【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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いよいよ神秘部戦がスタート。
の前にキリコさんのネタバラシ回になります。


第四十八話 「アンノーン(Aパート)」

壮絶なるアンブリッジへの復讐を終えた俺は、群衆に揉みくちゃにされていた。

最初は色々な事を謝ろうと思い近付いたのだが、どうもアンブリッジを地獄の彼方へ追いやった事の方が嬉しかったらしく、謝罪の暇もなく拍手に押し流されていた。

 

どうしたものかと悩んでいると、群衆を掻き分ける様にフレッドとジョージが現れ、俺を群衆から遠ざけてくれた。

その隙に抜け出し、キニスの元へ辿り着く。

 

「ぬーん…」

「…………」

 

…見るからに不機嫌だった、いや当然か、あれだけの事をしていたのだから。

 

「騙していてすまなかった、だがアンブリッジを最後まで騙し切るには、ああするしかなかったんだ」

「うん、知ってた」

「…やはりそうか」

 

何となくそんな気はしていた、こいつの直感は時に恐ろしさすら感じるほど鋭い。

だからといって、謝らなくて良いという事にはならないが…

 

「ぶっちゃけ、そこは別に気にしてない」

 

…では、何故こいつはこんなに機嫌が悪いのだろう。

理由が分からず困惑していると、それを読み取ったのか溜め息を付きつつ、その本心をぶっちゃけてきた。

 

「僕もやりたかった」

「…何?」

「僕もアンブリッジをボコボコにしたかったんだよ! なのにキリコとロンの兄さん達が全部良いとこ持ってったじゃんか!」

 

思わず体の力が抜けていく、そこか、そこなのか。

それを見たキニスは、ニヤニヤとした笑みを浮かべる。

 

「全くもー、どうせやるなら僕も誘ってくれれば良かったのに…

これでも口は固い方なんだよ、僕は」

 

そう口では言っているものの、この一年間こいつがどんな気持ちで過ごしていたかは計り知れない。

 

「…すまない」

「だからそれはもーいいって、あんな奴の近くに居なきゃならなかったキリコの方が、よっぽどキツかったんだからさ」

 

結局今回も、こいつの優しさにつけこむような形になってしまった事に、後味の悪さを覚えつつも、それでも尚俺の心は落ち着きを取り戻していく。

 

「…ありがとう、それと、ハリー達は何処に居る?」

 

勿論キニスだけではない、悪戯の仕返しで燃やしたヤツやハリー達、全員に謝り倒さねばならない。

 

「あー、ハリーなんだけど、さっき頭を痛そうに抱えながらどっか行っちゃったよ」

「…そうか」

「捜す?」

「ああ」

「りょーかい、…で、一体何時から計画してたの?」

 

ハリー達を探し校内を歩き回りつつ、これまで被害を与えてしまったヤツ等にひたすら謝り倒していく。

許してくれるヤツもいれば、そうでないヤツも居るが…根気よく詫び続けるしかないだろう。

そうしながら、今までの計画、その詳細をキニスに語る。

 

「お兄さん達と一緒だったって事は、お兄さん達が作ったって言ってたDAの練習場も…」

「俺が作った、一度前身を壊滅させたのも、裏切りそうなヤツの振り分けをする為だ」

「じゃあ親衛隊は、誘蛾灯みたいたもんだったのか…けど、いつお兄さん達と結託したの? 常にアンブリッジが居たから、会う暇なんて無いと思うんだけど」

「あの二人が親衛隊に取り囲まれ、俺がヤツ等を別室へ連れていった時だ」

「え、でもあの時、二人とも血塗れに―――」

「あれは血糊だ」

「まじか」

「アンブリッジを騙さなくてはならなかったからな」

 

ハーマイオニーが唱えようとした、治癒呪文から二人とも逃げ出した理由がこれだ。

もし唱えれば血糊だとバレ、彼等の計画が露見するリスクがあったのだ。

 

「てか何でお兄さん達と、協力体制をとったの?」

「当初、秘密の守人は俺だった、それを譲渡するには、俺の本心を誰にも言わないような、かつアンブリッジの動向をDA側に流す為の協力者が必要だった」

「…だからあの二人だったのか」

 

