【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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第六十一話 「暗黒」

暗闇に染まるホグワーツの一角に、二つの人影が伸びる。

期末試験も終わった今、殆どの人は疲れて眠っており、夜更かししている人間は居ない筈。

だが、彼等は例外。

闇の魔術の防衛術の教員室で、スネイプとキリコが話し合っていた。

 

「キャビネット棚の修理は完了した、つい先日の事だ」

「……連中が来るのか」

「そうだ、いやそうする様にしたと言うべきか」

 

話し合っている内容は、今宵行われる一世一代の茶番。

この世を乗せた天秤を傾けさせる、神の目を欺くイカサマ。

失敗は、許されない。

 

「ダンブルドアは」

「既にポッターと分霊箱の奪取に向かった、予定通りに」

 

キリコのお蔭で如何なる罠が有るのか知った彼は、ハリーを同伴させる事にした。

あの満たされた毒水を飲み切らなければ、分霊箱は手に入らない。

しかし……キリコでさえ発狂しかけた物を、独力で飲み切れるだろうか。

よってダンブルドアはハリーを連れて行き、彼に頼む事にしたのだ、自分がどうなっても水を飲ませ続ける様にと。

 

それだけの理由では無い、茶番とは言えただスネイプに殺されては疑問が残る。

ダンブルドアとスネイプの力は、非常に隔絶しているからだ。

理由が必要だった、負けを納得させる理由が。

 

毒水で弱化したからこそ、スネイプに負けた。

ハリーには全てを見て貰い、この理由の生き証人に成って貰おうと言うのだ。

そして、間違いなくスネイプが殺したと、全校生徒に伝わらせる為に。

 

「…………」

 

当然と言うべきか、キリコは不満しか抱いていない。

自分の恩師が苦しみ、死ぬ瞬間を、当の恩師がワザと見せつけると言うのだ。

幾ら仕方の無い理由が有るからと言って、納得は出来なかった。

 

「……俺に必要な物は」

 

キリコは気分を少しでも変える為、話し合いを素早く終わらせる事にする。

 

「用意してある、全てこの中だ」

 

スネイプが出したのは、少し大きめの袋。

中に有ったのは、何かの液体と、二つのガラクタ。

キリコは素早く確認を済ませ、懐に仕舞い込む。

 

「繰り返しておくが、この戦いでのお前の役割は……勝利では無い。

ダンブルドアの用意した保険と、思わせる事だ」

「…………」

 

彼等が恐れる事態は、この暗殺劇が茶番だと疑われる事。

死喰い人は思うだろう、あのダンブルドアが本当に、マルフォイの計画を見抜けなかったのかと。

この見抜いていた事への証明が、キリコ。

彼が現れた死喰い人を迎撃し……その上でダンブルドアが殺される。

『計画は露呈していたが、結果的に殺害は成功した』、これで全ては完璧と成る、露呈していたとしても成功さえすれば、マルフォイが殺される事は無い。

 

ついでに死喰い人の目をキリコ一人に集中させ、無関係な生徒達への被害を減らす事も、役目の一つである。

 

「そしてもう一つ、校長からの預かり物がある」

「…………?」

 

一体何だ、この話は聞いていないぞ。

疑問に思うキリコに手渡されたのは、一枚の地図だった。

 

「死んだ暁に校長は……自らの遺品をポッター達に渡すつもりだ」

「……それと何の関係が有る」

「お前に与える物は少し特殊らしい、二つ同時に渡すのでは余りにも疑わしく、魔法省……内部の死喰い人に感づかれかねないので、片方を先に渡すとの事」

 

そうか、と言い残し地図も懐に仕舞う。

地図か、何を意味しているのだろうか。

何の意図も無く、意志を伝えるのに地図という手段を取るとは考え辛い。

ならば……場所か?

行って貰いたい場所が有るのか?

