グレビッキーと家族になりました。   作:sinkeylow

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Q.なぜこんなに遅かったのか?

A.構成を練っていた。思いつきの小説だからね、しかたないね。あと旅行に行ってた。



お気に入りが264となりました。ありがとうございます。

それではどうぞ。


火種

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい!!これが今話題の――――――』

 

 

リビングのフカフカのソファに座り置いてあったクッションを抱きしめながら響はテレビを見る。今見ているのはニュース番組の動物特集。テレビ画面にはかわいらしい子犬達が無邪気に遊んでいる姿が映っている。このニュース番組は見覚えがあるから、きっと過去に見たことがあるのだろう。一年以上まともにテレビを見ていないのでおそらく自分が途方に暮れる前のことのはず。

 

だが響にはテレビのことなど頭に入らなかった。その瞳には子犬たちは映っていない。

 

頭に入ってくるのは台所から聞こえる料理をしている物音。今料理をしているのは、自分を拾い、この家にいさせてもらっている家主の川島月華。視線が台所の方へと向く。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

いままで響は自分が生きていくことで精一杯だった。他に気を回す余裕がなく、誰かが傷ついても関わることはなかった。

 

だがここで短い間であったが月華に助けられ、いろいろと世話になったことにより少しばかり心に余裕ができた。その表れか本来なら自分には関係ないと割り切っていたであろうはずだが、今回は月華のことについて考えだした。

 

ニュース番組の動物特集なんかよりも、どうしても彼のことが気になってしまう。もちろん異性的な意味ではない。そんな風に思ってしまった切っ掛けは先ほどのこと。

 

 

―――――ボクの家族は・・・・みんな死んでいる。

 

―――――この家には・・・・・ボクしかいない。

 

―――――ノイズ絡みでね・・・、みんないなくなったんだ。

 

(・・・・・・・。)

 

 

誰もいない。一人ぼっち。ノイズ。

 

その言葉が脳裏をグルグルと駆け巡る。あの顔があの声のトーンがどうしても脳裏を離れない。そしてなぜか自分の胸に容赦なく突き刺さる。

 

その感じがどうしようもなく怖くて、悲しくて、辛くて、苦しくて。どうしても彼を見るとまるで・・・・自分のことのように思えてしまう。もうそのことで頭がいっぱいで"今日この家を出て行く"ということを伝え、助けてくれたお礼を言うということは完全に忘れてしまった。

 

すべてを失い、一人になった。自分と同じ境遇の人。

 

 

「・・・・もしかして、あの人も・・・私と同じなのかな。」

 

 

そんなことを静かに零していると、動物特集が終わり別の特集に変わる。その番組は響にとっての人生の分岐点となったあの惨劇のことであった。

 

 

『それでは次の特集です。―――――

 

 

 

 

―――――徹底解説!!ツヴァイウィングの惨劇!!あれからどうなったのか!?』

 

 

「・・・・・・っ!?」

 

 

その特集になった瞬間、思わず目が丸くなり、テレビを見る。血の気が引く。顔が真っ青になる。かなりの発汗をしており、身体が震え、見えない恐怖に怯える。

そんな状態になっても止まらず、番組は進む。

 

 

『さて、国民の皆さんには忘れられない出来事となった一年前のノイズ災害の"ツヴァイウィング事件"についての特集です。』

 

「っ!!」

 

 

"ツヴァイウィング事件"。その言葉に思わずビクッと体が反応し、顔が歪む。

テレビの中の司会者は続けて言う。

 

 

『まずはおさらいをしましょう。こちらの映像をどうぞ。』

 

 

映像が流れ始める。響の瞳にそれが映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――その映像はとある会場の公演中のライブ。

 

 

『みんなーーーーー!!まだまだいくぞーーーーーー!!』

 

 

『"ツヴァイウィング事件"とは"天羽奏"と"風鳴翼"によるツインボーカルユニットであるツヴァイウィングの公演中に認定特異災害ノイズが大量発生した事件です。もう知らない人の方が珍しいでしょう。』

