【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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第五十八話 「死線」

天高くに写されたヴォルデモートの姿、それはさながら神託を下す神のごとき振る舞い。

世界中の人達はこの超常的光景を前に、「あれは何の出し物だ」「凄い技術だ」と、都合のいい解釈を重ねるばかり。

 

『俺様の名はヴォルデモート卿、魔法界を統べる帝王だ』

 

魔法界、魔法省では混乱が起こる、自身があたかも魔法界全ての頂点に立つと言わんばかりの宣言に。

 

『魔法と聞き、この姿を見、お前達は混乱しているだろう。

魔法とは何だ? これは出し物(フィクション)なのかと。

それを恥じる必要はない、何故なら我等魔法使いは、長い間この世界と隔絶されてきたのだから。

400年前、中世ヨーロッパを包んだ暗黒時代、魔女狩りの始まりだ』

 

それはヨーロッパの人々にとって、最も忌むべき記憶。

購えぬ過ちにして、繰り返してはならぬ時代。

だからこそ暗黒と呼ばれ、忌まわしくされる。

 

『その時まで魔法族は豊かな繁栄を築いていた、魔力を持たぬ者達、マグルやノーマジもその栄華を讃え、発展していった。

だが暗黒が訪れた。

魔法族の栄華をモノにしようと片端から火にかけ、水に沈め、十字架へと吊るした。

豊かに生きてきた魔法族は、衰退へと追いやられた』

 

恐るべき欺瞞が演説の中で渦巻く、魔女狩りで魔法族は衰退などしていない。

当初から自分達を守る術に長けていた彼等は姿を眩ましており、被害に遭っていたのは無関係な者ばかり。

しかしそんなことマグルは知らない、例え自らが魔法族を絶滅に追い込んだのではなくても、そんなことマグルは知らない。

 

『しかし先人達は許した、愚かで軽率で、短絡的で俗物的でどうしようもないお前達を許した。

いずれ過ちに気付くと、過去を悔い改め魔法族へと救いを求め、歩む日が来ると』

 

余りにも傲慢な、魔法族がマグルより優れていると言わんばかりの宣誓。

だがマグルは知らない、魔法界が光と闇で二分されていることなど。

これが魔法界の総意ではないことも。

 

『それでもお前達は裏切った! 自らの過ちを自覚するどころか、魔女狩りを細菌やウイルスを知らなかったから起こった、止むを得ない事件として片付けた!

本質に眼を向けず、時代遅れの混乱として定義した。

それどころか、魔女など無かったと創作(フィクション)として面白可笑しく描き、滅ぼそうとしている!

創作だ、ファンタジーの産物だ、そして俺様達は歴史から抹消され忘却という絶滅へと向かっている!』

 

創作は実在していない、していないから創作なのだ。

逆説的に創作とされれば、それは実在していないことになる。

ムー大陸を本気で信じる者は何人居る?

UMAを信じる者は何人居る?

奇跡を、神を、審判を、輪廻を。

真実は虚構へと置き換わり、創作という空虚な忘却が人々の共通認識となるのだ。

それは、種の絶滅に他ならない。

 

『魔法界はこれを宣戦布告と受け取った、お前達を許そうとした先人達への最大にして最悪の裏切りと捉えた。

ならば俺様達も受けようではないか! これは宣戦布告だ! 最早一片の慈悲もない』

 

ヴォルデモートの眼が見開かれる、民衆はどよめき騒めき慌て嘆く。

予感が過る、戦争の予感が、惨事の予感が。

 

『男も女も、老人も子供も、今にも死にそうなヤツだろうと今産まれようとする赤子だろうと。

無謀にも挑んでくる愚者も許しを乞う愚者も、生きていようが生きていまいが、死んでようが死んでいまいが。

魂の一欠けらも残さず殺し尽くしてやろう!!』

 

だが、あわれにもここまで言っておいて尚、現実を受け止めようとしない者も居る。

プロパガンダと都合の良い曲解解釈を鵜呑みし、呑気にも写真を撮っている者が居る。

 

『魔法族の恨みを思い知らせてやろう、先人の慈悲を、俺様達の慈悲によって生かされていたことを思い知らせてやろう。

これは理不尽などでは決してない、ツケだ。

現実から歴史から暗黒から目を背け、都合の良い泥沼に浸かってきた報いなのだ』

 

世界中を暗雲が覆う、炎が各地から舞い上がる。

 

『400年に渡り溜め込まれてきた怨念は今、正に、濁流となって溢れ出した!