思考を重ねるキリコに対し、スネイプが示した答えは、衝撃的過ぎるものだった。

 

「地図が示す場所に行けば……分かるかもしれないらしい」

「……かも、だと?」

「ワイズマンの場所だ」

「ッ!?」

 

唐突過ぎる神の手掛かりに、キリコの目が、歓喜にも驚愕にも見える色に染まる。

 

「何故そこに、神の情報が有る……!」

「有るとは言っていない、有るかもしれぬと言っている。

校長曰く、お前を取り巻く境遇に覚えが有ったからだそうだ」

「境遇……?」

「……誰が仕掛けているか分からない、掛けられているかすら確証が無い。

己がどれ程奮闘しようと、過程も結果も、全てが掌で有る様な不気味さ。

違和感に流されるままだった過去が、そこに有る……との事」

 

ダンブルドアが何を言ってるのか、どんな過去が有るのかは分からない。

だが共感し、納得出来るだけの理由は有る。

俺も感じていたからだ、誰かに踊らされている感覚を。

 

「話は以上だ……死喰い人の襲来まで後三十分、準備に掛かるとしよう」

「…………」

 

椅子から立ち上がり、準備に行こうとするスネイプを引き留めるべきか、キリコは悩んだ。

脳裏に浮かぶのは、鮮烈なる記憶。

頭を抱え、激情に吼え、嘆き垂れる彼の顔。

……自分が何故生きているのか、問われた時の記憶。

 

あれがどうしても気になっていたキリコは、ダンブルドアにスネイプの過去を尋ねていた。

最も答えてはくれなかったが、誰にも話さないでくれと、約束しているらしい。

聞き出せたのは、一つだけ。

 

『彼はおぬしと同じ過去を抱き、悔やんでいるのじゃ』

 

分からない、これだけで分かる訳が無い。

だが……分かってしまう、何故だが分からないが。

何処までも似ているからこそ、キリコは分かってしまったのだ。

 

愛する人を、失ったのだと。

自分が原因となって、死んでしまったのだと。

自身の『異能』の因果に巻き込まれ、フィアナが消えた様に。

 

キリコがスネイプを気にする理由は、明確だった。

単に……だが、同じ過去を持つからこそ。

彼の姿が、見ていられなかったのだ。

まるで過去の古傷を、自傷行為で誤魔化している様で。

 

「……スネイプ」

 

戦いに身を投じ、死を唯一の救いにしていた自分を思い出す。

逃げでしかなかった行為から、どう戻って来たのか。

自分自身の生き方を思い出し、根本を探る。

 

夢の欠片を拾い集め、戦友の記憶を引き摺り歩いて行く。

これが恐らく、自分を傷つけるヤツと俺の違いなのだろうと、感じ取って。

 

「俺は、糞真面目に生きている」

「……何を」

「……今のお前は、見ていられない」

 

キリコはそう言い残し、立ち去って行く。

残されたスネイプは、今の言葉の意味を考えようとして……止めた。

もう、そんな時間は無いのだから。

 

 

*

 

 

ダンブルドアとハリーが分霊箱を破壊しに向かってから数十分後、必要の部屋が開かれる。

ぬるりと這いずり出ルは、死喰い人。

マルフォイの計画は今成功し、ダンブルドアに牙を突き立てんと動き出した。

 

「ドラコ、あんたはやってくれると思ってたよ」

「…………」

 

今にも踊る処か歌い出しそうな位の歓喜の溢れるベラトリックス、彼女に対しマルフォイの気分は陰鬱にどっぷりと浸かっていた。

 

今から自分はダンブルドアを殺さねばならないのか。

ダンブルドアは嫌いだ、死んでも何とも思わない。

しかし、彼はまだ誰も殺したことはなかった。

殺人への恐怖が、最も忌むべき行為への嫌悪感は、彼がまだ取り返しのつく道に立っていることを示す。

 

「早くあのジジイを殺してやりましょうよ!」

「まて、声を出すな、油断するな」

 

ベラトリックスと同じ歓喜に吠える死喰い人だが、彼女は喜びながらも冷静に努めている。

まだ計画は成功していないのだ、喜ぶには早すぎるのだ。

 

