戦姫絶唱シンフォギアEX-AID 運命を変える戦士 作:狼牙竜
もうすぐビルドも終わり、新ライダーのスタートですね…
またテレビでエグゼイドが見られるのか、少し期待している狼牙竜です。
感想、評価が作者の原動力となります!
《おはようデース!おはようデース!》
《今日も一日がんばろー、おー》
切歌と調の声が鳴る目覚まし時計のスイッチを押し、マリアは寝ぼけ眼で起き上がる。
「ん………」
彼女は今衣服を着ていない所謂全裸の状態となっており、異性はもちろん同性すらも羨む彼女の肢体がさらけ出されていた。
すると、扉がノックされる。
「マリア、そろそろ朝ごはんだけど…起きた?」
扉の向こうから聞こえた声に、マリアは返事をする。
「う~ん…今行く~…」
世界でその名を知らないものはいないと言われる歌姫、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
しかし今の彼女の姿を見たら多くのファンは驚きを隠せないであろう。
――――――――――
「…本当、将也の料理は凄いわよね…ちょっと自信無くしちゃうくらいに…」
朝食の時間。寝起きで乱れていた髪型をいつもの猫耳のような形に整えたマリアは将也の料理を食べながら若干凹んでいた。
マリアとて料理ができないわけではない。ナスターシャ教授達と行動していた頃は切歌達4人の食事を作ることが多く、装者達の中で一番料理上手な人物は誰かと訊かれたら全員がマリアの名前を出すだろう。
だが悲しいことに食べるメンバー達の一部が余りにも極端な偏食家だったことが仇となっていた。
お子様味覚の切歌、調だけでなく命に関わるレベルの病を持っていたにも関わらず肉しか食べないナスターシャ教授。
終いには菓子類以外をほとんど口にしないウェル博士といったメンバーの料理をほぼ毎日考えていたマリアは無意識に味付けの薄い料理を作ることが多かったのだ。
以前将也を部屋に招待して手料理のハンバーグを振舞った際、本人ですら驚くレベルでソースの味が薄かったことがあり、マリアは自身の悪癖を知って暫くショックを受けていた。
そんな経緯もあり、マリアからの頼みがあれば将也は彼女に料理を教えたりすることもあったりする。
「大丈夫だって。マリアは元から料理は上手いんだし、一緒に頑張ろう?」
そっとマリアの頭を撫でる将也。
ちなみに彼は現在、ゲンムの描かれた手作りエプロン(ゲンム・レベル1、スポーツゲーマ、ゾンビゲーマーがデフォルメされ、ゾンビとレベル1が手を繋ぎながら『I,am GOD!』と吹き出しが入ったデザイン)を着用している。
「…ありがとう、将也」
――――――――――
今日、8月7日はマリアの誕生日。
そのために将也は前日からマリアの部屋に泊まっていたのだ。
そして現在…
「ねえ将也!次はクジラのコーナーを見に行きましょう!」
最初のデート先である水族館で、マリアは普段からは想像もつかないほどにはしゃいでいる。
「ちょ、ちょっと待ってよ!?」
手をつないでいるため、必然的に引っ張られていく将也。
普段は装者達の中で最年長であるが故に責任感の強い彼女はみんなを引っ張る立場にあるが、マリアとてたまには誰かに甘えたい時もある。
そんなマリアを受け入れたからこそ、将也はマリアとも恋仲になることができた。
「やっぱり凄いわねここ…切歌と調から聞いたときは行ってみたいと思ってたのよ」
巨大な水槽の中で優雅に泳ぐクジラを見て目を輝かせるマリア。
世界の歌姫でも、シンフォギア装者でもない、一人の女性がそこにはいた。
「マリア。次はどこに行ってみたい?」
「そうね…ちょっと前から気になってた服があるんだけど…」
――――――――――
将也とマリアが訪れたのは、所謂コスプレ用の服を取り扱っている店。
「えっと…マリアが来たかったのって、ここ?」
「そうよ!」
目を輝かせるマリアは早速店内に入ると前から気になっていた服…『メイド服』を手に取る。
「う、うん…楽しいのなら、何よりだよ…」
普段抑圧している分、マリアは一度楽しみを見つけると止まらないらしい。
すると、試着室のカーテンが開いてロングスカートのメイド服に身を包んだマリアが出てきた。
