グレビッキーと家族になりました。   作:sinkeylow

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1話でオリジナルをぶっこんでいますが、戦闘描くかどうかは未定です。




9月24日に改編。
びっきーの口調をグレビッキーに近づけました。
その他は特に変更ありません。


太陽と月の出会い

 

 

 

 

 

 

月華が一度部屋を後にしてしばらくすると、おぼんに湯気が立っているおかゆとミルクを載せて持ってきた。

 

そう言えば、昨日も何も食べてなかったと、おかゆを見てそんなことを考えたら、響のお腹の中から思い出したかのように、ぐぅ~っと音が鳴った。カァッと頬が熱くなる感覚と共にお腹を押さえつける。その様子を見てクスクスと月華は微笑む。

 

 

「我慢しなくていいよ。自分で食べられる?つらいなら食べさせてあげるけど。」

 

「あ・・・うん・・・大丈夫。」

 

「そうかい。」

 

 

月華はおぼんをテーブルに置き、座布団を敷いた。響は座布団に座ろうとするが突然めまいが襲った。

 

 

「・・・・・っ!!」

 

「おっと!大丈夫?」

 

 

よほど体が衰弱していたのであろう。月華がとっさの行動のおかげで何とか倒れることは免れた。やっぱり食べさせてあげようか?と問いかけるが響は断った。一応食べることはできるらしい。支えてもらいながら座布団の上に座らせてもらう。おかゆを手に持ち、レンゲですくい、ゆっくり口に運ぶ。

 

 

「・・・・・・っ!!」

 

 

味の薄いはずのそれは五臓六腑に染み込んだ。それほど熱くなく、いい感じの温度だった。そしてどこか懐かしかった。その懐かしさに思わず手が止まる。

 

 

「・・・・?・・・どうかした?」

 

「そうだ・・・この味・・・。」

 

 

響の耳に月華の問いかけは入らなかった。思い出す。昔のことを。

 

 

(そういえば昔は体調を崩したときによくお母さんがおかゆ食べさせてくれたっけ・・・・。)

 

 

まだ幼かった頃。もともとアクティブな性格だったためかめったに体調を崩さなかった響。体調を崩すたびにいつもそばにお母さんがいた。いつも自分のことを心配し気遣い、介抱してくれた。その時にはよくおかゆを食べさせてくれた。

 

このおかゆはお母さんに作ってもらった物の味にそっくりなのである。そのことを思い出し、響はひどい顔でおかゆをかきこんだ。おかゆを食べた後用意されたミルクを飲むと、はちみつと砂糖の甘さがちょうどいい温度でまた泣きそうになった。

 

 

「・・・・・ありがとう。」

 

「うん、どういたしまして。」

 

 

食べる前は顔色が悪く、病人みたいな見た目をしていたが、腹を満たすと顔色もよくなり、体調もだいぶ良くなった。長かった餓えを凌ぐことができたのだ。

 

そういえば名前を言ってなかった。

 

 

「・・・・・・・・・立花響。」

 

「え?」

 

「私の名前・・・。」

 

 

すぐに消えてしまいそうな声であるが今の響にはそれが精いっぱいだった。

 

 

「立花さんだね。」

 

「響・・・でいい。」

 

「そう、じゃあ響ちゃんで。それにしても驚いたよ、昨日近くの路地裏に倒れていたんだ君は。」

 

「そう・・・・ここどこ?」

 

「僕の家だよ。ああ、そうそう君の衣服はボロボロだったから洗濯した。これから干すから、まあゆっくりしていってよ。」

 

「え、・・・いや・・・いい。」

 

「けが人はおとなしく休んでいなよ。立ち上がることすらやっとに見えるしそれに行く所もないんだろう?」

 

 

行く宛てがない。確かにその通りだ。

 

全部奪われてしまったのだ。何もかもなくなったのだ。今ここで無理して動いてもまたこの家に戻ってくるのがオチだろう。その意思表示に納得した月華は食べ終えた食器をおぼんに乗せ、部屋を後にする。

 

自分が知らないジャージを着ていたのは着替えさせてくれたのか。昨日は雨が降っていた。あのままパーカー姿だと、体温が落ちて非常に危険な状態になっていたのだろう。月華は洗濯物を干しに行った。

 

 

「・・・。」

 

 

響は何もすることはなくなったので、ベッドに寄りかかり何かないかと部屋を見渡す。

 

必要最低限であるが家具が置いてある。テーブルにタンス、机に赤のランドセル。そして一つの写真立てが目に入る。その写真立てには月華に体を預けていおり満面の笑みをしている小さな少女が映し出されていた。おそらく妹であろう。赤のランドセルがここにあることから彼女の部屋であると響は推測する。だとすると一つの疑問が生まれる。

 

 

(・・・・・・・その子はどこにいるのだろ?)

