月を守る太陽である為に何が出来るか…?   作:ぬヰ

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この話は6話となります。


ノイズ500 vs 小さな太陽

「ーZeios igalima raizen tron 」

 

イガリマの詠唱が鳴り響く。

切歌は目の前の500体を相手に、1人で立ち向かおうとしていた。

調のシュルシャガナはペンダントの破壊。

クリスのイチイバルは何ともないが、装者が切歌によって負傷。

つまり、今戦えるのは切歌ただ1人、、

 

「私は…カルマノイズを倒すまで倒れない……」

 

切歌はそう呟くと、切歌の周りを囲んでいたノイズが切歌を襲いにかかる。

しかし、切歌は動こうとしない。

 

「あのバカ……囲まれたらこっち不利になるって…分かってんだろ……!」

 

クリスが調の肩を借りながらモニターを見て叫ぶ。

その声は切歌には届いていなかった。

 

手を伸ばせばもうノイズとの接触が可能なところまで寄ってきたところで、切歌は動き出した。

それは刹那の出来事だった。

 

「なん…だと!?」

「えっ……!」

「嘘だろ!?」

「ありえない…」

 

とモニタールームに居た指令、エルフナイン、クリス、調は同時に声を上げる。

切歌が動いた瞬間、囲んでいたノイズは一斉に砕け、灰のようになった。

切歌は囲んでいた大量のノイズの後ろ側に立っている。

どうやら切歌はこの一瞬のうちに50はいるであろうノイズを灰にさせたのだ。

切歌はノイズが溜まっている場所へ駆けた。

その速さは風を切るように素早く、そこに溜まっていたノイズすら一瞬で倒してしまう。

 

「今の切歌さんなら、カルマノイズにも…!!」

 

エルフナインが少しの可能性を考える。

 

「カルマノイズのエネルギー反応探知しました!ですが、この大きさは尋常じゃないです!!」

 

友里が言うと、皆息を飲んだ。

 

「やっと、お出ましか……」

 

切歌はカルマノイズの出現場所を見つめる。

そこからは第一形態、第二形態のカルマノイズの姿ではなく、何十体もの色々な形のカルマノイズが出現した。

 

「1体じゃ無かったのかよ…!!」

 

クリスは切歌を助けに行こうと、モニタールームを出ようとする。

 

「ダメです!その怪我では…!」

 

とエルフナインが止めると同時にクリスはバランスを崩し、倒れてしまう。

倒れたクリスは調がなんとか受け止めたが、クリスのダメージはあの1発で与えられるダメージだとは考えられないほどで、意識はあるけれど動けないという状況になっていた。

 

「クソッあくまでも手助けは要らねぇってか……」

 

数十体ものカルマノイズの姿を見つめる切歌に通常のノイズが襲いかかる。

切歌はノイズの気配に気付き、不意打ちされそうなところをギリギリ避ける。

 

「このぉぉ!!!」

 

切歌はノイズを邪魔だと感じたのか200はいるであろうノイズを一気に倒しに行く。

少しの時間が経ち、切歌は500体ものノイズを1人で消しさらった。

モニタールームの声は届かない、風の音も感じない。

頭の中に残っているのは昨日の調の表情と言葉。

それが頭の中から離れずにリピートされる。

 

「今はカルマノイズ……」

 

切歌は的をカルマノイズへと移行した。

するとカルマノイズは徐々に中心のカルマノイズに近づいていき、あっという間に一体化していた。

その姿は第一形態よりももっと人型で、素早さも攻撃も根っから上がってるように見えた。

 

「私は…カルマノイズを倒すためならなんだって使うから…」

 

切歌はどんな事をしても止めないとだけみんなに伝える。

クリスと指令、エルフナインはまさかと思いながら見つめる。

 

「イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

ペンダントが切歌に刺さり、黒いオーラが切歌を包む。

クリスとやった時はこの時点で破壊衝動に飲み込まれそうになり、イグナイトになれなかった。

だが今の切歌は破壊衝動を耐える事が出来、イグナイトへ変わることが出来た。

それと同時に

 

「そうか……!!」

 

とエルフナインが言うとモニタールームから出て行ってしまった。

モニタールームは既に凍りついたような空間で、誰も話すことは無かった。

 

「まだだ、これじゃあ倒せない……」

 