 

テレビに映るのは明るくそして楽しそうに歌う二人の少女。

 

 

―――――長い赤髪で姉貴肌のある右側の腰回りに翼のついた衣装を着ている少女。"天羽奏"

 

―――――長い青髪で淑女という言葉が似合う左側の腰回りに翼のついた衣装を着ている少女。"風鳴翼"

 

 

『ファンにとっては至福の時間であった公演ライブ。しかしそこは一気に地獄絵図と変わりました。』

 

 

次に映り出される光景は言葉通りの地獄絵図。その景色は響自身も脳裏に焼き付いている。忘れるはずがない。忘れることができない。

 

 

―――――ライブ会場のところどころに燃え盛る紅蓮の炎。

 

―――――天へと昇る硝煙。

 

―――――天から雨のように降り注ぐ人類の天敵。

 

 

『ライブの開演中に突如として特異認定災害である"ノイズ"の襲撃が起きたのです。』

 

次に映し出されるのはノイズがその場にいた人々に襲われているところ。流石に人権を守るためか、映像はモザイクで、声は加工されている。

 

 

―――――ノイズによって襲われ、多くの人とともに煤と変わる。

 

―――――その光景は煤が桜のように舞う。

 

―――――響き渡る悲鳴。その数も少しずつ減っていく。

 

 

『ライブ会場は地獄と化しましたが、地獄になったのはそこだけではありません。』

 

映像が切り替わる。それは日本に住む人々の多くの運命が変わってしまったであろうターニングポイント。映像は変わらず加工されている。

 

 

『邪魔だ!!どけ!!』

 

『いたいよぅ~!!』

 

『早くしろ!?ノイズに襲われて死んじまうだろうが!!』

 

『誰か助けて!!うちの子が!!』

 

 

そこはライブ会場の避難路。混乱と逃走によって非常に込み合っている。そして番組のキーポイントが起こった。『ノイズ』の姿を認めた人々は我先にと逃げ去ろうとした。しかし会場の通路や入り口には限りがある。それでも押し通らんとする人達の意志が衝突した時、醜い争いが起こる。

 

 

―――――モザイク越しであるが暴行を加える者。

 

―――――突き飛ばされる者。

 

―――――小さな子供をノイズの盾にして自分だけ助かろうとする者。

 

―――――逃走中の将棋倒しになりつぶれている者。

 

―――――命を繋ぐために他を犠牲にする人間の在り方がここにあった。

 

 

『ご覧のようにライブ会場の避難路で自分が助かりたいがために暴行を加えたり、自分が助かりたいがために他人を盾にする者もいたようです。』

 

 

ナレーションはその惨劇についての明らかになっている情報を告げる。

 

 

『その場には、観客、関係者あわせて"10万"を超える人間が居合わせており、 死者、行方不明者の総数が、"12874人"にのぼる大惨事となりました。

そのうちノイズによる死者は"全体の1/3程度"であり、 残りは逃走中の将棋倒しによる圧死や、 避難路の確保を争った末の暴行による傷害致死であるということです。』

 

 

ノイズの恐ろしさはその数字が語っている。行方不明者もおそらくノイズに襲われた数のであろう。炭化分解された元は人間だった煤を識別することは現代の科学力では不可能なことだ。だからこその数字は大雑把なの知れない。メディアにとってはノイズの被害は今回はどうでもいいのだから。

 

世間にとって重要な問題なのは残り2/3の死因だ。

 

逃走中の将棋倒しによる圧死や暴行による傷害致死、そしてノイズの攻撃から助かるために他者を肉壁にし、何としてでも生き残らんとする。我先に生き残ろうと一考し、多くのものが己の本心に従った結果だ。

 

命を繋ぐために他を犠牲にする人間の在り方がその数字に込められていた。

 

