リアスの眷属になってから数日後、アーシアと帰っていると(アーシアも駒王学園の1年に編入した)家の近くで妙な気配を感じた。
「これは・・・アーシア、私から離れるんじゃないわよ。」
「どうかしたんですか?」
怪訝そうな顔でアーシアが聞いてくる。
「ん~大丈夫だと思うけど家のほうに良くない気配を感じるのよ。だから正体分かるまで私から離れちゃだめよ。」
「はい、分かりました。」
そうして警戒しつつ家の前まで行くと
「里奈ちゃん久しぶり!」
栗色の髪をツインテールにした女の子が私の名前を呼んだ。
「あら、イリナ久しぶりじゃない。」
警戒を解かないまま返事を返す。
「近くに来たから寄ったんだけど誰もいなくて、失礼かと思ったんだけど待たせてもらってたの。」
彼女は紫藤イリナ。大分前にイギリスに引っ越した私の幼馴染だった。
「父さんと母さんは相変わらず海外飛び回ってるわよ。それで、戻ってきた理由は?」
「ええ、教会のお仕事で久しぶりにこの町に戻ってきたから里奈ちゃんに会いたくて来たんだけど・・・。」
そういえばこの子両親と揃って敬虔な信徒だったわね~。
「里奈ちゃん、人間じゃ無くなってる?」
「ああ、わかるのね。っとここじゃなんだから家で話しましょ。」
そう言って家の鍵を空けてドアを開く。
「連れの方もどうぞ。」
「ああ、失礼するよ。」
2人をリビングに待たせて着替えてから飲み物を出す。
「それで?何かこの町で事件でも起きてるのかしら?」
私は単刀直入に聞いてみる。
「悪魔に教える必要は無い。」
「ちょっと、ゼノヴィア!ごめんね~里奈ちゃん。」
まぁ、教会関係者の悪魔に対する反応なんてこんなもんよね。
「別にいいわよ、聖剣持ち出すくらいの事件なんだから当然よね~、私も悪魔になっちゃったし。」
「あはは、里奈ちゃんには分かっちゃうか~。細かい事は明日里奈ちゃんの学園で話すから今日は勘弁してね。里奈ちゃんも悪魔だから話しは通ると思うし。」
わざわざ学園で事情説明って事は結構大事っぽいわね。
「わかったわ。それにしてもイリナって聖剣扱えるのね。」
「これも信仰と修行のおかげね。本当は里奈ちゃんを勧誘に来たんだけどね~、悪魔になっちゃってるからね。」
「前も私のこと勧誘してたけど悪魔になって無くても断ってたわよ?」
「そうよね~、里奈ちゃんがいれば心強いんだけどね。」
「イリナ、悪魔に馴れ馴れしくするな。信仰の無い奴を頼っても仕方ないだろ。」
「少しくらいいいじゃない、幼馴染なんだし。悪魔になっちゃったのは残念だけど。」
「ふん、欲を糧にするような奴と馴れ合う必要は無いだろ。」
こいつ・・・
「はぁ~、悪魔だの堕天使だのって言ったって単なる種族の差じゃない。人間にだって善悪はあるでしょうに、自分達だけが至高とか正しいとかくだらないわね。だから私って宗教とか嫌いなのよね~。教会だって違法施設とか作ってるんだからそっちだって充分信用できるかどうか分かったもんじゃないわよね~?」
「なんだと!」
「ちょっと、ゼノヴィアも里奈ちゃんもやめてよ。」
「ふん、まぁいい。帰るぞイリナ。」
そう言って帰ろうとドアに手をかけた時にゼノヴィアがアーシアを見て聞いた。
「ん?お前はアーシア・アルジェントか?」
「ええ、はい。」
アーシアがちょっと怯えながら答える。
「アーシア・アルジェントって・・・堕ちた聖女?」
「そうだ。悪魔をも治療できる力を持っているらしく教会から追放されたと聞いていたが悪魔の庇護下にいたとはな。」
ん~正確には堕天使なんだけど・・・ややこしくなりそうだから言わないけど。
「私は・・・教会を追放されたあと堕天使に利用されそうになった所を里奈さんに助けてもらったんです。その頃はまだ里奈さんは悪魔じゃなかったですけど。」
「ふん、悪魔になっても一緒に居る時点で大して変わらないよ。・・・まだ神を信仰しているのか?」
「え!追放されたんだから神を信仰してるなんてないんじゃない?」
「いや、たまにいるんだよ。そういうのに私は敏感でね、わかるのさ。」
「信仰は・・・捨てきれないだけです。ずっと信じてきたので・・・。」
「どうせ悪魔の庇護にいるんだから利用されて終わりだろう。そうなる前に私が神の元に断罪してやろうか?」
こいつは神の元とかいえばなんでも許されるとか思ってるのだろ~か?
「はぁ~、あんたさっきの話聞いてた?悪魔だろうと堕天使だろうと単なる種族の差でしかないわよ。それを見ても無いのに利用されるって?これだから敬虔な信徒って好きになれないのよね~。神の名を出せばなんでも許されると思ってるわけ?断罪なんて・・・法律で計ったら神の名の下だろうと単なる殺人よ。殺人に良いも悪いも無いわよ?」
私の言葉に2人は言葉に詰まる。そりゃそうよ、どんな理由つけたって殺人という行為は変わらない。正当防衛もあるけどそれでも殺しちゃったら過剰防衛甚だしい。
「それでもアーシアに難癖つけようってんなら私が相手になるわよ?」
「ふん、悪魔が聖剣を持ってる私達の相手になるだって?」
「ちょっと!ゼノヴィア!」
「ええ、聖剣があるくらいで勝てると思ってるんなら慢心にも程があるんじゃない?」
「いいだろう、相手になってもらおうか。悪魔相手なら殺人にはなるまい?」
はぁ~、ライザーもだったけどこいつも相手の実力分かんない奴か。その程度で私に勝てると思ってる時点で勝負は決まったわね。
「イリナはどうするの?私は2人がかりでもいいわよ?」
「・・・私は遠慮しとくわ。」
まぁ、イリナは大分前とはいえ私の事知ってるから参加しないわよね~。
「じゃあ、ゼノヴィアだっけ?庭で相手してあげる。」
そう言って私達は庭に出て対峙する。
「じゃあ、始めましょうか。」
そう言って私は呪文を唱える。
「では、行くぞ!」
ゼノヴィアが切りかかってくるがそれを避けて詠唱の終わった魔法を発動する。
「
もう一度切りかかって来たゼノヴィアの剣を右手で受け止める。
バジィ!
「な!聖剣を受け止めただと!」
驚愕するゼノヴィアの顔の前で寸止めする。
「勝負ありよ。油断してたとかいう言い訳は無しよ?あなたは本気でも私には勝てない。」
「そんなはずは──」
言い終わる前に私は移動して後ろを取る。
「今のに反応できない時点で無理よ。」
ゼノヴィアは首筋に当てられた私の手を見て脱力する。
「ああ、どうやっても勝てないようだ。負けを認めよう。」
「納得してくれたようでなによりだわ。」
ゼノヴィアは聖剣を布に包みイリナの元へ行く。
「じゃあね、里奈ちゃん。明日そっちに行くからその時はよろしくね~。」
「ええ、細かい事情は明日聞かせてもらうわよ?」
そうしてイリナとゼノヴィアは帰って行った。
また面倒な事になりそうね。
小さい頃とはいえ里奈はリナなんで・・・イリナはそこら辺分かってます。