「あの餓鬼が、ブラッドが潜んでいるかもしれない……!」

 

彼女にとってキリコは既に、油断していい餓鬼ではなくなっていた。

あの神秘部での戦いで、下手をすれば負けていたかもしれない。

何よりあの殺しへの躊躇のなさは、紛れもなく歴戦の戦士の覚悟そのもの。

実はマルフォイの企みを知っていて、纏めて根絶やしにする為に敢えて黙っていたかもしれないのだ。

 

「探せ、探せ、探せ。

影一ツ見逃すな、灯火の揺らぎすら見逃すな。

ヤツは来る、遅かれ早かれヤツは来る」

「……何故、そんな確証が」

「あいつは犬だ、血の臭いに誘われる狂犬だ。

あの目は狂人の目だ、紛れもなくブラッドの目だ。

だから来る、血の流れる予兆すら嗅ぎ付け、おおはしゃぎで飛びかかってくるぞ」

 

無論、来てくれればとても嬉しいのだが。

彼女はそうとも思う、一族の恥どころか魔法界史上最大の汚点を、殺す機会が得れるのだから。

 

「来るのか……?」

 

そうだ、ヤツは来る。

 

「来るなよ……!」

 

何時だってそうだ。

最初に走り出すのはあいつ。

 

「来るか……?」

 

爆心地にヤツが居なかったことなど、一度もない。

そうだ、正に今なのだ。

メルトダウンが始まる!

 

「来た!!」

 

とっさに自身を壁に叩きつける、その判断は正解だった、先程まで居た場所には巨大な大穴が広がっていたからだ。

 

奈落へと落ちていく死喰い人、その大穴からフワーッと、重さなど無いように浮かび上がる装甲騎兵。

浮遊呪文の切れたATは重さを取り戻し、地鳴りを鳴らして降り立つ。

 

″ATM-09-STTC スコープドッグ ターボカスタム″

アサルトライフルに4連ロケットランチャーを搭載、更に足元のローラーダッシュにより恐るべき加速力を持つ。

ホグワーツの構造を熟知しているからこそ、使用できるカスタムである。

 

「やはり来たか! ブラッドォォッ!!」

「…………」

 

咆哮、激昂、そして連撃。

機関砲の如く連射される呪文の幕がキリコに迫る、まずは距離を取るべく、ローラーダッシュを巻き上げる。

何発かが被弾し、貫通し、キリコを掠める。

 

一手、いや二手遅れた死喰い人が撃つのも、ベラトリックスと同じ呪文。

成る程、流石にAT対策はされているか。

『死の呪い』は全く無意味。

″爆破呪文″も、パーツが一つ消えるだけ。

″貫通呪文″なら、複数個破壊できる。

それを複数人数で乱射し、ATを直接破壊しに掛かる。

 

ただでは殺らせぬと、突撃銃の火花が飛び散る。

しかし、残る死喰い人が盾を張り、それらを防ぐ。

ファランクスという時代遅れの産物だが、間違いなく効果的な戦術である。

 

「ドラコ! あんたはダンブルドアの所へ行きな! お前らお守りもだ! ブラッドはあたしの手でぶち殺す!」

 

ファランクスを盾に逃げ出すマルフォイ達を、キリコは見送るしかない。

否、これは計画の内、何一つ問題はない。

マルフォイと目撃者になる何人かが、ダンブルドアの元へ辿り着けば良いのだから。

故に、目の前のヤツ等に手加減は無用。

 

貫通呪文が雨の如く張り巡らされ、突撃銃もそれに呼応する。

どちらも退かぬ拮抗状態が、ひたすらに続いていた。

だが、徐々に戦況は変化している。

 

キリコのATは既に全身蜂の巣になっているが、これ程受けても尚動き続けている。

彼の絶妙なコントロールにより、致命傷だけは尽く避けられていた。

 

