FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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消えたドラゴン

マカロフに言われ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド地下まで向かおうとしていたルーシィ達。

フェイスの発動までに、時間はもう残されていない。そう思い大急ぎで向かっていたのだが……

 

「うわっ!」

 

「ルーシィ!?」

 

「なんか、力が抜けて……」

 

突然倒れるルーシィ。その表情はとても苦しそうなものだった。そして、直後に仲間達が自分達の不調に気づき始める。

 

「オイオイ嘘だろ!?力が出ねぇ!」

 

「念話が通じねぇよ!?」

 

「まさかフェイスが……!?」

 

「そんな……」

 

『間に合わなかった』と思い込んで肩を落とし始める。そして、魔法が使えなくなってきたということは……

 

「きゃっ!?ちょ、やだ…!アニマルソウルが解けたら私…!」

 

リサーナは、捕まえられていた。その時に服を奪われていたのか、常時アニマルソウルで乗り切っていたようだが、魔法が使えなくなりアニマルソウルも解けてしまう。

 

「…」

 

「あ、ありがとう…」

 

「エーテルナノが薄くなってる。」

 

ドランバルトは、自分の上着をリサーナに着せる。しかし、それらの事が気にしていられないほどなのか、ウェンディを遠くを見ていた。そして、マルクも今気づいたかのように、ウェンディとは別の方向を向き始める。

 

「この感じ…」

 

「この気配は…なんで……」

 

2人の顔は驚きよりも、困惑の方が勝っている表情だった。それに気づいたのか、仲間達も不思議そうな顔で見ていた。

 

「「天竜(グランディーネ)…?/魔龍《イービラー》…」」

 

2人は、自分の親の気配を感じとっていた。それだけで、いつもの状況なら喜んでいただろう。だが、今のこの状況で喜んでいなかった。フェイスが発動した後に、気配を感じ取れた。まるでフェイスの事を初めから知っていたかのようなタイミングである。

 

「なんで、なんでだよ……!」

 

「ど、どうしたのよ二人とも…」

 

「イービラー…!」

 

マルクの心臓が高鳴る。しかし、その高鳴りは先程倒れた時とは全く関係がない高鳴りである。

 

「ん?お、おいおいおい!なんか来るぞ!!」

 

ウォーレンが、とある一方向に指を指して焦り始める。そこには確かに『飛んでくる何か』が存在しており、一同の方向に向かってきていたのだ。

 

「ごめんみんな!先に言っといてくれ!!……おいイービラー!」

 

「マルク!?」

 

そして、マルクは見ていた方向に…ウォーレンが指を指していた方向に向かって走り出す。

このままだとみんなが巻き込まれる、という気持ちとなぜ今まで出てこなかったのか、自分はなんなのか…という疑問が頭の中でぐちゃぐちゃになって起こった行動である。

 

「ぬぅ!?」

 

「ほらお出ましだ。お前と争うには、こいつとは近すぎたんだ。」

 

そこには、マルクを育てたドラゴンであるイービラーと、悪魔のグラトニーが存在していた。

 

「早く行け!ギルドに向かうんだろう!!」

 

「うるせぇ!お前らの戦いの動きが早すぎて巻き込まれかけてんだよ!!」

 

「ははは!その通りだ!ヴァレルト…いや、イービラーよ。自分達が戦うためには大陸一つ分は必要だ。派手に移動するからな。」

 

「ぐっ…!」

 

「ヴァレルト…やっぱりお前はヴァレルトだったんだな!!」

 

口ごもるイービラー。図星だったようで、その表情は気まずそうなそれだった。

 

「事情は後で話す!今はとりあえずどこかに……!」

 

「え、お前いくらなんでも遠慮がぐがっ!?」

 

マルクは、イービラーの体を足場にしてグラトニーを蹴り飛ばす。この時点で履いていた靴が一つダメになってしまったが、大して気にしてもいなかった。

 

「俺だって戦える!!こいつには拳も蹴りも通じる!なんでも食らうとか言っといて……1枚でも間になにか挟めば、殴れるじゃねぇか!!」

 