少なくとも俺の知っている限りでは、それに最も適しているのがあの二人だったのだ。

その結果ヤツ等の提案を受け、今回のアンブリッジ公開処刑が生まれたのだ。

 

「じゃあ、アンブリッジの暴走を煽ってたのは?」

「…すまない、それについてはまだ言えない」

「ぬー…」

 

不満を漏らしてくるが、ヤツとの約束がある以上言えない。

何故なら、これはロッチナとの契約だからだ。

あの時ヤツは俺に、アンブリッジのスキャンダルを手に入れる様…それも取り返しのつかないレベルのを依頼してきた。

俺はそれをこなす為に敢えてヤツの暴走を促し、大量のスキャンダルを作り出す事にした。

 

更にアンブリッジの側に居る事を利用し、黄金虫に変身したリーター・スキーターを潜ませておく事で、証拠の確保にも成功。

それらの情報は、明日のザ・クィブラーで公開される予定だ。

そう、これはまだ未発表の情報、だから言えないのだ。

 

「明日になれば分かる」

「むう、まあいいや、…てかハリー居ないね」

「…ああ」

 

さっきから随分歩いたが、一向に気配すら感じない。

一旦部屋に帰るべきか? そう思い始めた時、後ろから俺を呼び止めるヤツが表れた。

 

「キリコ、色々話がある」

「ロッ…ルスケか」

 

以前爆破した応接間から手招きするロッチナ、謝礼や成果の話だろう。

 

「フィレンツェとの話は終わったのか」

「ああ、もっともあれは今日ここへ来る為の口実として、入れた予定に過ぎないがな」

「…あのー、どちら様で?」

 

キニスが不思議そうな顔をする、始めて会うのだから当然の反応か。

 

「む? キニス・リヴォービアか」

「え、何でおじさん僕の名前知ってるの」

「フフフ…私を誰だと思っている、キリコの交友関係を把握していて当然だろう」

「…ストーカー?」

 

あながち…いや、全く間違っていないのだが、それでも誰も言わなかった事を平然と口にし、沈黙に包まれる。

何時まで続くか…と思った瞬間、突然ヤツが大笑いをし始める。

 

「ス、ストーカーか、ククク、ま、まさかお前の口からそんな言葉が出るとは! ハハハ!」

「…このおじさん大丈夫?」

「駄目だろう…用事を済ませるぞ、暫く待っていてくれ」

 

今だ笑い転げているロッチナを引っ張り、応接間に腰かける。

漸く笑いが落ち着いた頃に、やっと話が始まった。

 

「さて、まずは礼を言おう」

「…………」

「お前やウィーズリーの双子のお陰で、大量のスキャンダルを証拠付きで手に入れられた。

これだれば政界追放は容易いだろう、アズカバン行きも免れないだろうしな」

「…………」

「礼だが、まず謝礼金だな、あと今年一年分の単位の便宜。

双子の方は確か店を出したいと言っていたな? ダイアゴンの一等地を斡旋して―――」

「それは後だ」

 

金は嬉しいが、正直今は全く嬉しくない。

金より何より、問い詰めなくてはならない事がある。

 

「お前の護衛、エディア…ヤツは、イプシロンなのか」

 

イプシロン…かつてフィアナを巡り、何度も激突した男。

愛憎をも通り越し、完全なる殺意に何度晒された事か。

そして、お互い戦いと硝煙の中でしか生きられない事に、唯一の仲間だったと知ったあの男。

そいつがここに居る、俺はその疑惑を確かめずにはいられなかった。

 

「…フッ、まあお前なら気付くとは思っていたさ」

「───!」

「その通り、エディアは…イプシロンだ」

 

予測していた、だが半信半疑だった事が真実だと知った事により、俺は息が詰まるような感覚を覚える。

 

「私も見付けた時は驚いた、私達のみならず彼までも転生していたのだからな」

 

どうしてヤツまでもが転生できたのか、ロッチナと同じ理由なのか。

いやそれはもはや些細な事、現にここに居るという事実が重要なのだ。

 

「…今ここに居るのか」

「いや、今は所用で離れている、アンブリッジの様子を見に行かせてるのだ」

「…そうか、だが、何故仮面を着けている?」

「護衛のプライバシーを守るのは、当然だとは思わないか?」

 

