【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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タイトルの癖に課題に挑むのは次回!
しょうがない!
だって本編でも最初は予告になってるか微妙だもん!
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第三十五話 「死の竜」

様々な絵画が飾られた部屋は、先程まで選ばれた選手達が和やかな会話をしていた筈だった。

だがその安息は俺達の来訪によって容易く崩れ去る、不思議そうな顔をした選手の中で最初に話しかけて来たのはセドリックだった。

 

「キリコにハリー? どうしたんだい?」

「それが…僕にも…」

「………」

 

まだ状況の整理が付いていないのか言いよどむハリー、片や俺も何と伝えれば良いのか考え込むが、結局そのまま伝えるしかないのだろう。

意識の外で深くため息をつき、言葉を口にする。

 

「…俺達も代表だ」

「…え?」

 

何を言っているのか分からない、といった様子だったが、その意味を理解してきたのかその顔は徐々に険しくなっていく。

次に口を開いたのはクラムだった。

 

「それヴぁ、そのままの意味ですか?」

「残念ながらな」

 

口を開け唖然としていたのは数刻の間、少し経った瞬間大騒ぎが始まった。

一体どういう事だ、何故代表が三人もいる、これは不正だ…

特に騒いでいるのはデラクールだ、彼女は俺達が不正を働いたと訴えている。

それに反論するのはセドリック、ヤツは俺達がそんな事はしないと説得をしようとしてくれている。

クラムは何も語らず、腕を組んだまま何かを考えているようだ。

騒然とした空気の中現れたダンブルドアは、俺達に詰め寄り声を荒げる、ヤツも混乱しているのだろう。

 

「ハリー! キリコ! ゴブレットに名を入れたか!?」

「「いえ」」

「上級生に頼んで名を入れてもらったのか!?」

「い、いえ…僕何もやっていません」

「俺もです」

 

否定を繰り返す俺達、しかしその言い方はまるで…

 

「…上級生に頼めば年齢線を越えられるんですか?」

「成るほど、その小僧の言う通りかもしれんな、どうなんだダンブルドア!」

 

怒りに声を荒げながらダンブルドアに詰め寄るカルカロフ、その隣のマクシームも同じ目つきで睨み付けている。

 

「…確かに年齢線は越えられる、じゃがゴブレットは複数人を選ぶことは決して無い」

 

そうだ、この事態で最もおかしいのはそこだ。

例え俺やハリーの名前がゴブレットに入れられようと、選ばれるのは一校一人、総数に変わりは無い。

だが現実に俺達は選ばれた、ある筈のない4人目と5人目として。

 

「でーすが、一体どうするのでーすか? 我がボーバトンは一人で三人に挑まーねばならないのでーすか?」

「そうだ! ホグワーツの選手が三人というなら、我がダームストラングも三人選ばせてもらう!」

 

怒りに身を任せ無理難題を怒鳴り散らす二人の校長、それを収める術をダンブルドアは持たない。

ヤツはこちらに振り返り、改めて問いかけた。

 

「もう一度確認じゃ、君達は何もしておらんのじゃな」

「「そうです」」

「嘘を言うな! わざわざ他人の名前を入れる物好きは居ない! こいつらが何らかの不正を行ったのは事実だ!」

 

ダンブルドアを横へ追いやり俺達に迫るカルカロフ、その目には激昂のあまり殺意が宿っている様にすら見える。

しかしハリーの胸ぐらを掴もうとした時、その殺意は一瞬で引っ込んだ。

ハリーの頬を僅かに掠め、その喉元に杖が突きつけられたからだ。

 

「ポッターに手を出そうとするとは随分度胸が据わっているな、えぇ!? どうなんだカルカロフ」

「!? マ、マ、マッドアイ・ムーディ!? な、何故お前が…!?」

「下種共を近づけさせないためだ! 丁度貴様の様な輩だ! ポッターに少しでも触れてみろ、地獄に引きずり戻してやるぞ!」

「アラスター!」

 

修羅の様な形相で杖を突きつけるムーディに怯えるカルカロフだったが、ダンブルドアの声でヤツが大人しくなると心の底から安心した声を出した。

確かにヤツは怖いが、この怯え方は異常だ、一体何があったのか…

 

そこで俺は思い出した、先程この男が発していた歓喜と憎しみを。

だがその様な気配は既に微塵も無い、俺の思い違いだったのか?

