【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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事前に書き溜めたら一週間以上経っちまった!
お久しぶりです鹿狼です。
ようやくターニングポイントに入りました、炎のゴブレット編始まります。
お辞儀をするのだポッター!


「炎のゴブレット」篇
第三十二話 「国際試合」


今年の夏休暇になっても、俺は漏れ鍋でアルバイトに勤しんでいた。

何故ならこの前叫びの館に大量の罠を設置したが、その購入費のせいで今現在財政がかなり圧迫されてしまったからである。

とはいえ、ホグワーツの学費とは別枠で管理しているので生活を圧迫する程ではないのだが…今後も色々な武器を充実させたというのが大きな理由だ。

 

だが危険食材と関わる仕事も今日は一旦休みとなり、コーヒーを飲みながら人を待ち合わせている。

コーヒーが少し冷めてきた頃、店の扉が一気に開かれるのが目に入った。

そして店に入って来た少年は店内をキョロキョロと見回し俺を見つけると、テーブルを起用に避けながら俺の所へ勢いよく突っ込んできた。

 

「キーリーコー! 久しぶりー!」

「………」

 

待ち合わせていたキニスはいつも通りの元気さをまき散らしている、しかし服装はいつも来ている少しサイズが合っておらずぶかぶかな制服では無く、パリッと決まった…言うならパーティに参加するときの様な正装を着込んでいる。

かく言う俺も、今日は少し身だしなみに気を使っている、何故なら今日は―――

 

「さあ行こう! 早く行こう! ワールドカップ!」

 

そう、今日はクィディッチ・ワールドカップ、それも決勝戦であるアイルランド対ブルガリアの試合日なのだ。

事は数週間前、俺とキニスの自宅にこのチケットが届いたことにある。

差出人はシリウス・ブラック、何でもあの時の礼として飛び切り上等な席を用意してくれたんだとか。

尚ブラック家の資産と大量の賠償金があるため金の心配は要らないそうだ。

 

…それにしても席が上等過ぎるのには疑問があったが、ブラック曰く『大方ファッジが根回ししたんだろ』との事、つまり口止め料である。

まあ別にヤツの犯したことを告発した所で俺に何か特がある訳でも無いので、この際気にしない事にしよう。

 

「おーい、早く行こうよー」

「………ああ」

 

残りを飲み干しカウンターへ戻す、そして赤々と燃える暖炉に煙突飛行粉を掛けると炎は瞬く間に緑に変わり、その中へ発音を正確にしながら飛び込んだ。

 

「「隠れ穴」」

 

目まぐるしく変わる景色に上へ急速に引っ張られる感覚、それが終わると俺達は全く別の場所に居た。

 

「あら! 貴方達がロンのお友達の?」

「こんにちは! キニス・リヴォービアです!」

「…キリコ・キュービィーです」

 

明るい声で出迎えてくれたのは燃えるような赤毛が特徴的な、少しふくよかな女性だ、恐らく彼女がロンの母親モリー・ウィーズリーだろう。

だが他の人間が見当たらないようだが先に行ってしまったのか?

 

「あのー、ロンたちはどこに?」

「ロン達は外の庭で準備して待ってるわよ、さあ急いで! 遅れたら一大事よ」

 

窓から外の庭を見てみるとロンやハリーがこちらに向かって手を振っているのが分かった。

家から出ようとした瞬間、危険を察知した俺が玄関から一気に飛び出す。

すると出遅れたキニスの頭に大量の蜘蛛が落下し、キニスが変な声を出していた。

 

「のわぁぁぁぁ!?」

「クソッ何故ばれたんだ!?」

「俺達の新作がこうも容易く!?」

「お前達何をしているんだ!?」

「あっよく見たら可愛い」

 

若干ハグリッド化しつつあるキニスは置いておき、目の前でアーサーに頭を掴まれながら怒鳴られているそっくりなヤツらを眺める。

 

「あー、ごめんね、うちの兄貴たちが…」

「別にいいって、てかもう新作作ったのお兄さん達」

「本当に…なんで貴方達はその時間を勉強に当てられないの!?」

「でもママ」

「時間大丈夫?」

「ああ! もう貴方達のせいで…急ぎなさい!」

 