この言葉にクリスは反応する。

 

「バカ…!!これ以上イグナイトを重ねたら…!!」

 

「イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

切歌は既にイグナイト状態から重ねて使うことで力を倍増しようとしていた。

確かにイグナイトは重ねて使うことが出来る。

だが、二段階まで来ると破壊衝動が2倍になり抑える事さえ危うい状態になる。

 

「ぐっ……!」

 

切歌はぐっと堪える。

歯を食いしばり、左は右の右は左の上腕を掴み動き出しそうな体を抑える。

 

「はあぁぁ!!」

 

切歌は破壊衝動に打ち勝ち、第二段階のイグナイト状態となった。

 

「嘘だろ…!?カルマノイズの前でイグナイトを二段階も…」

 

流石のクリスも勢いのある話し方が弱くなる。

二段階のイグナイト状態は勿論通常のイグナイトよりもカウントが早く減る、はずなのだが

 

「カウント…イグナイト状態と変わりありません!」

 

と友里が伝える。

切歌は今の状態でカウントさえも抑えていた。

 

「がっ…あぁ…!!」

 

クリスは一瞬切歌の姿が暴走の姿に見えた。

昔響が起こした暴走と同じ姿が切歌にも一瞬だが表れている。

 

「おっさん!長い戦いになるとアイツが危ない!既に暴走状態になりかけてる!」

 

「なんだと!?だが、今の切歌君に我々の声は届かないだろう」

 

「だったらあたしが行くしかねぇ」

 

「無理だ!その怪我では!!」

 

「後輩を助けないで先輩輝度れるかよッ!!」

 

クリスは腹を抑えながらも切歌の元へ向かうために走り出す。

それを調は見ているしか出来ない自分に悔しさのばかり歯を食いしばる。

 

 

切歌はカルマノイズに目を向ける。

すると、そのカルマノイズは徐々に見覚えのある姿へ変わっていく。

 

響、翼、そして未来。

 

「そう言えば未来さん見ないと思ったけど、まさか…ね…」

 

切歌はそう呟くとカルマノイズへ一直線に向かう。

距離を詰めた切歌は鎌を振り下ろす。

未来の姿をしたカルマノイズは体の一部で剣の形を作るとその剣の形をしたものは本物の剣のように輝き始めた。

そして振りかざした鎌をスライドするように跳ね返す。

 

「一部を武器としてる…デスね…」

 

少しだけ距離を取った切歌は体の中で迸る破壊衝動に己を忘れないためにいつもの口調に戻す。

再度切歌はカルマノイズに攻撃を仕掛ける。

右、左、上、下、あらゆる方向から仕掛ける、何回かガードされるが着々とカルマノイズにダメージを与えることが出来ている。

一気に切歌は距離を取り、遠距離技を繰り出す。

やはり、多少当たるが何個かガードされてしまう。

 

「これじゃあいつまで経っても…倒せないデス…」

 

切歌はもう1度遠距離技を放つ。

今度はかなり被弾し、確実にダメージを与えることが出来た。

この調子で切歌は一気に仕掛けようとする。

その時、

 

 

 

ドクンッ!

 

 

「ぐぁっ…!!」

 

破壊衝動が体の中で暴れ始める。

切歌はその影響で膝を着いてしまった。

 

「はぁ…はぁ…もう少し保って…もう少し……もう少しだから……!!」

 

この隙が仇となったかカルマノイズが目の前に居た。

 

「くそッ!まだ、まだ倒れるわけには…いかないデス!!」

 

立ち上がろうとした時にはもうカルマノイズは剣を振り下ろしていた。

 

「クリス……先輩……」

 

切歌は目を瞑りクリスの名前を呟く。

 

 

切歌自身500体ものノイズを見た時は逃げ出したくなった。

誰かに助けを求めたかった。

だがクリスには酷いことをした、一人でやるしかないと切歌はそう思っていたのだ。

そのせいか、無意識にクリスの名前を呼んでいた。

目を瞑って身構えていると、

 

グチャ!と音の後ドス!と鳴った。そして、

 

「呼んだか……」

 

と真っ暗な空間から誰かの声が聞こえた。

いや、誰かじゃない、クリスの声が聞こえた。

 

