【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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ひっさびっさの投稿です、休みにしては長すぎる…
まあいいや。
「アンブリッジをひたすらボコボコにする」編、始まるよー。


「不死鳥の騎士団」篇
第四十四話 「レウニオン(Aパート)」


ヴォルデモートの復活、セドリックの死。

それらが与えた衝撃は余りに大きい、だが俺はその事を知らないでいる。

何故なら俺は、自分自身が何処に居るのかも知らないのだから。

 

あの時より数ヵ月、俺は何処かの牢獄に監禁されていた。

何故監禁されているのか、理由を聞かされていない以上憶測でしかないが、恐らく″異能″を調べる為だろう。

 

ヤツ…ヴォルデモートは、俺の不死性を″異能″によるものではなく″呪文″によるものだと捉えている様だった。

″異能生存体″そのものを知られなかったのは、不幸中の幸いだ。

だからと言って、俺の異常性を知られてしまったという結論に変わりはない。

 

この監禁生活中、俺は不死性を調べる為の拷問を幾度と無く受けた。

死の呪文により、何度も仮死状態を味わった。

磔の呪文により、精神が壊れる寸前まで苦しめられた。

 

肉体的に、精神的に、奴等はあらゆる方法で俺を殺しにかかってきた。

…結果的にそれは、俺が限界を迎える一歩直前になると、悉く不発になり俺を殺すには至らない。

だがそれは、更なる苦痛の縁に立つだけでしかない。

 

今日もまた暗い牢獄の中で出された食事を食べ、命を繋ぐ。

割りと良いメニューな辺り、これでも待遇は良い方なのだろうか。

餓死するかの実験で断食させられた時以外は、ちゃんと食事が出ている。

 

…分からない、ヤツは俺をどうしたいんだ?

ヤツはこれまでに様々な拷問を仕掛けてきたが、欲しいのは俺の不死性そのもの。

異能を手に入れるのと、拷問に何の関係がある?

 

俺を殺して、異能だけ奪い取るつもりなのだろうか。

返らない答えを考えながら、空の器を石畳に置く。

 

「―――ッ!」

 

立ち上がった瞬間、関節に鋭い痛みが走る。

ここに監禁されて約二ヶ月、ずっと日光を浴びていない弊害がいよいよ出てきたか。

このままでは、歩けず動けずしかも死ねないという、今以上の地獄になってしまう。

 

…脱出の手段が無い訳ではない、むしろ十分ある。

便器の後ろに隠してある、あの小さな袋だ。

第三の課題前に呑み込んでおいたバックサックは、ヤツ等にバレる事無く持ち込む事に成功している。

 

あれの中身を駆使すればどうにかなるだろう、しかし問題があった。

バックサックが小さすぎて、武器を取り出せないのだ。

しかも元に戻す為には杖がいる、その杖は何処にあるかも分からない。

 

その為少なくとも俺の杖の場所が…いや、誰かの杖を奪い取るまでは、待ち続けるしかない。

しかしヤツ等は油断無く、拷問の時も隙を見せてくれなかった。

 

「…おい! こっちを向け!」

 

牢屋にある唯一の階段、鉄格子で塞がれた場所から顔を除かせるワームテール。

今日の拷問の時間がやって来た訳か、軋む体を起こし椅子に腰かける。

 

「インカーセラス ―縛れ」

 

飛来した縄に縛られ動けなくなった所に、ワームテールの後ろから一人の男が現れた。

…初めて見る顔だな、担当が変わったのか?

いつもならルシウスや他の何人か、稀にヴォルデモート本人が拷問するのだが。

 

「よう、久し振りだなキリコ・キュービィー」

 

俺はこいつと会った事があるのか? まるで記憶に無いが…

内心首を傾げていると、ワームテールが小言を良い始める。

 

「いいかグレイバック! やっていいのはこのメモに書かれた事だけだ! 間違っても人狼にはするなよ!」

「はいはい分かってるよ…おっと口が滑った」

「ヒィッ!?」

 

ヤツは噛み付くフリでワームテールを驚かす、グレイバック…確か指名手配のポスターに名前を見た事がある。

 

「クソッ、てめぇを見てると去年折られた肋骨が痛むぜ…」

 

肋骨…もしかして、去年クィディッチワールドカップに現れた連中の一人か?

