グレビッキーと家族になりました。   作:sinkeylow

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たくさんのお気に入り登録・UA・感想ありがとうございます。
また、ランキングにも乗りました。みんなグレビッキー好きなんだね。(愚問)

2話を少し改編しました。内容はビッキーの口調をグレビッキーっぽくしたぐらいです。




-追記-

この話に新たに文章を追加しました。
1.はすでにみなさんが呼んでいる話。
2.以降が追加したものとなります。

また、短編の設定をしていましたがやれるところまでやろうと思い、連載に変えました。


予想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国公立東星門高等学校。

 

毎年ハーバード大学などの世界的名門大学や東大、九大などへの進学率が高くレベルも高い,国が運営する私立高のような進学校。月華はそこの学校に所属していた。

 

国が運営しているだけであって部活も幅が広い。

 

サッカー部や野球部、バスケ部やバレー部はもちろんのこと、マン研やロボ研(ロボット研究部)、軽音部にハンドボール部など少し有名そうに見えて実は私立高校でよく見る部も存在する。自由度も高く勉強以外にも趣味や娯楽メインの才能を生かせるような部分も強いところから有名でもあり、勉強からでなくともそこから大舞台のステージへ上がる生徒もちらほらいたりする。

 

最近ではゲーム関連で世界に名を上げた生徒がいるらしい。

 

隔離校舎にある教室2階の教室後方の窓際が月華の席である。今現在は午前授業の真っ最中。

 

一心不乱にカリカリとシャーペンと紙がこすれる音があたりに響き続ける。だが月華も含む少数の生徒は既に理解しているのかただ授業を聞くだけである。スラスラとノートの内容を読み上げていく数学教師の声をBGMに、のんびりと青空を見上げる月華。

 

 

「―――――であるので、ここで―――――」

 

「・・・・・・・。」

 

 

今やっているのは課題でやったセンター試験の過去問の解説。

 

センター試験の問題は自主的にさんざんやってきたので月華は特に聞いていないが、一応ノートも内申点に関わるので復習もかねて最低限簡単にはまとめている。だが目に見えるほどだらけても先生の出席簿が飛ぶ。仕方なく、顔と目だけは前に向けて思考だけ別に稼働させることにした。

 

それは昨日拾った少女"立花響"のこと。

 

灰色のフードパーカーと紺色のジーパンの格好の少女。髪は橙色でくせっ毛のあるセミロングヘアー。

 

拾った時はげっそりして生気が感じられないその顔を隠すかのようにフードを深くかぶり、その虚ろな瞳は絶望、恐怖、拒絶がこもり濁っていた。身体的にも精神的にもボロボロで砂でできた城のように崩れやすいであろうな状態。昨日は雨が降っており、あの状態でいると生命にかかわる危険な状態であったであろう。

 

 

(・・・・・・・彼女の身に・・・・何があったのだろう?)

 

 

―――――すぐに思いつく言葉は"家出"。

 

―――――そのきっかけは"虐待"あるいは"家族との衝突"。

 

―――――それ以外だと学校などの"いじめ"または"差別"。

 

 

家出であることはおそらく合っているであろう。その根拠は今朝食べた"おかゆ"にある。

 

おかゆを口にした彼女は今にも泣きそうな顔になった。久しぶりに飯にありつけたという感じではなく、どこか昔のことを思い出し懐かしく思えているように見えた。そのあとに飲んだミルクを飲むとさらに涙を浮かべそうだった。

 

思い出したのだろう。家出する前の日々のことを。それも泣きそうな顔するということはよほど大事な思い出と関わりがあるのだろう。それが家族なのかそれとも孤児園なのかは定かではないが。少なくとも真っ当に生きていた可能性が高い。

 

次にきっかけ。

 

親から虐待の可能性・・・はすぐに否定した。理由は彼女自身の体の傷や痣だ。そんなものは一切なかった。

 

しかし汚れやかすり傷はあった。おそらくそれらは、放浪していた時のもの。異臭から察するに相当長い時間の間放浪していたのだろう。唯一胸に古傷があったが、すでに傷口は閉じていたので特に手当はしていない。

 

その傷がついた原因は家族との衝突かと思ったが、そこで一度考えを止めた。そこは断定もできないし否定もできない。そもそも彼女の身の上のことは知らない。これは聞かないと分からない。少なくとも彼女の状態だけでは判断できない。

 

では学校のいじめや差別か?