いや、それは無い、俺のたった一つの特技が覚えている、あの感情に僅かに混じっていた鋭い殺意は勘違いなどでは無かった筈だ。

だとしたら俺達の名を入れたのはもしや…

その思考は、新たな来訪者によって打ち切られた。

 

「炎のゴブレットは鎮火した…たった今」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら暗い声で話すバーテミウス・クラウチ、それはつまりもう新たな選手を選ぶ事も辞退する事も叶わないという、残酷な事実を物語っている。

 

「炎のゴブレットが選んだ選手は、必ず試合に出なければならない、ハリー・ポッターとキリコ・キュービィーは今より代表選手の一人だ」

「そーんな事、許さーれるはずがあーりません!」

 

俺としても耐え難い状況であったが、既に賽は投げられた。

誰が何と言おうと後戻りはできないのだ。

クラウチがその事実を苦々しく告げる。

 

「そうだ、何らかの不正があったのは間違いない、だが炎のゴブレットは魔法契約、それを破れば何が起こるかも分からないのだ…」

 

リタイアを防止する為の魔法契約が、かえって仇となる。

危険から逃れる為には危険に飛び込まねばならない、矛盾を抱え込んだそれを正当と認めなくてはならない異常事態に、俺達はただ唸る事しかできない。

 

「ともあれ代表は代表、理由はさておき…」

「さておき!? クラウチ! 貴様はこの異常事態をさておきで済ませる気なのか!?」

 

もう帰りたそうな顔色のクラウチが話を切り上げようとしたが、それをムーディの怒声が阻む。

 

「″炎のゴブレット″の様な強力な魔法道具を騙すには、高度な″錯乱の呪文″が必要だ! 恐らく何者かが存在しない4校目と5校目の選手としてポッターとキュービィーの名を入れたに違いない!」

「確かにそれなら彼らは選ばれるでしょう、一人しか立候補していないのですから。

…しかしそんな強力な″錯乱の呪文″を掛けられる人間はそうそういない、それこそ極々一部の死喰い人くらいしか―――まさか」

 

そこまで言いかけ言葉を飲み込むクラウチ。

炎のゴブレットに錯乱呪文を掛けられるのは死喰い人くらいしか居ない、逆に言えばこれを引き起こせるのは死喰い人しか居ないという事。

そして死喰い人はヴォルデモートの忠実な部下、結論は誰の目にも明らかだった。

 

「ハリー・ポッターを殺そうと考えた輩がこの異常事態の黒幕だ!」

 

ハリー・ポッター、ヴォルデモートを滅ぼした英雄にして魔法界の希望。

だが闇に潜む者からすれば、憎んでも憎んでも尚憎み足りぬ忌まわしい怨敵。

ヴォルデモート、死喰い人、犯罪者、ハリーを憎む人間は五万といる、ヤツらはひたすらに祈る、目を背けるほど醜く死ねと。

 

「ハリー・ポッターを殺す…!?」

「それ以外何がある?」

 

絶句するクラウチに向かってムーディが断言する、しかしクラウチは首を傾げたままだ。

その理由をマクシームがつぶやく。

 

「ですーが、この少年は何なーのですーか?」

 

全員の視線が俺に集まる、そうだ、ハリーを憎むのは考えられるが、何故俺まで選ばれたのかが分からないのだ。

 

「…キュービィーだったか? 何か闇の輩に恨まれる様な事でもしたのか?」

「ほう、それを一番知ってるのは貴様じゃないのか!? ええ!?」

「アラスター」

「…心当たりが無い」

 

ムーディに再度脅迫されながらも睨みを利かせるカルカロフに対し、全員に聞こえるよう簡潔に答える。

そうは言ったものの心当たりはある、一年の時死喰い人のクィレルとヴォルデモートを撃退したのが最たるものだ。

 

しかし魔法省はヴォルデモートを故人として扱っている以上、言ったとして信用してはもらえまい。

二年の時トム・リドルの復活を阻んだがそれも同じ事、三年の事件はピーターを捕縛したくらい…

残る可能性はただ一つ、しかしそれが真実だとしたらそれは考えたくも無い、最悪の事態だ。

それは俺の″異能″を狙っているという事、即ちこの世界に俺の存在を知っているヤツが居るという事に他ならないからだ。

 