記憶と照らし合わせながらヤツを見るが、勘に障ったのか喉にナイフを突きつけてきた。

 

「この痛み…何十倍にして返してやるからな、覚悟しろよ?」

「…………」

 

随分と恨まれているな、だが。

目の前にはグレイバック、後ろには杖を構えたワームテール。

…この機会を逃す手は無い。

 

「…一言」

「あ?」

「一言言わせてくれ」

 

少し目を丸くした後、嫌らしい笑みを浮かべるグレイバック。

その顔を近付けながらヤツは語る。

 

「何だ命乞いでもする気か? いいぞ? 言うのは好きなだけできるから―――」

 

近付いたその顔に、唾を吐いた。

 

「…………」

「…は?」

 

口を開き、手を頬に当て、付着した唾を確認し、何が起こったかを理解したヤツは叫んだ。

 

「テメエエエェェェッ! 殺してや―――!?」

 

怒りに我を失ったグレイバック、その隙を突き股ぐらを全力で蹴り上げる!

 

「!??!!?!?」

 

悶絶するグレイバックと、混乱するワームテール。

それに向かって、俺を縛る椅子ごと体当たりをぶちかます!

 

「ぐぇっ!?」

 

石畳に頭をぶつけワームテールは気絶した、残るはグレイバックだけだ。

転倒しているヤツに足を絡め、首を締め上げる。

 

「…こ……の…野………郎…」

「…………」

 

気絶した様だな…

グレイバックの持っていたナイフを口でくわえ、肩のロープを切り出す。

 

「……く…う……ぐ……」

 

首を切らない様に慎重に、筋肉がつりそうになりながらも、ナイフを前後に動かしていく。

ゆっくりと、確実に切り込みを深く、深く…

 

「………ッ! ハァ、ハァ、ハァ…」

 

何分掛かっただろうか、だが拘束を解く事ができた。

かなり疲れたが…休むのはまだだ、ワームテールの持っていた杖を拾い上げ呪文を唱える。

 

「エンゴージオ ―肥大せよ」

 

バックサックを元の大きさに戻し、中身を確認する。

…よし、問題無く使えるな。

脱走方法の目処はついていないが、そんな事は何回もあった、今更気にはしない。

 

目覚めないよう、そこの二人を拘束する。

ATを創りたい所だが、あれは俺の杖だからできる呪文、この杖では無理だ。

まずは俺の杖を見つける事にしよう、だが何処にある?

…記憶に聞いてみるか、杖先をワームテールに向ける。

 

「レジリメンス ―開心」

 

―――卓上に並ぶ死喰い人達その上座に居座るヴォルデモートその横にはルシウスマルフォイ端にワームテールグレイバック更にスネイプヴォルデモートに渡される羊皮紙実験結果何れも死なず精神系統も崩壊直前で杖が破損ヤツは読み終わった後それをワームテールに渡すそれを持ってヤツは移動していく階段を降りきったその先は色々な物が置いてある倉庫その中に異様な風体の杖が―――

 

「―――そこか」

 

杖の場所は地下の倉庫か、しかも階段を下りきった場所と、移動方法も分かった。

何故あの中にスネイプが居るのかは分からなかったが、それは後でいい。

 

 

 

 

ワームテールの懐から鍵を奪い、鉄格子を開け脱獄する。

身を屈めながら先にあるエントランスを除き、人が居ないのを確認し飛び出す。

 

足音を立てぬよう、ワームテールの記憶を頼りにひっそりと歩く。

 

コツ…コツ…コツ…

 

「…………!」

 

足音に気付き石像の影に隠れる、廊下を歩いて来たのはブロンドの髪をした女性、ナルシッサ・マルフォイだった。

 

(…ヤツは確か)

 

キリコはクィディッチワールドカップの時に彼女を見た事があった。

そこから彼は推測する。

 

(…ヤツも死喰い人なのか? だが警備という訳でもなさそうだ。

ならここは…マルフォイ邸か? …もしそうなら…よし、それだ)

 

脱出方法の目処を立てたキリコは、彼女が通り過ぎたのを見て更に歩き出す。

すると途中、妙に騒がしい音が鳴っているのを聞き取った。

 

音を探し辿り着いたのは一つの部屋、扉を僅かに開け中を確認する。

 

「…それで、手筈はどうなっている?」

「はい、守護霊を使える連中を集めています、あとスパイを何人か」

「よろしい、アズカバンの見取り図は私が手に入れよう」

 

そこではルシウス・マルフォイを筆頭とした死喰い人達が、何らかの作戦会議をしている所だった。

 

(アズカバン…? 脱獄計画でも練っているのか?

…だが、不味いな)

 

キリコが見ていたのは応接間の奥にある地下階段、ワームテールの記憶で見た倉庫に繋がる道である。

つまり倉庫に行く為には、この部屋を突っ切らなくてはならない。

 

(…やるしかないか)

 

キリコはバックサックに手を入れ、パイナップルの様な物を引っ張りだす。

そしてそれに刺さっていたピンを、口で引き抜く。

 

(1…2…3…!)

