【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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バジリスクをどうやって抹殺するか…
何か、最終的に自爆する気がする。
見えるぞ…その結果秘密の部屋が消滅する未来が!(未定)


第十七話 「再来」

「絶命日パーティ?」

 

「そう、ゴーストがハロウィンの時にやる死んだ日を祝うパーティーだよ」

 

「そうか、それがどうした」

 

「ハリー達に一緒に行こうって誘われてるんだ、キリコも一緒に行こうよ」

 

「断る」

 

死んだ日を祝うパーティーか、いつかは是非とも行ってみたいものだが今の所興味は無い。

何より今日は待ちに待ったハロウィンパーティーだ、何故ゴーストのご馳走を食いに行かねばならないんだ、ゴーストのご馳走など絶対に不味い。

 

「えー…ちょっと顔を出すくらい」

 

「断る」

 

「…キリコって食い意地凄いよね…」

 

キニスは呆れた視線を向けてくるが知った事ではない、去年はトロールの乱入が原因でほとんど食べる事が出来なかったのだ、今年は何としてもたらふく食べなければならない。

そうでなければ死んでも死にきれない。

文句を垂れながら大広間から離れて行くキニスを完全無視しテーブルを見つめる、そこには去年と同じく山ほど料理が並べられていた。

 

どれを食べるか悩んだが、一先ずパンプキンスープをゆっくりと飲み干す。

秋風で冷え切った体を温め、ハーブで食欲を加速させる。

準備は整った、さあどれから食べるか…

 

よしこれだ、山積みになっているフライを皿によそった。

これはフィッシュアンドチップスだ、ただしハロウィン仕様なのでパンプキンチップスになっている。

チップスを口に入れると、心地いい軽快な音と感触が楽しませてくれる、普通のチップスより太目に切られたそれは十分な噛み応えを作り出し、噛めば噛むほど甘味が吹き出してくる。

いや、それだけでは無い、これまた厚めに作られた衣、それは辛すぎず薄すぎず丁度いい塩加減で甘味を引き出しつつも旨みを主張しており、スナックらしく飽きずにいつまでも食べていられる。

チップスが無くなった所で魚の方に手をつける、当然モルトビネガーをどばどば掛けてからいただく。

厚い衣を食い破りアツアツの身を食べる、淡白な白身魚は濃い味の衣によく合う、モルトビネガーの酸味はどうしても出てしまう油濃さを打消し爽やかな風味を作り出す。

それにかなり分厚く揚げられている為、モルトビネガーを掛けても衣がふやける事も無く、サクサク感もしっかり楽しめる。

 

次に俺が狙いをつけたのはシェパーズパイ、要するにミートパイだ。

一口サイズに切り分け、少し大きめに切ったそれを大口を開けて食べる、途端に濃厚な肉の味とそれを引き立てるほんのり甘いかぼちゃの味が襲い掛かって来た。

なるほど、通常シェパーズパイは挽き肉とマッシュポテトを使っているのだが、これはポテトの代わりにかぼちゃを使っているのか、何もそこまでかぼちゃ尽くしにしなくても…と思ったが美味いので良しとしよう。

それにこの肉…普段よく食べる牛肉や豚肉では無い、羊肉だ、少しでも手順を間違えれば臭味で台無しになるそれは、一体どのような調理をしたのか濃厚な旨みへと変貌している。

素体のかぼちゃは甘味と特有のへばりつく食感が抑えられ、そのボリュームに反してどんどん食べる事を可能にしている、凄まじい、羊肉がこんなに美味いとは思わなかった。

 

さて、三品食べた事だ、この辺で一服つくのも良いだろう。

そう考えデザートに手を伸ばす、卓上の料理比率はデザートの方が多い、どれを取るか…

俺が手に取ったのはかぼちゃプリンだ、プリンはお子様の食べ物? 知らん、12歳はまだ子供だろう。

スプーンですくい、プルプルとした見た目を少し楽しみ、口に流し込むようにそれを頂く。

だが、それは俺の想像を上回っていた、ツルツルとした食感を想定していたのだがこれは違った、まるで濃厚なケーキを食べているような食感だったのだ。

しかし本来の食感も失われていない、触感は確かにプリンだがそれが溶けるように口に広がっていくのだ。

プルプルした食感と口に広がる濃厚な甘さにしばし時間を忘れる…気が付くと、空になった容器が三つもあった、信じられない。

 

さあ次はどうする? あれも美味そうだ、これも…

 

 

 

 

杖を文字通り杖にように使いながら、よろよろと廊下を歩く。

食べ過ぎた事で今にも倒れそうになっている、が後悔はしていない。

去年食べ損ねたのだ、これぐらい食べて丁度いいだろう、ふらふら歩いていると何やら人ごみが見えて来た、一体何があったのだろうか。

 

「継承者の敵よ気をつけよ! 穢れた血め、次はお前達だぞ!」

 

マルフォイの声が人混みの中から響いている、本当に何があった? どうもただの騒動では無いようだが…

人混みの中からハリー達三人とキニス、その横にはフィルチとロックハート、そして何故か異様な姿勢で固まっている猫のミセス・ノリスを抱えるダンブルドアが現れた。

人混みの中をかき分けると、壁には不気味な文字が書かれていた。

 

″秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気を付けろ″

 

どうやら俺の予感は当たってしまったようだ、今年も何かが起きるという予感。

これだけで終わる筈が無い、そう、これはまだ緑の地獄(スリザリン)からのプレリュードに過ぎなかったのだ。

 

 

 

 

夜、ようやく聞き取りが終わったのか部屋に帰って来たキニスから話を聞いた。

あいつらが参加していた絶命日パーティーから抜け出し、大広間に戻ろうとした所ハリーが奇妙な音を聞いたと言い、走り出しその後を付いて行った所、ミセス・ノリスが動かなくなっていたらしい。

 

「秘密の部屋…か」

 

「キリコ、知ってるの?」

 

「…″ホグワーツ歴史書″に乗っていたはずだが」

 

「読んでないや」

 

…秘密の部屋、それはホグワーツを創り上げた四人の内一人、サラザール・スリザリンが創ったと言われている。

ヤツは純血主義者でホグワーツからマグル生まれは追放すべきと主張したが、それは他の三人に受け入れられず、彼はホグワーツを去って行った。

しかし、その時ヤツは秘密の部屋、そしてそこに″怪物″を隠した、そして部屋を開くことの出来る継承者が現れた時、継承者は怪物を用いてマグル生まれ…穢れた血を追放する。

 

…ただしそのような事が起こったのは一度しか無く、怪物と言えるような生物でもなかったらしい。

よってこの話は噂でしかないのだ。

 

「…あれ誰かのイタズラだよね?」

 

「…いや、″完全石化呪文″は高度な闇の魔術だ、悪戯で使うような物では無い」

 

しかしその噂が真実味を帯びているのはこれのせいだ、完全石化させるのは簡単な事では無い、ダンブルドアやそれこそヴォルデモートなら可能だろうが、その辺の魔法使いでは絶対に出来ない、生徒ならなおさらだ。

だが現実としてそれは起きている、つまり怪物は確実に存在しているという事になる。

 

「なんか嫌な予感がする」

 

「…継承者の敵とは純血以外の事だ、この一件では終わらない、恐らくまだ犠牲者が出るだろう。

キニスも俺も警戒する必要がある」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「何だ?」

 

「…いや、またハリー達が巻き込まれそうな気がする…」

 

「ああ…」

 

第一発見者はハリー、妙な音を聞いたのもハリー、よくよく思い出してみれば入学以来、何か事件が起こればそこにはハリーが必ず居た。

…偶然と思いたいが、しかしキニスの考えに俺は納得を覚えていた。

…そしてその予想は、現実である事を俺はまだ知らない。

 

 

 

 

「マルフォイだ、継承者はマルフォイに違いない」

 

数日たったが、校内は秘密の部屋の噂でもちきりとなっている、だがそれは緊迫した空気を孕まない会話を盛り上がらせる燃料としてだが。

その原因は二つ、一つは″完全石化呪文″がどれ程脅威か知らない生徒が多い事。

二つ目は石化を治す事が出来る薬の材料、マンドレイクが順調に育っているからだ。

しかし教師達の目つきは鋭くなり、継承者を警戒しているのは明らかだろう。

 

「ええ…マルフォイが?」

 

中でも盛り上がっているのは″継承者が誰か″の考察だ、秘密の部屋がどういった物か数日で広まり、今や詳細を知らないヤツの方が少なくなっている。

継承者、その候補者は多くがスリザリン生である、まあ″スリザリンの後継者″なのだからこれは当たり前だろう。

 

「だって昔からの純血だぞ、あいつ」

 

目の前のこいつらも例外では無く、マルフォイを継承者と考察していた。

数日前に秘密の部屋の内容を教えてからと言うもの、三人で図書館に押しかけてはこうして会議を開いている。

 

「てか何でマルフォイ? 純血の人なら幾らでも居ると思うけど…」

 

「継承者って言ったら普通血縁者でしょ? で、スリザリンに代々いるのはマルフォイ家じゃない」

 

「確かにそうだけど…スリザリンの血縁者かなあ?」

 

「だから一番古い純血のマルフォイなら、血を引いてるかもしれないじゃないか」

 

難色を示すキニスにポッターはそう返す、確かに理屈は通っているが、完全な理屈とは程遠いのも確かだ。

何故なら古い純血など幾らでも居る、この理屈で候補をヤツに絞るのは不可能だ。

 

「でもなぁ…キリコ、パーティーの時マルフォイ見た?」

 

「ああ、ヤツは参加していた」

 

「じゃあ、やっぱり違うんじゃない?」

 

「でも、あそこに居なくても石にする事は出来ると思うけど」

 

「無理よ、そんな魔法二年生は習わないわ」

 

頭では分かっているが、納得は出来ていないらしい。

そもそも、こいつらは元々スリザリンに不信感を持っている、納得出来ない理由はそこなのだろう。

だからこそ継承者候補の中でもマルフォイを疑っているのだ。

 