結局ゴブレットの決定には逆らえないという事で、俺もハリーも参加するという形で決着がついた。

全身からダラダラと汗を流しながら走っていくクラウチを先頭に、部屋から出て行こうとするとクラムに呼び止められる。

 

「大ヴぇんな事になりそうですね…」

「…いつもの事だ」

 

うんざりしている、といった意味で返したのだが、ヤツはそれを兆発と受け取ってしまったらしい。

少し驚いた顔をした後、口角を上げながら笑みを浮かべた。

 

「ですが僕ヴぁ気にしません、それに何人いようと勝つのヴぁヴぉくですから」

「…そうか」

 

自信に満ち溢れた宣言をし、クラムは早足で去って行った。

その後を追うように階段を登る俺は、この事件の企画者に目を向けていた。

あの時感じた違和感、俺達の名前を入れたのはムーディなのか? しかしそうだと確信するには証拠が少なすぎる。

だがヤツが何か隠しているという確信はある、今はまだ警戒するのが精一杯だった。

 

 

 

 

昨日の夜はそんな警戒心を投げ捨てたくなる程に面倒だった、あのセドリック・コール以上の、いわばキリコ・コールの雪崩に飲み込まれたからだ。

どうやって年齢線を越えたのかについて聞かれると思い適当な理由を揃えてはいたのだが、そんな事は普段目立たないハッフルパフ生からしたら些細な事だったらしい。

 

顔が死んで来たセドリックを生贄にその中から脱出できたのは深夜12時を回ってからの事である。

と、弁明する機会も無かったので校内では俺が年齢線を出し抜いたという噂だけが独り歩きする事になり、様々な視線にさらされる事となった。

 

幸いその程度で動揺するような精神は、とうに棺桶(AT)ごと爆破してしまったので気になることは無い。

が、憐れな事にその被害をハリーはモロに食らっていた。

 

所属寮であるグリフィンドールは純粋にハリーを応援しており、スリザリンはいつも通りである。

しかしレイブンクローは冷ややかな視線を浴びせている程度ではあるが、ハリーは大分堪えている様に見える。

中でも最も反発しているのは他ならぬハッフルパフである、どうやら自分達が目立つ最大の機会を横取りされたと考えているんだとか。

 

大減点に継承者騒ぎといい騒動の渦中にあったハリーだが、それでも比較的優しい反応だったハッフルパフにまで無視されるのは余程辛いようだ。

トドメに勝手に立候補したとロンが思い込んだせいで、ヤツら二人はほぼ絶縁状態、それを何とかしようとするハーマイオニーの顔色は悪く、ハリーの孤立はかつて類を見ない程に悪化しているのであった。

 

 

*

 

 

「ロンェ…」

 

その状況を何とかしようと努力してみたものの、あえなく撃沈し溜息を漏らすキニスと共に廊下を歩く。

キニスもキニスでハリーを庇うような言動をしているので、ハリーほどではないが寮内で少し避けられているのが現状である。

 

「まさか…あそこまで思い込みが激しいとは思わんだ…」

 

色々証拠を取り揃えて説得したみたいだが、何を言っても最終的に「どうせ僕はハリーの添え物だよ!」と、頭の悪い誘導尋問みたいな答えしか返ってこず諦めた次第だ。

確かにハリーやハーマイオニーと比べてロンが目立つ機会は少ない、あのくらいの年齢なら目立ちたいと考えるのはごく自然な事。

まあ所詮コンプレックスの発現に過ぎない以上、その内元通りの関係になるだろう。

 

「それにこんなの渡されてどうしろと」

 

ブラブラと手の上で回すバッジには、セドリックの笑顔と一体どうやって作ったのか俺の不自然な笑顔が描かれていた。

その淵には『ハッフルパフの戦士、セドリックとキリコを応援しよう!』と書かれている。

しかしキニスがそれを地面に叩きつけると一転、ハリーの写真にかぶさる様に『汚いぞポッター』と書かれたバッチが現れた。

 

「…正直頭悪いと思う、てか暇だなドラコ、一体いくつ作ったんだろう」

 

汚いぞポッターバッチの製作者であるドラコ・マルフォイ、ハリーも勿論だがその誹謗中傷の出汁にされた俺とセドリックもたまった物では無い。

スリザリン生を中心として、道行く多くの生徒がそれを着けている。

つまり事あるごとに、俺は俺の不自然な笑顔を目の当たりにしなければならないのだ。

それを視界に入れない様健闘していると、前の様からセドリックが苦笑いしながらこちらに近づいて来た、その理由は俺と同じに違いない。

 