「これ…どうかしら?」
いつもの凛々しいマリアとは異なる、可愛らしい姿。
「えっと………すごく、可愛いです…」
照れくさくなった将也は、オドオドしながら素直に感想を口にする。
「あ、ありがとう…そう言ってくれると嬉しい…」
互いに少しの間無言の時間が続いたが…
「そ、そうだ!せっかくだし、将也も何か着てみたら?」
「えぇ!?」
マリアの思いつきで、将也は早速試着室に放り込まれる。
「さっき色々見つけたから、とりあえず着てみて?」
マリアはどこからか執事服やどこかの学校の制服、果てはフリフリの大量についたアイドル衣装まで持ってきた。
「………もうどうにでもなれ」
後に将也はこの時間について『大事な人の笑顔と引き換えに何か自分にとって大きなものを捨てたような気がする』と発言している。
――――――――――
いつの間にか将也がマリアの着せ替え人形にされて1時間後、買い物を済ませた将也とマリアは店を出た。
「さて、一旦お昼でも食べる?」
「そうね。時間もちょうどいい頃合だし…」
すると、将也のカバンに入れていたゲームスコープが鳴る。
「「………」」
嫌な予感がした2人だが、無視するわけにはいかないため将也はスコープのスイッチを入れる。
「…はい、電脳救命センター」
《宝条君か!非番のところ悪いが、バグスターの反応を検知した!場所は…》
弦十郎からの連絡が入り、将也は爆走バイクのガシャットを起動、バイクゲーマを召喚した。
「こう何度も緊急通報入るなんて、ゆっくりデートもできない…!」
「だったら早く終わらせて、続きでもしましょう?」
マリアの言葉に幾分か冷静になった将也。
「…助かったよ、マリア」
2人はバイクに跨ると、将也がバイクを走らせた。
――――――――――
「イィィィヤッハー!チャリンコサイコー!」
マウンテンバイクに乗ったハイテンションなバグスター、チャーリー。
彼の足元には感染者と思われる男性が倒れており、周囲には感染者と同じくらいの年代の青年達が倒れていた。
「俺様のチャリテクで、大事な奴ら全員怪我させてやるぜヤッハー!」
倒れている青年達はいずれもチャーリーの攻撃によって足や手首などを骨折しており、全員が痛みで気絶していた。
「もうちょい!もうちょいで俺も完全体にいいい!?」
最後まで言い切る前に、チャーリーは後ろから将也のキックをくらってマウンテンバイクから転げ落ちる。
「今回はお前かよ、チャーリー」
将也はゲーマドライバーを装着すると、バイクゲーマに乗ったマリアも現れる。
「仮面ライダー!シンフォギア装者まで来やがって!」
憤慨するチャーリーだが、将也はガシャットを取り出しマリアはアガートラームのペンダントを取り出す。
「チャーリー。さっさとオペを終わらせる!」
《マイティアクション!エーックス!》
プロトマイティアクションXガシャットを起動させ、将也は右手の薬指にガシャットを引っ掛け、マリアはアガートラームのペンダントを握り締めて聖唱を口ずさむ。
「グレード0、変身!」
「Seilien coffin airget-lamh tron…」
《ガッシャット!ガッチャーン!レベルアーップ!》
マリアの体が光に包まれ、将也がガシャットをドライバーに装填しレバーを開くと音声と共に5枚のモノクロになったセレクトパネルが出現し、将也はゲンムのパネルを左手で選択。
《マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショーン!エーックス!》
紫のゲートをくぐると、将也は仮面ライダーゲンムに変身。
さらにマリアも白銀のシンフォギア、アガートラームをその身に纏った。
《ステージ・セレクト!》
ゲンムはステージセレクトを発動させ、現場となった公園からビルの屋上へと場所を変更した。
「コンティニューしてでも、クリアする!」
ゲンムが自らの胸に表示されたライダーゲージを指でなぞりながら宣言すると2人は同時に走る。
(BGM 銀腕・アガートラーム)
戦闘が始まり、マリアは自らの想いを込めた戦いの歌を口ずさみながら戦う。
《ガシャコンブレイカー!》
ゲンムはガシャコンブレイカーを召喚し、マリアは短剣型のアームドギアを作り出してチャーリーを迎え撃つ。
