【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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第六十話 「纏」

イギリス魔法界の中心、魔法省。

秩序の要であり、権威の倨傲。

絢爛たる地下に渦巻くは、傲慢か、欲望か。

 

「日刊預言者新聞です! スクリムジョール魔法大臣は現状をどうするつもりなのでしょうか!?」

「具体的解決案はあるのでしょうか!?」

 

エントランスに押しかけるマスコミは、餌を待つ雛鳥に見える。

親鳥は何も無いと、餌を喰らって飛んで行く。

マグル作戦以来、魔女狩り以来の大混迷に陥った魔法省に、かつての権威は無かった。

 

そんな空虚な大伽藍と化した会議室で、局長達が話し合いと言う名の告別式を送っていた。

 

「ジャックボルト局長、死喰い人の対策はどうなっているのかね!?」

「現在彼等は殆ど破壊活動を行わず、現れて、悪霊の炎を放つ、吸魂鬼を放つなどした後、直ぐに逃走するという行動を行っています。

我々が着く頃には、それらの対処しか……」

「迅速な行動が足りないのではないか!?」

「人員が足りていないのです、我々は時に起こるマグルの破壊活動にも人員を割いているのです」

 

姿を隠す魔法使いを、マグルが見付ける事は不可能。

だが、大まかな場所を割り出す事は出来る。

マグル……の中でも特に過激な一派は、魔法使いの目撃情報が在る場所を中心に、無差別爆撃を行っていた。

闇祓いは、それにも備えなければならないのである。

 

「マグル側の現状は今どうなっているのですか」

「……最悪、としか言いようが無い。

名前を言ってはいけないあの人が、自身を魔法界の王だと宣言してしまった。

我々とマグルは元々交流を行っていない、総理一人なら兎も角、マグル国民の多くは、例のあの人の発言を信じているのだ」

 

それに拍車を掛けているのが、散発的な死喰い人の破壊活動。

被害に合ったマグルは、正義を謳っているのに、直ぐ来ない闇祓いを不審に思い、結果帝王の発言が真実だと考えてしまうのだ。

何もかもが例のあの人の思惑通り、マグル作戦を許した時点で手の打ちようが無くなっていた現実に、スクリムジョールは頭を抱える。

 

「……英国政府の方はどうなっている、ルスケ上級次官」

「……どうしようもありませんな」

 

彼の質問に、コッタ・ルスケもとい死喰い人、ロッチナは応える。

 

「政治家は支持率で動くもの、市民の大多数が魔法族根絶を歌っている以上、彼等もまた魔法族の根絶をマニフェストにしています」

「そうか……」

「こちら側としましてはやはり、そもそもの原因である闇の帝王を一刻も早く倒さなければならないと考えております」

「だが、その人員が足りないと言っている!」

「ジャックボルト局長、対局を成すには……犠牲が必要です」

「市民を見捨てろと言うのか、貴方は」

「マグル作戦を許した時点で、我々にはもう市民に構う余裕は無いのです」

 

ルスケの過激とも言えるやり方だが、魔法界を存続させるには必要だろう。

だがこれこそ、ロッチナの狡猾な策。

魔法省側からすれば、現状解決に最も近い考え。

しかし実行すれば多くの魔法族はマグルの犠牲となり、マグルを憎み……闇の陣営に加わる。

こうなれば、死喰い人の利である。

実行しなければ、そのまま死喰い人が自由に動ける。

どちらに転んでもロッチナに害は無い、狡猾な政策提言だったのだ。

 

「それ見ろ! だからマグルに隠れなどせず、支配体系を築けば良かったのだ!」

「何を言う! それは国際魔法法に反するぞ!」

「既に国際協力など無い、どこもかしこも自国の対処に目一杯だ!」

 

叫び、暴れ、会議は回る。

全く、話し合った所でどうしようも無いと言うのに。

ロッチナは無関心に、視線を冷たくする。

 