「いたいた、…大分参ってるみたいだね」

「………」

「あははは…やっぱり」

 

無言の溜息がその憂鬱さを雄弁に語っていた、それを聞いたセドリックも笑ってはいるが不快感を隠せてはいない。

 

「あんまり良い気分じゃないからね、…まあ皆その内飽きてくるよ、…ハァ」

「お疲れ様です、…で、どうかしたんですか?」

「ああそうだった、キリコを呼びに来たんだよ」

「…?」

「代表選手はクィディッチピッチに集合するらしいよ、何かやるみたいだけど…」

 

一体何をするのだろうか、代表選手だけなのでキニスと別れセドリックと共にピッチへ向かう。

そこには代表選手達とクラウチ等スーツを着た役人に、何故かオリバンダーまで居た。

よく見るとハリーがまだ来ていないが、その内来るだろう。

近くの席に座りハリーを待っていると、隣からやたら声の高い女性が声を掛けてきた。

 

「んーまぁ! もしかして貴方がキリコ・キュービィーざんすか?」

「…そうだ」

 

その過剰に盛られた化粧とこれまた過剰に掛けられた香水の臭いは、俺に不快感を齎すには十分すぎた。

しかしその不快感は次の瞬間確信的なものに変わった。

 

「んーーまぁっ! じゃあ貴方が5人目の代表選手、ちょっとお話してもいいざんすか? ちょっとだけでいいざんす」

「………」

 

この会話とも言えない数秒で俺は理解した、この女はかなり危険だと。

目だ、一風変わった羽ペンと羊皮紙を持っているのを見るに新聞記者の類だろうが、それよりも飢えた獣の様な眼光をぎらつかせながら迫っていたからだ。

何より雰囲気で分かる、こちらを貶めようとする悪意がダダ漏れなのだ。

 

「ね? いいざんしょ? 本当に数分だけざんす」

「……………」

「…無視は酷いざんすよ、そんな男はモテないざんす」

「…………………」

 

流石に一言言いたくなったがその衝動を堪える、この手の人間は一言でも答えたが最後、ありとあらゆる理由をこじつけ取材しようとする。

それこそ怨霊の問いかけの様にだ、ああいったものは何か答えた時点で引きずり込まれると言われている。

人間を怨霊に例えるのはどうかと思うが、ひたすら無視を決め込み続けた結果、「二重の意味で魔法使いになるがいいざんす! モテないとそうなるざんすよ!」と捨て台詞?…の様な呪詛を吐き捨て、何時の間にか来ていたハリーの方へ向かって行った。

 

ハリーがうっかり答えてしまいスキャンダルの沼に引きずり込まれ、ようやく解放された頃、全員集まったのをクラウチが確認した。

その後例の新聞記者…リータ・スキータが全員の集合写真を撮影し、更なるインタビューを試みたが、オリバンダーの手で遮られる形になった。

 

どうやら競技をする前に″杖調べの儀″というものを行うらしい、つまり俺達は集合写真とこれの為に集められたという訳だ。

まあ要するに杖に不正や不備が無いかを確認する、いわば整備ということである。

 

名前を呼ばれ杖を差し出し、その杖をまじまじと見つめていくオリバンダー。

やはり国が違えば杖も違うのか、ホグワーツで見かけるのとは大分違って見える。

例えばフラー・デクラールの杖には持ち手の部分にカールのような装飾が施されており、そこ以外にも繊細な彫刻が美しく刻まれ武器と言うよりは芸術品の様である。

 

ビクトール・クラムの杖には鳥の様な意匠が施され、武骨さの中に荒々しさを感じる事が出来る。

そんな珍しい杖を見る事ができるおかげか、オリバンダーもどこか嬉しそうに微笑みながら整備をしていた。

 

「最後はキリコさんですな…、いや、あの時の事は忘れたくても忘れられませんよ」

 

残るハリーとセドリックの点検も終え、俺が杖を差し出す。

それを見たデクラールとクラムが、思わずぎょっとしているのが視界に入った。

まあ仕方ないだろう、長さ40㎝太さ4㎝の杖はあまりに異様だ、それを見つめるオリバンダーの目つきも少し鋭くなる。

 

