「あぁぁあっ! もうっ! 腹立たしい!」
防衛術の教室脇、教員に割り当てられる個室。
生徒からはもっぱら″蛙熟成施設″と呼ばれるアンブリッジの部屋では、その主である彼女が地団駄を踏んでいた。
見方によっては、喉が潰れた蛙が鳴きながら跳ねてるようにも見える。
「…………」
それを普段より一層死んだ目で見つめるキリコ、呼び出されから既に十五分、彼の精神はじりじりと削られている。
まああんなもの見せられて健康になる人間など存在しないだろう、キリコの喉から溜め息が漏れた。
「気に入らない! 気に入らない! 気に入らないわーっ!」
一体何が気にくわないのかというと、色々としか言いようが無い。
「何故!? 何故あんな野蛮で汚ならしくて穢らわしい半獣が教師なの!?」
その一因が、ホグワーツに教員としてやってきたケンタウロスのフィレンツェだ。
彼はケンタウロスの中でも比較的親人間派として知られており、それもあってか今回の招待を受けたのだ。
お陰で大多数のケンタウロスからは弾きものにされてしまってはいるが、彼がそれを気にする様子は無い。
が、彼女はご覧の通り、鳥肌ならぬ蛙肌を立たせながら叫んでいた。
というのも彼女、大の半獣嫌いなのである。
理由は分からないがとにかく半獣を嫌っており、悪法である″反人狼法″を作ったのも彼女である。
その半獣がやって来た事に彼女は腹を立てているという訳である、もっともトレローニーを失職させなければ占い学の教員が欠ける事もなかったのだが。
「ハァ、ハァハァ、ミ、ミスターキュービィー、それで、連中の様子はどうですか?」
やっと落ち着いてきた彼女は、漸くキリコを呼んだ目的を果たそうとする。
尚連中とは、言わずもがDAの事である。
「さっぱりです」
「キィィィィィ!」
もう一つの原因がこれである、まさかの復活を遂げた防衛協会改めダンブルドア軍団の存在は、今日もアンブリッジの胃をつついていた。
勿論存在は知っているし、何処で練習しているのかは叫びの館跡地だと検討がついている。
しかしそれだけでは不十分、あくまで実際に練習している場面を捉えなければ、証拠とは呼べない。
だが″忠誠の術″によりそれは不可能、場所もやってる事も分かっているのに現場を押さえられないというジレンマが、彼女を苛立たせていたのだ。
止めに敷地外立ち入りで捕まえようようにも、入り口自体はホグワーツの敷地内という有り様。
監視を付けようにも、僅かな隙を突いて脱出する始末。
「…落ち着いてください、既に目的は達成されたんですから、アンブリッジ校長」
「エヘンエヘン! 確かにそうですね」
キリコに校長と呼ばれ、先程までの機嫌が嘘の様にひっくり返る。
実はこのやり取りの数日前、ダンブルドアが理事会の決定により校長の座を追われていたのだ。
表面上は『教育適正に難アリ』という理由だが、この決定にファッジの疑心暗鬼や、死喰い人であるルシウスが関わっているのは言うまでもない。
結果校長のポストに、ファッジの推薦を受けたアンブリッジがなった訳である。
(…もっとも、適正は知れてるがな)
しかし校長であるにも関わらず、何故彼女は校長室に住まないのか。
何て事はない、あの校長室は″歴代校長が校長と認めた人物″しか住まわせないのだ。
つまりそういう事である、もっともそれを彼女が知る訳なく「ダンブルドアが何か仕掛けたんでしょう」と地団駄を踏む事になった。
「ヤツ等の処理はいわば、死体から蛆虫を潰す様なもの、気長にやりましょう」
「えぇ、えぇ、そうね、あの子達にじっくり教育的指導をしなければ…ヌフッ!」
(…分かっているのか?)