ウィーズリーの双子、ジョージ&フレッドはホグワーツでは有名人だ、…良くも悪くも。

しかしそれを帳消しにするくらい頭も良く機転も回る、今だって時間を出汁にして説教から逃げおおせているのが良い証拠だ。

そんな騒動も程々に、近くの丘の頂上まで登って行くとそこにはヤカンと人影が二つ立っていた。

 

「やあアーサー、随分遅かったじゃないか」

「まあね、ちょっと息子の友人達を待っていたんだ」

 

その内一人には見覚えがある、同じ寮で二年上、また同じクィディッチチームのセドリック・ディゴリーだ。

ということはヤツはディゴリーの父親だろう、ふとディゴリー…セドリックと目が合うと近づいて来た。

 

「久しぶり、キリコにキニス」

「…お久しぶりです」

「…おお! セドリック先輩も見に行くんですか!?」

「うん、まあね、父さんが魔法省の関係者だったからたまたまチケットが取れたんだよ」

「おや、ということは君達がかい? 私はエイモス・ディゴリー、君達の事は息子からよく聞いているよ」

 

俺について…一体どんな事を聞いているのだろうか。

俺のあだ名はこの世界でもロクなのが無い、″生体ブラッジャー″、″ハッフルパフの特攻野郎″揚句この前の″叫びの館爆破事件″を受け、″歩くコンフリンゴ″なんてものまで増えている、…自業自得といえばそれまでだが。

まあ、反応から見てそこまで酷い物では無い…筈。

 

「フレッドとジョージも元気で何よりだよ、今日はよろしく」

「ナニヨリー」

「キョウハヨロシクー」

「お前達」

 

辛辣…というか邪険に扱うウィーズリーズを睨むアーサー、この二人はディゴリーを目の敵にしている。

いや、ほとんどの男子から疎まれている、ただしそれは悪質な物では無い。

というのもこの男、全てにおいて完璧過ぎるのだ。

容姿端麗、成績優秀、クィディッチもプロ級、しかも性格も良し。

非の打ちどころがなさ過ぎて、ああいった対応でしか嫌がらせをできないのだ、はたも効果があるかと聞かれたらそれは別の話になるが。

 

「ちょっと先輩達、年上なんだからもうちょっと―――」

「ギャアアアア! 顎が! 古傷がぁぁぁぁ!」

「ジョージ! 死ぬな! お前言ってたじゃないか、いつか自分の店を持つって!」

「ガクッ」

「ジョーーーージィィィィ!」

「さあ皆行こうか、移動鍵(ポートキー)のヤカンを掴むんだ」

 

双子の寸劇を完全無視する当たり、この程度は日常茶飯事なのだろう。

ヤカンを掴み取り、遅れた双子も慌てて手を置くがハリーだけは不思議そうな顔をしている、もしや移動鍵(ポートキー)の事を知らないのだろうか。

 

「叔父さん、移動鍵(ポートキー)って?」

「ああ、魔法使いが使う移動手段の一つだよ、何せワールドカップと言っても大っぴらにやる訳にはいかない、マグルに見られたら大騒ぎだからね。

しかも会場も大きいから、人数分の煙突なんて用意できないし姿あらわしも皆が使える訳じゃ無い…そこでこいつの出番って訳だ」

 

移動鍵(ポートキー)は魔力を込める物では無く元から魔力がこもっているいる魔法具だ、だからこそ誰しもが平等に使え、かつ主催者側は準備が楽になる、ということである。

ハリーが納得した表情をした所で、ようやく移動となりアーサーがカウントダウンを始める。

 

「3,2、1、………!」

「わああああああ!?」

 

途端姿晦ましとはまた違った感覚で上に引っ張られていく、まるで無重力下で姿勢制御を失敗したATのような勢いで目まぐるしく景色が変わっていく。

そんな性質の悪いアトラクションみたいな感覚が数十秒程続いた後、今度は急激な落下の感覚と共に景色が横に回転しだした。

 

「手を離すんだ!」

 

その瞬間手を離すと、先程以上の速度で地面に落下していくのが分かった。

一瞬で近づいて来た地面に向かって、思いっきり足を叩きつけそのまま上体を地面に叩きつける。

手足を使い三点着陸を成功させ、圧迫感から解放された勢いで空気を思いっきり吸い込む。

衝撃が無くなり立ち上がると、周りの面子は大体地面に転がりこんでいる、後ろの方から話アーサーとセドリックが空中歩行の様にこちらへ降りてきていた。

 