…話す気は無い、という事か。

何故なのかは分からないが、まあこいつがエディアの正体を素直に話したのだ、気にする事は無いか。

…それでも気になっていると、その思考を止める様にヤツが話し出す。

 

「その話は一旦終わりにしよう、まだ最大の報酬を支払えてないからな」

「…………」

 

この恐ろしく辛い依頼をこなした最大の理由、それはこの、俺に関する予言の情報を得るためだった。

果たしてそれが、俺の過去に関するものなのかどうか…

 

「私がその予言を見付けたのは偶然だった、トレローニーの予言、そこに私が偶々居たのは話したな?」

「ああ」

「あれを聞いた後、私は当初の予定通り神秘部の予言の間に、それとは別の予言を置きに行った」

 

ロッチナは思い出すように、かつやたらと勿体ぶりながらその記憶を思い出していく。

 

「そして予言を置いた時、私は床に予言が転がっている事に気付いた。

棚を見れば97列目の一つが欠けていた、私は理解した、そこから転がり落ちたのだと 

「…………」

「ひび割れていない事を確認し、戻そうと触れた時、私は水晶の中から予言が聞こえてくるのに気付いた」

 

馬鹿な、予言を見る事ができるのは予言に関わる人物だけ。

俺に関する予言なのに、ロッチナが見れる筈が───

───いや、まさか。

 

「予言は私にも関する物だったのだ、驚きながらも私はそれを食い入る様に見始めた。

…そして更なる衝撃に駆られた、あれほどの衝撃は久々だったよ…」

 

一体、一体どれ程の事がその予言に記されているのか、俺もまた恐れつつも、少しの好奇心を感じていた。

…しかし、その内容はその全てを吹き飛ばす様なものだった。

 

「まず見えてきたのは、燃え盛る建物と、炎に焼かれる少年少女達だ」

「…………」

「次に見えたのは奇跡の様な光景だ」

「…奇跡?」

「そう、宇宙空間に放りだされても生きている赤子、当たる直前で逸れる弾丸」

「…!?」

「更に天文学的数値に上る兵士の生存確率のデータ、遺伝確率の算出、それに伴う実験の記録」

「待て、それは…!」

「例えるなら、地獄の様な河を渡る作戦、崩落する谷、味方に襲われる分隊、氷点下250℃での活動記録」

 

ロッチナの言う例え、俺はその光景を鮮明に浮かべる事ができた。

それは当たり前の事だった、何故ならそれは全て、かつて経験した事ばかりだったからだ。

 

「…そう、これは予言の形式をとっているだけ、正確には膨大な研究と記録映像に過ぎない」

「ま、まさか…!?」

「お前も後年に聞いたのではないか? それは我々の世界にあったある文書に瓜二つなのだ」

 

聞いた事がある、俺がかつて所属していた分隊、それはある男の意図…をも意図した男によって組織されたものだと。

そしてその結成には、ある一つの文書が関わっていたと。

それと同時に思い出した、トレローニーの予言の最後の一文を、

 

「″ペールゼン・ファイルズ″、それが予言の正体だ」

「…馬鹿な」

 

″賢者が語る、千古不易のわらべ歌″…

思わずそう呟いてしまったが、簡単に信じられる筈がない。

あの文書がこの世界にある等、考えられない。

 

賢者、トレローニーは確かにそう言っていた。

ならワイズマンが? ワイズマンがこの世に存在しているのか?

ならファイルが存在している理由も説明できるが、何故ヤツはそんな事を、いや何故この世界に…

 

いや、それは後だ、まずはファイルだ。

現に存在している以上、事態は一刻を争う。

俺の過去どころの話ではない、俺のほぼ全てが誰かに知られる可能性が…

 

…いや、よく考えたらむしろ慌てる必要はないのでは?