もう誰にも止められない!

止める必要などない!

背教者は滅び、ノアの箱舟に選ばれし魔法族だけが生き残る!』

 

悲鳴が上がり、狂気は踊る。

 

『魔法を恐れよ! 俺様達は奇跡を操る!

姿形を変え、貴様らの隣に潜む。

心を容易くねじ曲げ、従順な奴隷に変えることができる。

世界中の権力者どもよ、俺様達の存在を自らの都合で隠蔽し続けたことを後悔するがいい!』

 

ラッパが響き。

天地が引っくり返り。

地獄の蓋が遂に開かれる。

 

『黙示録の時は来た! だが審判を下すのは神ではない。

このヴォルデモート卿なのだ!!』

 

 

*

 

 

─アメリカ合衆国 ホワイトハウス─

 

「緊急! 緊急入電! アメリカ上空を飛行していた旅客機が此方へ向かっています!」

「何だと!?」

「更に入電! 同じく各部重要施設へ接近しているとの情報が!」

 

ホワイトハウス内部は大戦後類を見ない混乱に襲われていた。

ヴォルデモート卿なる人物からの宣戦布告、それが終わった途端大量の入電が入ったのだ。

その内容は旅客機が制御を失い、あちこちに向かっているというもの。

 

「テロリストによる占拠なのか!?」

「違います、占拠はされていません、通信機器を除くあらゆる機械が動かせなくなっている模様」

 

テロリストによる占拠ならまだ対処のしようがあった、だがこれは単なる故障。

にも関わらず、故障にも関わらず、確かに重要施設へ向かっている。

 

「通信機器は生きているのだな!? 直ちに連絡、脱出させろ!」

「し、しかし訓練を積んでいない乗客がパラシュートを開くのは非常に困難です! 人数分もありません!」

 

一般的にパラシュートの訓練には約200時間掛かると言われている。

また乗客分のパラシュートを積んだ場合乗客は半分にしなければならない為、コスト的側面から搭載されていない。

更に旅客機が着陸する時の速度でパラシュートが開く確率は非常に低く、生存は絶望的といえる。

 

「それでもやらせろ! 脱出後旅客機を迎撃する!」

「民間人が乗っている飛行機をですか!? 残骸も市街地に墜落します!」

「……分かっている! だがやるしかないんだ!

ホワイトハウスだけじゃない、これらが無くなった場合の軍事的、経済的損害は想像を絶することになる!

やれ、やるんだ! 全ての咎は私が負う!」

 

軍が民間人を殺すと言う、最低な行為をしなければならないジレンマ。

彼等はより大きな善を取った、取るしかなかった。

だが。

 

「……だ、駄目、です」

「何を言っている!」

「制御を失った旅客機の数が判明しました。

……総数9機、迎撃しきれません」

「なっ……な、な、ならば……退避、だ、退避。

少しでも犠牲者を減らすしか」

「!? 旅客機の墜落速度上昇! あと3分で激突します!」

「がっ!?」

 

どんなに避難訓練を徹底していようと、2分で逃げ切れる施設が何処にあろうか。

 

「残り1分! もう駄目です!」

「か、神よ、神よ……」

 

"ホワイトハウス及び各重要施設 崩壊

大型旅客機9機 墜落 

死亡者 約10000人"

 

 

*

 

 

─フランス 原子力発電施設─

 

「緊急事態! 冷却装置の稼働率が凄まじい勢いで低下しています!」

「一体原因は何だ! 早くそれを明らかにしろ!」

「そもそも誰が緊急停止をさせたんだ!」

 

死喰い人の透明マントや錯乱の呪文を使った潜入工作により、冷却装置は完全に意味をなさなくなっていた。

 

「原因は後でいい! ECCS(緊急炉心冷却装置)を作動させろ!」

 

原子力発電は緊急停止する際、核分裂生成物が大量の熱を放射し続ける為冷却を行い続けなければならない。

冷却装置が作動しないこと自体あってはならないことだが、万一の為ECCSといった設備が用意されている。

 

「待て! 装置を作動させてはならん!」

「しょ、所長!?」

 

メルトダウンという最悪の事態を防ぐ為に奔走する職員の前に現れた所長。

だがその現実を見ていないのではないか、と思える発言を、職員は誰一人理解できない。

 

「ね、燃料棒が融解を開始! これ以上は」

「繰り返す! 装置を作動させてはならん!」

「気でも狂ったんですか!?」

 

馬鹿な、彼は決して保身に走るような人物ではなかった。

しかし眼の前に居るそれは保身どころか、自分の安全さえ頭になさげである。

 

「もういい! 所長は無視しろ! 直ちにECCSを作ど」

 

彼の口から次の言葉は出なかった。

彼の口は無かった。

彼の口には大穴が空いていた。

その穴の向こうには、銃を構える所長が居た。

 

「装置を作動させてはならん!