根本的な話、彼は魔法省がどうなろうが闇の陣営がどうなろうがどうでもいい。

キリコを追い続けられれば、後は野と成れ山と成れ。

魔法省に入ったのも、死喰い人に成ったのも、視界を広げキリコを見付け易くする為。

だからこそ、捉え方によって『利』にも『害』にも成る事を言うのだ。

 

「大変です大臣! 緊急事態です!」

「どうした!」

 

そしてロッチナを除き、此処に居る彼等全員に激震が走る。

意味するは終わり、若しくは新たな始まり。

 

「英国総理が殺されました! 軍事クーデターです! 魔法族完全根絶を目指す軍事政権が樹立しました!」

「何だと!?」

「同時にこちらに宣戦布告! 降伏は認めず、生息するであろう『巣』を空襲し続けるとの事!」

「会議は終了だ! 直ちに各部で情報収集を!」

 

慌ただしく出て行く大臣や局長達、一歩遅れルスケも歩き出す。

最も彼の今の仕事は、主にマグル側の政治家との交渉。

こうなった以上、私はお役御免か……別の仕事に回されるだろう。

さて、無駄な交渉を素早く終わらせるか。

不敵に笑いながら、自室へ戻るロッチナ。

 

「……紅茶を頼む、エディア」

「私は貴様の小間使いになった覚えはないのだがな」

 

愚痴りつつも持って来た紅茶に口を付け、まずはと一息。

続けて羊皮紙を手に取り、無駄だと分かり切っているが、関係者への手紙を書き始める。

 

「会議はどうだ」

「相変わらずだ、これなら……アストラギウスの軍事政権の方がまだ纏まっている」

 

あそこが腐っていなかったとは言わないが、軍人出身者が多かった分、頭にせよ政治闘争にせよ、無能はそこまで居なかった。

大して魔法界は純血主義により、無能が政治家に成るケースが多い。

全く持って度し難いと、内心で呆れる。

いや、それとも……

 

「ワイズマンの、掌の上なのか」

 

ロッチナは疑問に思っていた、このマグル作戦を立てたのはワイズマンなのではないかと。

幾ら魔法の力を使ったとは言え、あれ程世界的なテロ行為が、スムーズに行くとは思えない。

だが、ワイズマンが手伝っていたと仮定すれば。

かつて銀河を支配した存在が、居るならば。

 

「……アストラギウス銀河三千年に君臨し、私やキリコ、フィアナを操った存在。

やはり現実味が無い」

 

イプシロンはワイズマンと、直接会った事は無い。

ロッチナから伝え聞いただけ、故にどうしてもこんな、出鱈目な怪物が実在するのか、実感を持てないのである。

 

「だが現実だ、神は哲学者だけの存在では無くなっている。

この世界にも存在しているのは間違いないだろう、それはお前も分かっている筈だが?」

「…………」

 

ロッチナは確信していた、キリコの予想通り。

彼はこの立場からも、情報収集を行っていた。

スネイプへの梟便、クィレルから聞いた黒ローブ。

更に自分やキリコ、イプシロンの存在。

これだけの疑惑があって、ワイズマンが居ないとは考えられない。

 

「……場所は、知らないのだな」

「ああ、私が知っているのは『実在しているかどうか』だけだ。

……見当は付いているがな」

「それは何処だ?」

 

イプシロンの皮一枚下に、衝動が渦巻く。

殺したい、自分の誇りを穢したあの存在を抹殺したい。

無機な機械の歯車が、鉄と血で出来た殺意を錬成する。

 

「……お前にも教えた筈だ、今まで神は何処に居たのかを」

「……クエント、そしてヌルゲラント」

「だがそれは認めん」

 

ロッチナは釘を刺す、今好き勝手動かれては困るのだと。

お前を拾ってやったのは何処の誰だ?

お前に真実を教えてやったのは誰だ?

