機動戦士ガンダムGナッシング~西海岸は煉獄と化した!!   作:ミノフスキーのしっぽ

1 / 5
第1話

 第1話 サクラメントに紅き男爵は舞い降りる! その1

 

 

 その日。

 

 鷲は舞い降りたのだ!

 

 それも続け様に!

 

 

 宇宙世紀0079年3月11日

 

 宇宙での激戦に勝利したジオン公国軍は、バイコヌール宇宙基地含むユーラシア中央地区、東西ヨーロッパ地区を、第1次地球降下作戦によりすでに占領していた。

 その成功によって北米での勝利も確信したジオン公国軍総司令部は、すぐさま第2次降下作戦開始を決断した。

 

その直前、ズムシティ公王庁の執務室では斯くの如き会話がギレン総帥と幕僚たちの間で交わされた。

 

 「総帥、我が軍は各戦線において連邦を圧倒しております! その余勢を駆って、北米も占領下に収めるべきかと!」

 

 「ふん…よかろう。第2次降下作戦を許可する。励めよ」

 

 「はっ! 必ずや総統に吉報をお届け致します!」

 

 「うむ。征け」

 

 「はっ!」

 

 北米大陸東部、中央部へと、続々と降下した第2次降下隊第1陣、第2陣は、ギレンとの約束通りに疾風迅雷の働きで各拠点を制圧。次々に周辺地域をその支配下へと編入していく。

 

 「フェアシュテルン閣下、降下準備完了とのことです!」

 

 「ん…ルナ2の連邦艦隊の動きはどうか?」

 

 「哨戒艦からの提示連絡によると、今のところ目立った動きはないとのことです!」

 

 「よろしい。定刻通りに降下を開始する!」

 

 それに引き続き、第3陣も降下を開始する。

 

 「第1陣、第2陣には負けてはいられん! 北米西部担当の我等も、早期にキャルフォルニアを制圧して見せなばならん! ギレン総帥の御期待に沿うようにな! 各員の奮闘を祈る! ジークジオン!」

 

 「「「ジークジオン!」」」

 

 その降下地点とは、旧合衆国と旧メキシコ国を隔てていた旧国境付近。

 

 東部、中央部で公国軍と交戦中の連邦航空隊を出し抜く形で、第3陣は大した被害もなく無事に降下に成功する。

 

 「これより我が機甲兵団は、ザクⅡj型を前面に押し立て進撃を開始する! 不慣れな土地である! 各員、細心の注意を待ってことに当たれ!」

 

 この時期、公国軍人たちの指揮は頂点を極め、自分たちに敗北はないと高を括っていた。その驕りを戒め、主力である打撃旅団を率いるフェアシュテルン准将は、航空隊の発着場を整備する工兵隊、その護衛旅団を残し、西海岸部沿いに北上を開始する。

 

 「敵影見当たらず! このまま直進します!」

 

 「付近住民による抵抗も見られません! このまま各地域への威力偵察を続行します!」

 

 先のコロニー落としの大津波と大地震によって壊滅していた西海岸沿いの組織的な抵抗は少なく、大陸西部担当旅団は、これといった抵抗もないまま連邦軍キャリホルニア基地まで到達。無血での入城を果たすのだった。

 

 「勝った! 勝った! また勝った! 神も我等スペースノイドの栄光を祝福してくれたのだ!」

 

 「連邦に兵無し!」

 

 「「「ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン!」」」

 

 「……」

 

 勝利に沸くジオン地上軍の姿を、西海岸沿いの住民達は無感動に眺めていた。

 

 人為的に巻き起こされた災禍。

 

 その悪魔の如き所業によって多くを失った西海岸沿いの住民たちに、侵略者に抵抗する手段などは残されておらず、おとなしくその軍門に降る以外に選択肢はなかった。

 とにかくコロニー落とし以後の被害が甚大過ぎて、抵抗運動などしている余力などなかったのである。

 それ故に西海岸沿いの周辺住民達は、自らの心を殺してその現実を受け入れた。

 受け入れざるを得なかった。

 

 そう。

 

 「宇宙が! 宇宙が落ちてくる!」

 

 それが、北米に落下したコロニー、アイランド・イフィッシュの破片を目撃したある少女の叫びである。

 

 「お父さん! 大地が波打ってる! 街が! 家が! 学校! 誰か、誰か、みんなを助けて!!!」

 

 それが、大地震で街も家もスクールの友人たちも失った少年の慟哭だった。

 

 「お母さん! 海が迫ってくる! 速くこっちに! 速く…いやあああああああ!!!」

 

 それが、コロニーの破片の1つが太平洋へ落下した結果、母親を津波により失った少女の叫び声。

 

 「流星……お星さまが、いっぱい落ちてくる…」

 

 それが、月のマス・ドライバーからの隕石攻撃を目撃した、ある幼女の呟きである。

 

 その他、北米各地で様々な絶望の叫びが放たれ、諦観が社会を覆っていった……

 

 ……だが、災禍はそれだけに止まらなかった。

 

 2次、3次被害が続いたのである。

 

 「嫌っ! やめて! 同じアースノイド同士でこんなっ!」

 

 「うるせえ! おとなしく服を脱ぐんだよ!」

 

 「お…お母さんを放せー!」

 

 ゴッ!