じゅるりと蛙というよりはカメレオンの様に舌なめずりする彼女を見て、キリコは果たして自分の言ったことを理解できているのか不安になる。
「では今から授業に行きましょう、今日もお願いしますよ?」
「…了解しました」
しかし、ダンブルドアを追放して、何故反発を受けないと思ったのか。
それ以来アンブリッジは、生徒達から正にピーラーゲリラのごとき
その勢いは止まる事を知らず、日に日に加速し、遂には悪戯王を決めるノリと化している。
アンブリッジ以外の教師も注意してはいるが、実質無視同然、というか場合によっては協力すらしている。
グリフィンドール生の悪戯に、あのスネイプが注意しないと言えば、その嫌われっぷりが分かるだろうか。
そんなビーブスを筆頭とした嫌がらせを受けた彼女が目を付けたのがキリコだ、彼が自分への悪戯を数百倍にしてやり返しているのを知った彼女は、その力に頼る事にした。
…結果キリコはことあるごとに警備を命じられ、今では授業に出ている時間よりも警備時間の方が長くなってしまっている。
お陰でより気に入られているのだから文句は言えないが、流石に彼も辟易としていた。
「…! アンブリッジだ…!」
「キリコもいやがる…!」
教員室から一歩出れば、刺刺しい小声が彼等を突き刺す。
しかしその小声でむしろ機嫌が良くなる彼女は、一体どういう精神構造をしているのだろうか。
そうしながら教室に着いた彼女は、また一転して不機嫌になる。
「エヘンエヘン、これはどういうことですか?」
本来一杯になっている筈の教室の席は、半分も埋まっていなかったからだ。
憤慨している彼女にキリコが羊皮紙の束を差し出すと、更に顔色が赤くなっていく。
「欠席届けです、机の上にありました…全員『アンブリッジ炎』だそうです」
「ンンッンッ! ンッ!」
声なのかすら怪しい怪音を堪えるアンブリッジ、だがキリコからすれば慣れたものである。
悪戯戦争と時を同じくし、アンブリッジに対する抵抗を兼ねたボイコットが始まっていた。
どう休んでいるのかも確証がある、ウィーズリーズの商品である″ズル休みボックス″の仕業だ。
が、確証があっても証明できねば机上の空論、キリコとアンブリッジ、二人がかりでもこの仕掛けを見抜く事ができず、現状この休みを認めるしかないのだ。
尚その際、(やむを得ず)スネイプに協力してもらったのだが。
『我輩にはさっぱりです、精々分かったのは、″蛙の毒″が使われている点くらいですな』
と、仕掛けを見抜いているにも関わらず、皮肉が返ってきた事は生徒間で話題になっている。
「では、授業を始めましょう、まずはアルファベットの発音から―――」
そうこうして退屈極まった虚無的時間が終わり、教員室へ戻ろうとした時の事である。
「―――!
キリコが咄嗟に呪文を張った瞬間、上空から何かが襲いかかる。
盾に弾かれたそれを見れば、不発に終わった糞爆弾。
誰かが天井に仕掛けておいたのだろう。
「一体誰が…」
「
アンブリッジが呟き終わる前にキリコが呪文を撃ち、その光は背を向けていた一人の生徒に命中する。
「…こいつです、糞の臭いがしています」
恐るべき嗅覚…かと思うが、実は嘘である。
キリコはそれらしき人間を、適当に犯人に仕立て上げたに過ぎない。
勿論アンブリッジにとって、それは些細な事ではあるが。
彼女にとって肝心なのは、生意気な生徒をどういたぶるかなのだ。