与えた恩は楔となり、彼の自由を奪い取る。

 

「お前には……最後の一仕事が残っているのだ、それが終わるまでは居て貰うぞ」

「分かっている……!」

「何処へ行くつもりだ?」

「何処でも構わないだろう、貴様の指示を受けれる場所に居れば」

 

静かな怒声と共に、影の中へ消えて行くイプシロン。

……やれやれ、まだ若い。

彼を見るロッチナの目は、妙に優し気だ。

不快に感じる事も無く、彼は電話を手に取る。

 

「私だ……報告をしろ、クィレル」

『はい、例の武器商人に頼んでいた『液体』ですが、完成した様です』

 

不敵な笑みを浮かべるロッチナ、漸くだ、漸く私の願いが叶う。

願いというにはささやかだが、これでやっと、お目に掛かれる。

数年前から武器商人に頼んでいた『液体』の完成は、ある意味彼の悲願だった。

 

「他の二つは……どうだ?」

『宇宙開発局に頼んでいた『赤い宇宙服』と、軍事工場に発注した『妙な兵器』ですね。

どちらも、完成は間近だと……』

「フフフ……それは良い、実に良い事だ」

『ええ、両組織からも、多額の研究費に感謝するとの声が……』

「それには君が適当に返事をしてくれたまえ、では」

「え!? ちょっとお待ちを───」

 

この程度なら、キリコの行動に影響はあるまい。

聊か趣味に走り過ぎな気もするが……アンブリッジ追放、その謝礼の一つと思えば良いだろう。

ここからだ、世界が……異能の因果に巻き込まれるのは。

中心に居るキリコが何を成すか、私は観客席から見守っていた。

 

 

*

 

 

誰しもが溜息を漏らす学年末試験も終わったある日、ダンブルドア軍団の面々は必要の部屋内部に創られた惑星オドンに集められていた。

 

「……訓練のまとめが、最後の訓練だ」

 

今まで見て来た仮初とは言え地獄、それが実っているのかキリコは確かめ様としていた。

体力訓練、撃てる呪文の絶対数の上昇。

これが実戦で使えなければ、意味が無い。

 

「やる事は簡単だ、3キロ先の地点に用意した旗を回って、此処に帰って来ればいい」

 

彼等は息を飲む、キリコは簡単と言ったがそんな筈は無い。

絶対に恐ろしい罠の数々が仕掛けられているに違いない、これを乗り切らなければ帰ってこれない様になっているだろう。

 

「ルールは特に無い、以上だ、始め」

 

機械的に語るキリコの開始宣言と同時に、走り出す生徒達。

以前の様に、走り出す事その物に時間が掛かる、新兵の面影は何処にも無かった。

それに速い、アスリート程では無いが、息を切らさず一定のテンポで走り続ける姿に、キリコは訓練の成果を見た。

オドンの瓦礫を踏み締め、奈落を飛び、荒れ地を登る。

これなら、どんな無茶苦茶な状態に成った戦場でも走り回れるだろう。

 

「…………」

 

なら後は実際の戦場と、此処に欠けてる要素を追加するだけだ。

 

「───しゃがめ!」

 

最初に気付いたのはロン、彼が叫ぶと同時に理解を後回しにした生徒達が指示に従った。

直後襲い掛かって来たのは、マズルフラッシュと大量の弾幕。

一斉掃射の跡には、真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。

遠くから、キリコの声が響く。

 

『ペイント弾に当たったヤツは失格だ』

 

そっと頭を上げたハリーが目にしたのは、地獄だった。

何処かで見た、いや三大魔法学校対抗試合以来キリコの代名詞となった呪文が作り出す有人型石人形。

地平線に、スコープドッグの大群が映り込んでいたのだ。

 

このATは無人型である、本来のゴーレムの特性を一部戻したのだ。

唯一違うのは、手にペイント弾入りのアサルトライフルを持っている一点。

数と弾幕、これがあれば多少の技量は要らない。

古来より戦争とは、如何に一人の強さを一定水準まで伸ばすかが要なのだ。

 