 

 「がっ⁉…このクソガキ!」

 

 チャッ カチッ!

 

 「⁉ やめて…坊や、逃げてー!」

 

 「…あっ、お母さ…」

 

 パンッ! パンッ!

 

 「嫌ー! 坊や…坊やー!!!」

 

 「へっ…邪魔をするから…」

 

 「…お…母…さん、熱い…よ…助け…て…」

 

 バンッ!

 

 「連邦軍だ! 無駄な抵抗……きっ、貴様ぁー!!!」

 

 「まっ、待ってくれ! 抵抗はしない! これは事故なんだ! だからっ!」

 

 「そんな言い訳っ!」

 

 タンッ! タンッ! タンッ! タンッ!

 

 ドザッ!

 

 「坊や…坊やぁー!」

 

 「…母…さ…」

 

 「早く! 医療部隊を!」

 

 

 最初は、他の攻撃を受けた地域からの難民の流入だった。続いて、食料、物資の不足から生じた略奪、殺人、レイプなどの治安悪化が生じ、頻発していった。

 その他、描写するのも忌まわしい事柄が続く。etc. etc.

 

 また、地元の連邦軍、治安維持組織も、質量攻撃を受けた工業地帯から流れ込んできた難民の移送、治安の維持で精一杯。

 むしろボランティアを募り市民から様々な助力を得なければ、1日のノルマすらこなせない有様。

 

 北米大陸のインフラ、社会秩序共に、ジオンの度重なる攻撃によってズタズタにされていたのである。

 

 そんな明日が見えない日々が、北米に限らず地球各地で続いていた。

 

 このような状況下、頼るべき信念、助け合うべき隣人たちを次々と失っていた西海岸沿いの住民達に、何ができるというのか?

 

 進駐してきたジオン軍に、プライドを捨て頭を垂れる以外の選択肢といえば、諦めて自ら命を絶つか、あるいは慣れ親しんだ故郷を捨てアラスカのシェルターへと逃げ出すか…それのみであった。

 

 そんな地上の実態を知った上での、ジオン北米侵攻軍第三陣の作戦行動であった。

 

 ジオンの地上での諜報活動は高レベルで機能しており、その情報に則っての効率的な侵攻計画は、これまで痛め続けられていた住民達の精神を、さらに苛めるのであった。

 

 

 ◇◇◇    

  

 所変わって、北米の西海岸側に位置する国際都市サクラメント国際空港の一画に急遽設置された、ある地球連邦議会議員の簡易執務室。

 そこは、度重なるジオンによる宇宙からの攻撃に対し、天外の僻地アラスカに市民たちを逃がすために設けられた執務室であった。

 

 コロニー落としの直後は、津波の被害を受けた西海岸の住民達を逃がすための。そして今現在は、ジオンの地球侵攻作戦直前に実施された、マス・ドライバーによる質量攻撃の被害難民を逃がすための、指示所となっている場所であった。

 

 近隣の軍事基地はジオン航空機隊に対抗するための基地となっていて、スパイが紛れ込んでいるかもしれない難民は進入禁止。

 

 都市のホテルも難民で溢れ、開いた部屋は一室でもあった方が良い。

 

 ならば、直接難民を送り出す空港内に執務室を設置することが効率的と、議員本人がこの場を徴用したのであった。

 

 そんな簡易執務室はこの時、人払いでもされたのか、その場にいるのはたったの二人のみであった。

 

 「…旦那さま、そろそろご決断を。ジオンが迫っています。今を逃せばキャリホルニアからの脱出は困難となります…」

 

 「…ダグラス…私にはやはり、それはできんよ…」

 

 自分を必死に説得しようとする執事に対し、キャリホルニア地区選出の連邦議会議員ローナン・マーセナスは、憔悴しきった表情で、そう弱々しく返答した。

 ローナンにも、主家の存続を第一と考え主をアラスカに逃がそうとする執事、ダグラス・ドワイヨンの忠誠心はよく理解できていた。

 

 これまで不甲斐無い主の下で良く尽くしてくれた。感謝しても感謝しきれないとも思っている。

 