対して死喰い人のファランクスは、徐々に崩れてきた。

″盾の呪文″は多くの魔力を使用する、それに加えて四方八方から奇襲をかける跳弾や、度々足元へ送られる手榴弾にも警戒しなければならない。

削られる魔力、削られる集中力。

しかしここは耐えねばならない、粘り強くチャンスを待たねばならない。

 

キリコは不死身だ、だがATはそうではない。

あれの動きが鈍ったその瞬間に、猛攻撃を掛けるのだ。

そして遂に、一つの弾丸がATの足を貫いた。

 

「ッ!!」

「今だ! 捕まえろ!!」

 

10発超の″捕縛呪文″が放たれ、ATを捉える。

動けなくなったATからキリコを引きずり出し、拘束しようと迫る死喰い人。

だが彼等は突然の爆風に吹き飛ばされる、盾こそ張っていたから無事だが、肝心のキリコが消えている。

 

ベラトリックスだけは見ていた、彼はロケットランチャーを自分の足元に向けて撃ち込み、穴を作ることで落下、拘束から逃れたのだ。

煙から現れた大穴に気付いた死喰い人が、追跡しようと覗き込む。

 

「逃げろっ!」

 

迂闊な死喰い人一人が、遂にランチャーの餌食となる。

次々と放たれる爆炎から距離をとるが、その隙にキリコは大穴を塞いでしまっていた。

 

「下へ逃げられたか……二つに別れて下れ! 左右から追い詰める!」

 

だが結論から言うと、下る必要はなかった。

何故ならキリコが降ろしてくれたからである、廊下全てを爆破させることにより。

 

「何が起きたぁぁぁ!?」

 

先程の攻防で飛び散った数々の跳弾、それは床や壁にめり込んでいた。

事前に爆弾化していたそれらを、一斉に起動させたのだ。

一つ一つは小さくとも、合わされば巨大な亀裂となる。

かくしてホグワーツの七階は、半壊したのである。

 

落下した死喰い人を出迎えたのは、スモークディスチャージャーによって張られた煙幕と、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ製の"お手軽泥沼キット"の二本立て。

視界を封じられ、動けない理由も分からない彼等はいとも容易くパニックへと陥る。

ファランクスも陣形もない、格好の的に成り果てたそれに、キリコは一斉射を仕掛ける。

 

「ぎゃあああああ!!!」

「う、動けねぇ! 何が起きてる!? 何をされた!!」

「逃げろ! 逃げぁぁぁぁ!!」

 

"AT用改造型 15.2mm自動小銃 AKM"

"左腰部搭載 12.7mmガトリング式重機関砲 GAU-19"

"右腰部搭載 二連改造型対戦車ロケット擲弾発射器 RPG-16-2"

その全てが身動きの取れない彼等に向かって、情け容赦なく叩き込まれる。

 

「…………」

 

無慈悲な一斉射が、長い沈黙を呼ぶ。

全滅できたのか、いやそこまで甘くはない。

キリコの予想通り、その瞬間煙幕が炎によって吹き飛ばされた。

 

「糞が! 糞が! 糞があぁぁ!!」

 

落下の一瞬、煙となってどうにか上昇に留まっていたベラトリックスは、悪霊の炎により煙幕も沼も纏めて焼き払っていたのだ。

 

「役に立たないクズ共が! 一人で来た方がまだマシだったよ!」

 

頭やら腕やらが吹き飛んだミンチ死体と化した死喰い人に向かい、罵倒と絶叫を叫び散らす。

キリコはその全てを無視し、再びライフルを撃ち込もうとする。

 

「せめてあたしの役に立ちな!」

「え? あ? ぎゃあああ!?」

 

何と彼女は、沼の中に潜ることで弾幕をやり過ごした死喰い人を引き摺り出し盾にした。

当然叫びながら弾け飛ぶ死喰い人、そして彼女は恐るべき攻撃に乗り出した。

 

ベラトリックスが杖を振った瞬間、沼に埋まっていた死体が次々と動き出す。

死体をアンデットとして操る、闇の魔術だ。

だがアンデットの動きは遅く、キリコの弾幕からは逃げられない。

 

「さあ踊れ! 死体共よ踊って死ね! 死んで踊れ!!」

「…………!」

 

ミサイルだ!