「へぇ……なるほどなるほど、俺にそんな対策してくるのか。いやはや、()()()()()()()()()()。」

 

「なんだと…?」

 

「マルク、あいつの言葉に耳を貸すんじゃねぇ!!」

 

怒鳴るイービラー。何か、意味がある言葉ではあるのだろうとマルクはここで察した。意味の無い言葉に対して、『耳を貸すな』というのも変な話。『無視をしろ』というのであればまた別だとマルクは考えたからだ。

 

「…どっちにしろ、今はあいつを倒す。フェイスが完全に発動する前に。」

 

「それに関しては……無問題だ。あっしいがいにも、()()()()()()()()()()()。」

 

「……なんだと!?」

 

イービラーの言ったことに、驚くマルク。それに対して反応したのはイービラーではなくグラトニーの方だった。

 

「んー、当たり前だろう?何故イービラーだけが、復活したと勘違いしている?

そこの嬢ちゃん…ウェンディ・マーベルのドラゴンも復活してるんだぜ?そうだよ、なぁ!!」

 

「は!?」

 

グラトニーはウェンディに向かって攻撃を放つ。既に、ウェンディも行ったとばかり思っていたのでマルクは、不意を突かれる形となった。

だが、それでもウェンディを守ろうと即座に動く。だが、ウェンディと一緒にあの攻撃をかわすほどタイミングは良くない。

 

「ウェンディ!!」

 

「マルク!私だって、やれるんだよ!!」

 

故に、突き飛ばしてでも守ろうとした瞬間だった。ウェンディはそれで反応できていたのか、大きく横に飛んで回避出来ていた。

それで、マルクは安心出来ていたが同時に考えを改めることになった。たとえ自分と同じ年だったとしても、小さい少女だとしても……ウェンディは歴戦の『戦士』なのだ、と。

 

「マルク、私も…!」

 

「いや……だったら余計に、離れていてくれ。」

 

「どうして!?」

 

「行ってやれよウェンディ・マーベル。こいつは、今みたいに俺がお前に攻撃をするかもしれない、と考えている。

今の攻撃は、かわせるくらいのものだったとしたら?そう考えると夜も眠れないって考えてるんだよ。」

 

グラトニーは、身振り手振り大げさに動かして説明をする。それに納得してしまったのか、ウェンディは小さい拳を握りしめながら唇を噛んでいた。

 

「大丈夫だウェンディ…絶対に戻る。」

 

「ぁ……うん!」

 

ウェンディはその言葉で十分だったのか、伝わったようだった。そして、踵を返して皆の元に戻り始める。

 

「………さっきの攻撃、本当に手加減していただろお前。」

 

「さて、どうだろうな。あれが俺の全力がしれないし、お前の言う通り手加減していたかもしれない。」

 

「相変わらず、心の読めねぇやつよ。」

 

「心は読むものじゃないからな。そんな当たり前のことすらわからないとは…ドラゴンというのは馬鹿なのだな。

そうそう、ドラゴンついでに1つ昔話でも━━━」

 

「ごぁ!!」

 

イービラーは大声を出しながら、グラトニーにその大きな爪を向ける。体をうねらせながら、大きく叩きつけようとする。

 

「危ない危ない、ったくドラゴンというのは気性も荒いのか…まるで野生動物だ。」

 

「てめぇの方がよっぽど野生動物だグラトニー!またお前を食い殺してやる!!」

 

「できるのか?やれるのか?ヴァレルトから、イービラーというドラゴンになって弱体化したお前が!!」

 

「弱体化…?」

 

「だから、あいつの言葉に耳を貸すんじゃねぇ!!」

 

イービラーは叫ぶ。だが、その言葉は既にマルクの心にあった小さな不信感を大きくする役割しか果たしていなかった。

 

「イービラー、終わったら話してもらうぞ…全てを!!」

 

「…それで、お前が満足するならば。」

 

「終わったら!?終わったらと言ったのかマルク・スーリア!