目を開けると目の前にはクリスが第二段階ではないがイグナイト状態で立っていた。

縦に振り下ろしたカルマノイズの刀は攻撃を防ぐために右腕を横にして防いでいたので、クリスの前腕は半分斬られていて骨の部分で刀の動きを止めていた。

 

「クリス…先輩……腕が……!」

 

「こんなん気にするな……」

 

クリスは左の手で矢を放ち、カルマノイズを吹き飛ばす。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「クリス先輩…私あんなに酷いことをして……」

 

「あたしの弱さの表れだ。こんなんで倒れちまったんだからな…」

 

「でも、でも!!」

 

クリスはそっと切歌の頭を撫でる。

 

「お前が誰より頑張ってんのは一番そばに居たあたしが知ってんだ、たまに当たりたくなる時だってあるだろ」

 

「ただし…」

 

クリスの左手の動きが激しくなる。

 

「1人で抱え込もうとするんじゃねぇよ!!少しは頼れってんだ!!言ったはずだ!何があっても助けてやるって!」

 

クリスは切歌の頭をグシャグシャと擦ると手を離した。

 

「イグナイト状態ならこっちのもんだ、ユニゾン試すぞ」

 

「でも…右腕が……」

 

クリスの右腕は前腕から血が滴り落ちている。

その場に留めていたからか地面には血溜まりが出来ていた。

 

「大丈夫だ、こんな傷」

 

クリスはそう言うとカルマノイズの方へと走り出す。

切歌はクリスに合わせて駆ける。

 

「喰らいな!!」

 

クリスはホーミング弾をぶちかます。

その弾は体制が崩れているカルマノイズに全弾必中し、カルマノイズの動きを封じた。

 

「喰らうデース!!」

 

そこに追撃で切歌が迅速に鎌を切り付ける。

 

「トドメ!!」

 

切歌は全身全霊の力で鎌を上から振り下ろしカルマノイズを斬りつける。すると

 

「キャァアアアアア!!」

 

とカルマノイズから悲鳴が聞こえる。

 

「この声は……?」

 

すると黒いオーラが消え、中から小日向未来の姿が現れた。

クリスは倒れる未来を支える。

 

「ごめん…なさい……私…調ちゃんの記憶が無くなったから…楽しい事をすれば記憶が戻るかもしれないと思って、提案したのに…それも忘れたと聞いて私のせいで、もっと悲しくなってしまった……私の、私のせいで……」

 

「そんなに引きずって……」

 

未来はカラオケやゲームセンターへ行かせた責任感に耐えられずにその未来にカルマノイズが取り憑いたのだと言う。

 

「調……こればっかりは本当の記憶が無いんだとしても怒るデスよ」

 

切歌はモニターで見てるであろう調に話しかける。

 

「発端は調デス、記憶の上書きと言う嘘を付きその結果がこの状態デス、調が何をしたかったのかは分からないデスけど少なくとも未来さんまで巻き込んだのは事実デス」

 

「なんで……記憶の上書きが嘘だって……気づいていたの…?」

 

「今の調には分からないデスよ、私と調どのくらい一緒にいると思ってるんデス。例え記憶が無い調だとしても嘘ついてるついていないぐらいは分かるデス」

 

「そんなつもりでは無かったのに……私のせいで……」

 

その時、切歌とクリスの元に緒川さんの姿が見える。

 

「未来さんの手当てをしますので未来さんを」

 

「あぁ、頼んだ」

 

クリスは未来を抱き抱え、緒川さんに任せる。

緒川さんは未来さんを抱き抱えると一瞬で姿を消してしまった。

 

「これで……カルマノイズは倒せたのか……?」

 

「多分デスけど…」

 

「複数体居たからまだいる予感はするな……」

 

「調、記憶は戻ったデスか?」

 

切歌は小さなモニターで調の様子を確認する。

 

「何も変わってない…かも…」

 

「という事はやっぱりまだ居るって事デスね…」

 

その途端、切歌の視界の端で何かが動く。

切歌は動いた方に目を向けると、クリスが倒れていた。

 

「クリス先輩…?クリス先輩!?」

 

「っ…………」

 

「クリス先輩!!しっかりするデス!!」

 

クリスのイグナイト、イチイバルは強制的に解除され、私服のクリスの姿へと戻る。

 

そこで初めて切歌は気付く、目を瞑って身構えていた時に鳴った奇妙なグチャッという音は最初クリスが腕を斬られた音だと思ったが、実はクリスはその前に生身でカルマノイズの攻撃を受けていた。

 

クリスはカルマノイズの刀が上から振り下ろされる所に飛び込み、右の脇腹を斬られる。その一秒もしない後にイチイバルを纏い、腹の痛みのお陰で勢いでイグナイトへとなれたのだ。

シンフォギアを纏っていたおかげで痛みを和らげていたが、それも限界に来ていた。

 

倒れたクリスは脇腹から血が止まらず、目を開かない。

 

 

 

ドクンッ!!