予言がファイルなら、記されているのはアストラギウスの人間に限定される。

ならこの世界でファイルを見れる人間は、存在しないという事になる。

ワイズマンが絡んでいる可能性が高い以上は、油断できないが…

 

「む? 取りに行かないのか」

「…必要なさそうだからな」

 

信じられない事実に少し混乱していたが、実際のところ知られる恐怖はあり得ない。

と落ち着いていると、応接間の扉が乱暴に開かれた。

 

「キ、キ、キキリコ! たたた大変だ!」

「…どうした」

 

何の用だろうか、あの慌てぶり、ただ事ではなさそうだが。

 

「ハリーが! 魔法省に行っちゃった!」

「どういう事だ?」

 

ハリーが魔法省? 全く要点が掴めない。

何故そんな所へ行く必要があるのか。

 

「…ああ、なるほどな」

「ルスケ、お前は知っているのか?」

「…フフフ、手伝ってくれた礼に良い事を教えてやろう」

「…………?」

「シリウス・ブラックが死喰い人に捕まり、神秘部で拷問を受けている」

「!?」

「という幻を帝王がハリーに見せ、あいつを誘き寄せようとしている」

「!?!?」

「以上だ、行くなら急いだ方がいいぞ」

 

ハリーを神秘部に? 何故おびき寄せる?

態々神秘部に…なら目的は…予言か?

 

「おじさん何でそんな事知ってんの!?」

「死喰い人のスパイをやってるからな」

「ファッ!?」

「しかし奇妙な偶然もあったものだ、丁度六年前の今日ダンブルドアが予言をあそこに置いた事で、運命が決まった。

その予言が、運命の二人をそこに呼び出すのだから…では私はそろそろ帰らせて貰うぞ」

 

長々と言い残し帰っていくロッチナを見送る俺達は、多すぎる情報を処理するのに精一杯だった。

 

「…ワケわからん…何て言ってる場合じゃない! どうしよう!」

「…どうするか」

 

ロッチナの言った事が嘘の可能性は低い、あいつはこういった場面でホラを吹くヤツではない。

だが今更助けに行った所で死喰い人は完璧な布陣を敷いているだろう、罠に自分から突っ込むだけだ。

 

「…この事を他に知っているヤツは居るか?」

「居るよ! 全員魔法省に!」

 

何故全員行ってしまうのか、頭を抱えながら次の希望を確かめる。

 

「教員はどうしてる?」

「そう思ってスネイプ先生の所に行ったんだけど、居なかったんだよ…」

 

ヤツは死喰い人との二重スパイだ、この事を知っている可能性は高い、が…

間に合うかどうかは別の問題だ、騎士団が来る頃には全滅している可能性だってあり得る。

 

「…やっぱ僕達だけでも、いやでも罠まみれだし…せめてダンブルドア先生が居れば…」

 

確かにそうだが、ダンブルドアは今ここには居ない。

というより何処に居るのかすら分からないのだ、本当に手の打ち様がない。

 

「っあ」

「どうした」

 

何か思い付いた様にキニスが呟いたので聞き直してみたが、一人でぶつぶつ言い続けたまま固まってしまった。

 

「…確か…六年前? …神秘部には…確かルーナがそう言ってた…」

 

瞼を閉じながらゆっくりと深呼吸をし、キニスはこちらに向き直す。

…その時俺の背筋に、猛烈な寒気か走ったのだ。

 

「キリコ…良いアイディア…思い付いちゃった…」

「…言ってみろ」

「…やだ」

 

戸惑いながら答えを拒む、果たして何を思い付いてしまったのだろうか。

 

「何故だ」

「…言ったら、絶対行かせてくれなくなるから」

「…死ぬ可能性でもあるのか」

「違うよ! むしろそれは絶対無い、けど、けど…」

 

…てっきり死ぬリスクを抱えた作戦だと思ったが違うのか、では何故ここまで戸惑っている?

 

「…死なないよ、僕がちょっと寂しい思いをするだけだ」

「…………」

 

死なないのなら、それで全員助かるなら、この提案に乗るべきだろう。

…だが、そんな確証、何処にあるのか。

 

「だからキリコ! 早く行こ───っ!?」

「…………」

 

口から声にならない声と、涎を力無く垂れ流す。

突然の衝撃に息ができなくなり、視界が一気に歪んでいく。

 

「…すまない」

「…キリ……コ」

 

腹を抉られたキニスは、そう言い残しその場に倒れ込む。

…これでいい、これなら危険な目に合う事もないし、何もできなかったという無力感も多少は薄れるだろう。

 

かつてこいつは地獄まで付き合うと言ってくれた、それは素直に嬉しかった。

しかし、だからこそ、地獄になると分かりきっている場所に連れていく訳にはいかない。

…もう、誰かが死ぬのは、見たくない。

 