「ンフッそうですか、ではミスターキュービィー、彼を連行なさい」
「了解しました」
憐れな男子生徒は抵抗どころか指一本も動かせずに連れ去られてしまう、周りの生徒達はそれを助ける事もできず、精々目一杯睨むのが限界である。
「…………」
「ヒィッ!」
もっともキリコに睨まれればすぐ怯む程度だが、矮小な雑魚を一瞥し、彼等は男子生徒を教員室に放り込む。
「ウフッ、ではどうしましょうか?」
「…アンブリッジ校長、一つ、提案があります」
「? 何かしら?」
首を傾げ可愛げに微笑む彼女を見た男子生徒は、これからされる事への恐ろしさと悍ましさに鳥肌が止まらなくなる。
それを満足そうに見つめたキリコは、それ以上に恐ろしい事を提案する。
「″磔の呪文″を掛けましょう」
「なっ…!?」
「あらあら、理由を聞かせてもらっても?」
「はい、今まで校則違反を行った生徒に罰則を加え続けてきましたが、いまだ違反者は絶えません。
つまり今までより遥かに強力な罰則をする必要性があります、つまり、磔の呪文が最適と言えます」
「確かにそうね…けど杖の記憶はどうするつもり? それを調べられたら、流石に今の私の権力では隠し切れませんよ?」
「簡単ですよ…ククク」
キリコがにやりと笑った次の瞬間、彼は男子生徒の杖を奪い取り、そして―――
「
「!? ひぎゃあああああああああ!!!」
男子生徒の絶叫が部屋の中を満たし、それは教員室に留まらず外まで貫こうとする。
しかし事前に掛けた遮音呪文の効果により、その苦しみに気づく者は居ない。
「このように、罰則を犯した生徒の杖を使えばいいのです。
こうすれば記憶には残りませんし、むしろ違反者側の杖が記憶するため、許されざる呪文を使ったという脅迫材料にもなります」
「成る程ね…ウフッ、いつもありがとうミスターキュービィー、これで漸く、違反者を撲滅できそうですわ」
「…ぼ、僕は…やって…な…」
「嘘はいけませんよ?
何度も何度も響き渡る苦悶の声、それに気付く者は一人も居らず、彼女を止める人物も居ない。
生徒の虐待に夢中になるアンブリッジ、だからこそ気付けなかったのだろう。
キリコの肩に、小さな黄金色が光っていた事に…
*
春休み期間到来、そしてその週末、ホグズミード村は大いに賑わっていた。
この盛況の理由が、アンブリッジ炎の蔓延から少しでも逃れようとしたからだという事は、皮肉以外の何物でもない。
が賑わっている事に変わりはなく、ホグワーツではもう見られない光景がそこにはあった。
しかし一か所だけ相変わらず不景気な店が一軒あった、ホッグズ・ヘッド、以前防衛協会を組織したあの店である。
店主の態度が原因か店の埃が原因か、この店だけある意味いつも通り寂れきっている。
だからこそ目立つ、何故こんな店に若い男女がいるのかと。
「で、
いや、一人中年女性が居た、リーター・スキーターである。
今しがた彼女がぼやいた通り、彼女は今執筆ができない状況下にあった。
「ええ、そんな仕事ができない貴女に救いの手を差し伸べてあげるの」
その彼女を睨み付けるハーマイオニー、尚何故彼女がスキーターを恨んでいるのかというと、去年の日刊預言者新聞で散々騒ぎ立てられたのが原因である。
席の端の方で「一体どうすればいいんだ」と固まっているハリーとロンを放置し、会話は進む。
「救いの手なら間に合ってるざんすが」
「じゃあ脅迫ね」
「この娘…」
(…帰っていいかな?)
