 

マリアの言うことも一理ある。

 

 

しかし、響はあの時の将也の姿を思い出した。

 

切歌と調の二人を救うために現れた彼は、3ヶ月に渡って隠してきた正体を自分達の前

で明かした。

 

 

 

「だとしても、私は信じたいです。だって、将也君は切歌ちゃんと調ちゃんを助けてくれましたから」

 

 

 

あの時の優しい顔。

 

あれこそが将也の本当の姿ではないのかと、響は信じたいと思っていた。

 

「それに…今までだってずっと同じでしたから」

 

親友を喪い、遺志を継いだ者を認めなかった翼。

 

過去のトラウマから争いを『破壊』という形で消し去ろうとしたクリス。

 

 

 

大事な人を救えず、世界を救うために全てを敵に回そうとしたマリア、切歌、調。

 

 

 

最初から仲間だったわけではない。それでも、諦めずに手を伸ばし続けた結果、彼女たちは同じ道を歩んでいる。

 

 

「だから、絶対に将也君とも分かり合えると思います!」

 

 

 

何があってもブレない響に、思わず全員が苦笑する。

 

「全く…立花は変わらないな」

「それがコイツの特徴だろ?バカは死んでも治らないだろうし」

 

 

翼とクリスの言葉に響は苦笑いする。

 

 

「でも、それがあなたの長所でもあるのかもね」

「デス!響先輩は、小難しいこと考えるよりこっちのほうがピッタリなのデス!」

「うん。正直、響さんなら単純だしこの結論になるとは思った」

 

 

切歌と調の微妙に褒めてない褒め言葉に落ち込む響。

 

 

 

「未来~…慰めて~!」

 

 

「はいはい」

 

まるで親に甘える子供のように未来に擦り寄る響。

 

 

しかしなにはともあれ、S.O.N.Gの次の目的は決まった。

 

「では、今後宝条将也君が姿を見せたら、再度交渉するとしようか!」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

将也のアジト。

 

 

白い携帯ゲーム機で遊んでいたパラドは、ステージをクリアした直後、電源を切る。

 

 

「………はぁ…」

 

考えていたのは、将也のこと。

 

ハヤトの死によって、大きく変わってしまった将也。

 

 

 

自分では、彼の本当の笑顔を取り戻すことができないと、内心考えていた。

 

 

 

 

「本当…人間って難しいよな…」

 

 

 

ゲーム機からソフトを抜く。

 

そのタイトルは、『マイティアクションX』。

 

 

「でも諦めない。だって、お前との約束だもんな……」

 

 

パラドの運命を変えた約束。

 

命を救うために、戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ……『永夢』」

 

――――――――――

 

 

 

外を歩き続ける将也。

 

 

しかし、今は雨が降っており、傘を持っていない将也は全身がびしょ濡れだった。

 

「………」

 

 

だが、将也は体が濡れているのを気にすることなく街を歩く。

 

 

彼の脳裏によぎったのは、『ゼロデイ』の記憶。

 

 

 

(あの日も…急に雨が降ったんだよな…)

 

 

嫌な思い出を忘れたいがために、将也は自分の過去を振り返る。

ハヤトのおかげで、誰かを笑顔にすることを知った。

 

 

それまでの自分は、ただ相手を倒すためだけに戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………あれ?)

 

 

ふと思う。自分は、どうして相手を倒すために戦っていたのだろうか?

 

(…確か、バグスターに負けたから…)

 

 

最初の挫折。

 

 

 

中級バグスターによって敗北し、感染者の命を危険な状態まで追い込んでしまった。

 

 

だが、それより前。

 

 

自分が仮面ライダーになった最初の理由、原点をどうしても思い出せない。

 

 

 

「僕は………どうしてライダーになったんだっけ…?」

 

 

レーザーの喪失で、将也は大事なものを失っていた。

 

 

仲間、故郷、信じる心。

 

 

 

そしてもう一つ。

 

 

それは、自分の『始まり』。

 

 

 

仮面ライダーとなって戦うきっかけを、彼はいつの間にか忘れてしまっていたのだ。

 

To Be Next GAME…?

 




次回、シンフォギアエグゼイドは!

「パラド。お前のガシャットだ」

ついに、パラドのガシャットが完成!


「これから一緒に遊ばない?」

「ゲーマーMの底力、見せてやる!」


「心が躍るなぁ!将也!」

響達との再会が…



「ありがとう、将也君!」

彼の原点を復活させる?

「グレード2」
《マイティーアクショーン!エーックス!》


第6話 ガングニールとFriend!

――――――――――

今回の過去編、いずれ時間があれば書きたいと考えていますが…需要、ありますか?


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