「…ん? 何だこ―――」

 

カウントを終えると同時に投げ込まれた手榴弾が、応接間に炸裂した。

 

「ギャアアアアアア!?」

「何だ!? 何が起きた!?」

 

突然の爆発と衝撃波。

当然大パニックに陥る死喰い人達。

それを尻目にキリコは、煙幕の中を何食わぬ顔で走り抜ける。

 

「―――なっ!? ヤ…奴は!? グレイバックは…と、兎に角追え!」

「はいっ!? 今何と―――」

「追えと言っているのだ!」

 

それに気付いたルシウスが指示を投げ、生きてる内の動ける何人かがキリコを追う。

 

キリコが居るであろう場所に向けて呪文を連射するが手榴弾のせいで視界不良、どれもまともに当たらない。

螺旋階段を一気に下り、遂に彼の倉庫突入を許してしまった。

 

(…あれだ!)

 

杖を見つけたキリコは素早く杖を倉庫の宝物に向ける、高そうな彫像、宝石、儀礼用の剣等。

石では無い、金属によってATが練り上げられていく。

だが死喰い人もいつまでも待つ程優しくない、追いついた者が扉を開け放つ。

 

「クソ餓鬼が! ステューピファ(失神せ)―――!?」

 

しかしキリコはそれ以上に優しく無かった。

扉に群がっていた彼等に向けて、RPGが飛翔する。

 

「のぎゃああああ!?」

 

またもや爆発、当然何事かと後ずさる。

が、彼等に安息の時は無い。

爆炎を切り裂き、尋常では無い速度でATが突っ込んできた。

 

「何だこれはああああ!?」

 

タックルにより壁に叩き付けられるが、何とか気合いで肩にしがみ付く。

しかし、それが彼の不幸だった。

展開されるATの踵、そこにあった排出口の様な穴。

―――莫大な量の水が、ブースターの如く吹き出された。

 

一気に加速するAT、螺旋階段の壁に肩を寄り掛け速度を保つ。

…そう、肩である。

 

「――――――」

 

憐れ、断末魔すら出せずに紅葉下ろしでバラバラになった。

 

機体名″ライトスコープドッグ・TC″

ライトスコープドッグに、ジェットローラー機構を取り付けた狂気の機体。

脱出の為に速度に全てを振り切ったその最高巡航速度、驚異の125.9km/h。

万一転べば木端微塵、まさに動く棺桶と言えよう。

尚ジェット機構は、水増し呪文による水圧ジェットで代用。

 

上の方で待ち構えていたルシウス達は、現れた規格外の存在に一時硬直する。

あれは何だ!? あの手に持っている筒は何だ!?

その隙を見逃す筈も無く、AK-47の一斉掃射が始まった。

あまつAT用に巨大化済み、17mmの威力は察するにあまる。

 

乾音、跳弾、悲鳴。

不幸なのは彼等が純血主義者だった事、あの筒が銃だと理解するのに数秒を要するのだ。

 

「…ハッ!? 何をしている貴様ら!」

 

圧倒的速度のまま扉をぶち壊していったATを見つめていたルシウスは、正気に戻ると同時に怒声を張り上げる。

だが時速125.9kmに簡単に追いつける訳も無い、姿晦ましでも使えれば話は違うが、最低な事に侵入防止の結界が張ってある。

 

中世風の屋敷に、まるで似合わない機械音が鳴り響く。

何とか追いついても、踵から吹き出す水に押し流される始末。

時折先回りしていたのが出てくるが、片端からAKの餌食になっていく。

 

プロテゴ(盾よ)!」

 

それを防ぐ者も居る、が結局突撃したATに盾ごと敷潰されるだけ、今マルフォイ邸は戦場と成り果てていた。

地獄の中を爆走するキリコ、無論考えなしに走っている訳では無い。

彼はある部屋を探していた、それは暖炉が存在する部屋。

ここがマルフォイ邸と気付いた時から、彼は煙突飛行ネットワークによる脱出を思いついていた。

 

マルフォイ家は有力な貴族、それが暖炉を持っていない等あり得ない。

暖炉を探し求め、目についた扉にアームパンチを叩き込む。

時折死喰い人が巻き込まれ吹っ飛ぶも、暖炉は中々見つからない。

 

腰にぶら下げたバックサックから、マガジンを取り出し装填。

一見ただの虐殺にしか見えないが、キリコは焦っていた。

ここまで大暴れしたのだ、何時ヴォルデモートが現れてもおかしくない。

 

元々短期決戦前提で組んだATだ、水増し呪文による消耗も激しい。

今の状態でヤツが現れたら、何もできず負けるだろう。

 

「―――居たぞ! こっちだ!」

「―――!」

 

屋敷の構造を熟知している為か、流石に早い。

増援から逃げる様にジェットを吹かす。

弾も無限では無い、急がなければ…!