無駄無駄!弱体化してただの俺の劣化版となったドラゴンと、魔法の使えない魔導士、それに対して俺はありとあらゆるものを触れるだけで、この身に蓄えそして自身の呪力とすることが出来る能力だぞ!?

相手になるわけがない!!」

 

「無駄かどうかは…やって見なきゃあわかんねぇだろう!!」

 

イービラーは更に体をうねらせて近接戦闘を挑み始める。しかしグラトニーはそれを尽くかわしていく。

かわす必要性がないはずなのに、である。

 

「あいつ、なんでわざわざ避けて……」

 

「同じ力のぶつかり合いならば、たとえ小さな方であっても能力同士の矛盾が発生して、起こらなくなるようでな。

喰らい合う力同士のぶつかり合いになれば、単純にパワーの方が勝つらしい。

先程、一撃だけを入れることが出来た。」

 

「そういう事だ。単純に舐めているからじゃない。だが分かっているなイービラー。お前の体に、俺が呪法を当ててしまえばお前の体に穴が開くってことを。」

 

「……そんなこと!」

 

「うぉっ!!」

 

マルクが振りおろとされかねない激しさで、イービラーは戦闘を続けていく。だが、決して振り下ろされないようにマルクはイービラーの体を必死で掴む。

 

「ぐぐぐっ……!」

 

「ぐぅおっ!?」

 

「爪ばかり意識を向けていると、別のところから攻撃が来るぞ!」

 

イービラーはその蛇のように長い体を活かして、爪で攻撃しつつ尻尾で同時に攻撃を繰り出す。

意識を向けていなかったのか、グラトニーはそのまま吹き飛ばされる。ダメージはあったのか、吹き飛ばされた直後に血を吐いていた。

 

「ぐはっ……ははは、そうだ、そう来なくっちゃいけな━━━」

 

「らぁっ!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

破れていない方の靴を履いている足で、マルクは飛び蹴りをグラトニーに加えていた。

触れたところから食らっていくだけであり、肉弾戦ではダメージを与えることが可能ということだけはわかった。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「へぇ…思っていたよりも、強くなっていたじゃないか。何のために、そこまで強くなったのかはともかく……だがな。」

 

「強くなりたい理由に、だめな事があるみたいな言い方だな。いや、ダメな事がないとは言わないがな。」

 

イービラーは、両手をあげて『やれやれ』といったポーズを取る。それがマルクに本気で呆れているのか、はたまたただの挑発行為なのかは分からないし、マルクにとってもどうでもいい事だった。

 

「いいか?強くなる理由には、純粋な気持ちと不純な気持ちの二つがある。

強くなりたいから強くなろうとする、ってのは純粋な気持ち。誰かを殺したい、誰かにいい顔をしたい……ってのは不純な気持ちだ。仲間を守るって言うのも、いい顔をしたいって部類だ。」

 

「……そうか、よ…!」

 

マルクは、道端の石を拾ってそのまま喋ろうとするイービラーに向けて、全力で投げる。

 

「いやいや、蹴りとかは靴がクッションになっていたおかげって言うのを忘れるなよ。」

 

「やっぱりダメか。」

 

だが、石はイービラーにダメージすら与えずに飲み込まれていく。やはり、何かワンクッション置かなければならないようだ。

その行為に業を煮やしているのか、イービラーがマルクを掴んで自分の頭の上に戻す。

 

「うぉっ!?」

 

「試すのは勝手だがな、あまり無理はして欲しくないな…!」

 

「親ばかか!これが親ばかというやつか!!」

 

高笑いしながら、グラトニーはイービラーを狙う。もはや弱点同然のマルクは、いないものであるかのように扱いながら。

 

「マルク・スーリア!貴様は後で殺してやろう!だが今は、こいつだ…!俺を食ったこいつを殺してくらって俺の方が強いということを見せる!」

 

「その思いは、不純な気持ちってやつじゃねぇのかよ…!」

 

「悪魔にまともな思考は求めるんじゃない!!」

 

イービラーと、グラトニーとの戦い。それを眺めるマルクという形になりながら、未だこの戦いは続いていくのであった。


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