 

「ぐっ……ここで……!がぁあっ……うぅぅぅ……!!」

 

衝動はまだ続いていてさっきよりも衝動が高まってきていた。

 

「クリス先輩を……助けないと……!!」

 

切歌はクリスを抱き抱え、急いで本部へと戻る。

幸い、切歌は第二段階のイグナイト状態を解除していなかったため素早く動く事が出来、すぐにメディカルルームへと運んだ。

 

 

 

ドクンッ!!!

 

 

メディカルルームでエルフナインにクリスを任せた後、切歌はイグナイト状態を解除しようとした時さっきよりももっと強い破壊衝動に苦しまされる。

 

「もう、ダメか……」

 

切歌は本部の外へ出る。

 

「何処へ行くつもりだ」

 

森の中へ逃げようとした切歌の行動を知っていたかのように風鳴弦十郎、指令が目の前に居て切歌を止める。

 

「私はもう暴走してしまう…それなら誰ニモ被害を加えナイ場所に……行カナイト……」

 

「そうはさせんな、ここは俺が通さん。通りたければ俺を倒すなり無視していくなりしろ!」

 

「お願いデスヨ……私の意識デ動ける間ニ遠クニ……!!」

 

「言葉の脅しでは通じない…か…ならば…!!」

 

「あぁ……ウッ…ア……ガァァァアアアアアアアア!!!」

 

切歌は遂に衝動に耐えられなくなり暴走状態へと変わる。

 

「アァ……コロス!!」

 

切歌は指令に突進する。

 

「……ッ!はぁぁッ!!」

 

猛スピードの突進を指令は両手で受け止める。

多少は後ろへ後ずさるが、スピードを抑え込むことが出来た。

 

「ありのまま、全てをぶつけろ!!」

 

指令が叫ぶ。

すると暴走した切歌は鎌を持ち、尋常ではない速さで鎌を振り回す。

指令は全ての動きを読み切り、当たらない場所へ避ける。

 

「もっとだッ!闇雲に切りつけようとしても俺には絶対当たらんぞッ!!」

 

「ヴァアアアアア!!!」

 

切歌はもっとスピードを上げて攻撃を仕掛ける。

だが指令はそれをも読み切り、避ける。

 

「オオォッ!!」

 

指令が吠えると猛スピードで切りつけてくる鎌を掴み上へ上げる。

鎌を持っていた切歌も一緒に上に上がってしまう。

 

「ガァアアア!!!」

 

指令は持ち上げた鎌を斜め上へと投げつける。

切歌はそのまま鎌と飛ばされてしまうが、その衝撃を元に指令に再度突進を仕掛ける。

気配で指令は悟る。

この突進にコロスの全てが詰め込まれている。

 

常人がモロ受ければ体は粉々になってしまいそうな勢いで迫ってくる。

 

「これで、止められなければ俺はここにいる資格などない!!」

 

と叫び指令、風鳴弦十郎は切歌の猛突進を片手で迎え撃つ。

指令はまだあまり踏ん張っていない状態だったため、最初のうちは切歌が押していたが、指令が踏ん張り始めると逆に押し返されてしまう。

 

「ぐっ……はぁああッ………はぁッ!!!」

 

指令は何とか片手で切歌の猛突進を受け止めることが出来た。

力尽きたのか、切歌はシンフォギアが解除され私服の状態になっていた。

 

「切歌君は人を頼らないのが悪い癖だ……」

 

指令、風鳴弦十郎は切歌をベッドへと持っていき指令室へと何も言わず戻って行った。

切歌は疲れたのかぐっすりと眠っているようだった。

 

 




ご覧頂きありがとうございます。
今回は3つの戦闘をメインにしてみました。
この物語は10話完結(予定)です。
クライマックスへの準備が少しずつ始まっています。

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