世間にとっての重要なことがこれであった。なぜこれが重要であるかというと、ノイズ災害と人災の発生率だ。ノイズ災害の発生率は極めて低い。どのぐらい低いかというと通り魔事件に会うよりも低いという。だが人災は違う。毎日のように、世界中に起きている。傷害事件に強盗事件。いじめや差別に詐欺など。人間の醜さを世間はよく知っている。だからこそノイズよりも注目されていた。

 

そしてこれが新たな火種を招いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい、おさらいとして映像を見ましたがやっぱりいつ見ても心を痛まれますね。』

 

『そうですね。政府の報告ではいままで前代未聞の被害と報告していました。』

 

『ファンとしてうれしいことはツヴァイウィングのお二人が生きていたということですね。』

 

 

おさらいであるツヴァイウィングの惨劇の映像が終わった。拷問のような時間がようやく終わった。その時間は響にとって余りにも辛すぎて、もう後半は顔はクッションに埋めていた。クッションが湿っているのがよくわかる。よくその映像があったなと映像公開をよく認めたなというのが正直な感想だ。こういうのは政府の報道規制対象に入りそうだが。

 

 

「ぐ・・・・・ぅう・・。」

 

 

小さな泣き声をこぼしながらテレビを睨みつける。台所にいる月華に悟られないように声は何とか抑えている。心の傷は響自身が思っていたよりも深く残っており、傷口がどんどんえぐられていた。

 

当時、響自身もそのライブ会場にいた。

 

当然ノイズの被害に受けた。

 

ただ、他の人と少し違う体験をした。他の人はノイズの姿を認めた瞬間我先にと逃げ去ろうとした。しかし響はある光景に見惚れていてずっとその場で立ち呆けていた。

 

その光景は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。天羽奏は鎧を纏い、身の丈ほどもある巨大な槍を持って佇んでいた。それに対して風鳴翼は同じような鎧を纏って帯刀している。

 

その姿を認めた『ノイズ』は二人に襲い掛かるが、手にした武器を振るい、『ノイズ』を次々に切り捨てていく。本来なら2人が炭化分解されるはずだった。だが炭化分解されたのはノイズのほうだった。どうやらあの鎧が炭化分解を防いでいるようだ。

 

その異様な光景に響は見惚れていた。

 

 

―――――おい、なにやっているんだ!!早く逃げろ!!

 

 

奏がそう叱咤する声を上げてようやくはっ!!と我に戻り逃げ始めた。だが、ノイズの襲撃によって観客席の床にヒビが生えてもろくなっており、逃げている途中で床が崩れ落ちる。

 

ノイズが自分の存在を認識し、一斉に襲い掛かるが、天羽奏がその猛攻を防いでいた。

 

 

(そして私は・・・・・。)

 

 

彼女が纏っていた武器の欠片が自分の胸に突き刺さった。目の前に広がる紅い液体。それを自覚した時には激痛が走り出した。だが不思議と痛がることはなかった。ただ、その時はもうすぐ死んだということしか思わなかった。

 

 

―――――生きることを諦めるな!!

 

 

その自分を呼びかける叱咤する声によってなんとか意識を保ち、死にたくないという気持ちになったが。そのあとはどうなったかよく覚えていない。

ただ、温かかったということは覚えている。

 

確かことはあの時の出来事は嘘じゃないと断定できる。その証拠は響の胸についているフォルテシモのような傷痕だ。

 

病院で目覚めた時、医者から怪我の容体を詳しく聞いた。心臓付近の欠片を摘出したとあの時医者は言っていた。あの時の惨劇を裏づける確かな証拠だ。

 

司会者がさて、といい話を進める。

 

 

『さて、当時の惨劇をおさらいした所で本題に入りましょう。』

 

 

本題。それこそが響にとっての本当の地獄だった。それは――――――

 

 

『その後、遺族の方はどうしていたのか、そしてあの時生き残った被災者は今どうしているのか。』

 

「・・・っ!!」

 

 

それを聞いて、顔を上げる。なぜならそれは今までのニュースとは違う。今まではただ遺族の意見しか取り上げられなかったのだ。「なぜ家の子は殺されて人殺したちが生きているの!?」などのことをしばらく聞かされるのかと思っていた。