 

いまやそれは社会問題となっており、休日の政治番組で児童や学校関連のことになると大体出てくる。いじめてくるは当然悪いがいじめられる方も悪いとか。理不尽に聞こえてくるが原因がいじめられている方が生み出していることもあるらしい。そのいじめで自殺かあるいは家出。そんなことは普通にあるらしい。

 

バラエティーや政治番組より深夜ばかりに放送されることになったアニメの枠をもっと増やしてくれというのが月華の正直な感想である。正直今のテレビはつまらない。語るだけ語っても問題が発生するまで決して動かない。それほどまでにトップの組織とは怠け者の集まりだということだ。

 

 

だが―――――それらが正解ではない気がする。惜しい気もするが何か違う。

 

 

もっと重く、存在そのものを否定されるようなそんな事件。涙を流すほどただのおかゆをおいしそうに食べていたのだ。幸せだった時期は必ずあるはず。そもそも本来家出する理由の半数はそういう状態に陥った場面が多いのだ。いじめしかりDVしかり夢しかり。

 

 

(・・・・・なにかあったっけ?)

 

 

そんな事件があるのならニュースになっているはず。そして彼女の名前が挙がっているはず。仮にもしニュースになっていないのなら関わりがあるのは

 

―――――裏の組織。たとえばテロリスト。あるいは秘密結社。

 

―――――政府。国連。

 

真っ先に思い当たる節はそれら。そして共通するものがあるとするなら武力あるいは権力。武力は対象を破壊する。殺す。権力はいわば支配。力による支配もあれば立場による支配もある。

 

先生の話を聞くふりをしホワイトボードを見ながら思考を巡らす。それ以外に何がある?政府や裏の組織が欲するほどの価値のある物。ただ大きいだけじゃない価値のあるもの。量ではなく質。しばらく考えているとあることにたどり着く。

 

 

(―――――もしかして・・・・ノイズ?)

 

 

今から12年前の国連総会にて認定された特異災害の総称。

 

形状に差異が見られ、一部には兵器のような攻撃手段が備わっているが、全てのノイズに見られる特徴として——

 

 

・人間だけを襲い、接触した人間を炭素転換する。

 

・一般的な物理エネルギーの効果を減衰〜無効とする。

 

・空間からにじみ出るように突如発生する。

 

・有効な撃退方法はなく、同体積に匹敵する人間を炭素転換し、自身も炭素の塊となって崩れ落ちる以外には、出現から一定時間後に起こる自壊を待つしかない。

 

・生物のような形態から、過去にコミュニケーションを取る試みも進められたがいずれも失敗。 意思の疎通や制御、支配といったものは不可能であると考えられる。

 

 

などが挙げられている。

現在、あまりにも謎が多いため、各国をあげて研究・解明が進められている。

 

 

ノイズの対抗策としては

 

・攻撃を当てるもすり抜けてしまう。したがってノイズへの有効手段はなく、発生したノイズに対する一般的な対抗は「逃げる」ことしかない。

 

・そのため日本でも、都市部を中心に避難警報やシェルターを設置しているのだが、果たしてそれが、ノイズの特性と照らし合わせた場合、どこまで有効性があるのかは疑問を禁じえない。政府によるアピール性の高い政策と揶揄されることもあるが、ノイズに対しては、「そうするしかない」というのが実情である。

現在、都心からの疎開も検討されており、疎開に伴う助成金の交付支給も議題にあげられている。

 

 

過去の実例としては

 

