ということで急いで執筆して投稿させていただきました。
短めですがよろしくお願いします。
そこまで重要ではありませんが専門用語なので用語解説を
頸椎 脊椎の首の部分にあたる部分。首の骨という認識程度で大丈夫ですので
周囲の予想に反してクルペッコは大きな危機を迎えていた。
クルペッコの鋭利な歯は確かにロアルドロスの首筋を、ひいては頸椎を捉えていた。だというのにロアルドロスは絶命するどころか何事もなかったかの如くクルペッコに突進をお見舞いしたのだ。
クルペッコは驚きを隠せない。
しかしそれは知識のある者なら普通の反応で本来ならあり得ないことだった。
クルペッコやロアルドロスが属す脊椎動物とは読んで字のごとく、脊椎を持つ動物のことで脊椎とは脳からの信号を全身へと伝える脊髄のおさめられた場所。
そこを損傷したのだ。良くて下半身不随や全身麻痺。最悪その場で死に至る。体が動くはずなどない。それだというのにロアルドロスは動いているのだ。
その秘密は鬣にあった。
ロアルドロスのもつ鬣は保湿能力に長けた鱗が変質した物で、毛髪のような繊維が死滅した細胞でできている。更に網目状の構造をしている為、大量の水分を蓄積することができるのだ。
本来ルドロス種は乾燥にとても弱く、水分が減ると疲労が蓄積しやすくなるため陸上生活は好まない。しかし、ロアルドロスはこの鬣に溜めた水によって、長時間の陸上での行動が可能になっている。陸に上がるためにもロアルドロスは鬣に水を溜め込む。溜め込むにつれ首筋の鬣は膨張する。膨張した鬣が脊髄を守る。そのため頸椎に歯は届いていなかった。
そのことにクルペッコが気づいた様子はない。
気づかぬ者からすれば、ただの化け物に他ならない。
クルペッコは一度体制を立て直そうとするも、ロアルドロスは攻撃の手を更に加えた。放たれたのはゼロ距離での圧水ブレス。まるで鈍器で叩かれたかのような痛みがクルペッコの全身を襲う。身体が大きく揺れる。必死に踏み止まる。
そこでロアルドロスは一度距離を置く。
長丁場になるだろうと睨んだロアルドロスは消費した水分を補給するために悟られないよう大きく水辺のほうに下がった。多少しぼんだ鬣がゆっくりと膨張していく。
未だクルペッコが気づいた様子はない。
「弱い。弱すぎる。そんなんで俺を配下に加えるなど片腹痛いわ」
「こんな言葉を知っているか?弱い犬ほどよく吠える。強い者は自信があるが為に堂々としている。逆に、自身に実力がなく自信がないと他者に自分をよく見せようとするが為に余計なパフォーマンスが多くなる。それ故口数が多くなる。まるで今のお前のようだ」
「それが貴様の最後の言葉だ!」
ロアルドロスは地面を踏みしめ距離を詰めると、鋭くとがった爪を振り上げた。
合わせてクルペッコは大きく後ろにとび、粘液球を吐く。大振りで隙が生まれたロアルドロスは避けることができない。
「なんだそのブレスは。痛くもかゆくもないわ」
ロアルドロスは下がるクルペッコを追随する。
その時だった。クルペッコが攻めに転じた。
両足で地面を踏み込み、ロアルドロスに飛び掛かった。ロアルドロスは避けようとはしない。ぶつかる目前でクルペッコは翼の火打石を擦り合わせた。火花が散る。突如爆発が起こった。
ロアルドロスは顔面でもろに爆発を受けた。
クルペッコはロアルドロスの過信によって生まれる隙を狙っていたのだ。クルペッコは追撃する。攻撃の手を緩めることはない。顔面めがけて幾度となく火打石を叩きつける。何度も何度も何度も。
やがてロアルドロスはその場に倒れこんだ。
先ほどの爆発で鬣をやられたのだ。
本来ルドロス種は乾燥にとても弱く、水分が減ると疲労が蓄積しやすくなる。それに加え戦闘での疲労。すでにロアルドロスに戦う力は残っていなかった。
「今一度問おうハーレムの王よ。我の配下に加われ」
「断る。我らロアルドロスは王となるために生まれ、王として死ぬ種族。貴様の配下に加わるなど我が認めてもこの体に流れる血が決して許さん」
ロアルドロスはとぎれとぎれの声でそう告げた。
「しかし。しかし俺はそうでも女達は違う。俺の勝手に付いて来ただけだ。クルペッコ。お前を強者として認めたうえでお願いがある。あいつらが望むのならお前の配下に加えてやってくれ」
「逃がすのではないのか?」
「ここら一帯は俺の縄張りだった。他のロアルドロスは当の昔に追い払った。そんなところでこいつらだけで生き抜いていくにはあまりにも過酷すぎる」
「なるほど。わかった、しっかりと聞き届けた」
「………王として君臨し、ハーレムを作り、最後にお前のような強者とやりあえて悪くない人生だった」
そういってロアルドロスは息を引き取った。
急いで書いたのでおかしな部分があるかもしれませんがよろしくお願いします