 

そして更に進もうとした時、遥か先に複数の死喰い人が居るのが見える。

躊躇なく突撃銃を構え、トリガーを引き縛る。

だが弾が当たる事は無かった。

 

プロテゴ(盾よ)!」

コンフリンゴ(爆発せよ)!」

 

盾の呪文による密集陣形が弾を弾き、隙間から爆破呪文が飛来する。

想定外の力は既に弱まっている、後は対策を立てればいい。

少しの打ち合わせによる作戦は、間違いなく有効だった。

 

―――乗り手が″生まれながらのPS″でさえなければ。

 

「―――はぁ!?」

 

狭い通路にも関わらず、目を疑う動きで呪文をかわしていく。

時に加速。

時に回転。

時に膠着姿勢。

時に片腕を犠牲にし。

とうとう死喰い人の目前に迫った。

 

が、そこでキリコは逆向きに引き返して行った。

―――盾の下に向かって、手榴弾を転がして。

 

陣形内に吹き荒れる爆風。

盾を組んでいたのが仇となり集中爆発をモロに浴びる死喰い人。

それを蹴散らし加速すると、ふとキリコは違和感を感じ取った。

 

(…………?)

 

視界の端に、一瞬だが妙な影が映り込んだ気がしたのだ。

キリコは影が見えた方向に向かって動く、本当に影を見たのか確かではないが、こういう時の直感は何よりも頼りになる。

分かれ道の無い長い通路を走ると、一つの扉が見えてきた。

キリコは直感で理解した、あそこが暖炉の部屋だと。

同時に警戒した、必ず何かが来ると。

 

「いい加減にしてもらおうか…!」

 

扉の前に待ち構えていたルシウス・マルフォイ、彼はキリコの狙いが煙突飛行ネットワークだと気付いていた。

 

ピエルテータム・ロコモーター(全ての石よ、動け)!」

 

壁の窪みに鎮座していた石像が次々と降り立ち、あっという間に長大な陣形が組上がる。

数にして数十体、これを切り抜けるのはATといえど困難。

…しかしルシウスは、現代兵器の火力を考慮していなかった。

 

キリコはバックサックから取り出したRPGをAT規格まで肥大化させ、騎士像目掛けて発射。

 

ジェミニオ(増えよ)

 

更に双子の呪いにより増殖、大量の弾頭が群を成す!

ルシウスは妨害しようと呪文を撃つが、騎士像が邪魔となり当たらない。

 

「―――! プロテゴ(盾よ)!」

 

防ぎきれないと判断し盾を張った瞬間、大量の騎士像が一斉に消滅する。

こうなれば正面からやり合うしかない!

だが、その覚悟は無駄となった。

 

「―――ッ!?」

 

鋭い激痛、足からの出血。

その痛みに、杖を離した直後。

盾の消えたルシウスに、ATのタックルが直撃した。

 

「がっ!?」

 

吹き飛ばされ壁に激突し、気絶するルシウス。

その横をブラックホークを構えたキリコが走り抜ける。

彼はルシウスの足元に向かって銃を撃ち、その跳弾で足を撃っていたのだ。

 

(あそこか…!)

 

ルシウスを倒した勢いのまま部屋に飛び込むと、そこには予想通り暖炉があった。

運の良い事に誰かが使っていたのか、煙突飛行粉も舞っている!

 

「逃がすかっ!」

「!」

 

後ろから迫る死喰い人、彼等から逃げる様に暖炉に飛び込む!

 

「ダイアゴ―――ノクターン横丁!」

 

漏れ鍋にはよく世話になっている、あそこを破壊するのは良くない。

そう考えノクターン横丁に転移するキリコは、追撃を断つため最後の手榴弾を転がす。

 

 

 

 

転移、そして爆発!

開けた視界に映るのは、ボージン・ワークスの店内と唖然とする店長。

それらを悉く無視し、最大千速で駆け抜ける。

ヤツ等はまだ指名手配犯、ダイアゴン横丁までは来れない。

あそこまで逃げ切れば…!