メルトダウンを起こすのだ!」

「は……!?」

 

ここにきて彼等は漸く、彼がおかしいことに気付いた。

彼は正気ではない。

"服従の呪文"によって操られた、ヴォルデモートの人形に成り下がっていたのだ。

 

「メルトダウンを起こせ! フランスを滅ぼせ! マグルを殺せ!」

「所長! どうか正気に戻っ」

 

再び拳銃が火を吹く。

誰彼区別なく火を吹き穴を穿つ。

 

「うわあああ! く、狂った! あいつはもう狂っている!」

「こ、これが魔法なのか!?」

「逃げろ! 助けて! 撃たないでくれぇ!」

「メルトダウンを起こせフランスを滅ぼせマグルを殺せメルトダウンを起こせフランスを滅ぼせマグルを殺せ!!

我等の主の為に!

我等の主の為に!

我等の主の為に!」

「死にたくない! 死にたくないぃぃぃぃ!!」

 

現在もであるが、フランスは発電の70%を原子力で担っている。

これが全て崩壊した場合、フランスの生活基盤は……どうなるであろうか。

 

"原子力発電施設 全56基 メルトダウンにより崩壊

この放射能汚染、及びライフラインの断絶による死者数

2000万人 これは総人口の3分の2に相当する"

 

 

*

 

 

─ドイツ ベルリン─

 

「何だ? あれは?」

 

ふとした一言、それが虐殺、いや、蹂躙の始まりだった。

 

「あああああぁぁぉぁ!!」

「誰がぁぁぁ! 水を、ぐれぇぇ!!!」

 

それを眼にした人は、誰もが叫ぶ。

人だ、人が燃えながら歩いているのだ。

正しく文字通りの火だるまが、亡者の群れのように歩いていた。

 

だが、誰も振り返らない。

彼等は知っている、亡者の上に、これを作り出した張本人が居ることを。

 

二対の角、全身を覆う鱗。

火を吹く鼻に蛇のような尻尾。

ドラゴンが、約30匹ものドラゴンが大空を覆い尽くしていた。

 

「逃げろ! あんたも早く逃げるんだ!」

「逃げる? 何で?」

 

一人の男が、女に叫ぶ。

彼女は瓦礫を前に、そう呟く。

 

「赤ちゃんを置いては逃げれないわ、旦那を置いて逃げれないわ」

「赤ちゃん……何を……」

 

そう言いかけ、彼は気付いてしまった。

彼女が抱いている炭が、赤子なのだと。

瓦礫から伸びる上半身が、頭だけない上半身が旦那なのだと。

 

「私が守らなきゃ……赤ちゃんも……一緒に守りましょう? 貴方」

「…………」

 

ドラゴンに家を潰され、赤子を殺され、彼女はもう狂っていたのだ。

もう駄目だ、そう考えた彼も死んだ。

狂人を相手にしたせいで、彼も逃げ遅れたのだ。

 

「照準用意! 目標、巨大不明生物!!」

 

戦車隊が駆け付けた頃には、もうベルリンは原型を無くしていた。

 

「お、俺の町が……」

「よくも……よくもぉ!!」

「殺せ! あの化け物を絶対に許すな!」

 

いくら伝説に出てくるモンスターだろうと、戦車の主砲を何発も食らって耐えれる筈がない。

 

「総員! ファルエル!!」

 

だが、返事が来ない。

大砲の音も、返ってこない。

 

「どうした! 一体何を……」

 

息ができない。

声が出ない。

手が動かない。

 

「あ……ぎぎ……が……?」

「ガバァッッ!!」

 

血が止まらない。

何も見えない。

そして死んだ。

腐って死んだ。

 

それを見下ろしていたのは、ヒョウの体を持つ怪物。

所詮、鉄の塊。

毒の王である、ヌンドゥに敵う訳がなかった。

 

「痛いよぉ! 痛いよぉ!」

「嫌! 嫌ぁぁぁぁっっ!」

「パパァァァ! ママァァァ!」

「俺たちが、俺たちが何をしたんだ!? 何が魔法だ!!」

 