 だが、ある理由からローナンはその提案を呑むことはできないのであった。

 

 「…この状況で逃げ出せば、私は連邦議員として市民を守護するという責務を放棄することになる。まだ多くの連邦市民が助けを待っている…早々に逃げ出した知事のように、ジャブローでモグラになる訳にはいかんのだ……理解してくれ、ダグラス…」

 

 「何を仰いますか! 旦那さまは逃げ出した他の議員たちに代わって、これまで必死に市民たちのアラスカ移送の算段をつけ、寝る間を惜しんでプランを実行してきたではありませんか! 大手を振ってアラスカに赴けば良いのです!」

 

 「…だがなダグラス…私は罪人だ……私はこれまでジオン公国を放置し、その結果、宇宙移民30億を見殺しにしてしまった連邦議員の一人なのだ……」

 

 (見殺しにしてしまった……何の罪もない30億もの人々を……連邦議員の一人として、私はもっとこの最悪の結果を回避すべく働けたはずだ…それにもかかわらず、私はザビ家も暴走はすまいと高を括り、なんら有効的な対策を講じてこなかった……)

 

 「…私は、何らかの形でそれを償わなければならない…今は逃げ出すことができたとしても、いずれその罪が私を追い掛けてくる……ならばいっそ、ジオンと戦い死んでみせてこそ、マーセナスの家名も傷付けず、リディやシンシアの将来を護ることにも繋がっ」

 

 「何を弱気な! 旦那さまが死んでしまって、誰がリディ様やシンシア様をお守りすると言うのです!」

 

 本心を吐露するローナンに最後まで言わせず、そう叱咤するダグラス。

 

 「…ダグラス…」

 

 「…今は…今だけは…このダグラス・ドワイヨンの直言を聞き入れてください……生きてさえ…生きてこそ、汚名を雪ぐチャンスも廻ってきます。共にその瞬間を待ちましょう!」

 

 主人ローナンの想いは理解しつつも、ダグラスは説得を続けた。

 

 長年仕え、支えてきた主人をどうして見捨てられようか。

 

 ダグラスは、その想いを諦め主を見捨てる気は更々なかった。

 

 「リディ…シンシア…理解はしている…理解はしている…だが!」

 

 (まさか人類絶滅規模の戦争が起こるはずもないと高を括っていた自分自身の無能を、私は許すことができぬのだ! これからも地球上では激戦が続き、さらなる犠牲が続く! 我々、連邦議員の無能がその最大の原因なのだ!!!)

 

 一人の男の義侠心。連邦議員としての重圧。そして、連邦大統領を輩出したマーセナス家の現当主としてのプライド。

 それらが渾然一体となってローナンを苛める。

 

 苦しい…だが逃げ出すことはできない!

 

 それらと向かい合い苦悩するローナン。

 

 それ故に、ダグラスの直言を聞き入れることもできず、自身の罪を償うように、これまでこのサクラメント国際空港に居残り続けたローナンであった。

 

 「…旦那さま…」

 

 それを知るが故にダグラスも、これまで何度もアラスカ行きを主に提案するも途中で断念し、こうして側に残り仕えていたのであった。

 

 しかし……もうそれも許されない時期となってしまった。

 

 今回ばかりは、何があってもローナンを説得し、アラスカ行きを了承させようとするダグラスであった。

 

 「だっ…」

 

 そんなダグラスが、主を説得しようと、もう一度発言しようとした瞬間のことであった。

 

 

 カッ カッ カッ カッ

 

 人払いされたはずの執務室に続く通路に、軍靴の音が響いたのは。

 




 愛すべき作品、機動戦士ガンダムシリーズ。でも長く続くシリーズであるため、結構な矛盾点が見られます。

 しかし、どこそこが変だと叫ぶよりは、その矛盾点を解消する形で新たな創作活動をする方が有意義だと、私は考えた次第です。

 それで今回、この場を借りてそんな矛盾点を2,3、解消するための作品を執筆してみることにしました。

 よろしければお付き合いのほどお願い致します。

 
 続いて、あらすじで触れた読者さまの感想のことですが、歴史的事実とは違うデマの書き込みが散見されます。

 とくに現実に影響あるデマを感想に書き込むことは遠慮してください。

 また、デマを根拠とした作品の批判はやめてください。

 
 現実世界に影響するデマに該当する箇所

 少年兵はジオンのように兵隊を確保できない時の非常手段です。


 真実は下記の通り。

 第2次世界大戦において欧米列強は、開戦前からその合理的思考により少年兵の実戦投入を視野に入れて、事前に組織を整備していた。
 開戦前から準戦力として扱われていて、非常手段ではありません。