気絶したキニスを安全な場所に置き、俺は魔法省へ向けて出発し出す。

行き方は…確か、アンブリッジの部屋に直通の暖炉が設置してあった筈だ。

…床が抜けているが、端を渡れば何とかなるだろう。

 

 

 

 

糞爆弾の爆発の中でも、何とか暖炉は機能してくれていた。

それを利用した俺は、煙突飛行ネットワークにより魔法省へ辿り着いていた。

 

(…どうなっている)

 

しかし本来多くの役人や職員が歩いている筈のエントランスには誰もおらず、ただ静寂が広がるのみ。

…不自然過ぎる、異常だ、こんな光景はありえない。

なら誰かがこの状況を意図的に作り出したという事、それは死喰い人に他ならない。

 

やはりロッチナの言う通り、ここには大量の死喰い人が待ち構えているに違いない。

警戒心を高め、気配を殺しながら神秘部への道のりを探す。

 

…エレベーターか、これで行けそうだな。

それに乗り込むと予想通り、神秘部への階層が書かれたボタンがあった。

 

やたらと乱暴なエレベーターに揺さぶられながら到着した場所…神秘部は、全面が漆黒のタイルに覆われた、よく言って神秘的な、悪く言えば不気味な場所だった。

この先の予言の間にハリー達と死喰い人が居るのか、しかし何処へ行けばいいのか…

 

(…土?)

 

よく地面を見ると、埃一つ無い場所に似つかわしくない土や泥が付着しているのに気付く。

 

(まだ新しい、という事は…)

 

これを辿った先に、奴等が居る。

杖と拳銃を構えながら、俺はその先へと向かっていく。

暫く歩いた先にその部屋はあった、手のひら大の水晶が幾つも、それこそ数万個単位で棚に納められている。

 

(ここが予言の間か…ッ!)

 

神秘的な美しさに見とれる間も無く、遥か奥なら叫び声が聴こえてくる。

とっさに棚の影に身を隠し、双眼鏡で奥を確認すると黒いローブを羽織った人影が見えた。

 

(一歩遅かったか…だが、この部屋なら)

 

予言棚の隙間を辿りながら、無言呪文によって棚の根本を次々と爆弾に変えていく。

死喰い人はハリーの方に気を取られ、俺の存在には気付いていないらしい。

 

時間の許す限り、限界まで爆弾の量を増やす。

正面戦闘は目的ではない、逃げるルートを構築するのが先決だ…!

 

「…ん?」

「どうした?」

「いや、今誰か居た様な…」

「まさか、気のせいだろう」

「お前達何をしている…さて、そろそろ予言を渡して貰いたいんだが?」

「…………!」

「痛い目には会いたくないだろう? さあ、今なら許してあげ───」

「ちょっと待て…マルフォイ、何か聴こえないか?」

「グレイバック、お前までそんな事を…いや…

…な、何の音だ?」

 

十分爆弾は作り出せた、そして既に作動もしている。

水晶は重い、それが数万と降り注げば、ただでは済まない。

俺の作戦通り、根本から崩された水晶がドミノの様に死喰い人を押し潰しにかかる。

 

「!? これは───」

「逃げろ!?」

「ななな何だ急に!?」

「まさか!?」

「こっちだ! こちらは安全だ!」

「キ、キリコ! 来てくれたのか!」

「予言が! くそっ一体誰が…」

「!? キリコ・キュービィー!? 何故ヤツが」

「構うな捕まえ───ぐあぁぁぁ!」

 

 

 

 

「───戻ってきたか、どうだ? 居なくなっていたか?」

「…そうか、なら良い」

「…どうした? 少し話したかったか?」

「まあ気持ちが分からない事は無い、久しぶりの再開なのだから」

「…だが、まだ無理だ、それは分かっているだろう?」

「…しかし、仕方無いとはいえ随分面倒な役を押し付けてくれたものだ」

「フフフ…まあな、世界そのものが滅びかねないとなればな…」

「しかしそれも終わる、ここから先は私も分からない」

「───さて、賽の目はどう転ぶ?」




───ハリー・ポッターとラストレッドショルダー───



魔法省「ガタガタブルブル」
大丈夫、今回は爆発物も無い。
…所で魔法省って地下の建物なんだよね。
つまり何か起きたら、全部地下空間に集中するんだよね。

…よし、決めた。

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