 

 

静かだ。この家はあまりにも静かすぎる。

 

もともと家とは縁がなく、ハイライトが目立つ夜道でも騒がしいところで生活していたのでその騒々しさが身に沁みついていたせいなのかわからない。

 

窓に映し出される景色から察するにこの家は2階建て。1人暮らしに2階建ては家賃的にも普通見ない。両親が共働き、または海外出張ならその疑問は晴れるのだが、どこか違和感がある。

 

もう一つは写真に写っている少女だ。ここは少女の部屋で間違いないだろう。窓から見える青空を見るにまだ朝。なのになぜいない?月華がこちらで寝ていたので、月華の部屋で寝ていたのならそれまでなのだが、やはり釈然としない。

 

 

(なんだろ・・・・この感じ・・・。)

 

 

どこか静かで寂しい。そんな空間。この部屋の印象はそれだった。しばらくすると部屋の外から階段を上る音が聞こえる。戻ってきたようだ。コンコンとノックの音が静かな部屋に響く。

 

 

「響ちゃん入るよ。」

 

「あ・・・・・へ?」

 

 

ガチャリとドアが開き現れる月華。その容姿を見て響は呆けた声を上げる。

 

 

「どうしたの?響ちゃん。」

 

「・・・それ学校の制服?」

 

「うんそうだよ?」

 

「・・・・もしかして・・・男?」

 

「ああ・・・そういうことか。うんそうだよ。」

 

「・・・・・っ!!」

 

 

その返答に目を見開き驚愕する。

 

月華の格好はブレザーで灰色の長ズボン。スカートではない。どう見ても黒髪ポニーテールの少女が男装しているようにしか見えない。

 

 

「・・・・・てっきり同姓って思ってた。」

 

「ちがうんだよなぁ~それが。ちなみに高2ね。」

 

「え・・・・年上・・・?」

 

「あ、年下なのね君。」

 

 

性別よりもそっちに驚愕した。たしかに身長は少し上だから同い年だと思っていたが、まさか二つ上とは。高2すなわち17歳の平均身長は170cm。彼の全体を見るに164cmぐらいしかない。高校生にしては小さいほうだろう。

 

 

「そこまで驚かれる様子を見るのも何度目かな?」

 

「ごめん・・・・・・・・・・・。」

 

「あ~いいよ別に。たいていの人はそんな反応するから。」

 

 

いつものことだしと笑顔でアハハ~と手を振る。

 

 

「まあこの格好からもう察していると思うけど、今から学校に行くから。昼飯は冷蔵庫からテキトーに食べてもいいし代わりの着替えはおいているからゆっくりしていってね。」

 

「学校・・・。」

 

 

学校。普通の子供なら行く学びの場所。大人は人間関係を学ぶや友達を作る場所なんていうがそんなことはなく人間の残酷さを響に教えたある種地獄の場所。あの地獄で人間の残酷さを思い知ったからこそ響はあることを問う。

 

 

「・・・・・・いいの?・・・見ず知らずの私を家に一人にして・・・。」

 

「うん?なんで?」

 

「だって・・・その・・・・・家で変なことするとか・・・・・・・。」

 

 

不思議そうな顔で首を少し傾げ月華は答える。

 

 

「なにかするの?」

 

「いや・・・しない・・・・けど・・・。」

 

「じゃあ大丈夫だね。帰ってくるの夕方の6時ぐらいになるだろうから、ちゃんと休むんだよ。」

 

 

月華は部屋を後にし、そのまま歩いて学校に行った。

 

響一人になったことにより再び訪れる静寂。学習机においてあるデジタル時計を見る。時刻は7時40分。帰ってくるのは夕方6時になるまであと約10時間。

 

そんなことを考えていると異臭に気付いた。部屋からではない自分の身体から。そういえば長い間さまよっていたから体を洗っていないことを思い出す。そもそも月華は男だから全裸の年頃の少女である響の裸を洗うのはさすがにOUTと思ったのだろう。

 

替えの着替えは置いてあると言っていたので自分で洗えということなのだろう。十分睡眠をし食事をしたおかげかまだ足元がフラつくが歩くことができる。

 

 

「身体・・・・洗おうかな。」

 

 

部屋を出て階段を下りる。階段には手すりがついていたので下りるのにそんなに難ではなかった。一階に下りてもやはり静かだった。人っ子一人いない。そのことに疑問を持ちながら洗面所に向かう。着ていた服を脱ぐ。下着は着ていなかった。まあもし年頃の下着を着ていたらそれはそれで問題だが。写真に写っていた少女はブラなどをつける年頃ではないだろう。シャワーを浴びているとあることに気づく。

 

 

 

 

――――――ん?下着を着ていない?

 

 

 

 

それはいろいろとおかしい。だって下着を着ておらず、服も変わっているということは。誰かが着替えさせたということである。つまり見られたということである。響の裸を。

 

 

―――――――そして月華は男である。

 

 

「~~~っ!!」

 

 

その瞬間顔が真っ赤になり自分でも顔に熱が灯っているのがわかる。そのことを忘れるためかのようにゴシゴシとシャンプーで髪を泡立てる。シャワーを浴びた後もその熱が冷めることはなかった。帰ってきたら問い詰めよう。昼ご飯を食べながらそう決めた。

 

 

 

 

 




UAが1000超えたので投稿。
ではまた次の機会に。

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