「吸血樹にケルベロスの脊髄、40㎝、威力はあれど重く非常に凶暴、手入れは完璧ですな、…相変わらず忠誠心の欠片も無いみたいですが、ではルーモ…あ、皆さん目を閉じてください、危険ですから」

 

危険? いや確か買った時店の床を少し吹き飛ばしてしまった筈、その事を覚えていたのだろう、…むしろ忘れる方が難しいか。

 

「ルーモス -光よ」

 

瞬間予想通り閃光手榴弾に匹敵する光がクィディッチピッチを覆った、その予想以上の閃光をカメラ越しに食らってしまいスキータが医務室行きになった事以外は特に問題無く儀式は終わった。

 

「ではお返しいたします」

「…少しいいでしょうか?」

「はい、何でしょうか?」

「忠誠心が無いとは、どういう事でしょうか?」

 

さっきの会話で少し気になったのがそれだ、普通杖には忠誠心というものがある。

それは決闘の結果や杖の特性で違いや変化こそあれど、忠誠心が全く無いなど聞いたことが無い。

 

「あー…、わたくしも初めて見るのですが、どうやらその杖には元々忠誠心というものが無いようなのです」

「…そうなんですか」

 

少し不安になった、忠誠心が無いという事は杖の力を引き出し切れていないと考えられるからだ。

その不安に気付いたのか、オリバンダーが続けて話し出す。

 

「ええ、ですが逆に言えばその凶暴性を操れる者ならば、忠誠心に左右される事無く力を引き出せるとも言えます。

貴方様はこの杖を完璧に扱っておられる、大丈夫ですよ」

「…ありがとうございます」

 

手元のバケモノの様な杖に視線を落とす、本当に扱いずらい杖だとは思うが、それでもこいつのおかげで助かった事も多々ある。

忠誠心が無いのに信頼できるというのも変だが、俺はその頼れる相棒を懐に収めながら校舎へと歩いていくのだった。

 

「キリコ? どこ行ってたの?」

 

その途中で何故かハリーとセドリックが、俺を待っていた様に声を掛けてきた。

一体何の用だ…と思っていると、ハリーの口から驚くべき言葉が発せられた。

 

「最初の課題はドラゴンだよ」

「…何?」

 

ハリーの目を見つめるが嘘をついてる様には見えない、隣のセドリックは苦笑いしながら頷いている。

聞いてみると昨晩ハリーがホグワーツに五匹のドラゴンが運び込まれるのを見たらしい、それが丁度人数分だったので、課題の為に運ばれたと確信したんだとか。

 

「ドラゴンか、…でもドラゴンを使って何をするんだろう?」

「そこまでは分からなかったんだ、…倒すとか」

「無理じゃないかな…専門家が10人集まってようやく倒せるんだよ?」

 

話し合ってはみたが、結論は出ず「最低限死なないようにしよう」となり各自の寮へ戻って行った。

ドラゴンで何をするのかが分からない以上、戦術は複数個考えておくのが妥当だろう。

まあ幸いああいった生物を相手に戦う魔法は丁度いいのがある、負ける事はまず無いだろう。

ならすべき事は、その戦術に合わせた設計図を作る事だ。

暗記しきれるかどうかは分からないが…そこを悩んでも仕方ないだろう。

俺は何を創り出すか考えつつ、図書館へと足を進めていた。

 

刻一刻と、着実に迫りくる試合の時。

踏みつぶされて死ぬか、炎に焼かれて死ぬか。

ゴブレットに選ばれた五人の戦士たち。

焦熱から始まる、三つの地獄巡りが、今始まろうとしていた。




野望とは恐怖の別名と冷たく嘯く
そうかもしれない
だが野望には破滅がひっそりと潜む事を知るがいい
この男がそうだ
理想の果てがそこにある
なるほど、警告のつもりか?それとも…?
ふん、惑わされはしない。不死は不死を知る
見せろ!見せてみせろ!力の全てを!
次回、『検証』
時に不死の別名は何と言うのだろうか?



キリコちゃんの杖ですが、
忠誠心が無い=無茶苦茶我が強い、とも言えます。
つまりある意味でキリコのそっくりさん、
って訳です。
まあその分忠誠心に左右されないので、
安定してるとも言えますが。

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