"ドイツ ベルリン崩壊 首都機能及びに政治機能喪失

累計死者数 約150万人

ベルリン総人口の半数に相当"

 

 

*

 

 

─ロシア 南部連邦管区─

 

1991年ソビエト連邦は崩壊し、それに伴い当時ソ連の農業を支えていたウクライナが独立、ロシアは深刻な食料危機に襲われていた。

その為現在ロシアを支えているのはここ、南部連邦管区である。

 

「火事だ! 火事が起こった!!」

 

今、そのロシアの生命線が燃えていた。

 

「消防はどうなってる!?」

「もう来てる! 消火も始まってる!」

 

農耕地帯の火災といえど、初期段階なら消化は簡単。

そう、それが、普通の火災ならば。

 

「なら何で消えないんだ!!」

「逃げろ! 早く逃げろ! もう燃え広がってる!!」

 

水を掛けても、消火液を掛けても消えない。

この炎は地獄の炎、怨念を撒き散らす地獄の炎。

魔法以外で"悪霊の炎"を止める方法は、ない。

 

「お、俺の畑が……」

「もう駄目だ! ここら一体全て燃えてしまった!!」

「ふざけるな! ソ連崩壊からの復興計画の真っ最中だぞ! 何人だ! 何人飢え死にするというんだ!」

 

″ロシア首長国連邦 各大規模生産拠点 焼失

1997年度の餓死者数 推計1億人″

 

 

*

 

 

─イギリス 首相官邸─

 

『首相! ヴォルデモートという人物の発言は真実なのですか!』

『魔法の存在を知っておられたのですか!?』

『何故あのような犯罪者を黙認していたのです!』

 

首相官邸に押し掛けるマスコミ達から逃げるように、首相へ駆け寄る官僚達。

 

「報道陣が抑えられません!」

「国防省との連絡が途絶えました! 他にも大多数が!」

 

次々と迫る報告を処理する間もなく、次の報告が現れる。

その光景は、正に溢れ出した濁流のよう。

 

(一体何がどうなってる、魔法界のことは魔法界で解決するんじゃなかったのか!

どうすればいい!? この状況で魔法など知らないとシラは切れない。

だが知っていたといえば、隠蔽していたことを責められる!)

 

首相である彼が魔法の存在を知ったのは、ついこの間。

念願叶って首相になったその日、魔法界の使者が現れたのだ。

そこから今の魔法界が、光と闇で二分されてることを知ったのである。

 

(ヴォルデモートとかいう男が魔法界の頂点というのは嘘っぱちだが、魔法を隠蔽してきた私が言った所で信じてはもらえない。

……じゃあ、じゃあ私は一体どうすればいいんだ!!)

 

権力にしがみつき、潔さを知らぬ愚か者。

これが″ツケ″だった。

争いを恐れ自らの世界に籠り、ぬるま湯に浸かってきた。

誰も何も知らないから、真実を知ることなく踊らされるのだ。

 

 

*

 

─イギリス マルフォイ邸─

 

会議の行われる大広間、そこは地獄の展覧会。

あちこちに浮かぶ映像が、各地の惨事を写し出す。

そして死喰い人はそれを肴に、宴に酔いしれていた。

 

「諸君、俺様のいとおしき諸君、これで″マグル作戦″の第一段階は完了した」

 

壇上に立つヴォルデモートが宣言し、大歓声が巻き上がる。

この日の為に彼等は多くの努力をした。

魔法省に悟られないよう、記憶を改竄しマグルの方法で各地へ潜入させた。

 

透明マントや錯乱の呪文を何度も駆使し、原子力発電施設や軍事基地に何度も潜入、今日この時瞬時に″姿現し″ができるよう内部を調べあげた。

 

それ自体を悟られないよう、破壊活動をイギリスに限定し、警戒心を削いだ。

そしてそれは遂に、実を結んだのである。

 

「あとは第二段階だが、俺様達はもう何もしなくていいのだ。

偽善は剥かれ、″魔女狩り″が甦る」

 

マグル作戦の第二段階、魔女狩り。

彼等はこの20世紀に、中世を蘇らせようとしていた。

しかし魔女狩りという時代遅れの産物が本当に甦るのか、一人の死喰い人が疑問を叫ぶ。

 

「では逆に聞こう、何故現代では魔女狩りが起こらない?