「あああああぁぁぁぁぁ………」

「キニスーーー!?」

 

いや、一人だけ地平線まで飛んで行っていた、まあ誰かが連れ戻すだろう。

 

 

 

 

飛んでいったキニスを回収したアーサーが帰って来てから、ウィーズリー家用のテントの中で荷物整理をする、一見4人入るかどうかといった感じだが、空間拡大魔法によって20人は入れそうな内装になっている。

試合開始は3時から、現在はお昼時なので出店を見て回ることにした。

 

出店はアイルランドやブルガリアの食べ物飲み物に、クィディッチ用品に各国の国旗やグッズ、選手のユニフォームに動くプロマイド、など、まあ売れる物は全て売れといった様相を成していた。

 

「キリコ、一体どうやればそんなに物を持てるのさ」

「………」

 

喋れない訳では無い、口に色々突っ込んでいるせいで話せないだけだ。

あと両手が約12個くらいの品物で埋まってるだけだ、この程度漏れ鍋の皿運びと比べれば何てことは無い、やはり人生は経験だ。

 

色々堪能しつくした頃時間を確認すると既に2時になっている、そろそろ入場したほうが人混みにまみれずに済むだろう。

 

「ん? そろそろ時間?」

「…そうだ」

 

食べ終わった物をゴミ箱に捨て、ウィーズリー家のテントでハリー達と再度合流する。

 

「ジョージとフレッドは何処へ消えた!?」

「………」

 

結局アーサーが会場中を探し回り、見つけだした双子の耳を引っ張ってきた頃、まだ来ていなかったビル・ウィーズリーとチャーリー・ウィーズリーが″姿あらわし″で合流。

大量の人に揉まれた結果試合開始10分前になってようやく入場できた。

 

「おやウィーズリー、どうしてこんな所に? 席を間違えてしまったのかね?」

「おやおやマルフォイ、君こそよくこの席がとれたね、理事を辞めさせられて金は大丈夫かい?」

 

出会い頭にまたもや醜い争いを繰り広げるルシウスとアーサー、後ろの方ではロンとマルフォイが似たような事をしている。

一体何がどうなればここまで仲が悪くなるのだろうか、さっぱり理解できない。

 

「生憎貧乏役人の君と違って余裕はあるんだ、君こそ大丈夫か? 家を売り払ったんだろう? …いやあのボロ家じゃ無理か」

「マルフォイ貴様!」

「おっと試合が始まるようだ、では失礼」

 

今にも噛みつかんとする勢いのアーサーを残しマルフォイ親子は去っていった、…と言っても少し離れた席だが。

俺達の席は会場全てを見通せる一番上の席だ、会場は小高い丘を垂直にくりぬいた、言わば″お釜″の様な構造になっている。

 

「皆さんお待たせしました!」

 

観客席の中央から拡張された声が響き渡る、その元にはコーネリウス・ファッジが開催宣言をしていた。

 

「今宵ここで世界王者が決まります! 私は魔法大臣ですが今は―――」

 

うんちくやら何やらが長くなりそうなので、手元のパンフレットに目を通してみる。

 

『責任者及び関係者一覧

魔法大臣 ミスターK.F

 上級補佐官 ミスA.T

 下級補佐官 ミスターB.D

  魔法大臣秘書 ミスターK.L

国際魔法協力部部長 ミスターB.K.S

 部長補佐 ミスターP.W

魔法ゲーム・スポーツ部部長 ミスターR.P

………

プログラム

1.魔法大臣挨拶 2.マスコット入場』

 

会場を見てみると、ちょうどそれらしき影が入場口に見えている。

 

「まずはブルガリアチームのマスコットからです」

「ヴィーラだ!」

 

その叫びと共に会場中の男が立ち上がり、次々と叫び始めた。

ちなみにヴィーラは何もしなくても男を誘惑できる。、つまり―――

 

「僕は最年少シーカーだ!」

「僕は昔少年合唱団に入ってたんだ!」

「僕は…えーと…すごい! とにかくすごい!」

 

ご覧の通りである、酷い場合だと服を脱いで自己主張を始めるヤツまでいた。

それを余りにも冷たい目で見る女性陣、ちょうどモリーがアーサーの髪の毛をむしりとっている。

男性陣が一通り醜態を晒したのを見たファッジが次のマスコットを招待する。

 