・日本とは別の国では、ノイズが減衰する物理エネルギーを、さらに凌駕するだけのエネルギーをぶつけることで殲滅を試みたことがある。

 

・1時間を越えて連続的に行使された爆撃は、周辺にあった山の地形をも変えてしまい、その後に発生した雨による土砂崩れは、ノイズよりも深刻な被害をもたらす結果となったという。

 

 

政府のような大きな組織が欲する力。それはノイズに対抗できる力であろう。ノイズに対抗することができれば人類の死亡率は格段に下がる。それでもノイズの発生源を叩かなければ意味がないがそれでも、人類にとっては歴史的なことであろう。

 

 

これが、彼女の絶望の本質―――――では、ない。

 

 

(―――――違う。)

 

 

その正体は掴めない。しかし、月華自身が漠然としたナニカを掴んでいる。

 

 

(ノイズか・・・。)

 

 

キーワードはおそらくそれだ。いま思いついたことと何らかの関わりがあるはずだ。だが、それは『本質』ではない。おそらくそれらは―――――

 

 

キーンコーンカーンコーン。

 

 

はっとして顔を上げる。

日直の号令の合図が急に鼓膜に叩く。立ち上がり、礼。午前の授業が終わった。大きくため息をつき、一度頭をリセットする。

 

何も焦ることはない。

 

彼女の下着や衣服、靴は干している。今日はあまり日差しは強くない。乾くのに時間がかかる。ノーブラノーパンでどこかに行くことはないだろういくらなんでも。

 

首をコキコキと鳴らし、凝り固まった体をほぐす。やはり長時間同じ姿勢というのは疲れるものだ。昼休みに移り昼食をとるためにかばんを開けるが、弁当と水筒がない。

 

 

(そういえば、彼女の朝食と昼食のこと考えて自分のことを考えていなかったな・・・。)

 

 

いつもは弁当派の月華であったがあんなことがあったのだ。不幸とは考えず、これもいい機会と頭を切り替える。たまには売店や学食で済ませるのも悪くはないだろう。

 

 

(さぁ~て今日の日替わり定食はなにかな~?)

 

 

200円の日替わり定食。学生の財布に優しく美味しい定食。えびフライかそれともからあげか。そのことにワクワクと愉快に髪を揺らしながら月華は教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ではこれでSHRを終わる。全員気を付けて帰るんだぞ。」

 

 

今日あるすべての授業が終わり放課後。生徒は部活や授業の復習や予習のために残る生徒もいる。入学当初は授業スピードがハイレベルすぎて号令の合図とともにうが~と一気にだらけだし、放課後残って復習と予習を血眼になってやっていた生徒が過半数いたが、もう1年以上も厳しい授業を受けているとそんな光景も見なくなった。トマトは厳しい環境で生き抜くことで甘味が出るらしいが、おそらく人間も同じなのだろう。

 

月華は自称帰宅部部長であるので特に理由がない場合は残ることはなく校門を出る。ちなみにこの学園の帰宅部にはキャッチコピーがあり、"早く逝こう。俺たちの楽園へ"らしい。もちろん非公式である。

 

月華はそのまま家に帰らず食料が心許ないので近くのスーパーに買い出しに行った。家にいる響のことも考えておかゆもちゃんと買っておく。おかゆだけだと飽きるだろうから病人でも比較的食べやすいうどんも買っておく。そのあと雑貨店に行き、ノートとシャー芯を補充する。

 

買う物がいつもより多かったので少し時間がかかった。おかげで茜色だった空は黒くなり、建物の明かりで辺りを彩っている。

 

寄り道を終えてさっさと帰省しようと思いながら歩く。そして足を止め、ある場所を見つめる。その場所は昨日、彼女を拾った場所。路地裏。

 

 

「・・・・・。」

 

 

無言でその場所に足を踏み入れる。そこに何かあるわけではない。光は当たらず、広がるのは薄暗い闇の世界。日が当たりにくい場所のせいかまだ昨日の雨でできた水たまりが残っており、自身の姿が水面に映るのを見つめる。