(帰れればね)
如何にもうんざりだといった溜息をつくスキーターを見た後、ハーマイオニーは要件を切り出す。
「ザ・クィブラー、って雑誌は知ってるわね?」
「あ知ってる、ルーナのお父さんが書いてる雑誌だ」
「三流オカルト雑誌の金字塔のあれざんすね」
「…まあ、正直その通りね」
珍しく同意するハーマイオニーだが、実際この雑誌、かなりアレなのである。
果たしてどう言うべきか、…とにかく内容が電波的としか言いようが無い。
そんな電波雑誌を現実的な思考をする彼女が、受け入れられる筈も無く、この様な感想を漏らすに至った。
「まあこの際それはいいわ、その雑誌にあるインタビュー記事を書いて貰いたいの」
「ええ…あの雑誌にざんすか?」
「虫」
「あっはい…それで? 誰をインタビューしろと?」
「ハリーよ」
「えっ僕?」
「そう、いい? 今預言者糞新聞は魔法省の言いなりになっていて、ファッジ達にとって都合の良い記事しか載せていないわ。
そのせいで世論の殆どは魔法省寄りになっているの。
なら、私たちもメディアの力を利用すればいいのよ、そうすれば多少かもしれないけど、世論も動くわ」
成る程、と呟くハリー達だったが、ロンが根本的な疑問を口にした。
「けどさ、一体何をインタビューするんだい?」
「僕が答えられる事なんてそう多くないよ?」
「何言ってるのよ、貴方散々アンブリッジに叫んでたじゃない、それをそのまま…じゃ説得力に欠けるから私が編纂するとして」
「もしかして、アイツについて…?」
「そう、例のあの人がどう復活したか…あの時何が起こっていたのか、こと細かに教えてちょうだい」
ハリーの脳裏にはあの時の光景が巡っていた、セドリックが死んだ事、ヴォルデモートが甦った事、キリコが連れ去られた事…
「…あ」
「? どうしたんだい?」
「いや、キリコが拐われた事はどうしよう…」
口に手を当て、軽く頭を抱えるハーマイオニー。
キリコはいまやアンブリッジの手先、しかもキリコ当人は拐われた事を否定している。
仮に彼が誘拐された事を載せたとしても、キリコはそれを否定する、そうすれば記事の信憑性は却って低くなってしまうだろう。
「…キリコの事は乗せない方針でいきましょう、逆に信憑性が落ちるわ」
「分かった、そうするよ、早速始めよ―――」
「ちょっと待つざんす」
「…一体何の用かしら? 拒否権は無いわよ?」
軽く勢いづいた流れを止められ、私怨があるとはいえ露骨なまでに不機嫌になるハーマイオニー。
「分かってるざんすよ、今さら拒否もできないし、取材はやるざんす。
け、ど、一つだけ条件があるざんす!」
「条件?」
「そう、そのインタビュー記事、それをクィブラーに載せるタイミングはこっちで決めるざんす」
ハリー達は訝しんだ、タイミングを向こうで決められるとはつまり、いつまでも載せない可能性もあり得るからだ。
「…理由はあるのかしら?」
「さっき貴女が言った通り、世論は魔法省寄りざんす。
今その記事を載せても、大した反響は得られないざんす。
重要なのはタイミング、逆に言えばそれさえ狙えば、想像以上の効果を得られるざんすよ」
「止めておこうぜハーマイオニー、こいつそう言っておいて、絶対載せないぞ?」
スキーターの言う事は正しいが、ロンの言う事ももっともだ。
この女を信用するか否か、暫く考えた末に彼女は決断した。
「分かったわ、タイミングは貴女に任せるわ」
「ほ、本気かい?」
「ええ、この女はこんな奴だけど、記者としては間違いなく一流よ。
素人の私達で決めたら、むしろ逆効果になる可能性だってあるわ」
「決まりざんすね、じゃあ始めましょう、まずは服装を整える所から…」
「えっ、服から?」
「当たり前ざんす」
ハリーのインタビュー準備の間、やる事の無いハーマイオニーとロンの二人は、バタービールを飲みながら寛いでいた。
「…そういえば」
「? どうしたの?」
それか半分程減った頃、ロンが何かを思い出した様に口を開く。
「いや…キニス大丈夫かな、と思ったんだよ」
「ああ、そういう事ね」
彼は実は数日前から、軽い風邪を引いてしまい授業を休んでいる。
無論アンブリッジ炎ではなく、普通の風邪である。
「折角ホグズミードに来たんだから、何か温かい物でも買っていきましょうか」
「一個位悪戯グッズを仕込んでおこう」