 

だが今回は違う。

 

今までのニュース番組は生き残った被災者のことなんて語らなかったのに、取り上げたのだ。そんな響の疑問と驚きに構うことなく番組は進む。

 

 

『どうやらあの惨劇で生き残った被災者たちにもその後大きな悲劇が起きているようです。政府から新たな情報が開示されました。それは学校や職場などで極めて悪質ないじめや差別、嫌がらせを受けているそうです。我々はそのことについて調査しました。』

 

 

政府からの情報開示。ということはいままであの惨劇の後に生まれた地獄の日々は政府が意図的に規制していたということになる。

 

マスコミが調査した詳しい情報がテレビを通じて全貌が述べられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『1年前のツヴァイウィングの惨劇から数日後、マスコミなどで生き残るために生存者たちが多くの人を殺したこと知った世間は強く非難し、さらには迫害を受けました。』

 

 

―――――家の窓に石を投げられた。

 

―――――生存者という理由でクビにされた。

 

―――――集団暴行を受けて、骨折し入院した。

 

―――――家族というだけで暴力を受けた。

 

人は何かのトラブルがあると必ず責任がどうこうという話に発展する。

それはまるで魔女狩り。

 

本来"魔女狩り"とは、悪魔と結託してキリスト教社会の破壊を企む背教者という新種の「魔女」の概念が生まれるとともに、最初の大規模な魔女裁判が興った。

 

そして初期近代の16世紀後半から17世紀にかけて魔女熱狂とも大迫害時代とも呼ばれる魔女裁判の最盛期が到来した。

 

かつて魔女狩りといえば、「12世紀以降キリスト教会の主導によって行われ、数百万人が犠牲になった」というように言われることが多かった。

 

このような見方は1970年代以降の魔女狩りの学術的研究の進展によって修正されており、「近世の魔女迫害の主たる原動力は教会や世俗権力ではなく民衆の側にあり、15世紀から18世紀までに全ヨーロッパで推定4万人から6万人が処刑された」と考えられている。

 

そしてその民衆の行動源は"魔女に関する未知による恐怖"である。

 

 

それを今回のことに置き換えるとこうだ。

 

まず、あの惨劇で多くの生存者は生き残るために他人を犠牲にしたあるいは殺した。

 

次に、そのことが民衆に明かされる。人殺しは言わば禁忌でありそれを犯した者は異端者。このご時世、SNSなどが普及しているのだ。それに学校となると噂が一気に広まる。それがたとえ事実でなくとも、誰かが言葉にした瞬間それはフィクションになる。

 

そして、以下に至る。

 

 

―――――1つ目、自分とは違うということ。人は違うということに良くも悪くも人柄を変えやすい。

 

―――――2つ目、それを知った民衆は"次は自分かもしれないという恐怖"に支配される。

 

―――――3つ目、迷い。周りがそうしているからやっておこうという流される系。つまり便乗。悪乗り。

 

 

その無慈悲な迫害は当然響にも向いた。

 

もちろん響は人を殺してなんていない。だが民衆はメディアの情報を信じて迫害を始めた。あの場で人を殺したなんて証拠はないから特定できない。だが逆に殺っていない人がそうだという証拠もない。

 

となるともう民衆はあの惨劇からの生存者だからという理由で問答無用で迫害を受けた。知っている人や友人、さらには知らない人まで。だがそれだけではなかった。

 

 

『―――――そして、生存者は自殺または殺害されました。そしてそのことを知った生存者たちは多くの人々が家出しました。それだけでなく家庭崩壊まで至っている所もあるそうです。被害の数は軽く5万を超えているそうです。』

 

 

それは響も知っていること。現にこうして家出をしているのだから。というより帰る家がないのだが。

 

そして家族も死んだ。それもまったく知らない人によって。

 