 

 

「・・・・・そういえば・・・・あの日も雨が降っていたっけ・・・。」

 

 

雲が晴れ、月明かりが闇を照らす。

 

 

―――――脳裏にノイズが走る。

 

―――――映像が流れる。

 

―――――映るのは地べたで這いつくばっていた少年。

 

 

 

「・・・・・ほ~んと、この路地裏には縁があるな・・・。」

 

 

ため息。路地裏の闇に溶け、消えていく。その呟きを聞く者はいない。路地裏を後にし通学路に戻った。

 

 

 

 

3.

 

 

 

 

ガチャリとドアが開く音が玄関に響く。

 

 

「ただいま~~。」

 

 

路地裏で少し気分が沈んでいたが、いくら体調が少し良くなったからと言っても彼女はまだ心に大きな深い傷を負っていることには間違いないはず。そんな心に余裕がない響にこんな状態を見せると、心配をかけ悪い状態になるであろう。心配をかけないようにいつも通りのテンションで帰宅する。

 

 

「あれ?」

 

 

家は明かりがついておらず暗い。玄関に置いてある時計を見る。時刻は19時を過ぎている。干していた服や下着も乾いているはずだ。だが明かりがついていない。当然リビングにも。彼女はもう既に家を出たのだろうか?

 

 

「響ちゃ~ん?ただいま~~?」

 

 

階段を上り、二階に向かう。真っ暗。どちらの部屋にも電気もついていない。自分の部屋の明かりをつける。しかし誰もいない。かばんを置いて彼女が休んでいた部屋に向かう。暗いがそこには人影が座り込んでいた。

 

 

「なんだいるじゃないか。ただいま。」

 

 

明かりをつけるとベッドに寄りかかって枕を抱きしめる響がそこにいた。洗面所においていた服装に着替えていたのでシャワーをちゃんと浴びたようだ。

だがプルプルと身体が震えているように見える。そんな状態に不安になり、具合いを覗う。

 

 

「どうしたの?もしかして具合悪い?」

 

「・・・・・・・たの?」

 

「え?」

 

 

顔を枕に付けている状態でつぶやいているためによく聞こえなかった。

顔の上半分だけ出して月華を睨みつける。

 

 

「見たの?」

 

「見た・・・?見たって何を?」

 

 

何を見たのか。その疑問を響が答える。

 

 

「私を着替えさせてくれたよね。」

 

「うん。そうだね。」

 

 

月華は答える。

 

 

「・・・私・・・下着着てなかった。」

 

「まあ、そりゃ・・・替えのなかったし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ん?・・・・・見た?

 

 

 

 

ハッとなり気づく。彼女の言葉の意味を。

 

彼女を着替えさせたのは月華だ。下着は当然ない。その下着は洗濯をして干している。そしてジャージに着替えさせた。服を着せるためには身体を見ないといけないのは言うまでもない。

 

 

―――――つまり、彼女の裸を見たということだ。あんなところからこんなところまで。

 

 

そのことに気づき動揺する。響を見る。

彼女は顔を真っ赤にして涙を浮かべながら睨みつけていた。

 

 

「で、でも!!見ないと手当てできないし、服も着替えさせれなかったからしかたないよ!!」

 

「~~~~っ!!」

 

 

急いで弁解する。月華が言っていることは正論だ。そうしなければ響は死んでいたであろうから。だが人は感情論重視。正論は逆に煽ることともある。ましてや年頃の女の子ならなおさらだ。

 

 

「バカッ!!」

 

「い~~ったい!!目に当たった~!!」

 

 

響からの枕スローが月華の顔面に炸裂。チャックの部分が目にストライクし廊下に倒れる。

 

 

「・・・・ふんっ!!」

 

 

バタンッ!!

 

ドアが叩きつけられる音が辺りに響く。月華の目の痛みはしばらく続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ではまた次の機会に。

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