「…それで笑える程、精神的に余裕があればね」
「だよな…ハァ」
彼等とキニスも、何だかんだ言いつつ長めの付き合いである。
表に出さないものの、気落ちしている事には気付いている。
「…やっぱり、風邪引いたのもそれが原因かな…」
「いえ、それは無いわ」
「何でそう言い切れるんだい?」
ロンがそう言うと、ハーマイオニーは正に信じられないという目線を彼に投げ掛けた。
「え…まさか…気付いてないの…?」
「何の事だい?」
「…私と同じ理由なのに…」
ハーマイオニーが呆れながらブツブツ呟き、ロンの鈍感さに溜め息を三度吐いた後、彼女はキニスの風邪の原因を語った。
「
「へー、成る程…ってちょっとまって!? 逆転時計だって!? あいつそれを借りれる程頭良かったのか!?」
ロンの言う通り逆転時計は簡単には借りれない、非常に良い成績と、更に上を目指す向上心が認められなければ取得できないのだ。
「何でも、魔法生物学と別の取りたい科目が重なったから、マクゴナガル先生に掛け合って、借りれたらしいのよ」
「…先生、よく許可したな」
「…代償として、O.W.L.で上位10位に入れと言われたらしいわ」
「…ワーオ」
と彼等は言っているものの、実際の所マクゴナガルはそこまで考えてはいなかった。
この条件は心掛けに過ぎず、上位四分の一に入っていれば十分だと考えている。
「けどそこまでして魔法生物学を取ったのか…」
「何でも将来は、魔法生物学者になりたいらしいわ」
「あー、そういえば昔スキャ…何とかさんに会った事あったな、あいつ…」
「スキャマンダーさんよ」
「インタビュー準備、できたざんすよ」
「よし、始めるわよ!」
*
一方その頃、キリコは必要の部屋に籠っていた。
しかし今回は異能の研究でもなければ、呪文の練習でもない。
彼の目の前には数字が振られたボタンと、棒の様な物が付いた機械…そう、電話が置いてある。
(本当に何でもありだな、この部屋は…)
半ば呆れつつも電話のボタンを押し、無機質な機械音を鳴らす受話器を耳元に寄せる。
暫く経つと機械音は途切れ、代わりに胡散臭い声が聞こえ始めた。
「はぁい、非合法マグル用品店でごぉざいます…」
「…俺だ」
繋がったのはキリコがよく通っていたマグル用品店…もとい、武器洗浄屋であった。
彼は去年の頃、ここの電話番号を聞いていたのだった。
「ん? おぉ、貴方でぇしたか…しかし電話なんて、どうしたんですぅか?」
「学校から出れなくてな…」
何故直接行かなかったのかと言うと、単独行動が危険だったのもあるが、これが最大の理由である。
「…ああ、あの女性のせいですね? 聞いていますよ…ホグワーツはとても面白くなってるらしいですねぇ…」
「知っているのか?」
「はい、ルスケ殿から」
「…何?」
「あの人にはいつも贔屓にしてもらってまして…」
ここでもロッチナか…と、その神出鬼没ぶりに達観するキリコ。
「まぁそれはともかく、何のご用で…いや、何をご所望で?」
「…色々ある」
以前のマルフォイ邸の脱出戦、あれでキリコは多くの武器弾薬を使い尽くしてしまった。
今回の注文は、その補充を目的としているのだ。
…ついでに言うと、アンブリッジ護衛により、纏まった資金を得る事ができたのも理由の一つである。
「―――はいはい、確かに受けました、送り先は…」
「…ここの住所に頼む」
「はい…誰かに見られないように気を付けてくださいねぇ」
「分かっている」
一頻り注文し終わりそれの発注手続きも終わった、さあ商品の用意だと店主が意気込むが、彼の話はまだ終わっていなかった。
「それともう一つ注文が…いや、頼みがある」
「頼み…ですかぁ?」
「…銃の改造はできるか?」
「えぇでぇきますよ、カスタムでも呪文での魔改造も」
「今から図面を送る、一緒に送るブラックホークをその通りに改造してほしい」
元々最終手段として持っていたブラックホークだが、キリコは既に力不足だと感じていた。
だからこそ彼は、この拳銃の更なる威力向上を目論んでいたのだ、それこそ盾の呪文を一撃で破る程の拳銃を。
「了解しましたぁ、では、例の時を楽しみにしてますよぉ…ヒヒッ」
「…………」
――― ハリー・ポッターとラストレッドショルダー ―――
いよいよ″アレ″が登場します。
出番は…もうちょっと先だけど。
???「茶番は終わりだ…」
蛙「ゲコ?」