あの時を思い出し目元が熱くなる。また涙が溢れそうになる。何も悪いことはしていないというのに。ただ幸せに生きていただけなのに。

 

 

『そして政府の報告では行方不明となっている未成年の数は1000人以上とのこと。政府は発見次第保護する方針を決めました。また学校や会社などでの徹底な指導を行うようにと呼びかけを行っています。』

 

 

今更そんなことをしてなんだというのだ。もう遅いのだ。罪のない多くの人々は自ら命を絶ち、関係のない人たちに迫害を受け、そして殺される。ただその人を味方にしているからという理由で襲われたり、家族という理由で傷つけられる。

 

学校で散々苦しんだ。最初は味方になっていくれた友人も被害にあって自分から離れた。

 

学校以外でも苦しんだ。家族はそんな私を励ましてくれた。味方だからと言ってくれた。だけど家族という理由だから少しづつ崩れ始めて最後は消えてなくなった。

 

だからこそ許せなかった。悔しかった。全部失った。響だけでなく色んな人が。憎んだはずだ。恨んでいるはずだ。

 

 

―――――それなのに、だというのに。

 

 

『まったくひどいですね。元々いじめや差別などは前々から社会的問題となっていましたが、どうしてここまでできるのか。その活力をもっと別のことに生かせばいいであろうに。』

 

 

なぜ政府もこのニュースキャスターもまるで他人事のようにことを進めるのか。火種をまいた元凶であるくせになぜ自分には関係ないような顔をしているのか。

 

その姿を見ると胸の奥底からドス黒い衝動が込みあがってきた。親の仇のように睨み付け、怒りで手がプルプルと震える。

 

 

(―――――ふざけるなっ!!!)

 

 

 

 

暴力を振るわれた者もいれば、迫害によって心に傷が付き、まともな生活ができないものもいる。家を燃やされたものがいれば、家族を失ったものもいる。苦しくてつらくて、そこから逃げだしたいから、周りの人に迷惑をかけたくないから、自殺をした者もいれば、逃げ出した者もいる。

 

 

 

―――――こんなに人生を翻弄されたというのに、めちゃくちゃに荒らされたというのに、なぜこいつらは未だににのうのうと生きているっ!!!

 

―――――なぜ間接的に人を殺したくせに反省もせずにただ毎日を過ごしているっ!!!

 

―――――お前たちが悪意のある報道をしたんだろうが!!私が失ったのも全部お前たちのせいだ!!

 

 

 

胸の傷痕が疼く。

 

 

 

―――――なぜ平気なカオヲシテイルッ!!!

 

 

 

傷痕からどす黒い衝動が響の心を身体を支配する。

 

 

 

――――――ユルサナイ・・・・・。ゼッタイニ・・・・・。

 

 

 

虚ろに濁っていた響の瞳は野獣のごとく赤く鋭い眼光と変わり――――――

 

 

「響ちゃん~~ご飯できたよ~~。」

 

「っ!!!」

 

 

その声ではっと我に返る。身も心も支配していたどす黒い感情が胸の奥底に逃げるように失せる。落ち着いた。興奮していたのであろう、身体は熱を帯びており、少し汗もかいている。数秒前の自分を悟られないように急いでチャンネルを変える。

 

台所からエプロン姿で月華がやってくる。相変わらず男に見えないという感想は浮かばない。響の状態を見て不安そうな顔で月華は響に容態を聞く。

 

 

「大丈夫?もしかしてどこか具合いが悪いの?」

 

「・・・・・・いい。大丈夫・・・・だから・・・。」

 

 

響は立ち上がり、少しフラフラしながら食欲がそそる場所へ向かう。

 

 

(許さない・・・絶対に・・・っ!!)

 

 

ふしふしと憎悪の炎が燃え盛る。それを完全に鎮火する手段はない。しかし、どうすることもできない。そんな力は自分にはない。どうしようもない。

 

 

それが悔しくて悔しくて――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――死にきれない。されど生ききれない。

 

 

 

 

 

 

 




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ではまた次の機会に

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