「…そうだ!」

 

「ちょっハリー! シーッ!」

 

ハリーが急に叫び手を合わせた、こちらを睨み付けるピンズに気付いたハーマイオニーが慌ててハリーを注意している。

忙いで声を抑えた後ハリーは話始めた。

 

「マルフォイに直接聞けばいいんだ」

 

「…何言ってるんだ? どうやって聴くのさ、第一聞いたって話してくれる訳無いだろ」

 

「そう、だからスリザリン寮に侵入してこっそり聴けばいい」

 

「そうか! ハリー、君は天才だよ!」

 

「…でも、どうやって侵入するの?」

 

キニスの疑問も当然だ、スリザリン寮に入るためには特定のパスワードが必要となる。

それ以前の問題として、ほぼ確実に見つかってしまうだろう。

その問題の答えはハーマイオニーが出した。

 

「! もっと良い方法があったわ、″ポリジュース薬″よ」

 

「ポリジュース薬?」

 

「そう、これを飲むと他人に変身出来るのよ。

これを使ってスリザリン生の誰かに変身すれば…」

 

「マルフォイから直接聞き出せるって訳だ!」

 

「…だが、許可の無い薬品調合は違反だ」

 

「大丈夫、絶対に見つからない場所を知ってるの、そこで作れば問題ないわ」

 

見つからなければ違反では無いということか、校則を重視していた去年の彼女が懐かしく思える。

だが確かにポリジュース薬は良い方法だろう、上手く使えば直接情報を聞き出せるし、パスワードを知ることも出来る。

…上手く演技出来れば、だが。

 

「…二人は協力してくれるの?」

 

「遠慮させてもらう」

 

正直、マルフォイの様な男が人殺しを出来るとは考えづらい、加えるとホグワーツに人殺しを出来る人間が居るとは考えづらい。

生徒全員と面識がある訳では無い以上確信は無いが、そういった雰囲気を持つ人間は見たことがない。

 

「僕もいいかな…やっぱりマルフォイとは思えないから」

 

「そっか…でもハーマイオニーはポリジュース薬の作り方を知ってるの?」

 

「…知らないわ」

 

「え!? じゃあどうするの!?」

 

「シーッ! …作り方は、閲覧禁止の棚にあるわ」

 

「…ま、まさか去年みたいに侵入するの?」

 

「許可を貰えばいいのよ」

 

「誰に貰うのさ、あそこの本は闇の魔術に対する防衛術の先生しか許可を出せ―――」

 

「…あっ」

 

「あー、アレなら簡単に騙せ―――」

 

「ね、ロックハート様なら私達の気持ちを汲んでくれるわ」

 

「………」

 

…確かに、アイツなら許可を出すだろう。

適当な理由と適当におだてればどんな危険な本でもあっさりと提供するに違いない。

 

「…ロン」

 

「…うん、僕らでおだてかたを考えておこう」

 

「一体何話してるの?」

 

「い、いや? 何でもないよ」

 

ハーマイオニーと彼女以外でだいぶ差があるようだが、許可さえ貰えれば何でもいいのだろう。

 

会議はそこで終了し、時間も夕刻になっていたので解散となる。

ただハリーは今からクィディッチのグラウンド練習をするので途中で別れる事になった。

 

 

 

 

そして寮の別れ道に差し掛かった所で、俺は伝えなければならない事を思い出した。

そう、あの日記の行方だ。

 

「ロン、あの本があったぞ」

 

「へ? …あ、あの日記? 聞いたよ、ジニーのだったんだね」

 

「知っていたのか」

 

「うん、ママのお古を譲ってもらったらしいんだ」

 

やはり俺の予想通りだったか、とにかくこれでひと安心だ。

 

「でもママがあんな高そうなの持ってた何てな、僕家であんなの見たこと無かったよ」

 

「大切に保管してたんじゃない? 見るからに高そうだもの」

 

そして俺達はそれぞれの寮へ戻って行った。

もうそろそろクィディッチの初戦が始まる、だが初戦はグリフィンドール対スリザリンなので俺の出番は無い。

元々やる気は無かったが、やらなければならないなら、真面目に全力で戦おう。

俺は一人、試合に対する決意をみなぎらせていた。

 

 

 

 

秘密の部屋、継承者、スリザリンの怪物。

それは未だ現れない。

だが、それとは関係なくヤツは迫ってきている。

この、何処までも深い城に潜む謎の殺し屋。

プレリュードからインテルメッツォへ。

空白の40年が、俺を新たな地獄へ誘っていたのだ。

 




変わる、変わる、変わる。
この血の舞台をかえる巨獣が、奈落の底でまた目覚めはじめた。
喉が軋み、人々は呻く。
舞台が回れば立つ人も変わる。
昨日も、今日も、明日も、秘密に惑わされて見えない。
だからこそ、確かな敵を求めて、脅えぬ力を信じて求めて。
次回「決闘」。
本当の敵などあるのか。


石化イベント発生しました、
次回は決闘クラブです、
…誰と闘わせりゃいんだ、あんなの。

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