再び振りまかれる弾幕の暴力に、ロンが叫んだ。

 

「全員バラバラに動くんだ!」

 

指示を合図に散開する、一か所に纏まっていては一網打尽。

単純な思考しか出来ない自動AT軍団は、彼の予想通り弾幕をバラケさせて行く。

 

……やはり、あれは実戦では使えない。

キリコは思う、苦労して何機も作ったが、手間と結果が合っていない。

あれでは少しの手練れ一人に、全滅させられるだろう。

そもそも機動力が利点のATなのに、細かく動けないのではただの木偶だ。

 

だからこそ、この場ではもう一工夫しておいた。

散開していた内の一人が、突如爆発に襲われ……咄嗟に張った『盾の呪文』で助かる。

驚愕する周りの中で、ハーマイオニーが真っ先に気付いた。

 

「地雷よ! ゴーレムの周りは全部地雷原だわ!」

 

続けてロンが、キリコの狙いに気付く。

これは恐ろしい罠だ!

地雷原と知ってしまえば、恐怖で動けなくなる。

けどそれで足を止めれば、ペイント弾の餌食だ!

空を飛んでも、あの弾幕は躱せない!

 

ロンの予想通り、生徒達は地雷を恐れ動けなくなってしまう。

後は簡単だ、動かない的にアサルトライフルで一発当てれば、生徒は失格になる。

 

だが恐怖に竦んだ彼等を突き動かすのが、ハリーの役目。

 

「アクシオ・ファイアボルト!」

「…………!」

 

キリコの目が驚きに染まる、ファイアボルトだと。

だが事前に近くに持って来ていなければ、呼び出す事は不可能。

自分を掠め飛んで行く箒を眺め、キリコは気付く、まさか試験内容が漏れていたのかと。

 

だがそれは違う、彼等は備えていただけだった。

ロンは考えた、相手はキリコ、絶対えげつない最終試験をして来るに違いないと。

ハーマイオニーは提案した、なるべくあらゆる準備をしようと。

前日の内に、この部屋の近くまで持ち込まれた、あらゆる道具。

この展開はキリコの性格を考え、対策を練った彼等の一手だったのだ。

 

コンフリンゴ(爆発せよ)!」

 

圧倒的な高速機動によって弾幕を掻い潜りながらATを破壊していくハリー、当然AT軍団は彼に弾幕を集中させているので、地上の生徒達は自由になる。

だが地雷は健在、如何に突破するべきか。

 

「ロン! 守護霊よ! 視界を同調させれば!」

「そうか! 使える人は地雷を探して上で旋回してくれ!」

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!」

 

呪文を使える生徒達が光り輝く守護霊を呼び出す。

彼等がしようとしているのは、地雷の探索。

守護霊と視界を同調させれば、地面の中の地雷を探す事は容易い。

地雷の上を旋回する守護霊に向かって、爆破なり石化なりを撃ち込んで行く。

そして突破口が作り出され、生徒達は一気に走り出す。

同時にATも爆破呪文で破壊して行き、このまま試験は攻略と思われたその時。

 

「……ッ!?」

 

上空を飛行していたハリーに悪寒が走る。

振り向いた先には、自分以外居ない筈の、箒に乗った人影が。

 

「キリコ!?」

 

最高速度と瞬間加速だけならファイアボルトに並ぶ、インファーミス1024に乗り込んだキリコが現れた。

そもそも自分が妨害しないとは、一言も言っていない。

アサルトライフルを構え、下の一本道を走る生徒達に照準を合わせる。

 

「させない!」

「…………!」

 

唐突に始まったキリコとハリーの対決。

ライフルを乱射し高速で迫るキリコを、紙一重で躱す、制動力はこっちが上だ!