アイルランドは金と緑の光を繰り出し、それは空を光速で駆け巡った後離れてそれぞれのゴールを潜る。

そこから再び合流し、合体した光はアイルランド・チームのマークと大量の金貨を降り注がせた。

 

瞬間ボックス席から人々が飛び出し、我先にと金貨に群がっていった。

尚レプラコーンの能力は偽の金貨をばらまく事である、つまりそういうことだ。

 

「では皆さん、いよいよ選手入場です!」

 

ヴィーラと偽金貨の興奮も冷めぬまま、ついに選手がその姿をあらわした。

次々現れる選手の中で特に喝采を浴びていたのはビクトール・クラムだ。

彼は現在のヨーロッパ・クィディッチの中で最も注目されているヤツだ、その噂に違わず入場の速度すら目で追うのが厳しい。

 

「では試合開始ぃ!!」

 

 

 

 

テントの中に戻っても、今だクィディッチ熱は冷めていないようだ。

 

「クラム! クラム! クラム!」

「ウェェェアァァァ!」

 

双子はご覧の通り、何でも誰かと賭けをして大勝利したらしい。

ロンはクラムの動きを真似てテントを走り回り、ハリーは彼の動きに衝撃を受けたのか窓辺でボーっとしている。

 

試合結果はと言うと、160対180でアイルランドの勝利である。

しかし正確には少し違い、クラムがスニッチを取ることで試合を終わらせた、と言った方が近い。

これ以上点差が開くくらいなら自分の手で終わらせる、そういうことだ。

つまりアイルランドは試合に勝って勝負に負けたのである。

 

その熱気のせいか外まで騒がしい、それを何となく微笑ましい気分で聞いていた、が…

 

(………?)

 

よく聴くと何かがおかしい、聴こえてくるは悲鳴は悲鳴でも、嬉しさによるものでは無く混乱と恐怖によるものに聴こえる。

嫌な予感を確かめるためテントの外に出ようとした瞬間、息を切らしたアーサーが飛び込んできた。

 

「皆! 全員いるな!?」

「あなた? 一体どうしたの?」

 

モリーが聞くと、アーサーは彼女を抱き締め額に口づけをした。

そして口を離した後彼女の目の色は変わり、素早く指示を出し始めた。

 

「どうしたのパパ?」

「非常事態だ! この騒ぎはサポーターのものじゃない!

全員杖だけ持って避難するんだ!」

 

あまりにもただならぬ緊迫感にテントの中の空気が一気に入れ換わる。

そして各人でチームを組んで避難を開始した。

 

「キリコ…何が起きたんだろう…」

「…テロの可能性が高い」

 

人混みの中から遠くを見ると、広場だった所から悲鳴を燃料に炎が燃えている。

そこからなるべく離れる用に動いていると、ハーマイオニーが悲鳴を叫んだ。

 

「ハリーがいないわ!」

「え? あ、本当だ!」

 

確かに行動を同じくしていたハリーの姿が無い、周囲を見るとハリーが人混みに流されもがいているのが見えた。

厄介な事にその方向はちょうどあの広場に向かっている。

 

「…連れ戻してくる」

「え!? ちょっとキリコ!?」

 

姿勢を屈め人と人の間を潜り抜けながら素早く移動し、ハリーの腕を捉える。

 

「!? あっキリコ!」

「…手遅れか」

 

目の前には黒いローブを羽織、銀色の仮面をつけた集団が我が物顔で周囲を破壊していた、ついでに人質まで取っている。

そしてその杖が既にこちらへ向いている以上、逃げるのは難しいだろう。

…ならばやることは一つ。

 

「…先に行け」

「え!? キリコは―――」

「こいつらを何とかする」

 

心配そうな顔でこちらを除き込むハリーを後ろへ突き飛ばし、死喰い人の集団に向かって歩き出す。

無論勝ち目はほとんど無い、実力差にはかなりの開きがあるだろう。

しかし勝敗を決するのは何も実力だけではない、隙をつけば格上の相手も倒すことができる。

そして、隙は作る事ができる。

 

「おいこのガキ今なんつった? 何とかする? ヒャハハハ! おつむはボケた爺って―――」

ルーモス・ブレイト(閃光弾頭)

 

少年が勇敢に向かってくる、漫画の様な光景。

それを嘲笑う死喰い人に向かって炸裂閃光弾を放つ、それは気づく間も無く鼻先で炸裂し目を潰した!