科学の発展か? 違う。

魔法の否定か? 違う。

人が進化したからか? 違う、違う、違う。

そもそもからして違う、魔女狩りは消えてなどいないのだ!」

 

両手を掲げ、ヴォルデモートが叫び出す。

人の真理を、人の本心を。

 

「あのようなものは、長年蓄えられた火花が豪炎となり、歴史に焼き付けたに過ぎない。

西洋で、アメリカで、アジアで、世界の果てで。

今日この時も魔女狩りは行われている。

魔法の有無など関係ない、髪の色が、眼の色が、肌が言葉が爪が細胞が身長が!

一つでも違えば、そいつは″魔女″になる!」

 

それは魔女狩りの本質。

人類が眼を背ける、決して認めようとしまい人間讃歌の汚点なのだ。

 

「だが、マグルどもはそれを認めようとはしない。

あれは科学的知識が足りなかったから起きた、偉大なる(どうしようもなかった)勘違いと片付けた。

それどころか、その本質に眼を向けず、無原の過ちと片付け、無限の忘却へと片付けた」

 

魔女狩りが起きたのは、集団ヒステリーの一種。

科学的知識が足りなかったから故に起きたのも、確かな事実の一片だろう。

 

「魔女狩りの本質とは、逃避の現れだ。

恐怖に直面したマグルどもは勇気をもって立ち向かうことはしなかった。

怪しさを、危険さを、灰の山から救い出すように仕立て上げ、魔女にする。

全ての黒幕にでっち上げ、英雄讃歌と共に吊し上げるのだ。

我々こそが正義! 我々は悪ではない!

それが何の意味もない、楽へ楽へと流される落日への逃避行だとしても」

 

今も、そう。

結局の所、人々は何一つ学んではいないのだ。

勘違いという、最も楽で、辛くなく、無責任で無意味な免罪符を買い漁っただけなのだ。

 

「魔女狩りを蘇らせるのは俺様達ではなく奴等自身だ。

見て見ぬ振りをし、世界中に溜まり続けた火種は、この400年でマグマの如く累積された。

何れ壊れたであろうその蓋を先んじて開けたに過ぎない、これこそが奴等の運命。

奴等は自分自身に滅ぼされるのだ」

 

疑心暗鬼に陥ったマグルは、自ら自滅するだろう。

しかし、隠れることに長けた魔法族は被害を受けない。

マグルがマグルだけを殺す一人芝居。

 

何より、その光景を見て、親マグル派はその意思を変えずにいられるだろうか。

御互い疑い、隣人が、家族が、親子で殺し会うその姿を見て。

 

親マグル派は消え、闇の陣営が増えていく。

最早勝負は決した。

後はこの混乱に乗じ、国を乗っ取るなり、対処に精一杯のダンブルドアを殺すなり、好きにするだけ。

 

「そして、俺様達純血だけが残る。

方舟へと乗り込んだ、ノアと家畜の番だけが残る。

あらゆる道徳に、論理に、歴史に寄生するマグルは滅び去るだろう。

そして、純血という未来永劫変わることのない絶対の秩序を持つ、不変という強者こそが、世界の規範となるのだ!」

 

″マグル根絶計画 マグル作戦″

 

ヴォルデモートの恐るべき計画は、今正に成就してしまったのであった。

 

そして今日

錯乱の呪文で暴走し

世界各地に降り注ぎ

反撃が降り注ぎ

 

第三次世界大戦(核戦争)が始まった




家族、望み、笑い、涙。
かつてこの星に息づき、溢れていたもの。
それらは、ある日砕けて、無造作な瓦礫となった。
瓦礫は蒔かれて地表を覆い、廃墟となった。
いま、人が瓦礫を踏みつける。
怒りと悲しみの人の素顔が、荒れた空気に晒される。
次回「恩讐」。
風に散る残骸が、心の姿。




やり過ぎたかもしれない。
でも実際ポッター世界の呪文って、やろうと思えばこれくらいできると思うんだけどな。

※追記
Q これ核で魔法界も滅ぶんじゃね?

A 二つに分けて説明致します。

 始めにホグワーツや魔法省と言った重要施設ですが、こちらにはマグルの機械が使えなくなるような呪文が掛けられています。
よって核は無力化されます。

 次にウィーズリー家やその他のエリアですが、重要施設同様そもそも発見及びに位置特定が困難であり、ピンポイントで撃ち込むのは非常に難しいと言えます。

 こういった場所に放射能が到達する可能性は否定できませんが、以上のことから核戦争に巻き込まれることで魔法界が消滅するのは、まず無いと考えていいでしょう。

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