背中を向けるキリコに杖を合わせたが、擦れ違い様に投げられた手榴弾の回避が優先。

相手は飛び道具持ち、下手に離れたら不利になる。

ハリーは手榴弾の爆発を背景に、キリコまで急速接近。

 

ライフルの牽制は、ファイアボルトには効かない。

目と鼻の先にハリーの杖が突き付けられた瞬間、キリコは箒から降りた。

と見せかけ、箒を武器の様に振り回す。

体を曲げ回避したハリーだが、片手での挙動の代償は、杖の落下だった。

 

「杖が……!」

 

ハリーは杖が無い、キリコには杖もライフルも有る。

最早勝負は決まった、後ハリーに出来るのは全員が目標を達成するまで時間を稼ぐ位。

ファイアボルトを全力で飛行させる彼に、キリコが追従する。

 

箒の性能もクィディッチの経験もハリーが上だが、その有利性はキリコの攻撃によって埋められてしまう。

攻撃を躱す事を意識すればどうしても速度が落ち、その分接近を許し、更なる攻撃の激化を招く。

どうしようも無い悪循環に、ハリーは追い詰められていた。

 

「ッ!?」

 

しかし、突如キリコの視界が何かによって塞がれた。

彼は直ぐ正体に気付く、これは守護霊だと。

視界の端に映り込むルーナ、彼女が守護霊を目晦ましとして使い、ハリーの逃走を援護していたのだ。

ならこちらも守護霊を使えば良いと、杖を振るう。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)

 

ルーナに向けて巨大な蝙蝠を放ち、彼女の視界を塞ぐ。

同時に制御を失った兎を振り切る、ハリーの姿は下にあった。

地表スレスレを飛行する彼に向かって、キリコは急降下。

地面に激突する恐怖は無い、こちらもギリギリで方向転換する技量は持っているのだから。

 

それが、彼等の真の狙いだった。

地表で方向転換した事で生まれた突風により、土煙が舞い上がる。

キリコは気付いた、余りにも嗅ぎ慣れた臭いだったからだ。

 

───火薬!?

キリコに纏わりつく火薬、時は既に遅い。

ネビルが起爆する為に、杖を向け、いやもう発射していた。

 

ロンが最も警戒していたのは、キリコ本人の襲来。

故に……確実に撃破する為のキル・ポイントが必要だった。

それを提案したのは、ネビルとハーマイオニー。

 

ハリーが箒でキリコを誘導し、地面スレスレに誘き寄せる。

急降下した際の風圧で、火薬が舞い散る様にすれば、逃げられない。

爆破工作への適性を持っていたネビルだからこそ、思いついた策だった。

 

インセンディオ(燃えよ)

「!!」

 

真っ赤に爆発する空間と、中心に居たキリコ。

衝撃に箒から投げ出され、彼はオドンの荒れ地に叩き落とされた。

 

「……負けか」

 

痛みは有るが、爆発に巻き込まれたのに傷一つ無い。

有ったのは、全身を真っ赤に染めた自分の姿。

大方、WWWの悪戯グッズを加工したのだろう。

やはり悔しいが、どちらかと言えば成長してくれた……生き残る力を得てくれた事への喜びが勝る。

 

そして試験は、そのまま最後を迎えた。

結果は、全員合格。

キリコの欲していた、生き残る力の地盤は完成され、更に自らの適性を伸ばす事にも見事成功したのであった。

 

赤く染まる体を晒し、オドンの荒野を仰ぐ。

同じレッドショルダーの姿だが、やる事の全ては真逆。

忌むべき過去のお蔭で、力を得たあいつらの姿を見た俺は思う。

……あれが此処へと繋がったなら、あの過去は無駄では無かったのだと。




なぜ、どうして蘇る。
なぜまだ殺し合う。
ともに落ちた二度目の地獄で、互いの心の中を覗く。
そこには、退廃たる街の中、
闇夜に鏡を求めて崩れ落ちる、孤独な己の影が落ちていた。
次回「暗闇」。
死が互いを証明する。

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