 ドイツでは1936年からヒットラーユーゲントの10~18歳の少年たちが準軍事訓練を受けていて、素質がある若者が成長と共に軍に入隊していました。
 後の戦況悪化に伴い、SS装甲師団や国民突撃隊へと編入されます。

 アメリカでは1940年9月に選抜訓練徴兵法が整備され、開戦と同時に徴兵年齢を18歳から65歳までのすべての男性に拡大、動員しています。実質的な学徒動員でもあり、大学が休校状態になったそうです。
 なお、アメリカは州によって成人の年齢が違い、21世紀になっても18、19、21歳の州が存在します。
 未成年者の少年兵も、戦力として数えられていた証拠です。

 「敗戦国の日本だけが学徒動員をしてけしからん!」

 そんなデマが世間に流布されていますが、むしろ戦況が悪化するまで動員しなかった日本は有情です。

 また近年の紛争地域では、誘拐や洗脳、薬物依存状態にした子供を無理矢理兵士に仕立て上げるケースも存在します。

 これら上記の事実が、別に少年兵が非常手段ではないという証拠です。

 また、これらは該当するウェブ検索で簡単に知ることができる事柄です。

 
 さて、問題の感想への書き込みですが、書き込みから2週間以上が経過しました。

 読者さまの自主的な改善がなされないので、ここで公表することとしました。

 対応して戴けることを望みます。

 他の読者さまにもお願いします。感想に書き込みをする場合は、なるべく事前にウェブ検索や関連資料を参考にして、トラブルを事前に防止するように努めてください。

 その他の正確でない情報↓

 ZZやUCでのコールドスリープはプルの保管やサイアムの延命に用いられる程度なので希少な技術と見るべきです。

 上記への反論

 月間ガンダムエース2007年2月号035ページのUC連載第一回に、被験者は半ばモルモット扱いだが、一部の研究機関や病院で扱っていると明記してありますよ。
 
 被験者になれば一般の連邦国民だって技術にアクセスできる状態にあります。

 またサイアムは、バカンスや休養と称しては、激務の間にこつこつと時間を貯め、コールドスリープで20年ほど生を引き延ばしたと作中で語られています。

 UC本編は0096年、それから20引いて0076年。さらにこつこつと稼いだ分を加算すれば、5~10年くらい前からコールドスリープは実用化されていたことになります。

 精確な情報に基づいた作品の批評をお願いします。

 ですから、別に連邦軍が地球連邦が成立する以前から研究されている技術を発展させて、0079以前に実用化していても奇妙ではありません。
 たとえば地球連邦軍は、コロニーが多数建設された地球圏以外にも、火星、木星で活動しています。
 宇宙での孤立無援の状況で事故が発生した場合、コールドスリープは最後の生き残りの手段です。
 それを研究していないとは思えません。 

 そもそもコールドスリープは、惑星間の移動用に20世紀からアメリカ航空宇宙局など含め、国策で研究されていた軍事関連技術です。
 合衆国が地球連邦に編入された時点で、技術も連邦軍に接収されているはずです。地球連邦初代首相のリカルドだって、自分は合衆国出身と作中明言しています。

 詳しくはNASAやコールドスリープで検索してください。

 そして、軍事技術が民間に渡る場合は、ほぼ研究が終了してからです。

 たとえば、我々が利用しているパソコンやスマホ、インターネットも元々は軍事関連技術で、1970年代に当時の若者がドット絵のインベーダーゲームを遊んでいた頃、陸軍は3Dでのシミュレーションをしていました。

 軍の技術が民間より20年以上も進んでいた計算です。
 

 次にZZのプルシリーズのコールドスリープも、マハラジャ・カーンらアクシズの者たちが、アステロイドベルトで活動するためにジオン本国から待っていった技術と考えるほうが自然です。

 苛酷なアステロイドで活動するアクシズ艦に、コールドスリープが配備されているのは理に適っています。それをクローン強化人間の機密保持に流用したのではないでしょうか? 

 ジオン共和国が成立した時、一部の連邦軍人が、ジオン・ズム・ダイクン、デギン・ザビと合流しています。
 後のジオン公国軍のお偉いさんたちです。
 その時に、核兵器の技術などと一緒に、コールドスリープの技術も連邦軍から持ち出したのではないでしょうか?

 次の正確でない情報↓ 
 
 1年戦争時の連邦は機密に関わったWBクルー以外に少年兵を招集する描写はないです。(テレビ版)

 ですから、一部の情報を切り取ってくるだけではなく、関連作品を含め、正確な情報を提示してから作品の批評をしてください。

 1年戦争中にノエル・アンダーソン伍長(17歳)や、クロエ・クローチェ(ペイルライダーパイロット15歳以下)など確認できます。


それでは失礼致します。 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。