「カモンカモン!ぶっ殺してやるぜ!」
自転車をより強く漕ぎ出すチャーリーは後輪でゲンムに攻撃を仕掛けるが、ゲンムはガシャコンブレイカーをハンマーモードにして受け止める。
「マリア!」
「ええ!」
ゲンムが受け止めた瞬間、マリアはゲンムの背後から飛び上がってアームドギアを振り抜く。
「ワオ!?」
二段構えの攻撃には流石に対応しきれていなかったチャーリーは一歩下がる。
「逃がさない!」
マリアはアームドギアにエネルギーを込め、×の字を描くように振り抜くと斬撃が放たれる。
『FIERCE✝SCAR』
放たれた斬撃は、チャーリーの自転車を破壊することに成功した。
「NOooooo!!」
爆風で転げ落ちるチャーリー。
「さっさと決めるぞ!」
ゲンムはガシャコンブレイカーにシャカリキスポーツのガシャットを装填。
《ガッシャット!キメワザ!》
「わかったわ!」
マリアはアームドギアをひと振りの剣へと変え、膨大なエネルギーをチャージさせる。
《シャカリキ!クリティカルフィニッシュ!》
『ALOOF✝KNIGHT』
「「ハアアアア!!」」
ゲンムのガシャコンブレイカーから車輪状のエネルギーが放たれ、マリアはアームドギアを振り下ろす。
しかし…
「くっそおおお!負けるか!こんなところでえええええええ!!!」
突如チャーリーの目が赤く輝き、2人の必殺技を相殺した。
「なっ!?」
ゲンム達が驚くのもつかの間、チャーリーの姿はどんどん変化していく。
全身についていたスプリングが黒く変化し、手足には鋭いトゲのようなパーツが増えていく。
「あいつ…敗北のストレスがチャーリーのウイルスを変異させたのか!?」
突然の変化に考察するゲンムだが、チャーリーは先程までとは比べ物にならない速さでゲンムに接近。
「っ!ぐああっ!」
何とかガードしたゲンムだが、元より防御力の低いレベル0にとってはこの一発だけでも無視できないダメージになる。
「このっ!」
マリアが短剣を投げるが、チャーリーはそれを躱してマリアに接近、高速
でラッシュを叩き込む。
「こいつ…本当に初級バグスターなの!?」
「今は違う…おそらく、レベルだけなら100相当だろうな」
立ち上がるゲンムは、その中ですでに攻略法を見つけていた。
「だが、あそこまで急激な進化にチャーリーもまだ体が馴染んでいないはずだ。だから今のうちに弱らせて倒せば…」
「だったら、出し惜しみは無しよね?」
マリアは胸のマイクユニットに手を伸ばし、ゲンムはホルダーに提げていた白いガシャットを取り出す。
《デンジャラスゾンビ!》
エレキギターの音声が鳴り、ゲンムはドライバーのレバーを閉じる。
「グレードX‐0!」
《ガッシャット!》
マリアはユニットを掴み、パワーアップのキーワードを告げる。
「イグナイトモジュール…抜剣!」
《Dainsleif!》
マイクユニットが変形し、マリアに突き刺さる。
《ガッチャーン!レベルアーップ!》
白いゲートが出現し、ゲンムとマリアはそれぞれ黒い霧のようなものに覆われる。
《マイティアクショーン!エーックス!》
《アガッチャ!》
《デンジャー!デンジャー!デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!》
霧の中から出現したのは、禍々しい姿になったゲンムとマリア。
死霊を思わせる姿となった『仮面ライダーゲンム・ゾンビアクションゲーマーレベルX‐0』と、全体的に刺々しく黒くなった『イグナイトモード』のアガートラームを纏うマリアだった。
「グルルルル…」
獣のような唸り声を上げるチャーリーに対し、ゲンムとマリアは互いの武器を持って並び立つ。
「行くぞ…マリア!」
「頼むわよ…将也!」
(BGM With in the dark)
チャーリーが再び超高速移動で接近し、ゲンムに襲いかかる。
「ぬぅん!」
ゲンムはブレードモードのガシャコンブレイカーで攻撃を防いだが、足払いを受けて体が一瞬無防備になる。
「ガアアァッ!」
その隙に再びラッシュをしようとするチャーリーだが…
「セアアアッ!」
背後からマリアがチャーリーの背中めがけて左の拳でぶん殴る。
「グルッ!?」