 

路地裏を破壊しながら駆けるATの後ろには、黒い煙を纏った死喰い人が追従していた。

暖炉を爆破されながらも、何とか転移できた数名。

それらが次々と、最も効果的な爆破呪文を撃ち込む。

ダイアゴン横丁に行く事を想定し、既に武器をしまっているキリコに防ぐ術は無い。

 

マルフォイ邸の廊下よりも狭い路地裏では、被害を抑えるのが精一杯。

徐々に破壊されていく部位、遂にコックピットが剥き出しとなる!

だが!

 

「―――!? 消えた!?」

 

コックピット内に、キリコは居なかった! 

脱出していた!? いつからだ!?

脱出に気付かなかった死喰い人は、地面に伏せるキリコをとうに通り過ぎていた。

後方遥か20メートル、そこでキリコは杖を振った。

 

アーマード・ロコモーター(装甲起兵)

 

時間を惜しんで創った事により、頭部無し片腕片足無しのAT。

だが狭い路地が、姿勢を支えてくれる。

片足のジェットローラー機構を吹かしながら突撃、後ろからの轟音に気付き振り向くがもう遅い。

 

「そこか―――なぁっ!?」

 

宙に浮いていた為に胴体に激突した死喰い人、キリコは片腕で彼等を押えこみ更に加速する!

加速の圧により、動く事もできずに押し込まれる。

ノクターン横丁の闇が開けるが、キリコは構わず目の前の建物に向かって行く。

 

「ま、まさか…!?」

「止めろおおお!」

 

ATで死喰い人を抱えたまま、建物に向かって加速!

キリコは、死喰い人をAT諸共吹き飛ばそうとしていた!

そして、全長4メートルの石人形が時速125.9kmでグリンゴッツの正門に突っ込んだ。

 

「な、何だ一体!?」

 

大爆発と大崩壊を起こすグリンゴッツ正門。

逃げ惑う一般人に、泡を吹いて倒れる小鬼。

土煙の中から出てきた、キリコ・キュービィー。

その足取りは重い。

 

(…逃げ…切れた…か)

 

激突直前に脱出したとはいえ、ダメージは大きい。

更に二か月に渡る監禁生活により蝕まれた体力、脱出に成功した安堵が止めとなった。

ボロボロの糸がばらけて千切れる様に、キリコはその場に崩れ落ちたのであった。

 

 

*

 

 

「…………」

 

真っ白な景色、首を動かせば同じ白いカーテンが見える。

またか、またここか。

意識を取り戻した俺は、ホグワーツの医務室に居た。

 

確か…マルフォイ邸から脱出し、グリンゴッツに突撃を仕掛け…そこで意識を失ったのか。

…だが何故だ? 何故俺はホグワーツに居る?

何者かが運んだのは間違いないが、だとしたら普通聖マンゴに居るべきではないのか?

 

助かった事に安堵しつつ首を傾げていると、急に光が差し込んできた。

 

「おお、目が覚めたようじゃの」

 

ゆっくりと開かれたカーテン、そこに居たのはダンブルドアだった。

 

「…何故俺はここに?」

「うむ、君の疑問はもっともじゃ、儂としては聞きたい事が山ほどあるが…そちらを先に答えよう」

 

まあ大方騒ぎを聞きつけたダンブルドア当たりが運んでくれたのだろう、俺はそう思っていた。

 

「実はのう、グリンゴッツ前で倒れていた君を彼が運んでくれたのじゃ」

「…何故ホグワーツに?」

「『その方が色々楽だろう』との事じゃ」

 

楽…か、確かにここなら追手もこないし、俺の事情もすぐに話せる。

しかしダンブルドアでないなら誰だというのだ、事情を知っているヤツに違いないが…

 

「彼もそこに居るのじゃ、紹介しよう」

 

開かれたカーテン、そこにヤツは居た。

衝撃を受けるなと言う方が無理だった、唖然とするのは必然だった。

居る訳が無い、忘れろと言われても忘れなれない、ある意味因縁の男がそこに立っていたのだから。

 

「魔法大臣秘書の、コッタ・ルスケ殿じゃ」

「―――!?!?!?」

 

俺を追い続けた、時に敵対し時に協力し、最終的に奇妙な腐れ縁となった男。

 

「久し振りだな、キリコ」

「…ロッ…チナ…!?」

 

あの忌々しくも懐かしい男が、かつてと何一つ変わらぬ顔でそこに立っていた…




―――ハリー・ポッターとラストレッドショルダー―――



色々ぶっこんでやった、後悔はしていない。
~キリコ脱出後のルシウス~
ヴォ「おいどうなってんだコレ」
父フォイ&狼&鼠「…………」
ヴォ「よっしゃクルーシオ」
三人「アババーッ!?」

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