 

「!? ぎゃああああ! こっこの糞ガキ! どこへ行ったああ!」

 

想像を絶する速度と閃光に不意を突かれた死喰い人は呪文を手当たり次第に撃ちまくる。

しかしそんな雑な攻撃、身を水平に傾ければほとんど当たらない。

その姿勢のまま走り込み、杖の柄を腹に抉りこませる。

そして″てこ″の原理を使い、あばら骨をへし折る!

 

「ギャアアア!?」

エクスパルゾ(爆破せよ)プロテゴ(盾よ)

 

血ヘドを吐き出している内に人質を奪い取り、爆破呪文を盾の呪文で受け止める事で人質ごと至近距離から離脱、人質を遠くへ逃がす事に成功する。

 

「人質が!? 糞がぁ! 殺してやる!」

『アバダ・ケダブラ!』

 

前方を多い尽くす死の閃光、この場合の最適解は横に回避することである。

だがキリコはそれを蹴った! それよりも隙を作る事を優先した!

 

エクスパルゾ(爆破せよ)

 

爆破魔法によって砕かれた地盤、信じられるだろうか、飛び散った破片がちょうど死の呪文を防いだのだ!

 

「なっ!?」

 

その奇跡の様な光景を死喰い人は信じられなかった、そしてその一瞬の衝撃こそが命取りだった!

 

ステューブレイト(失神弾頭)!」

 

拳銃の様な破裂音と共に失神弾を撃ち込まれた死喰い人は、数10メートル程飛んでいきピクリとも動かなくなった。

 

「ぐ………」

 

それでも何人かは無言呪文で盾を張り防いでいたが、無慈悲にもバチンとした姿あらわし特有の音が時間切れをヤツらに宣言した。

 

ステュービファイ(失神せよ)!!』

「! 糞がぁ!」

 

だが伊達に死喰い人を名乗ってはいないようだ、闇祓いの一斉攻撃を姿くらましでいなし、そのまま暗闇の中へ消えていってしまった。

 

「逃がしたか…くそっ!」

「君! 大丈夫か…!?」

 

俺を心配してきた闇祓いの目線は地べたに転がる死喰い人に向けれている、しばらく唖然とした後フードを脱ぎその顔を表した。

 

「…まさか、これをやったのは君かい?」

「…はい」

 

浅黒い肌をした男性は、呆れてるのかどうなのかよく分からないといった顔をしていたが、すぐに冷静さを取り戻し俺に詰め寄ってきた。

 

「一体何を考えているんだ! 今回は偶々上手くいったかもしてないがそれは運が良かっただけだ!

死喰い人は人殺しの達人だぞ!? もし君が死んだらどれだけの人が悲しむかわかってい―――」

「キングズリー!」

「何だトンクス! 今はそれどころでは―――」

「それどころじゃないのはアレの方よ!」

 

トンクスと名乗る女性が指差す方向を見ると、そこには不気味な骸骨と、その口から蛇が顔を出す悪趣味な紋様が空に写し出されていた。

それはかつて死喰い人が自らの象徴として使っていた、知るものが見ればいまだ恐怖を蘇らせる忌まわしき印。

 

「闇の印…!」

「君! 早く避難するんだ! それと二度と危険な事をするんじゃないぞ!」

 

そう言い残すと彼等は再び姿くらましで消え去っていった、あの印の元へ向かったのだろう。

 

唐突に始まった混乱、それは一先ずの終わりを告げた。

だが俺はこれで終わりと考える事ができなかった。

戦争というのはそうだからだ、いつの間にか始まり何も知らぬまま終結する。

焼かれるテントと平和、空に浮かぶ空虚な屍。

揺らぐ炎の中に写る幻影が、俺に更なる戦いの予感をもたらしていた。




生き残った事が幸運とは言えない
それは次の地獄へのいざないでもある
ここは魔法学校の最前線
暗く燃え上がる蒼炎が臆病者はいらないと呻きを上げる
呻きは活気を呼び名誉を求める
競い合い、しのぎ合い、その覚悟を己の血で証明せと古の杯が叫ぶ
次回、『ゴブレット』
赤く揺らめく炎が狂気を促す



開幕早々戦闘シーン、もうモブ兵士じゃ相手にならないぜ!
ヴィーラに魅了されたロンの台詞、分かる人いますかね?

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