後ろからのダメージに驚くチャーリーだが、ゲンムはガシャコンブレイカーで斬りつけると新たな武器を召喚した。
《ガシャコンスパロー!》
ゲンムの召喚したガシャコンスパローの矢はチャーリーの顔面に直撃。
《ス・パーン!》
続けてガシャコンスパローを分離させ、ゲンムは前から、マリアは後ろからそれぞれの武器でチャーリーの高速移動の鍵となる部位…スプリングの部分を切り裂いた。
「「ハアアア!!」」
右足、左肩、左腕と破壊されていくスプリング。
最後は二人同時に切り裂いてチャーリーは吹っ飛ばされる。
「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」
「ええ!終わらせる!」
ゲンムはデンジャラスゾンビガシャットをキメワザスロットホルダーに装填し、起動スイッチを押す。
《ガッシャット!キメワザ!》
マリアはアッパーでチャーリーを上空に殴り飛ばし、左腕のアーマーにアームドギアを接続、大剣状に変化させてチャーリーよりも高く飛び上がる。
「テヤアアアアアア!!」
ブースターで加速し、上空から一気にチャーリーを切り裂いた。
『SERE✝NADE』
さらに、ゲンムはホルダーのスイッチを再度押す。
《デンジャラス!クリティカルストライク!》
『DANGEROUS・CRITICAL・STRIKE!』
黒い靄がゲンムの右足に集まり…
「ハアアアア!!」
落ちてきたチャーリーめがけて廻し蹴りを叩き込んだ。
「グ……ルル……ノオオオオオオオ!!!」
全身から火花が散り、チャーリーは最後に元の口調に戻りながら爆発した。
《ゲーム・クリアー!》
――――――――――
バグスターの消滅後、事後処理を片付けた将也とマリアは予約していたレストランでの食事を終え、帰路を歩いていた。
「結局こうなるのか…」
またしても戦いに巻き込まれ、少し落ち込み気味になっている将也。
「そんな落ち込まないの。将也が動いたおかげで助けられた命だってあるんだから、そこは誇るべきところよ」
苦笑しながらもマリアは将也の頭を撫でる。
普段は逆の構図だが、将也としては案外悪くないと思っていたりする。
「それに…あの場面で私とのデートを優先したりでもすれば、私はあなたを見限るわよ」
そんなことあるはずないけど、と付け加えてマリアは歩く。
(………本当、何があるかわからないものね)
セレナを喪った日、マリアの心には深い傷が残った。
最愛の家族を救えずに見ていることしかできなかったマリアは力を求め、世界を救うために戦うもその全てが裏目に出てしまい、一時は自暴自棄にもなりかけた。
それでも自分を止めてくれた大事な仲間達のお陰で、マリアはこの世界で生きている。
「マリア」
気が付くと、少し前を歩いていた将也がマリアに手を伸ばす。
「…ありがとう」
マリアは将也が差し出した手を握った。
男性特有の少し大きな手の感触が伝わって来る。
「マリア。僕はこの世界で生きて、良かったと思ってるよ」
「どうして?」
少しだけ照れくさそうな表情を浮かべた将也は、ハッキリと告げた。
「マリア達と…この世界で一緒に生きていたいと思える相手と出会えたから…かな?」
普段は言いそうにないセリフに、思わずマリアも笑い声がこぼれそうになる。
「えぇ…そこは笑うところ?」
「ご、ごめんなさい…いつもの将也とは少し違うから…」
マリアは隣に並ぶ、自分よりも少し大きな青年を見つめる。
「ねえ、マリア…」
「どうかした?」
「この世界に、生まれてきてくれてありがとう……HAPPY BIRTHDAY」
――――――――――
数日後。
「おはよう、切歌、調」
「おはよう、マリア」
「おはようデース!ってあれ?」
朝の挨拶を交わすマリアと調、切歌だが切歌はマリアの左手首を見てあることに気が付く。
「マリア、腕時計新しくしたんデスか?」
「あ、本当だ」
調も、マリアのつけていた腕時計が以前使っていたものと違っていたことに気が付く。
「ああ。これはね…」
マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
彼女はこの時計を生涯に渡って愛用するのだった…
ハッピーバースデイ、マリア!