死体のミサイルだ!。

動きが遅いなら飛ばしてやればいいと、アンデットが次々と吹っ飛ばされて行く。

 

確かに、機動力は確保できる。

それでも、ただ飛んで来るだけなら、撃ち落とされてしまうだろう。

だからこそ彼女は、更なる一手を放つ。

 

ボンバーダ・マキシマ(爆発せよ)!」

 

爆破呪文を壁に向けて撃ち、穴を作る。

ひたすら壁に向けて撃ち続け、穴を作り続ける。

気付けばキリコの周りは、大量の穴……塹壕まみれになっていた。

 

「…………!!」

「気付いたかい? そうだよ、これで何処からアンデットが飛んで来るか分からないだろう!」

 

どれとどれが繋がっているかも分からない。

塹壕から次々と、不規則に飛来し、消えるアンデット。

撃ち漏らした一人がATに張り付き、力任せに装甲を傷つけていく。

それを皮切りに、どんどん張り付かれていく。

 

「ハハハハ! あんたは蜂の巣に入り込んだ獲物だ! そのまま死んでしまえ!!」

 

どう乗り切るか、この多さではローラーダッシュでも振り切れない。

一旦自爆させるべきか、そう思考し続けた時。

 

「グギョガッ!!」

「は?」

 

アンデットが一人、爆散した。

 

「アギッ!!」

「なっ、だ、誰だ!」

 

外から、外部から攻撃されている。

突然の協力者の出現に、ベラトリックスは動揺する。

だがキリコも動揺していた、計画上では協力者など居ないからだ。

 

「は、は!? 何故、何故もう一機!!?」

「!?」

 

アンデットを全滅させ、暗闇からそれが現れる。

ガション、ガションと駆動音を鳴らし、現れる。

 

青いカラーリング。

巨大なクロー。

何より、その固定されたターレットレンズ。

 

こいつが居る。

ならば、それしかない。

そうだとしたら、目の前のヤツは味方にはなりえない。

何故なら、何故ならば。

 

「そいつは私の敵だ、手出し無用」

「誰だお前は!?」

 

姿が見えない以上、ベラトリックスに正体は分からない。

だがキリコは分かった、そのATが何よりの証拠。

 

「イプシロン……!」

「決着をつけに来たぞ、キリコ!」

 

"XATH-02-SA ストライクドッグ

PS専用ATであり、全てにおいて高い性能を発揮する。

尚このATはキリコのゴーレムとは違い、実際に製造された本物である"

 

「何を勝手なことを───」

 

せっかく追い詰めたのを全てパアにされ怒り叫ぶベラトリックスだが、気付いた時には突然目の前に現れたストライクドッグに鷲掴みにされていた。

 

「……フン」

「ぐあああああ!?」

 

そのまま力一杯に投げられ、窓ガラスをぶち破り彼方へと飛んで行く。

そしてイプシロンはキリコと相対する。

 

「ロッチナは戦闘はできない、だが一切参加しないのでは面子が立たない、故に私が派遣されたという訳だ」

「…………」

「嬉しいぞ、漸く貴様と決着をつけることが出来るのだから」

 

二機のATが一歩一歩歩み寄る。

キリコは弾切れの装備をパージしながら。

AKMのマガジンをリロードしながら。

そして相対し、立ち止まる。

 

「…………」

「……行くぞ!」

 

激しく撃ち込まれるアームパンチが火花を打ち鳴らす。

暗闇に映し出される、二機のATの姿。

暗幕に隠れた役者に光が当たり、サンサで終わった筈の地獄が、再び開演しようとしていた。




己の放った銃弾が、鏡の中の己を打ち砕いた。
飛び散る破片に写るのは、千切れ逝く誇り。
遙かな時の彼方、自分自身を証明する鏡を砕きに、ホグワーツへ。
次回「パーフェクトソルジャー」。
この身体の中の紛い物を、真に。

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